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【熊本県】しあわせ部長・くまモンも奮闘中!県民に幸福を届けるための独自指標と住民を巻き込んだ取り組み

熊本県の「県民総幸福量の最大化」の取り組み。県民の幸福度を重視した政策を軸に、県民の生活にどのようなアプローチを行っているのか。コロナ禍や熊本地震の逆境のなかでも、県民の幸福度を高めるため、住民参加型の政策形成や地域の特色を活かした取り組みを行っている。熊本県はどのように県民の幸福度を重視した政策を展開しているのか?今回その背景や実際の取り組みについてお話を伺った。

新田 有加さん

熊本県企画振興部企画課 主任主事

企画課で県政の総合調整及び推進に関することや県民アンケート調査による県民総幸福量の調査に関する業務を担当。

本記事のリリース情報

welluluに本県の取組が紹介されました!

逆境の中にこそ夢がある!県民の幸福度を計測する独自指標と地域住民を巻き込んだ取り組み

──まず始めに、熊本県が掲げる「県民総幸福量の最大化」という考え方について詳しく教えてください。

新田さん:この「県民総幸福量」の考えは、現在の熊本県知事である蒲島知事が就任した2008年に提唱され、職員へ、従来の経済的価値を基準とした県政運営から県民の幸福度を最大化することを目指す、とこれまでの価値観からの転換を訴えたことがきっかけです。そして、同年12月に策定された「くまもとの夢4ヵ年戦略」という基本方針でも、県民が「生まれてよかった、住んでよかった、これからもずっと住み続けたい熊本」と思えるような社会の実現を目標に掲げています。また、この考え方には、蒲島知事がよく言葉にする「逆境の中にこそ夢がある」という思いも、関係しているのではないかと思います。

──すごく素敵な言葉ですね。コロナや熊本地震などの逆境に対して、県民の方々と協力しながら、実際にどのように立ち向かったのでしょうか?

新田さん:こういった状況下においても、県民の幸福度をどう高めていくかが重要な課題だと思っています。例えば、地震の復興では「創造的復興」を目標に、単に被災前の姿に戻す「復旧」だけではなく、より良い状態へと成長させるという考え方を取り入れています。そのためにも、従来型の方法を見直し、新たな試みを生み出す機会だったと捉えています。

──そういった背景もあり、幸福度指標を作成するようになったと思うのですが、そのきっかけや目的、過程を教えてください。

新田さん:熊本県では、「県民総幸福量」と呼ばれる独自の指標を元に、平成24年から県民の幸福度を測定する調査を継続して行っています。

まず、幸福という目に見えない概念を可視化することが課題であり、県民全体と県政の目標を共有するためにも具体的な指標が必要であったことが作成に至った経緯でした。県内にある熊本学園大学の研究者にもご協力をいただき、幸福度をどのように測定するかを学術的観点から検討、調査研究を経て作られました。各地域でのワークショップや調査等を行うことで、例えば、地域によって誇りや夢を重視するか、経済的な側面をより重視するかなどといった地域ごとの価値観を調査し、どのような質問項目を設定するかを検討を重ね、約4年の年月をかけ、この指標は完成しました。

──4年もかけて作成したとは驚きです。もう少し詳しく幸福度指標について教えてください。

新田さん:この指標は、主観的な満足度とウエイトによって、個々人の幸福度を数値化しているのがポイントです。つまり、客観的な指標と異なり、人の主観的な感覚に重きを置いたものであるということです。まず、「夢を持っている」、「誇りがある」、「経済的な安定」、「将来に不安がない」という4つの分類についてそれぞれをどの程度重視するかというウエイトと、分野ごとに3項目ずつ、合計12項目の満足度を尋ねます。その後、各項目の満足度とそのウエイトを掛け合わせて、総合的な幸福度を計算します。

──実際に、2023年度の調査結果では、どのようなことがわかりましたか?

