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【佐賀県】佐賀らしいやさしさを広める「さがすたいる」に、フィンランド使節団。新たに始まる「肥前吉田焼」プロジェクト

約80万人の県民が暮らしている佐賀県。年齢、性別、国籍、障がいの有無などに関わらず、一人ひとりが互いを思いやり、支え合う、やさしさあふれるまちを目指す「さがすたいる」プロジェクトが行われています。

また、世界幸福度ランキングで長年上位に入る北欧の国・フィンランドとの交流が深く、子育て支援やサステナブルな町づくりなど、フィンランドの政策を参考にした新しい取り組みにも力を入れています。

今回は「さがすたいる」のコンセプトや活動、またフィンランドに倣った佐賀県のさまざまな施策について伺いました。

本記事のリリース情報

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「さがすたいる」が目指すやさしさがあふれるまちづくり

──「さがすたいる」のコンセプトについて教えてください。

山田さん:「さがすたいる」は、年齢、性別、国籍、障害の有無などに関わらず、みんなが自然と支え合い心地よく過ごせる、佐賀らしいやさしさのカタチ「さがすたいる」を広めることをコンセプトに、様々な方の想いを知ったり、交流する機会づくりを通じて相互理解を進めようと、情報発信や交流イベント、出前研修などをおこなっています。このコンセプトは、物理的な設備(ハード面)だけでなく、人によるサポート(ハート面)にも焦点を当てたものになっています。

佐賀県以前から進めていた設備面のバリアフリーやユニバーサルデザインの取り組みだけではなくみんなが支え合う意識の面にもアプローチしていこうと、その取組を発展させるような形で「さがすたいる」が始まりました。

民一人ひとりのニーズを理解するために、障がいのあるや子育て中の、介護に携わる方などから直接意見を聞いた際に、子ども連れの方からは「キッズスペースがあると嬉しい」との声や、車いすの方からは、「段差がなくフラットな店内だと嬉しい」等のニーズとともに、多様な当事者の共通した想いとして、「ウェルカムに迎えてくれる雰囲気」や、「困ったときに声をかけやすい」ことが何よりも嬉しいという想いがあることがわかりました。

そのため、単に物理的なバリアフリーを進めるだけでなく、みんながお互いに気軽に声をかけ合支え合う社会の構築を目指して進めています。しかし、実際に当事者に接する機会がないと、街なかで困っている方を見かけても声をかけていいのかが分からなかったり、逆に失礼になるといけないと遠慮してしまうこともあります。そのために「さがすたいる」は、県民一人ひとりが、さまざまな立場の交流し、相互理解を深めることを大切にしています。子どもたちや地域の々が触れ合うきっかけを作ることで、社会全体にやさしさが広がっていくと考えています。

──さがすたいるプロジェクトを立ち上げた当初のアイデアやその後の取り組みについて教えてください。

山田さん:もともと、このプロジェクトの根底にあるのは、一人ひとりが自分らしく輝くことができる社会を作ることです。そのために、さまざまな背景を持つ々が互いに支え合い、理解し合える環境を整えていくことが大切だと考えています。

当初、Webサイトを中心にスタートした「さがすたいる」プロジェクトですが今では情報発信に留まらず、様々な当事者と直接関わることでその想いを知る研修やイベント開催して、実際に人々が参加し、体験できる機会を提供することで、より多くの様々な形で「さがすたいる」プロジェクトに関わっていただいています。

また、教育の場においても、多様な当事者から直接話を聞く機会を提供することで、子どもたちがお互いの違いを認め合い自然と支え合う大切さを理解することを目指しています。

情報発信

──「さがすたいる」を広めるために行っている活動として、まず情報発信について、教えてください。

山田さん:情報発信に関しては、私たちが運営するWebサイト「さがすたいるウェブサイト」を通じておこなっています。

特に、日常のお出かけ先となる店舗や施設について、現在1,200件ほどのお店(さがすたいる倶楽部)を紹介しています。

お出かけする際には、インターネット等で事前にお店のことを調べていく方もいらっしゃるかと思いますが、施設の概要や料理等については掲載されていても、出入り口の様子やトイレの情報などはなかなか見つけることができません。さがすたいるウェブサイトでは、写真を多く掲載し、例えば段差がある場合は、1段なのか2段なのかなどを分かりやすく掲載しています。お店の様々な情報を紹介し、判断材料を多く提供することで、だれもが安心して出かけることを後押ししています。また、お店の方ができるサポートなどについてお店の方にお聞きすると、意外と「言ってもらえればできますよ」と言われることが多くあり、そうしたサポート面も紹介していることが特徴です。

