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【小野千恵子氏】自分に向き合えることが幸せ。挑戦の心と感謝の気持ちで掴むウェルビーイングとは

多様化が重要視される中、「子どものために、親として何を言ってあげればいいのだろう」と悩む親は多いだろう。その一方で、子どもが生活の中心となり、自分について考える時間が少なくなっている方も少なくはないのでは。

今回お話をお伺いしたのは、ファッション雑誌『STORY』の専属モデルとして活躍する傍ら、自身が大好きな犬に関連する活動も積極的に行っている小野千恵子さんだ。

夫である元プロサッカー選手・小野伸二氏が海外や日本各地を転々とする中、千恵子さんはどのように子育てに向き合っていたのか、そして子育てが落ち着いた今、「自分のために」今後はどのように生きていきたいのかーー。Wellulu編集部の堂上研が話を伺った。

 

小野 千恵子さん

ファッションモデル/犬と家族のブランド『LAUW』ディレクター

1979年、神奈川県横須賀市生まれ。大学時代に雑誌『JJ』の読者モデルとして活躍した後、22歳でサッカー選手の小野伸二氏と結婚、仕事を辞めオランダへ渡る。日本に帰国した後も専業主婦をしていたが、子育てが落ち着いた40歳のタイミングで雑誌『STORY』のレギュラーモデルとして復帰。

自身が犬を飼い始めたことをきっかけに保護犬のボランティア活動に参加したり、犬と家族のブランド『LAUW』を立ち上げたりするなど、チャリティ活動も積極的に行っている。

犬と家族のブランド『LAUW(ラウー)』公式サイト

堂上 研

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

大切なのは子どもが結論を出すまで「待つ」こと

堂上:今日は子育てについて、そして千恵子さんや、ご家族の今後についてのお話をお伺いできるのをすごく楽しみにしておりました。つい先日まで、オランダに行かれていたんですよね。どのくらい滞在されていたんですか?

小野:ありがとうございます。夫の引退セレモニーに招待いただき、1週間くらい行っていたんです。アメリカに留学中の長女も現地で合流して、久しぶりに家族4人で過ごせました。

堂上:娘さん、留学中なんですね! 寂しくないですか?

小野:もちろん、当初は寂しい気持ちもありましたが、中高生〜大学生くらいになると子どもって親と距離を取ることが多いですよね。海外にいると定期的に連絡をくれるので、むしろ日本にいるより寂しくないかもしれません。最近は、逆に娘の存在を近くに感じています。

堂上:物理的な距離があるからこそ、近くに感じることもあるんですね。千恵子さんは旦那様である小野伸二さんのお仕事の関係で、オランダや日本各地を転々とされていたと思うのですが、子育ては大変ではなかったですか?

小野:私は結婚して夫と一緒に海外に行くと決めた時に、一度仕事を辞めているんです。もちろん海外生活の中では慣れないことも多くありましたが、家事と育児に専念できたので、比較的楽しんで子育てしてきたタイプだと思います。

堂上:仕事に復帰されたのはつい最近なんですね。

小野:はい。娘2人がそれぞれ大学生と高校生になって子育てが一段落したので、これからは自分のやりたいことに向き合いたいと思い、40歳の時に復帰しました。特に女性はそうかもしれませんが、周りにいる方も40歳くらいになって自分に向き合う方が多いような気がします。私も同じです。

堂上:たしかに、Welluluの読者の中にも「子育てが落ち着いて、これから自分自身とどう向き合うか」を課題に感じている方が多いですね。

 

堂上:上のお子さんはアメリカに留学中とおっしゃっていましたが、大学生で海外に留学させることに対して不安はありませんでしたか?

小野:もちろん不安はありました。だけど、我が家は夫が自分の好きなことを追求してきて夢まで叶えた人なので、子育てに関しては「自分でやりたいことがあるなら、どんどん挑戦させよう」というスタンスなんです。なので、あまり反対はしませんでしたね。

堂上:子育てをしていると、ついつい「もっと〜〜すべき」「〜〜はやめておいたほうが良い」と言いたくなっちゃいませんか? 僕には3人の子どもがいるんですが、いつも「少し言い過ぎたかも」「親のエゴじゃないか」と反省するんです。

小野:その気持ちもすごくよく分かります。我が家は、長女が昔からやりたいことがすごく多かったのですが、次女はなかなかやりたいことが見つからないタイプだったんです。実際、長女が通っていた教室に連れて行っても、続かないことも多くて。そこで「無理やりやらせても意味がないんだ」と気づきました。

