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カーボンニュートラルとは?脱炭素との違いや日本企業の取り組み、個人でできることをわかりやすく解説

この記事では、今注目を集めている「カーボンニュートラル」について、わかりやすく解説。カーボンニュートラルの基本的な概念から、脱炭素との違い、日本企業や政府の具体的な取り組みまでを紹介。さらに、世界各国の目標や、個人でできる身近な取り組み、カーボンニュートラル実現に向けた課題まで幅広くカバー。環境問題に関心のある人はもちろん、初めて聞く人でも理解しやすい内容になっているので、地球の未来のために、私たちにできることは何か、一緒に考えてみよう。

この記事の監修者

 

白井 さゆりさん

慶應義塾大学教授/アジア開発銀行研究所のサステナブル政策アドバイザー/アジア開発銀行のコンサルタント

2013年9月にADBI-ADB Climate Finance Dialogueを設立、気候ファイナンス市場拡大を目指して、アジアの12ヵ国程度の金融当局間で情報交換と理解促進を目的とした非公式会合を開催、20~30ヵ国程度の金融当局にキャパシティビルディング・セミナーも開催している。国際決済銀行やOECDともラウンドテーブルを共催。2020~2021年ロンドンのFederated HermesのEOSの上級アドバイザー。2011~2016年日本銀行政策委員会の審議委員。コロンビア大学・経済学博士。国内外メディアや国際会議で情報発信中。近著に『環境とビジネス~世界の環境経営のトレンドを知ろう~』(岩波新書、2024年7月)。詳細は、公式ホームページより。

目次

カーボンニュートラルとは?わかりやすく解説

カーボンニュートラルとはそもそもどういう意味なのか?また、カーボンニュートラルの取り組みが注目されている背景について見ていこう。

  • 実質的な温室効果ガス(CO2など)の排出量をゼロに
  • なぜカーボンニュートラルを実現する必要がある?

実質的な温室効果ガス(CO2など)の排出量をゼロに

カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(CO2など)の排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすること。これは、地球温暖化対策として国際的に重要視されている概念。

排出量をゼロにするために企業に求められるのは、原材料調達・製造(サプライヤー)などの“上流”から消費者の利用・廃棄(ユーザー)などの“下流”まで、どこで温室効果ガスの排出が多いのかを把握すること。把握した上で、排出量を削減するための最大限の努力をおこなう。

自社で削減できない部分に関しては、大気中に蓄積する温室効果ガスを回収・除去する技術である「ネガティブエミッション技術」の利用や、工場などから排出された温室効果ガスを大気中から回収して地中深くに貯留する「CCS」の活用が検討されるが、莫大なコストと土地が必要なためあまり現実的ではない。

また、企業間で温室効果ガスの排出削減量を売買する「カーボンクレジット」での取引も一案。

近年人気を集めているのは「ネイチャーベース」と呼ばれる取り組み。森林は温室効果ガスを吸収するはたらきがあるが、手入れをしなければ吸収力が弱まってしまう。森林を手入れしたり、植林をしたりすることで、大気から温室効果ガスを吸収する力を高めることを目指すネイチャーベースでは、マングローブを増やす活動や、土壌が肥沃(ひよく)になるためのサポートなどが挙げられる。

ただ、ネガティブエミッションの技術やネイチャーベースの取り組みに頼る前に、まずは自社の状況を把握し、温室効果ガス(CO2など)の排出量を削減するための方法を考えるのがポイント。

温室効果ガス排出量を算出して報告するための国際的な基準として、「GHGプロトコル」というものがあります。排出量は 3 つの区分(Scope1~ 3)に分けて計測されます。大企業を例に挙げると、Scope1は自社の工場で出るものや、自社の営業活動で出るもの、Scope2は買ってきた電気・電力などが挙げられます。Scope3は製品を使ったユーザーがどのくらいの量を排出するのかなどで、上流から下流までの全体の排出量が計算されます。自社で排出されたものだけでなく、サプライヤーやユーザーにまで目を向けて、排出量を把握することが求められます。
たとえば食品メーカーだと7割以上が上流の原材料の購入にかかる排出量が最も多く、自動車産業ですと下流のユーザーによる運転にかかる排出量が最も多くなっています。

なぜカーボンニュートラルを実現する必要がある?

