ナガセヴィータ株式会社が開発した水溶性食物繊維「イソマルトデキストリン」は、独自の酵素技術を用いて製造される革新的な栄養素。今回は、この注目すべき成分について、開発の背景やその効果、日常生活での摂取方法について、ナガセヴィータの古田さんに詳しく伺った。長年の研究と試行錯誤を経て誕生したイソマルトデキストリンが、私たちの健康にどのように寄与するのかを掘り下げる。
古田 貢大さん
ナガセヴィータ株式会社 ファイバリクサ プロダクトマネージャー
本記事のリリース情報
ウェルビーイングメディア「Wellulu」にイソマルトデキストリンに関する記事が掲載されました
イソマルトデキストリンとは?食物繊維は水溶性と不溶性にわかれる
独自の酵素技術を用いて作られた水溶性食物繊維
── 今回は「イソマルトデキストリン」について、詳しくお伺いしたいと思います。まず、イソマルトデキストリンとは何か教えていただけますか?
古田さん:イソマルトデキストリンは、ナガセヴィータが開発した水溶性食物繊維で、「ファイバリクサ🄬」という製品名で販売しています。デンプンを原料として独自の酵素技術を利用して製造しています。
── 開発された食物繊維なのですね。独自の酵素技術とのことですが、もう少し詳しく教えていただけますか?
古田さん:デンプンはブドウ糖が多数結合したものなのですが、酵素を作用させることで、ブドウ糖の結合を切ったり繋ぎ変えたりし、新しい素材を作る技術です。
酵素は温度やpHなどの環境条件によって活性が変わるため、適切な条件を見つけるのに多くの試行錯誤が必要です。また、酵素にも多様な種類があるため、それぞれの特性を理解して適切に組み合わせなければなりません。ナガセヴィータの技術は非常に高度で、デンプンの結合を自在に操作できるのが強みです。この技術によって、従来の製造方法では作ることができない、新しい素材を生み出しています。
── すごい技術ですね!イソマルトデキストリンのような酵素の力で作られた食物繊維製品は、他社でもあるのでしょうか?
古田さん:イソマルトデキストリンに関してはナガセヴィータ独自の技術で作られたもので、他社には同じものはありません。ナガセヴィータ独自の水溶性食物繊維として提供しています。
── イソマルトデキストリンはどのように開発されたのですか?
古田さん:研究がはじまったのは2003年ごろです。まずは多くの菌から酵素を取り出し、酵素の作用温度や活性度など、細かい条件を見極めながら、適切な酵素を見つける作業に取り組みました。
ただ、酵素が見つかるだけでは不十分で、工場での大量生産が可能かどうかも検証が必要です。反応条件をビーカーレベルで最適化しても、実際の工業規模で同じようにうまくいくとは限りません。イソマルトデキストリンの場合も、最初に見つけた酵素でうまくいかないことが多々ありました。これらの課題を1つ1つクリアしながら、最終的に市場に出せる製品として完成したのが2015年です。開発期間は約12年にわたり、多くの試行錯誤と改良を経て製品化に至っています。
── 数々の研究と実験を重ねながら、長い年月をかけて作られた製品なんですね。
水溶性と不溶性をバランスよく摂取することが大切
── 水溶性食物繊維とは、どのようなものなのでしょうか?
古田さん:水溶性食物繊維は、生活習慣病を予防する栄養素として広く認知されています。
水溶性食物繊維は、腸内細菌のエサになるなどの効果があります。一方、野菜などから摂れる不溶性食物繊維は、便のかさ増しやまとめる作用があるため、水溶性と不溶性をバランスよく摂ることで、腸内の整腸効果が高まります。
── 食物繊維を摂ったほうがいいとはよく聞きますが、水溶性と不溶性については意識したことがありませんでした。バランスが大事なんですね。
古田さん:そうですね。さらに水溶性食物繊維には、粘度が高いものと低いものがあり、粘度が高いものにはこんにゃくのマンナンやペクチンなどがあります。一方、イソマルトデキストリンは粘度が低い水溶性食物繊維に分類され、難消化性デキストリンやポリデキストロースなどと同じカテゴリに入ります。
── 水溶性食物繊維の中でも、イソマルトデキストリンはどのような特徴があるのでしょうか?
