尊敬する大先輩のお墓参りへ
僕が博報堂に入社したときに、新人研修中に役員からのお話しがあった。故佐藤孝氏だ。今から25年前の話だ。僕ははっきりとその時の佐藤孝さんのお話を覚えている。
社会と生活者、企業と生活者の間に新しい価値を創造する。それが我々広告会社の役割だ。
僕は、広告会社に入社して、たくさんの人たちに出会える可能性を感じ、たくさんのクリエイティブやデザインに埋もれる生活にワクワクしていた。
新人研修が終わって、最初に配属されたのが営業職。僕はクリエイティブ職につきたかったこともあり、最初はショックだった。けれども、その最初の配属先の直属の役員が、佐藤孝さんだったのは、僕の社会人生活に大きな影響を与えてくださったのだ。
佐藤孝さんは、クリエイティブ職を経て、営業職、メディア職など多岐に渡る経験を経て、博報堂DYメディアパートナーズの初代社長に就任した方だ。
「社会をクリエイティブできるのは、営業だぞ」と新人の僕に声をかけてくれた。僕がクリエイティブ職につきたかったのに、営業職に着いたことがショックだったと言うことを知る由もないのに、なぜ彼は声をかけてくれたのだろうか
僕は経験を通して、広告のプロデュースをするということが、世の中に問いを立てることであり、文化をつくることであり、生き方を世の中に投げこむことである、ということが分かってきた。そして、広告の面白さにはまっていった。何より、博報堂の人たちとの仕事、お得意先と言われるクライアントとの仕事が面白くて仕方がなくなった。常に学びの連続だった。
そして、13-15年くらい広告におけるプロデュースをさせていただいた時に、僕は起業したいと考えた。それが10-12年前、博報堂の中で事業をつくることへの挑戦がはじまるきっかけになる。その頃から経営や新規事業に関する本を読み漁るようになった。
孝さんのご自宅にお邪魔させて頂いたのは、9-10年前くらいだろうか!? 次の博報堂が目指す事業は何か、我々は何を社会にクリエイティブしていくのか、という問いを頂いた。そのときは、孝さんは既に引退していた。
3年前に、孝さんが亡くなって、昨年からこの時期に、博報堂の先輩方と一緒にお墓参りに来ている。富士山が見える富士霊園にあるお墓参りは、孝さんがつくってくださったご縁でもあり一緒に仕事をした先輩方との同窓会のような感じで心地よい。こういう機会を頂き感謝である。
孝さんのお話しをもっと聴かせてもらいたかった。今僕が楽しく仕事をさせてもらっているお礼と、今の僕の挑戦を報告させて頂いた。
生きることの探求
一緒にお墓参りをした先輩方とのお話しも楽しい。大人になっても、みんな子どもごころを持って、常に何かに挑戦をしている。
10年後、20年後、僕はどう生きたいか!?僕は先輩方と同じように、楽しそうに生きているだろうか!?彼らと話しているだけで、新たな発見や気づきがあって会話が楽しいのだ。本から学ぶこともあるが、生きているうちにその人たちが、どう生きているのか、語り合うことをこれからも続けたい。
そして、博報堂の歴史の話もいろいろ教えて頂いた。会話の中で「主客一如」の考え方の話を聴いた。まさにウェルビーイング経営の根幹と佐藤孝さんが、伝えてくださった全てのステークホルダーに対して新たな関係価値を創り出す話にも繋がると感じるものだった。
自分と自分の周りのコミュニティ、つまり自分たちを「生かしてくれている」すべての存在に、同様に感謝して、新たな価値提供をすること。そして、自分と自分を取り巻く全てのものは、一体となりその一部である。そういう状況がウェルビーイングな生き方に繋がっているように感じた。
僕は、次の10年、次の20年、新たな関係価値を創っていきたい。まさに、社会をクリエイティブする存在でいたい。
今まで紡いできた歴史と、これから創造していく未来にワクワクが止まらないお墓参りになった。孝さん、ありがとうございます。
堂上 研 Wellulu 編集部プロデューサー