「さがすたいる倶楽部」は、設備がバリアフリーであることだけを求めているわけではなく、“そのお店がどなたも心から歓迎してくれるかどうか”を大切にしてい、この思いに共感してくれるお店を紹介しています。お店を訪れる人々に安心感を提供できるよう、お店の顔である従業員の方々によるサポートが見えるような情報発信を意識しています。

加えて“当事者目線の情報”も大切にしており、障がいを持つ方々、子育て中の方々、福祉を学ぶ学生など、多様なに「さがすたいるリポーター」として、実際にお店を訪問し、そのお店の良かった点を発信していただく活動も行っています。

こうした取組を通じて、様々な方がまちに出かけ、自然にまざりあう中で、お互いの想いを知る環境づくりを行っています。

出前研修

──なるほど。設備がどうかだけではなく、心から安心して行けるお店を教えてくれるのですね!では次に、出前研修についても教えてください。

山田さん:出前研修には、学校向け・店舗向けの二つがあり、「さがすたいる」の理念やみんなが心地よく過ごすためにはどんなことが必要かを知り・考える機会となっています。直接理念を伝えることで、理解や共感を深めてもらうことを目的としています。現在は年間で学校へは約50回、店舗へは約5店舗のペースで出前研修をおこなっています。

初期の頃は、学校向けの出前研修も県職員が座学でお話しすることが多かったのですが、現在は職員に限らず、さまざまな経験を持つ当事者たちに話をしてもらったり、当事者体験も行っています。実際に当事者からの話では、子どもたちの反応がまったく異なり、より真剣に、自分事として内容を受け止めてくれるようになるなど、聴衆の関心や理解が格段に深まっていると感じています。単に障がいについて教えるだけでなく、障がいのある方々の実際の生活や想いを知ることで、自分事として考え、行動できる人づくりを目指しています

交流イベント

──では次に、交流イベントについて教えてください。

山田さん:交流イベントは、ただ楽しだけでなく、参加者同士が互いに理解を深め、「さがすたいる」の理念を共有する場となっています。コミュニティを強化し、すべての方々が楽しみながら互いに混ざり合えるような場を提供することを考えたイベントを企画しており、トークイベントや「さがすたいるフェス」などを開催しています。

このような交流を通して、地域社会の中で新しい関わり合いが生まれることで、広い意味でのコミュニティの結束を促進し、「さがすたいる」がコンセプトに掲げている、すべての人が支え合い、理解し合う社会を実現するための重要なステップとして捉えています。

──イベント企画の際のアプローチとして気をつけていることなどありますか?

山田さん:「さがすたいる」の理念や活動に対する興味や関心は人それぞれ異なります。

そのため、興味がある層には、より理解を深めるための深い知識や情報を提供する「レッツさがすたいるトーク」というイベントを年2回程度開催しています。このイベントでは、「さがすたいる」の想いに通じる先進的な取組を行っている方や、佐賀県内で活動している方等をゲストに招き、トークセッションと、参加者同士の交流会を行います。興味がある々同士での対話を図ることで、彼らが地域で活動を広げるための支援に繋がればと考えています。

一方、興味がない層、あるいはまだ「さがすたいる」についてあまり知らない層に対しては、まずは興味を持っていただくきっかけを作ることが重要なため、音楽やアート、遊びなど、さまざまな要素を通じて「さがすたいる」の理念を楽しみながら体験してもらうイベントを開催しています。

参加者からは、障害の有無に関係なく、どんな人でも参加できるというコンセプトや、その環境づくりの大切さを感じ、異なる背景を持つ方々と理解を深め合える点に賛同の声を多くいただいています。

興味がある層にはより深い理解を、まだ関心がない層には新たな発見と関心を提供する。異なるアプローチで工夫しながら、「さがすたいる」のコミュニティを広げていきたいと考えています。

──「さがすたいる」プロジェクトの将来展望についてお聞かせください。

山田さん:「さがすたいる」プロジェクトでは、理念に賛同してくださるさまざまな方々が協力し合いながら活動しています。

特に、子どもたちや地域の々との間で育まれる繋がりは、将来にわたって佐賀県のコミュニティを強化する基盤なると考えています。そのため、今後も地域の方々や学校、企業との継続的な関係性を大切にし、一過性のイベントや活動に留まらない取り組みを行っていきす。