カーボンニュートラルの取り組みは地球温暖化対策の一環として国際的にスタートした。120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げ(2021年1月20日時点)、経済的なメリットも踏まえて、環境問題に対する対策を進めている。

また、カーボンニュートラルの取り組みが注目された背景や要因には、以下のようなものがある。

➀気候変動の深刻化:
世界各地で異常気象や自然災害が増加し、気候変動の影響が顕在化してきた。

②科学的知見の蓄積:
国際機関「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」による研究で、人為的な温室効果ガス排出が気候変動の主要因であることが明らかになった。

③パリ協定の採択:
2015年のパリ協定で「世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目標が設定された。日本をはじめ世界の大半の国が、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを公約したため、これを実現する政策を遂行していく義務がうまれた。この目標達成にはカーボンニュートラルが不可欠とされる。

④技術の進歩:
再生可能エネルギーや電気自動車などの技術が進歩し、カーボンニュートラル実現の可能性が高まった。

⑤企業や投資家の意識変化:
気候変動リスクへの認識が高まり、企業の長期的な成長戦略としてカーボンニュートラルが重要視され、企業に情報開示が強く求められるようになった。

とくに、2015年のパリ協定が大きな転機になっている。

その前に制定された、温暖化に対する国際的な取り組みのための国際条約である「京都議定書」では、先進国だけが排出削減をすることとなっていたが、2015年のパリ協定により、先進国・途上国を含むすべての国が削減目標の対象となり、カーボンニュートラルが世界で取り組まなければならない課題として認識されるきっかけとなった。

欧州は気候変動の影響を日本以上に受けていることもあり、環境活動家として有名なグレタさんをはじめ、若者やミレニアム世代の環境意識が非常に高い印象です。とくに北欧を中心に、金融機関や投資家も、脱炭素に繋がるようなところに投資しようという動きが強いです。日本でも環境に気を遣っている人もいるのですが、世界の中ではまだまだ排出量が多い国ですので、環境問題に対して努力しているとは世界からみなされてない実情もあります。

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルと脱炭素は、どちらも地球温暖化対策として重要な概念だが、その意味や達成のアプローチに違いがある。

カーボンニュートラルは、温室効果ガス(CO2に加え、メタンやフロンなども含む)の排出量と吸収量のバランスを取り、実質的な排出量をゼロにする状態を指す。これは、排出量の削減と同時に、森林による吸収や技術的な除去(CCSやネガティブエミッション技術)などを組み合わせて達成する。つまり、ある程度の排出は認めつつ、それを相殺する取り組みをおこなうことで、全体としての排出量をゼロにする考え方。

一方、脱炭素は、温室効果ガスの排出そのものをゼロにすることを目指す、より徹底したアプローチ。これは、化石燃料の使用を完全に停止し、再生可能エネルギーへの100%転換や、産業プロセスの根本的な変革を通じて達成される。

カーボンニュートラルの課題

カーボンニュートラルの実現へ向けて、コスト面での課題などまだ多くの問題を抱えている。
ここでは、以下について見ていく。

・環境意識を高めるための教育が重要
・取り組みを始める際に手間やコストがかかる
・重要視されている情報開示に備える必要がある

環境意識を高めるための教育が重要

日本は2050年に温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量の実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」を宣言している。

この宣言の中心となるのは、今の子どもたち。小学生の頃から環境に対する知識をつけ、世界で何が起きているかを知る教育が非常に重要となる。

現時点で、温室効果ガスの開示などが必要になった際に企業はさまざまな書類を用いて計算をしているが、デジタル技術を効果的に駆使することで、どのくらい排出されたかは瞬時に算出することができる。

脱炭素社会を実現するためには、デジタルにも強く、2050年宣言の中心となる子どもたちが環境に関する知識をつけ、自分たちが貢献できることに気づくことが鍵となる。

取り組みを始める際に手間やコストがかかる

企業がなかなかカーボンニュートラルを進められない理由としては、コストの問題が挙げられる。

たとえば、機械を新しく買う際、投資コストに対して何年間の売上で回収できるかなどを計算すればよかったが、今後はその機械がどのくらいの温室効果ガスを排出するかを計算し、検討材料とする必要がある。そのため、長年使用していた機械が採用できなくなってしまうなど、今までの生産のやり方を大きく変えなければならないケースも発生する。

また、原材料についても、森林を大切にしているか、温室効果ガスを大量に排出していないかなども検討要素となってくるため、以前に比べて原材料が高くなる可能性も考えられる。

