(一財)日本総合研究所が実施している「全47都道府県幸福度ランキング」で上位にランクインする山形県。そんな山形県は「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」を第4次山形県総合発展計画の基本目標に掲げ、現場主義や対話重視の姿勢を大事にしているとのこと。今回、山形県みらい企画創造部の横澤さんに取材を実施して、山形県民の幸福度について、山形県独自の「県民幸福度調査」とは何か、若年層を巻き込んだ施策などについてお話を伺った。
横澤 遼さん
山形県みらい企画創造部企画調整課 主査
本記事のリリース情報
ウェルビーイングに特化したWebメディア「Welulu」よりインタビューを受け、山形県の取組みなどについてご紹介しております。
3世代同居率が高く、家族での社会参加も盛ん!客観的指標でみる山形県の特徴とは?
──「全47都道府県幸福度ランキング2022年版(一般財団法人日本総合研究所編)」で総合7位にランクインするなど、幸福度の高さについて山形県の特徴など教えてください。
横澤さん:山形県は、「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」という基本目標を掲げて施策を進めています。施策を検討する際は、県民の声を積極的に取り入れ、現場主義と対話重視の姿勢を大事にしています。
──ランキングを見ると、1人暮らし高齢者率の低さも1位になっていますね。
横澤さん:そうですね。山形県の暮らしにおける特徴のひとつなのですが、3世代同居の家庭が多いことも影響していると思います。家族単位での社会参加も盛んで、国政選挙の投票率の高さなどにもつながっているのかもしれません。
また、農業が主力産業であるため、食料自給率が高く、地元産の食べ物を口にする機会も多いです。自家消費用に野菜を栽培する方も多く、収穫した野菜を近所に配るなど地域コミュニティの結びつきも見られます。文化も盛んで、山形国際ドキュメンタリー映画祭などが開催される山形市は、「ユネスコ創造都市ネットワーク」に映画分野で加盟認定を受けています。
──山形国際ドキュメンタリー映画祭はどういったイベントなのでしょうか?
横澤さん:山形国際ドキュメンタリー映画祭は、2年に一度開催されるドキュメンタリー映画に特化したアジアでも数少ない映画祭の1つで、多くの映画ファンが集まります。昨年は坂本龍一さんの息子である空音央さんが監督を務めた作品がオープニングを飾りました。この映画祭は地域のボランティアの方々の協力などによって支えられていて、山形県の文化を国内外に広める大切な機会となっています。
──世界的なイベントを実施しているのですね。他にも幸福度に繋がる取り組みはありますか?
横澤さん:吉村知事の就任を機に、山形県では子育て支援にもさらに力を入れており、中でも待機児童の問題に対する取り組みを強化しています。そのため、子育てに関する環境整備が進んでおり、幸福度ランキングにおいて高い評価を受ける一因となっています。
山形県民の主観的幸福感
──山形県独自の「県民幸福度調査」について教えてください。
横澤さん:民間企業による調査では山形県は客観的な指標で高い評価を受けていますが、主観的な幸福感に関しては相対的に低い評価を受けることがあります。このため山形県では、県民の主観的な幸福度を調査することを目的に、令和4年度から「県民幸福度調査」を実施しています。令和4年度のアンケート結果を見ると、全体の約72%の方が幸福を感じていることがわかったのですが、さらに分析すると、幸福を感じている方は、山形県の自然や食文化、豊かな農産物など、地域に対して肯定的な感情をお持ちでした。山形県の自然環境や文化などに対する肯定感が幸福感に影響していると考えられます。
──年齢や性別によって幸福感に違いは見られるのでしょうか?
横澤さん:年齢層別に見ると、40代の幸福感の割合が最も低く、これは、仕事や家庭生活等で忙しいことなどが要因になっている可能性があると考えられます。60代以上では幸福感が高まる傾向にありました。
男女間での幸福感の差も見られていて、女性の方が幸福感が比較的高い傾向にあります。こうした要因について有識者の方などにも相談したところ、男性は自然の美しさなどを当たり前と捉えがちな中で、女性は季節の変化や四季折々の美しさなどにより敏感なので、そうした部分も幸福感に影響しているのではないかとのことでした。
若い世代と共に山形の魅力を発信!身近にある自然・文化を見つめ直す
──「やまがた魅力発信アンバサダー事業」にも力を入れて取り組んでいるとのことですが、具体的な内容について伺えますでしょうか?
横澤さん:「やまがた魅力発信アンバサダー事業」は、山形県の魅力を若者の視点から取材し、山形を届けるwebメディア「anone.」などで発信することにより、地域への理解を深め、若者と地域、また、若者同士のつながりを創出することを目的としています。この取り組みを通じて、山形県に対するイメージを向上させ、若者たちによる地域への誇りや愛着を育み、若い世代の県内への定着や回帰を促進することを目指しています。
──アンバサダーにはどういった方々がいるのでしょうか?
