中学受験と自然からの学び

Wellulu 編集部プロデューサー

堂上 研

受験の意味を考える。

今回は、幼なじみのご近所家族といっしょに、1泊2日で河口湖のほうに行った。3週連続で富士山を直に体験できて幸せだ。夏休みに入った中で中学受験をする予定の長男(小6)の塾のお休みの合間のキャンプだった。(塾からは、この夏休み時期は大切なので、キャンプとか旅行とかは避けてください、と言われていた・・・)

長女のときもそうだったが、中学受験は僕らの時代や地域とまるで違う。僕が小学校卒業するときに、中学受験して私立に行くという子どものほうが少なかった(僕の記憶では、僕の学校から私立に行ったのは1人くらい?)。それくらい地元の公立の中学校に進むのが普通だった。

ところが、東京に住んで中学受験の様相がまるで違うことが分かった。小学校6年生の夏は、夏休みというよりも「塾」に通う日々に追われる。感受性豊かな小学校6年生のこの時期に、こんなに勉強に追われることが本当に必要なのか、と思ってしまう。

実際、小6の長男の受験勉強では、長女のときと違って、なんども「受験なんて辞めた方が良い」と思うくらいの状況だ。もちろん、この時期に頑張って受験したことで、そのときに学んだことはあとで活きてくることもあるだろう。けれども、もっとこの時期にやるべき大切なことがあるんじゃないか、と思ってしまうのである。

例えば、「自然の中でおもいっきり遊ぶ」「何か自分の好きな研究・探求に没頭する」「好きなスポーツを毎日やり続ける」など、なんでも良いと思う。自分の好きなことを一生懸命やれる時期に、机の前に向かっている時間が多すぎることに多少なりと違和感を感じてしまう。とはいえ、本人が「中学受験をしたい」と自分の意志で行動にうつしているので、親としてはそこを応援する以外に選択肢はない。

ある日、息子と受験に関して親子喧嘩をした。あきらかにサボっていたので、「やると決めたのはあなたなんだから、やり切りなさい。」という話をしたのに、勉強がつまらなくなっていた時期なんだろう。息子は泣きながら、僕に「ChatGPTとかがある時代に、なぜこんな歴史とか漢字とか覚えなくてはいけないのか分からない。」と伝えてきた。

僕は、中学受験をしなかったが、高校受験と大学受験で、「受験のための暗記」は本当に意味があるのだろうか、と疑問を抱いていたことを思い出し、「お父さんは答えられないから、ChatGPTに聞いてみよう。」という話になった。

ChatGPT4.0の回答は、ありきたりだった。学校教育の方針に基づいて、その基本的なスキルの強化を高めることを求めていることとの回答だった。その中でも、ひとつだけこんな回答があった。

学習態度の養成」:「 中学受験の勉強を通して、自己管理能力、努力、忍耐などの価値観や態度も育まれるとされています。これらは、中学生活やその後の人生で役立つ重要なスキルとなるでしょう。」(Open AI 4)

最近の教育現場では、単なる暗記だけではなく、論理的思考や創造性を高めるような指導も重視されるようになってきているとも聞く。日本人が足りないコンピテンシーに「主体性」「協調性」「多様性」という話も聞いたことがある。それが中学受験においては、競争の激化とともに、「忍耐」「努力」で片づけられる感じで、今の時代に追いついていないような気もする。

「生きる上で、必要な能力はなんだろうか?」

今の僕は「対話力」「問い力」「楽しむ力」と言いたい。(あえて、『今の僕』と言ったのは、価値観は変化するかも、と思っているからだ。)もちろん、努力や忍耐力は重要だし、集中力や自己管理能力も必要だが、本当に人生で役立つスキルなのだろうか?

僕は、「自分の熱中できるものを見つけて、それをとことんやり続けることができる能力」も、「相手を思いやり、困っていたら助けることができる能力」も生きる上で大切な能力だと思う。

中学受験の成功話や失敗話を聞いても、なんとなくピンとこない。それは、どこの学校に行くかが重要なのではなく、「自分に正直に生きてほしい」と思っているからだ。と言いつつ、息子が頑張ろうとしているので、その環境を整えるサポートをしたい、と思って「暗記もがんばれー」と言ってしまう。自分の中での矛盾に、受験なんて辞めてしまえばよい、とついつい思ってしまうものだ。

受験も楽しんでやれるような環境になれば良いな、と勝手に願ってしまう。

幼なじみ家族との時間

幼なじみ家族とは、長女(高1)が生まれる頃からのご近所で、長女は同じ年、同じ保育園・小中高の大親友だ。長男(小6)も、幼なじみ家族の次女と同じ小学校に通う同じ年なのでとても仲が良い。なんとなく家族のような関係だ。長女の留学のときも成田空港まで見送りにわざわざ来てくれた。

小6の中学受験の夏休みは大切だと言うが、こういうキャンプで自然の中でご飯を食べる時間も大切だ。今回は、運動不足を克服するような「アスレチック」や「マウンテンバイク」などのアクティビティを予定していた。

アスレチックは、ほぼ毎年やっているので、子どもたちは難関コースをすいすい進んでいく。怖さはないのか、と思うが、一応頭を使いながら、どうやったら上手に渡れるかなど考えながら進んでいるようだ。僕は、なんとかついていくのに必死だ。

マウンテンバイクは、森の中を決められたコースをぐんぐん進んでいく。オフロードの道をジャンプしながら、自転車をこぐのが楽しい。ふたつのアクティビティを終えて、汗びっしょりになった。

夜は、炭に火おこしをしてBBQだ。ウィンナー、とうもろこしの醤油焼き、まぐろのカマ焼き、タコの甘辛焼き、牛ヒレ肉を焼いて、富士山でつくられた地ビールといっしょに楽しむ。自然の中で食べるだけで、いつもの何倍も美味しい。そして、ウェルビーイングの研究で分かったことだが、何を食べるかも重要だが、それ以上に「誰と食べるか」がもっと重要なのだ。

夜、先週登った富士山の様子を見に行ったが、あいにくの雲でかくれて見えなかった。空を見上げて、いくつかの星を観察した。「夏の大三角形は何?」とか会話をしてしまうところが、すでに中学受験の暗記に毒されている。

次の日は、同じ場所で赤外線で撃ち合うサバイバルシューティングゲームを楽しんだ。大人対子どもに分かれて、チーム戦で戦ったのだが、20分のところ、7分くらいで大人チームの負けが決定。80の持ち分ライフがすぐになくなった。ここでまた体力を使いまくる。子どもたちは、戦略的にどう戦うか、どうやったら、相手をやっつけられるか考えて動く。こういう自然の中でのゲームでも学びの宝庫なのである。

帰りは、吉田うどんという名物を食べて、温泉に入って帰った。台風が接近していることもあり、事故渋滞や冠水エリアに影響を受けながら、無事帰宅した。

子どもたちは強く、自分の意志をもって生きている。幼なじみ家族との自然の中での時間は素晴らしい時間だった。僕の体重は増えていた。80.2㎏。。

堂上 研 Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

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