最初は面倒なことも多くコストもかかってしまうが、長期的に見るとやらないリスクのほうが大きいといえる。

重要視されている情報開示に備える必要がある

まだ日本では浸透していないが、EUではすでに温室効果ガスに関する情報開示を徹底する方向に進んでいる。すでにアジア諸国にもこの波が来ており、日本でも情報開示の必要性は徐々に高まっていくと考えられる。

情報の正確性を高めるためにも、自社の情報を開示するだけでなく、誤報や不正がないことを証明するために、第三者機関による保証も求められる。

2023年6月には、第三者機関の一つである「国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board、以下ISSB)」が、情報開示の基準を発表した。

とくに海外企業との取引がある会社は、早い段階で取引先から温室効果ガスに関する情報開示を求められる可能性が非常に高い。EU圏に輸出をしていたり、 EUに本社がある日本の子会社などは、もっと包括的で細かな開示を求められることも予想される。

カーボンニュートラルの実現に向けた世界の目標

カーボンニュートラルの達成に向けた世界の取り組みとして、アメリカ・EU・中国が掲げている目標は以下のとおり。

・日本:グリーン社会の実現へ最大注力
・アメリカ:過度なインフレ抑制・気候変動対策を進める「インフレ抑制法」
・EU:新たな成長戦略「欧州グリーンディール」の発表
・中国:2060年までにカーボンニュートラル達成を宣言

最近、にわかに注目をあつめているのが、アジアで石炭火力発電所を通常の運転期間より早く閉鎖するプロジェクトです。石炭火力発電所は他の化石燃料よりもCO2の排出がとても多いので、早期閉鎖すればその分だけ予定されている将来の排出量の削減になります。この部分を一定のルールに沿って「トランジションクレジット」として認定できれば、自社の排出削減をしたい企業などがそれを購入することが可能になり、同時にクレジットの売却資金を閉鎖にともなう資金に活用できます。シンガポールが米国のNGO等と昨年提唱し、実験が始まっています。

日本:グリーン社会の実現へ最大注力

日本政府は2020年10月に、2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を宣言している。

この目標達成に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化、水素技術の開発と普及、蓄電池技術の向上などが重点的に推進されている。

また、2021年4月には2030年度の温室効果ガス削減目標が2013年度比の46%削減に引き上げられ、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの導入拡大、産業部門での排出削減などが進められている。

日本の企業はCSR(企業の社会的責任)活動として、植林や海の掃除、環境保護の財団を作るなどの取り組みをおこなっているところも多いです。ただ、地球にやさしい環境経営を目指すには、地球をきれいにする取り組み以上に、自社やサプライヤーの温室効果ガスの排出状況を確認して、削減に向けてどのように方針や経営を見直すかが大切です。

アメリカ:過度なインフレ抑制・気候変動対策を進める「インフレ抑制法」

アメリカは、クリーンエネルギー技術への大規模投資・電力部門の脱炭素化・電気自動車の普及促進などの施策を推進している。パリ協定への復帰や国際的な気候変動対策でのリーダーシップの発揮も表明している。

具体的な取り組みには、2035年までに電力セクターのカーボンフリー化・連邦政府の車両の電動化・建物のエネルギー効率改善などが含まれる。さらに、特徴的な取り組みとしては、2022年に成立した物価の上昇を抑える「インフレ抑制法(IRA)」で、再生可能エネルギーの導入・電動車の普及・エネルギー効率の改善が強化され、効果が見られている。

また、ガスなどの化石燃料ではなく、再生エネルギーを使って生産された水素である「グリーン水素」も注目されており、政府が補助金や税控除などのサポートをし、さまざまな実験がおこなわれている。

政府が先導しなくとも、スタートアップ企業などが積極的にカーボンニュートラルに関する取り組みをおこなっているのも、アメリカの素晴らしい点だと感じます。実際に、少々コストがかかっても、環境経営をがんばっている企業が、利益を出している例も多く見られます。

EU:新たな成長戦略「欧州グリーンディール」の発表

EUは気候変動対策の先頭に立ち、2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール」を発表している。

この計画は、持続可能な経済成長を実現するための包括的な政策枠組みであり、温室効果ガスの削減と経済成長の両立を目指すもの。目標達成のため、再生可能エネルギーの利用拡大・エネルギー効率の改善・持続可能な交通システムの構築などの施策が推進されている。

また、EUは2030年までに1990年比で少なくとも55%の温室効果ガスを削減することを目指しており、この中間目標が法的拘束力を持つ「欧州気候法」によって裏付けられている。