古田さん:イソマルトデキストリンは、酵素反応を利用して製造しています。水溶液は無色澄明で、雑味がなく、甘さもほとんどありません。
ほかの水溶性食物繊維は、酸や熱を使う方法で生産されていますが、そういった方法によっては色や味に影響が出ることがあります。
── 色、匂い、甘さがないという特徴も、ナガセヴィータさん独自の酵素技術によるものなんですよね。
古田さん:水に溶けやすいことに加え、素材の色や味、においに与える影響が少ないため、食品にも無理なく配合できます。この特徴から、食物繊維不足を補うことを目的としたさまざまな飲料や食品に活用していただいています。
腸内環境を整えて美肌効果まで!イソマルトデキストリンの効果
── イソマルトデキストリンを摂取することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
古田さん:弊社の研究でも、イソマルトデキストリンのいろいろなはたらきが明らかになりました。そのうちのいくつかをご紹介します。
まず、イソマルトデキストリンは大腸の腸内細菌のエサになり、整腸作用を持つことがわかっています。便秘気味の健常者にイソマルトデキストリンを含む飲料を2週間摂取させ、その効果を確認しました。弊社の研究では、摂取しなかったグループに比べて、摂取したグループは1週間で排便日数と排便量が増加しました。
メカニズムはあくまでも推測ですが、イソマルトデキストリンが腸内細菌に代謝される際に生成される短鎖脂肪酸が腸を刺激し、腸の蠕動運動を促進するためと考えられます。
── 便秘で悩んでいる人にはとても嬉しい効果ですね。
古田さん:また、イソマルトデキストリンには、血糖上昇抑制作用もあることがわかっています。
血糖値が上がりやすい健常者を対象に、グルコース50gを摂取させるテストをおこないました。イソマルトデキストリンを2.5g摂取させたグループと摂取しなかったグループを比較した結果、摂取したグループは血糖値の上昇が穏やかになっていました。
これは、イソマルトデキストリンが食事と一緒に摂取されることで、腸管での糖の吸収が穏やかになるためと考えられています。
── 血糖値の上昇を抑えてくれるんですか。食事と一緒にぜひ積極的に摂取したいです。
古田さん:さらに、脂肪を含む食品と一緒に摂取すると、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制することもわかっています。
健常な成人51人を対象にした研究では、イソマルトデキストリンを5g摂取したグループは、中性脂肪の上昇が穏やかになっていました。イソマルトデキストリンが胆汁酸ミセルの崩壊を抑えることで脂肪の吸収を抑え、それによって血中の中性脂肪の上昇が緩やかになると考えられています。
── イソマルトデキストリンには、優れた効果がたくさんあるんですね。
古田さん:ほかにも、腸内環境の改善作用、皮膚性状改善作用、満腹感持続作用などがあります。
今回ご紹介した作用は、イソマルトデキストリンが持つ作用の一部です。イソマルトデキストリンの作用は、機能性表示食品の機能性関与成分としても注目されています。
不足しがちな食物繊維!第六の栄養素をどう摂取するのがいい?
── イソマルトデキストリンは、生活者が意識して摂取できるものなのでしょうか?
古田さん:はい、イソマルトデキストリンは多くの機能性表示食品に含まれており、さまざまな食品や飲料に使用されています。お茶や炭酸飲料、グラノーラや低糖質の焼き菓子など、一般的なスーパーやコンビニでも購入できる製品にも含まれています。
また、日本人の食事摂取基準でも1日に必要な食物繊維量が定められていますが、日本人の多くは食物繊維が不足しがちです。とくに水溶性食物繊維は日常の食事では摂取が難しいため、意識して補うことが大切です。
── 私たちが普段飲んでいる飲み物にも、イソマルトデキストリンが含まれている可能性が高いということですね。
古田さん:そうですね。普段何気なく飲んでいる機能性表示食品や食物繊維強化食品にもイソマルトデキストリンが含まれていることが多いです。
食物繊維は多くの方が不足している栄養素ですが、とくに水溶性食物繊維は野菜などにも含まれる量が少ないため、自ら摂ろうと意識しなければ、なかなか摂取することができません。無理なく摂取するためにも、普段飲む飲料として水溶性食物繊維が含まれているものを選ぶことは、非常におすすめです。
──具体的には、どのような飲料に含まれているのでしょうか?
古田さん:「ファイバー◯◯」といったファイバーが入っていることが表示されている飲料には、水溶性食物繊維が含まれていることが多いです。飲料に入れるという時点で水溶性食物繊維であるはずなので、わかりやすいかと思います。
気づいていないだけで、日ごろ皆さんが手にとっている商品でも、イソマルトデキストリンが含まれているものがたくさんあります。ぜひ、商品の原材料表示を確認していただき、意外と身近な商品からイソマルトデキストリンを摂取できることを実感してもらえると嬉しいです。
Wellulu編集後期:
イソマルトデキストリンの取材を通して、私たちの生活に欠かせない水溶性食物繊維の重要性とその摂取方法について深く理解することができました。ナガセヴィータの先進的な酵素技術により、色や味に影響を与えずに摂取できるイソマルトデキストリンは、多くの食品や飲料に含まれており、日常生活の中で手軽に取り入れることが可能です。これからも健康的な生活を目指し、意識的に食物繊維を摂取していきたいと感じました。