ファスティング中の空腹をサポートできる「食べるファスティング」。従来のファスティングの食べないイメージやデメリットを解消した「擬似ファスティング」は一体どのようなことなのか?新しいファスティングの提案について今回、サンスターの小宮さん、仁神さん、西銘さんに詳しくお話を伺った。
小宮さん
ライフケアイノベーション事業部
仁神さん
ライフケアイノベーション事業部 研究チーム
入社後のキャリア:玄米菜食をベースとした健康食品の開発、臨床研究、サンスタースイスでの飲料事業に従事。
主な仕事:ファスティングをはじめとする最新の栄養学に基づく食品の開発、ヒトに対する効果の検証
西銘さん
ライフケアイノベーション事業部
入社後のキャリア:食品をはじめとしたさまざまな製品開発やプロモーション、ヘルスツーリズムのサービス開発などマーケティング業務に従事。
主な仕事:「ANDFASTING カラダにおいしいファスティング。」に関するマーケティング業務に取り組む。
資格:管理栄養士
本記事のリリース情報
食べてもよいファスティング?「擬似ファスティング」とは
──本日はよろしくお願いします。サンスターさんといえば、オーラルケアのイメージが強いのですが、ほかにもどのような分野で取り組みをおこなっているのでしょうか?
小宮さん:サンスターは「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」という社是を掲げているように、オーラルケアだけではなく、健康を提供する企業としてさまざまな商品やサービスを展開しています。食品事業も、実は40年以上前から展開しているんですよ。
──40年以上も前からされているのですね!現在、新事業に取り組まれているとのことですが、どのような事業なのでしょうか?
小宮さん:現在サンスターは「食べるファスティング」を広める取り組みをしております。
──ファスティングは食べないイメージがあるのですが食べてもよいのですか?今回の取り組みの背景にはどんなことがあったのでしょうか?
小宮さん:サンスターでは、元々社員向けの福利厚生プログラム「心身健康道場プログラム」というものがあり、新入社員や35歳のタイミングになる社員、また健康診断で気になる点があった社員向けにQOL(Quality of Life)研修をおこなっていて、これには自分の食生活や生活習慣を見直すプログラムが含まれています。この中でファスティングを応用した考え方がありました。
──実際に、社員の方の福利厚生プログラムが関係しているのですね!
小宮さん:そうなんです。しかし、「食べないこと」をサービスとして提供するって難しいんです。そんなとき、アメリカの南カリフォルニア大学のDr. Longo(ドクターロンゴ)が、「食べるファスティング理論」を構築したことを知り、「食べるファスティング理論」の事業展開を行っているアメリカ企業(L-Nutra社)とライセンス契約を取り交わし、日本で事業展開することにしました。
「ライフ」と「デトックス」を掛け合わせた「ライフデトックス」という言葉があるのですが、弊社では心や身の回りの環境をデトックスするという考えを提案しています。
一般的な健康法は日常生活に何かを「プラス」していくことが多い一方、たとえばファスティングのように、あえて食べないことや時間を作ることなど、日常から「マイナス」していくことがウェルビーイングへとつながるのではないか、健康を促進し、環境や自分自身を見直す機会になるのではという考えが元となっています。このような事業を通じて、サンスターはウェルビーイングの達成を目指しています。
──とても興味深いです!
小宮さん:ありがとうございます。これに際して、4月には「ANDFASTING(アンドファスティング)」というライフデトックスの考えを取り入れたブランドを立ち上げました。
擬似ファスティングで必要な栄養は摂りつつストレスフリーにファスティング!