課題ももちろんありますが、温室効果ガスの排出に関する情報開示を義務付けたり、どこまでがグリーン(エコ)か?という科学に基づいた閾値(しきいち)を設定するなど、カーボンニュートラルな世界の実現に向けて、最先端を走っているのがEU諸国です。気候変動の影響を日本以上に受けているため、若者を含め環境への意識が高い人が多いのもEU圏の特徴です。

中国:2060年までにカーボンニュートラル達成を宣言

中国は2020年9月の国連総会で、2060年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言している。世界最大のCO2排出国のため、国際社会に大きな影響を与えた。

この目標達成に向けて、再生可能エネルギーの大規模導入・電気自動車の普及促進・森林被覆率の向上などの施策を進めている。

2015年のパリ協定で、先進国も途上国も共通の目標として排出削減を目指すことになりました。しかし、途上国はまだ成長途上の段階にありますし、先進国も温室効果ガスを排出して豊かになった過去があるため、同じ扱いにするのは困難です。そのため、中国の場合は2060年、インドやインドネシアは2070年と、先進国に比べて、発展途上国の達成の目処は少々遅くなっています。

日本政府のカーボンニュートラル実現への取り組み

カーボンニュートラルの実現に向けて、日本政府が進めているいくつかの取り組みについて解説する。

・脱炭素事業への支援
・ゼロカーボンシティの推進
・脱炭素ライフスタイルへの転換

脱炭素事業への支援

日本政府は、企業や地方自治体による脱炭素事業を支援するため、再生可能エネルギー導入への補助金・省エネ技術開発への投資など、さまざまな施策を実施している。ほかにも、国内外のグリーンプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券「グリーンボンド」の発行促進などがある。

また、脱炭素技術の研究開発や実証実験への資金提供もおこなっている。とくに、省エネ技術革新やエネルギー効率向上を促進する「省エネルギー革新技術開発事業」を通じて、企業や研究機関に対する直接的な支援がおこなわれている。

ゼロカーボンシティの推進

ゼロカーボンシティとは、2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指す自治体のことを指す。

日本政府は、この取り組みを推進するため、自治体向けの情報提供や財政支援をおこなっている。具体的には、再生可能エネルギーの導入促進・建築物の省エネ化・環境に配慮した交通システムの構築などを支援している。

また、「脱炭素先行地域」の創設もおこなわれており、地方自治体が地域特性に応じた再エネ導入や脱炭素化を進めることが奨励されている。

脱炭素ライフスタイルへの転換

日本政府は、個人レベルでの脱炭素化を促進するためにも、脱炭素ライフスタイルへの転換を推進している。具体的には、省エネ製品の普及促進・食品ロスの削減・プラスチック使用量の削減などが含まれる。

さらに、「ゼロカーボンアクション30」という取り組みを通じ、日常生活で実践できる脱炭素行動の具体例を提示している。具体的な施策としては、環境配慮型製品の購入に対するポイント還元制度・エコドライブの推進・再生可能エネルギーの導入支援などがある。また、環境教育の充実や、脱炭素行動に関する情報発信もおこなっている。

カーボンニュートラルの実現に向けた日本企業の取り組み

カーボンニュートラルの実現に向けた日本企業の具体的な取り組みの一例をご紹介。

  • セブン&アイ・ホールディングス
  • 三井不動産
  • パナソニックグループ
  • トヨタ
  • ヤマト運輸

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスは「GREEN CHALLENGE 2050」という環境宣言を掲げている。2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している。店舗運営にともなうCO2排出量を2013年度比で2030年までに50%削減し、2050年までに実質ゼロにする計画。

【再生可能エネルギーの活用】
セブン&アイグループは、全国の9,000以上の店舗に太陽光発電パネルを設置し、再生可能エネルギーの利用を推進したことで、年間約7万トンのCO2排出量を削減した。また、オフサイトPPA(Power Purchase Agreement)を活用し、店舗から離れた場所で発電した再生可能エネルギーを店舗に供給している。

【省エネ技術の導入】
LED照明や高効率空調設備などの省エネ設備を積極的に導入し、店舗運営にともなうCO2排出量を削減している。また、店内の気圧をコントロールすることで空調効率を改善し、節電効果を高める「店内正圧化」にも取り組んでいる。

【水素エネルギーの活用】
国内初のコンビニ併設水素ステーションを展開し、水素で走る燃料電池小型トラックも導入している。これにより、総電力使用量とCO2排出量削減を目指している。