新田さん:まず、これまでの調査と同じ傾向として、「経済的な安定」が最も重要視される傾向にあり、次いで「将来に不安がない」、「夢がある」、「誇り」という順序があることが見られます。また、経年の数値をみると、最高値と最低値の間に大きな変動はなく、比較的安定して推移しています。自然災害などの困難な状況に直面しても、こうして安定した数値で推移しているのは、復興や復旧の取り組みが進んでいることで、取り残されていると感じる方が少ないこと、また、半導体分野の新たな産業の進出など、将来への期待感も幸福度に影響を与えているのではないかと感じています。

年代や地域による幸福度の違いについてですが、例えば、高齢の方々は「誇り」に対する満足度が高く、若い世代はそれほどではない傾向があり、また、地域でみると、観光地が多い阿蘇地域などは「誇り」に関する満足度が高いなどの傾向があります。これは、地域の歴史や自然資源に対する誇りが反映されているのではないかと考えられます。

こういった幸福度指標の結果について県民の方々にも理解してもらい、幸福量の最大化のために何が必要か、同じ視点で政策を見てもらうことが重要だと考えています。そのため、県の担当者が市町村を訪問し、市町村の企画担当者や住民の方に対して幸福度指標に関するセミナーを開催し、理解を深めていただく取り組みを実施しました。このようなセミナーやシンポジウムで、住民の皆さんが自分たちの地域や生活について考え、意見を出し合い、これが政策形成に反映されることで、住民参加型の政策形成が実現しています。

──幸福度指標による調査結果を活用に関連する取り組みの一例として、「くまもと県南フードバレー構想」について教えていただけますでしょうか?

新田さん:くまもと県南フードバレー構想は、県南地域の豊富な農林水産物を活かし、食関連の研究開発機能や企業を集積させる「フードバレー」を形成することにより地域活性化を目指すことを目的とし、平成25年3月に策定されました。県民幸福量はあくまで指標であり、個々の政策をどう推進するかが大事になってきますが、平成29年度の幸福度調査において、県南地域における満足度が他の地域よりも低い傾向が見られた際、フードバレー構想の推進など、県南地域の満足度に関連する取り組みを推進していくことを政策評価として検討したという経緯があります。

具体的な取り組みの例として、県南地域の農産物を利用した、地元の高校生による新商品の開発などが行われています。例えば、昨年は、八代のちりめんじゃこと甘夏を使った新しい佃煮の開発などが行われ、これらの商品は地域の物産館などでも販売されています。このような活動は、若い世代が地元の食材に対する認識を深め、地域への誇りを育み、同時に地域の農林水産業を担う人材の育成にも繋がります。また、地元の夢や誇りにも繋がり、幸福度指標の向上にも寄与するのではないかと考えています。

──高校生の取り組みは興味深いですね。

幸せを届けるために。くまモン部長が運動会や絵本に登場!

──次に「熊本県しあわせ部」の活動や取り組みについても教えていただけますか?

新田さん:熊本県しあわせ部は、熊本県の幸せ実感を高めるための取り組みの一環として設立されました。平成24年に策定した「幸せ実感くまもと4ヵ年戦略」は、県民一人ひとりがしあわせを実感し、住み慣れた地域で夢を持ち、誇りに満ちた暮らしができる熊本を目指すものでした。これを踏まえ、県民の幸せ実感を高めるため、くまモンの生みの親であり、放送作家としても活動されている小山薫堂さんのアドバイスもいただきながら、県民一人ひとりが主役となる幸せづくりのための取り組みを行っています。

しあわせ部では、くまモンがしあわせ部長として、さまざまなイベントや企画を通じて、県民の幸せづくりをけん引・応援しています。そのひとつとして、「スマイルデザインコンテスト」というコンテストを開催しました。このコンテストは、県民の笑顔につながる幸せづくりのアイデアや企画を集め、優秀なものは実現に向けて県がバックアップするというものでした。また、入賞しなかったアイデアでしたが、廃校になってしまう小学校から応募があったアイデアについては、最後の運動会でくまモンがサプライズで登場し、子どもたちと綱引きを楽しむなど幸せづくりのために応援を行いました。