また、2024年は「SAGA2024 国スポ・全障スポ」が開催されます。県外から多くの方々が来県されますので、これを機に「さがすたいる」の想いをより多くの々に伝え、全体でのやさしさのカタチを広げることを一つの目標に掲げています。佐賀県に来られる全ての方に心地よく過ごしていただけるよう、佐賀県らしいやさしさでお迎えし、その精神を県全体に根付かせていきす。

もちろん、このSAGA2024国スポ・全障スポは通過点として考えており、開催後に県民一人ひとりが自分らしく輝ける、支え合いの文化が佐賀県全体に広がることを願っています。自分の得意なことを活かし、互いに支え合うことで、地域社会全体がより生き生きとしてくることを期待しています。

幸福の国「フィンランド」に学び倣う!これからの政策に向けて

──佐賀県とフィンランドには深い繋がりがあるとのことですが、そのきっかけについて教えてください。

吉武さん:はい、始まりは2020オリンピックパラリンピックのキャンプ誘致の活動での、フィンランドの方々との出会いからでした。佐賀の自然豊かな環境やのコンパクトさ、フィンランドの環境に近く、選手たちにとって理想的だと感じていただき、フィンランドの選手団の受け入れが実現し、ホストタウンとしても登録されました。

─最初は選手団の受け入れだったのですね。そのあと、フィンランドとの関係はどのように発展していったのでしょうか?

吉武さん:フィンランドは世界幸福度ランキング7年連続1位の国で、その幸福の秘訣は「人間中心の政策」だと考えられているそうです。佐賀県も「人を大切に」という言葉を政策に掲げておりそこにフィンランドとの共通点を見出し、キャンプ誘致をきっかけに、さらなる交流・連携を深めることにしました。

フィンランドは、子育て支援、DX、教育、スタートアップ支援、そしてMaaS(Mobility as a Service)など、多くの先進的な政策を展開していて、「政策」という面で参考になる面が多いと感じています。

──フィンランドの子育て支援システムについて学んだことを基に、佐賀県で新しい取り組みを始めたとのことですが、その内容について詳しく教えてください。

吉武さん:フィンランドではネウボラという生まれてから就学前までの子どもとその親を、地域の保健師が継続的にサポートする体制が整っており、この制度に非常に感銘を受けました。佐賀県でも似たようなサポートを提供できないかと考え、佐賀県版”ネウボラ”ママ支援アプリ「mamari」の導入をおこないました。このアプリを通じて、母親同士でコミュニケーションを取ったり、必要なときには保健師へ簡単に連絡が取れるようになっています。また、その後新しい取り組みとして、子育てに関する様々なサポートのリーフレットや佐賀ならではのギフトなどをお届けする、「さが子育てエール便」という事業を開始しました。

──継続した子育てサポート、親にとっても子にとっても安心感が増しそうです。他にもフィンランドの政策や取り組みはありますか?

吉武さん:ホストタウン登録をきっかけに、フィンランド人講師を招いた文化理解講座やモルック体験などに取り組んでいる中で、フィンランドの義務教育校の9割が導入している教育プログラム「School on the Move」のモデル校のうちの1校に県内の学校を選んでいただきました。このプログラムは、学校内での身体活動を増やすことを目的としたものなのですが、健康だけでなく、学習成果にもポジティブな影響を与えていることが分かっています。事前学習、体を動かしながらのじゃんけん、ストレッチなどを体験し、これまでとは違うアプローチでの教育方法に、学校現場からは手ごたえを感じたという声がありました。

また、佐賀県では、フィンランドの進んだ政策や特色ある取り組みを学ぶため、知事をトップに据え、県内の次世代を担うリーダーたちで構成された使節団をフィンランドに派遣しました。政策の中でも特にデザイン、エネルギー、まちづくりなどの分野に着目しました。

様々なところを訪問しましたが、あらゆる分野の取り組みにおいて人間中心の政策を垣間見ることができました。また、例えば校舎の建替えをする高校で仮校舎を作るのではなく、大学のキャンパスの一部を使って学ばせることで、高校生が高度な研究等を行う大学で刺激を受け将来のイメージを作ることができるとともに仮校舎建築の費用も削減できるなど、柔軟な発想で施策を行っていることも印象的でした。

──実際に現地で取り組みを見てきたのですね! このように、フィンランドに学び、倣う取り組みを進めていくなかで、フィンランドとの関係を深める取り組みもされていますか?