──では早速、「食べるファスティング」について教えてください。
ファスティングの効果:生活習慣病の改善や老化の緩和など
仁神さん:これは、擬似ファスティング、英語で「FMD(ファスティング・ミミッキング・ダイエット)」と呼ばれ、ファスティングの効果を擬似的に再現するものになります。
ご存じの通り、通常のファスティングは食べ物を一切摂取しないことです。体内で老化や生活習慣病に対しよい影響を与えていることが知られています。一方、擬似ファスティングでは特定の条件下で食事をしながら、ファスティングが実施できます。
──擬似とはおもしろい表現ですね!効果やそのメカニズムについて教えてください。
仁神さん:擬似ファスティングの効果は、体内の老化や生活習慣病の因子が働くスイッチをオフにすることにあります。このスイッチは、通常の食事でオンになると老化が進行しますが、特定の食事をすることでオフのままにできます。
たとえば、糖質やタンパク質が多い通常の食事はスイッチをオンにしやすいですが、FMDではこのスイッチがオフの状態です。
──食事をすることでオンになるものの、擬似ファスティングでは食べてもオンにはならないということですか…?
仁神さん:そうです。擬似ファスティングでは、このスイッチをオフのままにしつつ、必要な栄養を摂取できます。これにより、長時間食べないことが難しい現代人でも、健康的な効果を得ることができるのです。
──食べないことによる栄養不足の心配がなくなりそうです。実際にはどのような栄養バランスが必要なのでしょうか?
仁神さん:擬似ファスティングでは、PFCバランスが重要です。PFCとは、プロテイン(タンパク質)、ファット(脂質)、カーボハイドレート(炭水化物)の略です。
通常の食事では、炭水化物が50~60%、タンパク質が15~20%、脂質が20~30%の割合ですが、擬似ファスティングでは脂質を60~70%に増やし、炭水化物を20~30%、タンパク質を10%ほどに抑えます。
このバランスにより、体内のスイッチをオフの状態のままにでき、ファスティングができます。糖質とタンパク質を減らし脂質とのバランスを調整することで、スイッチをコントロールできるのです。
──脂質というと「油」というイメージが強く、健康に悪い気もしますが、摂っても大丈夫なのですね。
仁神さん:そうですね。重要なのは良質な脂質を摂ることです。とくに植物性の脂質を多く摂ることがポイントです。
動物性の油は、たとえば調理後にフライパンに残ったままにしておくと固まってしまうことがありますが、植物性の油はさらさらしていて固まらないですよね。ただ単に脂質を摂るのではなく、質のよい植物性の脂質を選ぶことが重要なのです。
──次に、特別な栄養バランスで作られた食品を摂ると身体にどのような影響があるのか教えてください。
擬似ファスティングの作用:血糖値が上昇しない
仁神さん:このデータはアメリカの研究者が実証したものです。上のグラフは血糖値を示し、下はケトン体に関するグラフです。血糖値に関しては、糖質を摂取すると上がることはご存知かと思います。この実験では前日から絶食し、翌朝に3つのグループに分けて試験を行いました。
まず、普通の朝食を食べると血糖値が急上昇します。次に、水だけを摂取したグループでは何も食べていないので、もちろん血糖値は上がりません。そしてFMD(擬似ファスティング)をしたグループですが、この場合も血糖値はほとんど上がりませんでした。
このようにFMDは特別な栄養バランスで作られており、食べても血糖値が上がらないという特徴があります。
──食べているのに、ほとんど血糖値が上がらないのですね!
