レジル株式会社は、20代~50代の男女500人に対して脱炭素についての意識や行動を調べる「脱炭素に関する生活者調査」を実施。日本のみならず、世界中で注目されている「脱炭素」。本調査では、「脱炭素」に対する生活者の認識と、企業の取り組みに対する評価について収集した。結果、多くの人が「脱炭素」という言葉を知っているものの、自分ごととして捉えられていない実態が明らかに。生活者が関心を持ち、行動を起こすために必要なものは何か?企業や政府、メディアに今後求められる役割は何か?を紹介。また、調査結果をもとに、脱炭素社会の実現に向けたヒントをWellulu編集部プロデューサーの鎌田とディレクターの兵藤が考える。
鎌田 竜太郎さん
Wellulu編集部プロデューサー
兵藤 俊太さん
Wellulu編集部ディレクター
2020年にソウルドアウト入社後、同年6月にメディアエンジンに出向。大手ライフスタイルメディアにて、メディアの立ち上げ~マネタイズ支援に従事。2024年3月よりWelluluに参画。Welluluではコンテンツ制作全般を担当。
「脱炭素」の認知度は80%以上だが、60%が無関心
Q:「脱炭素」に対するイメージを教えてください。あなたの考えに最も近いものはどれですか?
- 「言葉を聞いたことがあるが、意味はよくわからない」が40.6%
- 「言葉の意味はよく理解しているが、自分とは関わりを感じない」が27.8%
Q:「脱炭素」に対しての関心はどの程度ですか?
- 「どちらともいえない」が32.0%
- 「あまり関心がない」が17.0%
- 「まったく関心がない」が14.6%
国が2050年までにカーボンニュートラルの実現を宣言していること、ニュースをはじめとした多くのメディアで情報が発信されているため、「脱炭素」という言葉を聞いたことがある人は8割超と多い傾向。
ただ、脱炭素への関心について「どちらともいえない」〜「まったく関心がない」の割合は6割超と多く、社会課題を「自分ごと化することの難しさ」が顕著に表れている。
確かに、若い世代の環境系インフルエンサーも増えている印象がありますし、想像しているよりも若年層は「脱炭素」に触れる機会が多いかもしれないですね。一方で、40〜50代が脱炭素への関心が高いのは、企業内での役職や業務内容が関係していそうな気がします。
「脱炭素」は政府や大企業が取り組むべきとの声
Q:「脱炭素」の実現に向けた行動や取り組みは、誰が行うべきだと思いますか?当てはまるものを選択してください。
- 「政府・官公庁」が64.8%
- 「大企業」が55.4%
- 「地方自治体」が46.0%
「脱炭素」は重要な社会課題として理解されているものの、国や企業が対応するべき課題という回答が圧倒的に多い傾向。生活者が脱炭素に向けた行動をしやすくなるための仕掛けや仕組みの必要性が伺える。
下記記事では、レジル株式会社の丹治保積社長が目指す「無意識の脱炭素」の構想や、宮田教授と丹治社長が考える脱炭素社会実現に向けた重要なポイントについて紹介。詳しく知りたい人はチェックしてみよう。
【丹治保積氏×堂上研】意識しなくても脱炭素に貢献できる社会を。レジル株式会社が掲げる「脱炭素の実現」に向けたウェルビーイングな想い
経営を通じて育んだ「社会課題に対して抗う」という情熱 堂上:まずは丹治さんの人となりの部分をお伺いしたいと思います。幼少の頃から熱中していたことはありますか? .....
【丹治保積氏×宮田教授】「無意識」と「意識」が脱炭素への歩みを加速する。新しいエネルギーの姿とは
実は密接につながっている「エネルギー」と「ウェルビーイング」 宮田:生活者は日常生活の中で、「エネルギー」と「ウェルビーイング」の関連性を意識することは少ないの.....
「何をすればいいかわからない」が50%。義務化が必須
Q:日々の暮らしの中で「脱炭素」実現に向けた行動や取り組みについて、どの程度意識していますか?