堂上:待ってあげたわけですね。

小野:はい。結局小学校3年生くらいの時に、自分でやりたいものを見つけてきて、随分長く続けていましたよ。長女の友だちにもプロのゲーマーになった子がいるんですが、きっと親御さんが子どもの「やりたい」という気持ちを尊重していたんでしょうね。普通だったら「ゲームばかりしないで勉強しなさい」と言ってしまいそうですが……。

堂上:僕も息子によく言ってしまいます……。本来好きでやっていたはずのサッカーを放りだしてまで、ゲームしたり、漫画を読んだりしているのを見ていると、ついつい叱りたくなってしまうんです。千恵子さんは、そういう経験はありませんでしたか?

小野:全然ありますよ!

堂上:そういう時は、どうすればいいのでしょうか。

小野:私は、子どもに「本当にやりたいかどうか」を確認するようにしていました。たとえば、勉強をしなければいけないけれど遊びに逃げちゃうのは、誰でもそうじゃないですか。誘惑に負けてしまうのは、大人でも同じですよね。だけど、本当にやりたいこと、たとえばうちの次女の場合はフラダンスだったんですが、それをやっていたはずなのに遊びに逃げてしまうということは、本当はフラダンスはやりたくないのでは? と思うんです。

堂上:なるほど!

小野:本当はやりたくないのに親が無理やり引き戻すのは、少し違うと思うんですよね。だから、サボってしまうたびに「フラダンスはやりたくないのね?」と確認するようにしていました。そうすると子どもは自分で考えて、「やっぱり好きでやりたいから続けたい」という結論を出すんです。そういう意味でも、子どもが自分で結論を出すまで親が待つことは、すごく大事なんじゃないかと思います。

堂上:確かにそうかもしれませんね。自分で考えて結論を出せば、本人も納得して行動しますもんね。

子どもが気軽に相談できる「ママ」でいるために

堂上:子育ての方針については、旦那さまとも話されていますか?

小野:「子どもがやりたいと言ったことは応援しよう」ということだけは、共通認識として持っているようにしています。でも、夫は海外で生活していた時はすごく忙しく、日本に帰って来てからも、北海道や沖縄に単身赴任することが多く、家にいないことが多かったんです。もちろん大きな決断は相談しますが、私が専業主婦だったということもあり、日々の細かいことは一任してくれていたように思います。

堂上:その分、千恵子さんと娘さんたちの信頼関係はすごく強くなっているんでしょうね。特に同性同士だと、大学生や高校生くらいになると、友だち同士みたいな感覚もありますか?

小野:どうなんでしょう。昔から夫が家にいないことが多かった分、娘2人が気軽に相談できる雰囲気作りはしていましたね。

堂上:家の中で子どもが気軽に何でも言える状態にするのは、すごく大事ですよね。

小野:やっぱり、同じ家にいるのにそれぞれの部屋に籠もってしまうのは寂しいじゃないですか。だから、どうにかして交流しようと子どもたちの世代で流行っているものは、積極的に一緒にやるようにしています。娘2人がTikTokダンスをしているのに混ぜてもらうこともありますよ(笑)。

堂上:素晴らしいですね。ご家族みなさん、仲が良いんだなということが伝わってきます。千恵子さんのお話を伺っていると、子育てにしっかりと軸を持っているように思うのですが、その背景には、千恵子さんのお母さまの子育てにも通ずるものがあるのでしょうか。

小野:私が生まれ育ったのはいわゆる田舎で、逆に子どもたちは都会で生まれ育っているので、状況としては違うことが多いですね。ただ子育てをしていると、母の価値観と似ていると感じることがよくあります。

私の母はすごくポジティブな人だったのですが、私も娘たちが何か問題を抱えていると、その問題の中でも良い部分に目を向けさせようとします。「母が言っていたように」と意識したことはありませんが、今思えば、母の価値観を引き継いでいるように感じますね。

堂上:たしかに、千恵子さんとお話しているとすごくポジティブな考え方をする人だなと感じます。お母さまの影響もあるんですね。

小野:そうかもしれません。それから「どんな時でも感謝を忘れない」という価値観も母から教わりました。

堂上:素晴らしいです! きっと素敵なお母さまなのでしょうね。

子どもや地域のウェルビーイングにもつながるペットの存在

堂上:千恵子さんは、犬のブランド『LAUW(ラウー)』も運営されていますよね。ブランドを立ち上げた経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか。