擬似ファスティングの作用:脂肪が分解される
仁神さん:そうなんです。また、ケトン体という体内の脂肪が分解される過程で生成される物質で、糖質の代わりにエネルギー源として利用されるものがあります。エネルギーが不足すると身体は脂肪を分解し、ケトン体を生成してエネルギーを供給します。これがケトーシスという状態です。
普通の食事をすると糖質が体内に入ってくるのでケトン体のレベルは低くなりますが、絶食や擬似ファスティングをおこなうとケトン体のレベルが上がります。このグラフでも示されているように、水だけを飲んだグループやFMDを食べたグループはケトン体のレベルが上がり、脂肪の分解が示唆されているという報告(※1)があります。
──つまり、ファスティング中にFMDを摂っても、擬似的にファスティングと同じような体の状態になるのですね。
仁神さん:そのとおりです。FMDを摂ることで、食事をしているにも関わらず、脂肪を分解してケトン体を生成します。これにより、擬似的なファスティング状態を再現できるのです。
小宮さん:そして「食べるファスティング」は、ファスティングを保ちながら、そのデメリットを改善するというコンセプトで作られました。
16時間ファスティングという16時間食べずに8時間は食事をしてよいというファスティングを耳にしたことがある方も多いと思いますが、この間にFMDを食べるのがおすすめで、空腹を和らげ、過食を防いでくれるんですよ。
──途中お腹が空いてつい挫折してしまいそうですが、食べられるものがあるというのはファスティングへのハードルを下げてくれそうですね。
小宮さん:このFMDの考え方を取り入れたのが、「カラダにおいしいファスティング」です。このバーにはイヌリンという植物性の食物繊維が豊富に含まれており、腸の健康もサポートしてくれます。ファスティング中に水だけというのでは、腸に栄養素が入ってこないため、腸の健康を保てるか少し心配ですよね。
──バーの特徴をもう少し詳しく教えてください。
小宮さん:バーはカカオとハニー&アーモンドの2種類があります。カカオはリッチな味わいで、デーツピューレが隠し味として使用され、コクと甘みがあります。ハニー&アーモンドはアーモンドと蜂蜜の優しい風味が特徴です。どちらも砂糖を使用せず、自然の甘さを引き出しています。また、グルテンフリーで、小麦粉を一切使っていません。食物繊維も豊富で、健康意識の高い方にぴったりの商品です。
このバーはファスティング中に重要な栄養素をしっかりと含んでいて、とくに脂質はアーモンドやナッツからの植物性のものが含まれており、ファスティング中でも適度なエネルギーを摂取でき、空腹感を和らげることができます。さらに、おいしさにもこだわっており、ファスティング中でも楽しんで食べることができます。
──実際にファスティング経験のある人というのは多いのでしょうか?
小宮さん:実際にファスティングをおこなった経験がある人はわずか8%です。
ファスティングに対する課題は大きく3つあり、生活への影響、時間的な制約、そして食べられない辛さがあり、多くの人がファスティングは知っているものの、実行するのは難しいと感じています。
たとえば、知識が不足していると体調を崩す恐れがある、計画的に行わないと生活に支障が出る、家族と一緒にいると誘惑に負けてしまうなどといった心配は大きいですね。
──そういった部分の心配もバーがサポートしてくれるのですね!
小宮さん:その通りです。ファスティングへの期待を保ちながら、デメリットを解消し、日常生活に取り入れやすいように設計されています。これにより、多くの人が無理なくファスティングを実践できるようになることを目指しています。
無理なくファスティングを生活に取り入れよう!
──ファスティングにもさまざまな種類があるようですが、ほかにはどのようなものがありますか?
小宮さん:たとえば「ウォーターオンリーファスティング」は、水だけを摂取する断食です。また、医師の指導のもとでおこなう本格的なファスティングもありますが、これらはなかなか実行しづらいかもしれません。
一方で、「プチ断食」と呼ばれる時間を区切っておこなうファスティングもあります。たとえば、1日のうちで12時間から16時間食べない時間を設ける方法や、1日500キロカロリーしか摂取しない日を設ける方法などがあります。
──どのようなタイミングでファスティングをするのがおすすめですか?
小宮さん:そうですね。忙しいと逆に空腹感を感じづらくなるからと、仕事の繁忙期にファスティングを取り入れる人もいます。仕事に集中して食事を忘れることがある人にとっては、ファスティングがしやすいタイミングかもしれません。あとは自宅では手元に食べ物があったり家族がいるため誘惑に負けてしまうという方もいらっしゃいますね。
──バーを使ったファスティングをおこなう上で、何か注意点はありますか?
小宮さん:ファスティング中に飲む飲み物も重要で、砂糖が入っていない飲み物がおすすめです。水はもちろん、無糖のブラックコーヒーや無糖の紅茶は飲んでいただいて大丈夫ですよ。
また、野菜ジュースにも注意が必要です。多くの野菜ジュースにはリンゴなどの果糖が含まれております。
──バーを使ったファスティングの方法でおすすめはありますか?