- 「どちらともいえない」が29.6%
- 「あまり意識して行動していない」が27.4%
- 「まったく意識して行動していない」が23.2%
Q:「どちらともいえない」「あまり・まったく意識して行動していない」と回答した方に伺います。その理由として当てはまるものを教えてください。
- 「自分が何をすれば良いかよくわからないから」が49.4%
- 「手軽に取り組めそうな内容がわからないから」が19.7%
多くの生活者が「脱炭素」という言葉を認識している一方で、「何をすればいいのかわからない」という回答が5割。太陽光発電やEVなど大規模な取り組みが積極的にメディアで報じられているため、やはり「脱炭素」=「個人で行動できるものではない」と捉えられやすいことが想定される。
Q:日々の暮らしの中で「脱炭素」実現に向けた行動や取り組みについて、どの程度意識していますか?(「言葉の意味をよく理解しているし、自分と関わりが深い」と回答した人に向けた質問)
- 「ある程度意識して行動している」が62.4%
- 「非常に意識して行動している」が8.2%
一方で、「脱炭素の意味を理解し、自分との関わりを深く感じている」層に注目すると、70.6%が「意識的に行動している」と回答。具体的な行動例として、以下のものが見受けられた。
【省エネ・節電】
- なるべく省エネで済むようにする
- 節電を心がけている
【リサイクル・廃棄物削減】
- プラスチック、段ボール、ペットボトルなどリサイクルを意識的におこなう
- 生ゴミや廃棄物を減らすようにしている
【移動手段の見直し】
- 自転車で移動する
- 電気自動車を積極的に取り入れる
- クリーンディーゼルを自家用車に選び、燃費を心がけた運転をする
- 通勤は公共交通機関を利用する
脱炭素な商品やサービス。一般層の購買意欲に影響せず
Q:脱炭素社会の実現に取り組む企業の具体的な特徴として、どのような要素があればその企業を支持したいと思いますか?重視する順に上位3つを教えてください。
- 「脱炭素社会実現につながる、確かな技術がある」が63.8%
- 「脱炭素社会実現に向けた、新しい取り組みやアクションを続けている」が49.2%
- 「脱炭素社会実現のために、脱炭素についての情報をわかりやすく発信している」が45.6%
企業が持つ「技術力」、それを元にした新たな挑戦や継続的に取り組む「姿勢」、その過程や成果のわかりやすい「情報発信」が生活者へ応援されやすい企業の特徴であることが明らかになった。
また、「脱炭素と聞いて思い浮かぶ企業やブランドがあれば教えてください」と質問したところ、技術力が高い大手の自動車メーカー、生活者との距離が近い小売企業が多かった。
理由を聞くと「電気自動車を多く生産しているから」「CMでよく見るから」と回答した人が多く、マーケティングコストをかけてでも脱炭素の情報を発信する重要性が垣間見れた。
一方で、自動車メーカーや小売業界以外でも、脱炭素に向けた事業を展開している企業は多数存在する。ただ、メディアに取り上げられる回数が多くないことや、BtoB企業で生活者との距離が遠いことから、生活者の目に触れる機会は少ないのかもしれない。
Q:企業やブランドを選ぶ際に、それらが脱炭素化に取り組んでいるかどうかは、ご自身の選択に影響しますか?
- 一般層:「はい」が9.8%
- 「言葉の意味をよく理解し、自分と関わりが深い」と回答した層:「はい」が24.7%
- 年収1200万以上の層:「はい」が22.2%
企業の脱炭素の取り組みと購買動機の関係性について、一般生活者に対しては影響度が低い。一方で、「脱炭素の意味をよく理解し、自分との関わりを深く感じている層」や「年収1200万円以上の層」の2割超には、購買への影響を与えている結果に。
現状、「脱炭素」に貢献できる商品やサービスは価格が高くなる傾向もあるが、「脱炭素の重要性を理解している層」「経済的に余裕がある層」においては「環境価値に投資する意識」が備わっている可能性が伺える。
まとめ|無意識のうちに脱炭素を実現する仕組みが重要
調査結果から、「脱炭素」という言葉の認知度は高いものの、多くの生活者にとってまだ「自分ごと化」されていない実態が明らかになった。それゆえに生活者の脱炭素に向けた行動も限定的で、多くが「何をすればいいのかわからない」と感じている現状も浮き彫りに。
また、編集部内で議論を重ねる中で2つのポイントが見えてきた。
1つ目は、規制や義務化などの仕掛けを推進しない限り、社会全体への浸透スピードは上がらないということ。もちろん、他にも有効な施策はあると思うが、ユーザーインタビューや、編集者の原体験を振り返ると、規制や義務化が重要な要素であることは間違いない。
2つ目は、生活者の意識を高めることが大切である一方で、「枠組みから変える」というアプローチが本質的な解決策になるということ。
例えば、現在プロジェクトを共に推進している「レジル株式会社」ではマンションに分散型電源(蓄電池や太陽光発電システムなど)を設置し、調達する電力も再生可能エネルギーにすることで居住者が意識することなく、普通に生活するだけで脱炭素につながる社会を目指している(無意識の脱炭素)。
下記記事では、レジル株式会社の丹治保積社長が目指す「無意識の脱炭素」の構想や、宮田教授と丹治社長が考えるエネルギーの未来について紹介。詳しく知りたい人はチェックしてみよう。
【丹治保積氏×堂上研】意識しなくても脱炭素に貢献できる社会を。レジル株式会社が掲げる「脱炭素の実現」に向けたウェルビーイングな想い
経営を通じて育んだ「社会課題に対して抗う」という情熱 堂上:まずは丹治さんの人となりの部分をお伺いしたいと思います。幼少の頃から熱中していたことはありますか? .....
【丹治保積氏×宮田教授】「無意識」と「意識」が脱炭素への歩みを加速する。新しいエネルギーの姿とは
実は密接につながっている「エネルギー」と「ウェルビーイング」 宮田:生活者は日常生活の中で、「エネルギー」と「ウェルビーイング」の関連性を意識することは少ないの.....
多くの生活者が「言葉は知っているけど行動できない」という現状を打破するためには、構造を変革して「脱炭素」を日常の一部とする。この考え方の転換こそが、持続可能な社会への第一歩となっていくと考えられる。
<調査概要>
調査手法:インターネット調査
対象者 :20~59歳の男女500名
対象地域:全国
調査時期:2024年8月26日~8月30日
調査委託先:楽天インサイト株式会社
<実施主体>
本調査は、脱炭素社会の実現を目指す「レジル株式会社」が実施しました。
レジル株式会社の詳細はこちら
※1 ウェルビーイング21因子
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美容専門学校を卒業後、都内有名サロンに就職。その後デザイン制作会社を経て2018年にメディアエンジン入社。メディア運営に携わり、2019年から大手美容メディア運営チームの責任者に。ソウルドアウトグループ全社MVP2度の受賞を経て、2023年にWelluluの運営に参画。Welluluでは編集プロデューサーを務める。