江副さん:まず、毎年フィンランドフェアを開催しています。フィンランドの文化や佐賀県との関係などを紹介し、県民にフィンランドを身近に感じてもらう機会を提供することが目的です。

また、フィンランド大使館とも密接に連携しており、両地域の文化交流に努めています。大使館にはフィンランドフェアへの協力はもちろん、フィンランド大使館敷地内に期間限定でオープンしたメッツァ・パビリオンという期間限定施設では、国内の自治体では唯一イベントを開催させていただきました。

──佐賀県とフィンランドとの関係の将来について、どのような展望をお持ちですか?

吉武さん:距離的には遠く離れていますが、思想などに共感するところが多く、佐賀県はフィンランドから多くのことを学ばせてもらっています。特に政策連携に重点を置いて、双方の良い点を生かし合う関係を築いていきたいです。フィンランド使節団として実際にフィンランドを訪問するなど人とのつながりも作りながら、今後も積極的に交流を深めていきたいと思っています。

伝統を守りつつ、新たな価値を生み出す

──フィンランド訪問時には、フィスカルス村を訪れたとのことですが、どのような発見がありましたか?

江副さん:フィスカルス村は、かつてハサミなどのブランド「FISKARS」が発祥した場所なのですが、企業が移転したことで一時は人口が減少してしまい、廃村の危機に瀕していたそうです。しかし、そのあとアーティストたちが村に集まり始めたことで段々と活気を取り戻し、現在、村の住民の約3分の1がアーティストで、自然豊かな環境の中で創作活動に取り組んでいます。村ではサステナブルな取り組みもおこなわれており、水力発電を用いた村全体への電力供給も印象的でした。


──フィスカルス村から学んだことは佐賀県での町づくりにどう活かせそうですか?

江副さん:佐賀県でも同様の取り組みをおこなうことができないかと考えるようになりました。例えば、佐賀県内で「肥前吉田焼」が作られている地域では、若手が中心となり、イベントの開催や観光客の誘致を通じて、地元の焼き物産業の活性化に取り組んでいます。

このように、地域の特性を生かしたクリエイティブな町づくりを進め、フィスカルス村のように新たなコミュニティの形成を目指したいです。また、サステナブルな取り組みにも力を入れていきたいと思っています。

──「肥前吉田焼」の新たな取り組みについて教えてください。

吉武さん:肥前吉田焼の地区では、新しい取り組みが始まっています。地元の人々が中心となり、伝統を守りつつ、新しい価値を創造することで、地域に新しい風を吹き込もうとしています。

また、友達の家に遊びに行くようなカジュアルな感覚で、焼き物などの職人たちと関わることを目的とした「よしださんち。」というプロジェクトもはじまりました。地元の窯元だけでなく、さまざまなアーティストの参加が期待されています。

吉武さん:現在、佐賀県では伝統工芸の活性化と地域の再生を目的とし、コラボ案件をいくつか進めるなど、職人やアーティストの移住を促進し、脱炭素への取り組みも意識しながら、伝統産業を守りつつ新しい価値を創出することを目標に取り組みを進めています。

また、創作活動がおこなえるシェア工房や滞在型の施設を準備するなど受け入れ体制を強化していて、国内外のアーティストや職人佐賀県に集まってくるような環境にしていきたいと考えています。さまざまなバックグラウンドを持つクリエイターたちが集まることで、伝統工芸に新しい息吹を吹き込んでくれることを期待しています。

──脱炭素への取り組みを意識しているとのことですが、具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?

吉武さん:今、肥前吉田焼の窯元でされている取り組みとしては、二酸化炭素排出量を40%以上削減できる陶土を開発され、商品化まで至っています。エシカルを意識する消費者も今後ますます増えていくと考えており、伝統工芸においてもこういった取り組みは今後も必要でないかと思っています。

──なるほど。ありがとうございます。これらの取り組みを通した今後の展望や目標を教えてください。

江副さん:私たちの目標は、伝統工芸をただ守るのではなく、現代的な視点で再解釈し、新しい価値を創造していくことです。さまざまな分野のクリエイターが集まり、互いに刺激し合う環境を整えることで、伝統産業の新たな可能性を開拓したいと考えています。また、地域の若者や海外のアーティストとの交流を促進し、世界に向けて佐賀県の文化や技術を発信していくことも大きな目標のひとつです。

また、「環境負荷の少ないものづくり」を通じて、さまざまな分野のアーティストやクリエイターが集まるエリアを形成したいと思っています。陶磁器を含めた伝統産業の継続はもちろん、新しいアイデアや技術を取り入れ、より魅力的で持続可能な産業へと進化させていくこと、職人や後継者の育成にも力を入れ、伝統産業の存続だけでなく、地域全体の活性化も図っていきたいです。これにより、佐賀県の伝統産業を未来につなげていきたいと思っています。



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