小宮さん:私たちサンスターでは、「朝ファスティング」と「夜ファスティング」という16時間ファスティングのスタイルを提案しています。たとえば、朝食をバーに置き換える方法や、夜ご飯をバーに置き換える方法です。朝食を置き換えるだけなら、比較的取り組みやすいとお客様から好評なんですよ。
──1日1食の置き換えだけでよいのですか?
小宮さん:はい、特別な準備食や回復食は必要なく、1日1食をファスティングバーに置き換え、残りの8時間でほかの2食は通常の食事をとって大丈夫です。お酒やおやつも一日の食事摂取基準の範囲内であれば問題ありません。
──朝食にはあまりこだわりがないので取り入れやすそうです!実践した人の声など何か届いていますか?
小宮さん:おもしろいことに、バーを使ってファスティングを実践している方は、普段の生活習慣も改善されたという方が多いんです。健康によいことをしているという意識から、普段の食事にも気を使うようになり、ベジファーストを実践したり、間食を辞める方が増えています。食習慣の変更からより健康への意識が高まるようです。
──なんだかちょっと気持ちがわかる気がします。バーを使ったファスティングのメリットはどんな点でしょうか?
小宮さん:食べながらファスティングを実践できる点です。空腹感やストレスを軽減し、無理なく続けられます。また、ファスティング中でも必要な栄養を摂取できるので、健康を維持しながら行える点が大きなメリットです。
従来のファスティングは回復食や準備食も必要だったりと事前の準備が大変なのですが、このファスティングの場合はすぐに始められる点が特徴です。
「味もおいしいし食感もよい」「1週間続けるのが容易だった」と好評です。
──社内で行われたファスティングのお話もお聞きしたいです。
西銘さん:健康診断前の健康意識が高まるタイミングを狙い、4週間のファスティングチャレンジ(※2)を行いました。その結果、体重が減ったり、食習慣が整ったという声が多く聞かれました。また、16時間のファスティングを実践することで、食事の時間をうまく利用しながらストレスなく続けられる点が好評です。とくに、朝食や夜食に取り入れることで、体重の減少やベルトの穴が一つ小さくなるなどの体型の変化が見られました。
※2 2024年4~5月、20~60代男女、n=65名(サンスター調べ)
──健康診断前!その時期になるとどうしても気になりますもんね。タイミングとして、おすすめの時期はありますか?
西銘さん:今回社内でおこなったように、健康診断やライフイベントの前などの節目がやはりよいですね。あとは夏の薄着の時期や、写真を撮る予定がある時など、目的を持つことで取り組みやすくなります。
また、春や秋のような季節が穏やかな時期もおすすめです。寒い冬や暑い夏よりも、心穏やかに取り組めるのではないでしょうか。
──ファスティング始めてから変化を感じられるまでにはどのくらいの期間が必要ですか?
西銘さん:社内モニターの際は2週間目ぐらいから変化を感じる方が多く、ごはんをおいしく感じられるなどの意見も多かったです。
──ファスティングをお勧めしたい方はどんな方ですか?
西銘さん:普段の食生活で気になる点がある方や、節目のタイミングで気になることがある方などです。
──最後に、ファスティングを始める方へのアドバイスをお願いします。
西銘さん:食べるファスティングは短期間で劇的な効果を求めるものではなく、継続することで身体や心の調子が整うことを目指します。最初は1日や2日から始め、無理なく続けることが大切です。16時間のファスティングでも十分に体調改善や体重減少の効果が期待できるので、ぜひ試してみてほしいです。
Wellulu編集後記
これまで食べてはいけない、断食といったようなイメージばかりで、どこかハードル高く感じていたファスティングですが、まさか食べてもいい「食べるファスティング」の提案があるとは驚きでした。普段の生活を送りながら、ファスティングを取り入れられ、これまで億劫に感じていた部分を解消した新しいファスティングで、一度試してみたいと思いました。
入社後のキャリア:化粧品・健康食品・医薬品・オーラルケア商品のダイレクトビジネスに従事。
主な仕事:「ANDFASTINGカラダにおいしいファスティング。」に関するプロモーション企画・販売管理