小野:もちろんです! 初めて犬を飼ったのはオランダにいた時なのですが、その子が亡くなってしまってすごく悲しかったのと、自分も子育てで手一杯だったので、しばらく犬は飼っていなかったんですね。だけど、子育てが落ち着いた時期とちょうどコロナ禍で家にいる時間が多かったことが重なり、もう一度犬を飼うことにしたんです。

愛犬のラウエくんとロームくん

堂上:Instagramで拝見しました。すっごく大きいですよね。

小野:大きいですね(笑)。日本で犬を飼ったのはその子が初めてだったので、情報収集のためにInstagramを始めたんです。そうすると、保護犬や殺処分されてしまう犬の情報もすごくたくさん入ってくるんですよね。それに心を痛めて、何か自分でできることはないかと思い、ボランティア活動を始めたんです。

堂上:初めからブランドを立ち上げようと思われたわけではないんですね。

小野:はい。活動を通して、「ボランティア活動」に対するイメージがすごく偏っていることに気づいたんです。SNSなどで「犬の保護活動をしています」と発信すると、何か大きなことをしているように思われることが多いようですが、反対に本業とは別で片手間でやっている人に対しては非難の声が届くことがあることを知りました。

堂上:たしかに、そういうイメージがありますね。

小野:そういうのがなくなったらいいなと思ったのがブランドを立ち上げたきっかけです。リスクを背負いながら個人で活動するのではなく、ブランドを通して「みんなの力」になれば、できることも広がるのではないかと思いました。実際、ブランドを立ち上げてからは「これまで何かやりたいと思っていたけど、自分1人では何もできなかったから、機会をくれてありがとう」と言ってくださる方もいらっしゃるんですよ。寄付やボランティアが当たり前に誰でも気軽にできる世の中になればいいなと思っています。

堂上:より気軽な気持ちで、犬の保護活動に携われる方が増えたんですね。千恵子さん自身もブランド以外にボランティア活動もされているんですか?

小野:飼っている犬を小学校に連れて行き、道徳の授業で命の大切さを伝える活動をしています。小さい頃から命の大切さを知っていれば、大人になった時に動物に対してひどい扱いをしなくなると思うんです。そういう人が1人でも減ったら良いなと思って、この活動をしています。

堂上:素晴らしいですね。

小学校でのボランティア活動の様子

小野:子どもってすごく面白くて、最初こそ「大きい! 怖い!」と触りもしなかった子が、授業の最後になると「離れたくない!」と抱きついていたりするんです。その変化を見ていると、ただ知らないというだけで怖がっていたり、親が「危ないから触らないでね」と教えることで、知らない間に壁を作っていることも多いんだなと気づかされます。

堂上:大人になった時に偏見を持たないようにするためにも、小さい頃から色々な経験をさせるのはすごく大切ですよね。ブランドの運営も、接点を持つ人を増やすのにすごく役立つと思います。

小野:今年のゴールデンウィークに、世田谷区にあるスタジオとコラボしてイベントを開催したんです。そのスタジオは地域のために何かできることはないかと考えていて、だったら犬を絡めてイベントを開催することで、地域の子どもや大人が参加しやすいのではないかと考えました。

堂上:素敵ですね。僕らは『Wellulu』を通じて色々な方にお話をお伺いしているのですが、その中で地域のウェルビーイングのためには、その地域に中心となるコミュニティリーダー的な人が必要だという結論に行き着いたんです。その媒介役にペットや子どもがいると話のネタも広がるので、すごく重要なポジションになっているのだろうなと思いました。

GWのイベント時の様子

犬と家族のブランド『LAUW(ラウー)』公式サイトはこちら

「自分自身のやりたいこと」に向き合える幸せ

堂上:ボランティア活動を行ったり、ブランドを運営していたり、精力的に活動している千恵子さんご自身がウェルビーイングだと感じるのは、どんな時なのでしょうか。

小野:自分のやりたいものを見つけて、自分で想像して、作って、発信して、それを誰かに受け取ってもらえて、喜んでいただいた瞬間ですね。これまで子どものために15年以上突っ走ってきたので、自分のやりたいことに全力で向き合えて、それが誰かの役に立っていると実感できるのが幸せです。

堂上:まさにブランドの運営ですね。

小野:はい。大きなブランドではないので大変なことも多いのですが、すごく楽しいです。在庫管理からイベント運営、Webサイト制作まで全部自分でやっているんです。

堂上:全部自分で⁉ それは衝撃です。でもきっと千恵子さんにとっては、その作業も楽しいんでしょうね。

小野:作っているグッズが織りシルクを使った繊細なものなので、一気に大量に生産できるものではないんです。規模が小さいからこそ、自分1人でできている部分もあります。

『LAUW』で販売しているポシェット 14,900円(税込み)