©2010 熊本県くまモン

さらに、県民への呼びかけとして、しあわせ部長であるくまモンが「幸せとは何か」を考えるストーリーの絵本の制作を行ったりと、温かみのある企画も実施しています。

©2010 熊本県くまモン

──絵本制作に運動会への参加など、どれもほっこりする企画ですね。くまモン大忙しですね(笑)。ちなみに、幸福度として、子育て、健康、ワークライフバランスという観点も重要になってくるかと思います。これらに関する取り組みについて教えていただけますか?

新田さん:熊本県では、LINEを利用した「聞きなっせAIくまもと」というサービスを通じて、子育て家庭のサポートを行っています。就学前の子どもを持つ家庭のさまざまな疑問や不安に対して、24時間365日、AIが即回答してくれます。位置情報を利用した子育てを応援するお店の検索や予防接種の情報、さらに多言語にも対応しているため、外国人方にも安心してご利用いただけます。

また、ワークライフバランスへの取り組みとして「よかボス」という取り組みも行っています。これは、県民一人ひとりの幸せな人生の実現のため、企業のトップが職員や従業員等のワークライフバランスを応援し、生活の充実をサポートすることを宣言する取り組みです。企業の経営者が「よかボス」として公に宣言をし、健康経営や従業員の幸福度向上に取り組むことを約束するもので、これにより県内企業の魅力向上や従業員の仕事と生活の充実を図っています。

くまモンのお仕事部屋、復興を実感できるスポット…、観光で訪れたいウェルビーイングスポット

──最後に、熊本県内のおすすめウェルビーイングスポットについて教えていただけますか?

新田さん:熊本の歴史や文化、自然の魅力を存分に感じていただけるウェルビーイングスポットとして、まず「くまモンスクエア」がおすすめです。くまモンがおもてなしをする体験型のスポットで、国内外からの観光客に人気です。「くまモン営業部長室」をはじめ、ここでしか買えないスクエア限定グッズの販売や熊本県産品を使用したカフェメニューなどを楽しんでいただけます。また、くまモン在室時には、くまモンのステージが見られることもあります。

©2010 熊本県くまモン

──くまモンとも触れ合える面白そうなスポットですね。すごく癒されそう!

新田さん:はい。くまモンのファンの方々がよく訪れていますよ。

次に、県を代表するシンボルの一つである熊本城もおすすめです。日本三名城のひとつとされ、加藤清正が築城しました。熊本地震で被災しましたが、復旧作業が行われ、その進捗を見ることで、熊本の復興を実感していただけるスポットです。市内を一望できる展望台もあり、夜のライトアップもおすすめです。春ごろには桜の名所としても親しまれています。

最後に、熊本県は源泉数や湧出量で全国5位を誇る温泉です。特に美肌に効果的な温泉が多数あります。県内の約8割に温泉が湧き、その泉質は「四大美人泉質」と呼ばれている「(弱)アルカリ性単純温泉」「硫黄泉」「硫酸塩泉」「炭酸水素塩泉」がほとんどです。「くまもっと湯美人」をテーマに、地域ごとの温泉を美肌効果に応じて紹介していますので、訪れる際は参考にしていただき、癒しと健康を同時に味わっていただけたらと思います。

wellulu編集後記:

熊本県の革新的な取り組みである「県民総幸福量の最大化」。政策の軸を経済的な面から県民ひとりひとりの幸福度へとシフトし、その中で、同時に経済効果も生み出そうとする取り組みが非常に興味深いと感じました。幸福度を可視化することで、県民の意識の向上に繋がり、全体的な幸福度の向上に繋がるとのこと。また、全国的にも認知度が高いくまモンを活用した県の活動も非常に魅力的でした。今後どのように熊本県民の幸福度が推移していくか、また、どのような変化が起きるのか期待しています。

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