寛恕(かんじょ)という言葉
「人脈を築く人」の記事が「日経産業新聞」にあった。インターウォーズの吉井社長の寄稿文だ。吉井社長との出会いは、7年か8年前に遡る。僕は、博報堂で事業開発に携わることができればと考え構想していた。
今でこそ、事業共創や事業開発支援という話はよく聴くようになったが、当時はインキュベーションという言葉もイントレプレナーという言葉も、まだ浸透していなかった。マーケティングとイノベーションの両輪でまわす会社になると、広告の新しい未来があるように感じる出会いだった。
吉井社長は覚えていないかもしれないが、僕は「インキュベーション(事業開発支援)」と「イントレプレナー(企業内起業家)」どっちが向いているか分からないが、事業を創りたいんです、と熱く語ったのを覚えている。その頃は、まだ起業家のほうに関心が強かったように思う。
昨年は、吉井社長のところで「産業をつくる」という視点でご指導いただいた。そこで僕の中で僕が目指すべき道と光を見出すことができた。そのひとつがこのWelluluのメディアであり、事業開発に携わるインキュベーションだったりする。「ウェルビーイング産業」を共創の中で創る。これが僕が目指したい道だと気づかせてもらった。
Welluluはローンチしてから、半年が経過した。1か月に30記事を目標にコツコツと取材を重ねて、200を超える記事が既に上がっている。そして、ウェルビーイングに特化したメディアは、様々な人との出会いを創ってくれている。
「天の時・地の利・人の和」
この1文だけ書かれたメールが、ある日吉井社長が送ってくださった。時代を読む、ということも大切だし、自分たちの土地(事業)の強みを活かすのも大事だが、人の和というものの価値の重要性を伝えてくださったのだろう。僕は、Welluluの取材を通して出会った人たちみなさんに「人の和」を通したウェルビーイングな生活を少しでも体感してもらいたいと思った。
イノベーションを追求していたら、ウェルビーイングにたどりつき、ウェルビーイングを追求していたら、コミュニティにたどりついた。そして、産業共創の道は、ひとりではたどりつけないであろう、ファーストペンギンとフォロワーが重要になってくる。この辺の思考がぐるぐる循環しはじめているのだ。
吉井社長は「人脈を築く人」の記事の中で、「恕」の精神で人間関係が深まり、誰と歩むかで人生もビジネスも大きく変わると書いていた。「怒」に似た漢字だが、全然違う「恕」(じょ)という漢字。この漢字には、人の 身の上 や 心情 についてを察し、 思いやりを持つことの意味がある。そして、僕は「寛恕(かんじょ)」という言葉もウェルビーイングにつながる言葉だと感じた。
吉井社長をはじめ、Welluluを通して出会った「人の和」から、新たな未来を共創できるような社会創造ができると信じている。そして、そこで必要になってくるのが「寛恕」の精神を持つことなのだ。そうすると対話が生まれ、相手の立場にたって考え、発言し、行動する人が増えるだろう。こういう出会いに感謝である。
と言いながら、僕はまだまだその域には達していてなく、ウェルビーイングな生活の理想には道半ばである。これはゴールのない旅のようにも感じている。
写真は、吉井社長も登場するリクルート創業者の江副氏の本である。2年前に読んで、産業をつくる視点を学ばせていただいた。
出会いが出会いをつくる新たなコミュニティ
僕は、1年間で約400~500枚の名刺交換をしている。これを1か月20日として12か月換算すると、1日にに平均2人の新しい人に会っていることになる。もちろんイベントなどでまとめて40~50人と会うのも入っているし、1日ずっと家でオンラインミーティングしているときは新しい人と出会うことはないので、まとめることはできないが。。。
先日、直島にWelluluで行ったときの話を書いた。これはまとめて記事にする予定だが、経団連の活動を通して慶應義塾大学の宮田教授と出会い、その先にウェルビーイング学会の先生方と出会い、今回の直島も福武英明さんと出会ったことからの話だった。「直島芸術生態系Vol.0」が直島であり、英明さんを取材させていただいたのだ。そのご縁で出会ったみなさまとのコミュニティは、みなさま魅力的な方ばかりだ。
また、経団連で「イントレプレナー養成塾」をいっしょにやらせていただいていた菅野先生のご縁で、大前研一さんと出会ったり、僕の生活は「人の和」をどんどん拡げいてくものになっている。
息子や娘の小学校のときの友だちのパパママとの出会いも同様だ。サッカーをやっている子どもたちのパパママのコミュニティや、多様な職種の人たちが集まると、そこはもう出会いが出会いをつくっていく新たな生態系が存在していく。富士山にいっしょに登ってくれるママパパ、息子の受験に共感してコメントをくれるママパパ、みんなとの時間が楽しい。
ウェルビーイングの追及は、まだまだ続く。そして、この「人の和」がその人をウェルビーイングに導くのだろう。僕は新たなエコトーンになれるだろうか?寛恕の気持ちをもって、このコミュニティを拡げていきたい。

堂上 研 Wellulu 編集部プロデューサー