横澤さん:県内外の高校生や大学生などの若者がアンバサダーとして活動しています。これらの若者は活動期間中、月に一度の交流会に参加し、情報発信に役立つアドバイスを受けるとともに、3名程度のグループに分かれて、若者目線で山形の魅力を取材しています。
──一人で取材から発信までを担当するのではなく、グループで取材して山形の魅力を発信しているところが良いですね。学生たちの成長にもつながりそう!
横澤さん:グループによって発信しているコンセプトやカラーも違うので、そういった視点でも楽しく読むことができますよ。また、「山形幸せ探検隊」という、県民が日々の暮らしの中で感じる幸せや、山形の良さなどについて、テレビや動画などで発信する取組みなども実施しています。
──先ほどのお話にもあったように、季節の変化や地域の美しさなど「身近にある、些細な幸せ」にきちんと目を向ける大切さを伝えているプロジェクトですね。
横澤さん:はい。他にも、中学生を対象にした「やまがたLifeポジティブキャラバン」という取組みなども行っています。この事業は、山形で活躍する講師の講話などを通して、生徒たちが地域の魅力や可能性を改めて認識し、自分たちが住む地域に対する新たな見方を持つことを目指しています。生徒たちが自分たちの地域や人生に対してポジティブな姿勢を持つ助けになればと考えています。
──郷土愛にもつながりそうな取組みですね。
高校生によるアイデアコンテスト。最優秀賞は高齢者とのつながりをテーマにしたプロジェクト
──他にも、地域の良さなどを見つめ直すきっかけづくりなど取組みは実施しているのでしょうか?
横澤さん:高校生を対象にした「山形の未来創造高校生アイデアコンテスト」や「やまがた幸せシンポジウム」などの取組みも行っています。「アイデアコンテスト」は、山形の未来をより良いものにするためのアイデアを高校生たちが考えて発表するコンテストで、今年度最優秀賞に輝いたのは、農業高校の生徒たちによる、1人暮らしの高齢者に花を届けるプロジェクトでした。
──どういったアイデアなのでしょうか?
横澤さん:生徒が自分たちで育てた花を高齢者に届けたり、手入れのために訪問したりして、地域の高齢者との絆を深める活動を提案されていました。このプロジェクトは、アイデアだけで終わらせることなく、今後実際に取り組む予定と聞いています。生徒たちが積極的に地域社会に関わり、地域の高齢者とのつながりを強くしたいという想いが伝わってきて、私もすごく感動しました。
──すごく素敵なアイデアですね。大人の視点ではなく、高校生からそういったアイデアがでてくるとは!「やまがた幸せシンポジウム」についても教えてください。
横澤さん:様々な分野の専門家や地域活性化に貢献している方々をゲストスピーカーとしてお招きし、山形の良さや山形の暮らしの中での幸せなどについて話し合っていただきました。
シンポジウムには、山形県住みます芸人のソラシド本坊さんと水口さん、ANA SHONAI BLUE Ambassadorの坂本さん、車いすユーチューバーの渋谷さんなどに参加いただきました。山形県の現状を理解し、幸福度を高める方法について多角的な視点から考える機会を提供できたと感じています。
山、海、ラーメン文化…、山形県のウェルビーイングスポットを紹介
──最後に、山形県おすすめのウェルビーイングスポットを3つほど教えていただけますでしょうか。
横澤さん:今年度の「やまがた幸せエピソードコンテスト」の写真部門で入賞された作品の中からご紹介します。まず最初におすすめしたいのは、「月山(がっさん)」です。自然豊かな山形県の象徴的な山で、登山やハイキングにもおすすめです。美しい景色を楽しむことができ、自然とのつながりを感じられる場所です。
2つ目は「鶴岡市立加茂水族館」です。日本海に面した庄内地域に位置しており、特にクラゲが有名な水族館です。
最後は「由良海岸」です。庄内地域に位置し、日本海に面した美しい海岸です。地元住民や観光客に人気のスポットとなっています。
また、食でいうと、山形県では豊かなラーメン文化も魅力のひとつなのでおすすめです。訪れていただいた際には、ぜひ山形の味を楽しんでいただけたら嬉しいです。
Wellulu編集後記:
「人と自然がいきいきと調和し、真の豊かさと幸せを実感できる山形」を目指す山形県。3世代同居率や食料自給率の高さ、待機児童率の低さなどが幸福度ランキングでも上位の理由とのこと。また、子育て支援、幸福度調査、アンバサダー事業などの取組みを活発におこなっていくとのことで、今後どのような取組みを通してさらなる幸福度の向上を図っていくか、とても楽しみです。
県民幸福度に関するアンケート調査の実施・分析、県民の幸福実感度の向上に向けた様々な施策の立案、実施を担当。