三井不動産

三井不動産は、2030年度までに温室効果ガス排出量を2019年度比で40%削減し、2050年度までにネットゼロを達成することを目指している。この目標達成のために、サプライチェーン全体での取り組みを推進し、とくにSCOPE3(サプライチェーン排出量)の削減に注力している。

【環境性能向上と再生可能エネルギーの活用】
新築および既存物件において、ZEB(Net Zero Energy Building)やZEH(Net Zero Energy House)水準の環境性能を実現することを目指している。また、物件共用部や自社利用部の電力をグリーン化するため、再生可能エネルギーの利用を拡大している。

【木造建築と新技術の推進】
三井不動産は、木材を活用した木造賃貸オフィスビルの建設を進めており、国内最大・最高層の木造賃貸オフィスビル計画が進行中。また、ペロブスカイト太陽電池の実証実験など、新技術創造に向けたオープンイノベーションも積極的に推進している。

【テナントや生活者への働きかけ】
入居企業や住宅購入者に対して、グリーン電力メニューを提供し、脱炭素化への取り組みをサポートする。

また、省エネ行動によるCO2削減量をポイント化する「くらしのサス活」などを通じて、生活者の意識変容と行動促進にも取り組んでいる。

パナソニックグループ

パナソニックは、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指す長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を策定。これには全世界のCO2総排出量の約1%にあたる3億トン以上の削減インパクトを創出することが含まれている。

【OWN IMPACT】
「CO2ゼロ工場」の拡大や「省エネ家電」の開発を通じて、原材料の調達から製造・配送・使用・廃棄に至るあらゆる工程でのCO2排出量削減を目指している。

【CONTRIBUTION IMPACT】
車載電池の性能向上やコスト削減により環境車の普及を促進し、街や家庭での化石燃料使用をヒートポンプ式給湯暖房機へ置き換えることで、CO2排出削減に取り組んでおり、2050年までに社会全体のCO2排出削減に1億トン以上貢献することを目指している。とくにモビリティ領域では、自動車の電化を通じてCO2削減を推進している。

トヨタ

トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、2050年までに地球環境への影響を最小限に抑えることを目指している。このチャレンジは、以下の6つの目標から構成されている。

【ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ】
自動車のライフサイクル全体でのCO2排出をゼロにすることを目指している。これには、製造から廃棄・リサイクルまでのすべての段階が含まれる。

【新車CO2ゼロチャレンジ】
2035年までに新車の走行時平均GHG排出量を2019年比で50%以上の削減を目指している。

【工場CO2ゼロチャレンジ】
2050年までに世界中の自社工場でCO2排出ゼロを達成、2030年までに再生可能エネルギーや水素の活用を通じて、工場のCO2排出量を大幅に削減することを目指している。

【水環境インパクト最小化チャレンジ】
各国・地域の事情に応じた水使用の最小化と排水の浄化・管理を進めている。

【循環型社会・システム構築チャレンジ】
廃棄物の適正処理やリサイクル技術をグローバルに展開し、2030年までに電池回収・再資源化システムを構築することを目指している。

【人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ】
自然保護活動や環境教育を通じて、自然と共生する社会の実現を目指している。

ヤマト運輸

ヤマト運輸は、カーボンニュートラルの実現に向けて多岐にわたる取り組みをおこなっている。

【電気自動車(EV)の導入】
ヤマト運輸は、2030年までに23,500台の電気自動車を導入を目指している。2022年から日野自動車の「日野デュトロZEV」500台、2023年から三菱ふそうトラック・バスの「eCanter」900台の導入を開始しており、本田技研工業が開発した交換式バッテリーを用いた軽商用EVの実証実験もおこなっている。

【再生可能エネルギーの活用】
2030年までに再生可能エネルギー由来電力の使用率を70%に引き上げることを目指し、太陽光発電設備を810基設置する予定。2023年には京都府の八幡営業所が全国初の全車両EV営業所として本格稼働を開始し、太陽光発電と蓄電池を活用したエネルギーマネジメントを実施している。

【省エネルギーの推進】
建屋の照明を順次LEDに切り替え、電力使用量の削減に取り組んでいる。加えて、CO2排出削減のため、輸送物の冷却に使うドライアイスの使用をゼロにする運用を目指し、小型モバイル冷凍機「D-mobico」の開発や、新型保冷車への切り替えを進めている。また、航空コンテナ専用の断熱材と畜冷材の開発も推進している。

【カーボンクレジットとオフセット】
CO2排出削減が困難な部分に対し、VCS(Voluntary Carbon Standard)で検証されたカーボンクレジットを購入し、オフセットを実施している。