堂上:織りシルク、すごく温かみを感じますね。立体感もあってすごく素敵です。

小野:ですよね! 最近は余った廃材で小物も作っているんですよ。この生地のデザインから織布までやってくださっている織りシルク屋さんを紹介してくださったのも、犬コミュニティで出会った方で、最近はそういった犬を通した人と人とのつながりの大切さもすごく実感しています。

堂上:好きなものや、やりたいことを通して新しい出会いがあるのは、すごく嬉しいですよね。

小野:はい。それから、飼っている犬を通して自分自身も色々なことにチャレンジさせてもらっているなと思います。これまでどちらかというとインドア派だったのですが、「この子のためなら頑張って外に出ていこう! いろんな人に会ってみよう!」と思えるんです。自分のエンジンが加速していっているなと感じます。

堂上:自分自身を元気づけられるんですね。千恵子さんを見ていると、ペットを含めたご家族のウェルビーイングがご自身のウェルビーイングにもつながっていて、すごく素敵だなと思います。

『LAUW』で販売しているグッズを作る過程で出た廃材を使用して作られた万年筆

前進の秘訣は「やらない後悔よりやる後悔」と感謝の気持ち

堂上:現在も色々なことにチャレンジしている千恵子さんの、今後の目標を教えてください。

小野:つい最近までは、「自分のブランドでイベントを開催すること」が目標だったんですが、それが叶ったので、今後はブランドやボランティア活動を介して自分ができることをもっと増やしていきたいなと思います。

最終的な目標は、人間社会と犬が共生する世界を作ることです。「ペットとの共生」と聞くと、飼い主である家族とペットの共生をみなさんイメージしがちなんですが、本当の意味での「共生」って、人間社会の中で当たり前のように犬や猫のようなペットが生きていることだと思うんです。

堂上:なるほど。街中やオフィスで、犬や猫がウロウロしていたら面白いですね。

小野:オランダに住んでいる時はそんな感じでしたよ。電車や飛行機のシートにペットが座っていても誰も驚かないんです。

堂上:へぇ、そうなんですね! そういう話を聞くと、「あれはダメ」「これはダメ」というルールがありすぎることも良くないのかもしれませんね。もちろんルールがあることで良い面もたくさんあるとは思いますが、人間もペットも生きやすくするためには、色々な価値観が受け入れられるようになると良いですね。

小野:本当にそう思います。

堂上:千恵子さんのお話をお伺いしていると、本当にたくさんのことにチャレンジしていて、素晴らしいなと思います。『Wellulu』の読者の方からは「チャレンジはしたいと思っているけどなかなか一歩踏み出せない」「現状を変えるのが怖い」という相談も届くのですが、千恵子さんだったらどのようにアドバイスされますか?

小野:特に私たち世代って、子育てが一段落して、今後は自分のために何かやりたいけど何から始めたら良いのかわからない、という方が多いですよね。私も同じでした。ただ、自分を自分の子どもと置き換えてみると、案外単純なんです。子どもが何かにチャレンジしようかどうか迷っていたら、きっと多くの親御さんは「失敗してもいいからやってみれば?」「“やらない後悔よりやる後悔”だよ」というふうにアドバイスしませんか?

堂上:おっしゃる通りですね……。

小野:ですよね。なので、あまり深く考えずにまずはやってみることが大事だと思います。たとえばそれが数億円をかけた大事業だったら慎重になる必要がありますが、一個人が始めることは、失敗しても何とかなることが多いと思うんです。

堂上:失うものって、意外と少ないことも多いですよね。

小野:はい。挑戦してみてダメだったらまた違うことを考えれば良い、というスタンスでここ数年は過ごしています。まずは、今ある状況が自分にとってベストだという、そのことに感謝できれば、失敗したとしてもそこから学べることが出てくると思うんです。そのことにまた「ありがとう」と思いながら生きられれば、どんな方でも前に進めると思いますよ。

堂上:お母さまのポジティブ思考と感謝を大事にする気持ちは、やっぱり千恵子さんにもしっかり引き継がれていますね。

小野:たしかにそうですね(笑)。

堂上:小野さんの今後のご活躍、すごく楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました!

犬と家族のブランド『LAUW(ラウー)』公式サイトはこちら

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