個人でできるカーボンニュートラルへの取り組み

ほかの先進国と比較しても、日本はまだまだ環境問題への意識が低い。環境問題について知り、意識を高めることも、環境問題に貢献する第一歩。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府や企業だけでなく、私たち一人ひとりができることを考えてみよう。

  • エネルギー使用の見直し
  • 電気自動車の利用など移動手段を見直す
  • 食品ロスの削減
  • ごみの削減とリサイクル
  • 環境に優しい製品の選択

エネルギー使用の見直し

家庭でのエネルギー使用を見直すことで、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献できる。

家庭からのCO2排出は、日本の総排出量に対して重要な割合を占めているため、日常生活での省エネの取り組みが気候変動対策において効果的だとされている。

【取り組みの一例】
・使っていない電気製品のプラグを抜く
・エアコンの設定温度を夏は28度、冬は20度に調整する
・シャワーの使用時間を1分短縮する
・冷蔵庫の温度設定を「強」から「中」に変更する
・LED電球に交換する

また、可能であれば再生可能エネルギー由来の電力プランに切り替えることも効果的。

家を新築や改築する際に太陽光パネルを設置したり、自動車を買う際は温室効果ガスの排出が少ないものを選んだりするのも、個人でできる取り組みの一つです。

電気自動車の利用など移動手段を見直す

日常の移動方法を変えることで、CO2排出量を大幅に削減できる。

【取り組みの一例】
・近距離の移動は徒歩や自転車を利用する
・公共交通機関(電車やバス)を積極的に使用する
・車を使う場合は、できるだけ相乗りする
・エコドライブ(急発進・急ブレーキを控える)を心がける
・長距離移動時は、飛行機よりも電車を選ぶ

車の使用を避けられない場合は、次回の買い替え時に電気自動車・水素自動車やハイブリッド車の購入を検討するのもよい選択肢。

充電施設の不足などの問題もあり電気自動車が伸び悩んでいる傾向にあり、今は過渡期としてハイブリッド車も注目されています。しかし、ハイブリッド車はあくまでも移行期間のもので、電気自動車のほうが圧倒的に排出削減が大きいため、最終的には電気自動車にシフトしていきます。充電に使う電力も再生エネルギーを選ぶようにしましょう。

食品ロスの削減

食品の生産、加工、輸送、廃棄の各段階でCO2が排出されるため、食品ロスを減らすことでこれらの排出を抑制できる。

【取り組みの一例】
・買い物前に冷蔵庫の中身をチェックし、必要な分だけ購入する
・食材を無駄なく使い切るレシピを活用する
・賞味期限と消費期限の違いを理解し、適切に管理する
・外食時は食べきれる量を注文する
・余った食材は冷凍保存を活用する

具体的な削減量は行動やライフスタイルによって異なるが、食材の有効活用は気候変動対策の一環として効果的である。

食品ロスを減らすことも大切ですが、食生活を変える工夫もポイントです。たとえば牛肉は、牛を育てるために広範囲の森林が破壊されているだけでなく、牛のゲップなどでも温室効果ガスが多く排出されています。できるだけ野菜のような再生しやすい食材を多く食べるようにすることも意識してみてください。海外ではヴィーガンの食事も、肉がなくても満足できるほどおいしいので、日本ももっとおいしくヴィーガン料理を食べられるような工夫も必要だと思います。

ごみの削減とリサイクル

ごみの削減とリサイクルは、資源の有効活用とCO2排出量の削減につながる重要な取り組みといえる。

【取り組みの一例】
・マイバッグ、マイボトル、マイ箸を使用し、使い捨て製品を減らす
・過剰包装の商品を避け、詰め替え商品を選ぶ
・分別回収を徹底し、リサイクル可能なものは確実にリサイクルに回す
・衣類や家具などは修理して長く使用する
・コンポストを利用し、生ごみを堆肥化する

たとえば、ペットボトル1本をリサイクルすることで、約60gのCO2削減につながるとされている。また、生ごみの堆肥化(たいひか)を進めることで、焼却処分する場合と比べて大幅にCO2排出を抑えられる。

環境に優しい製品の選択

日常生活で使用する製品を選ぶ際に、環境への影響を考慮することで、個人レベルでカーボンニュートラルに貢献できる。

【取り組みの一例】
・エコラベル付き商品を優先的に選ぶ(エコマーク、省エネラベルなど)
・長寿命製品や修理可能な製品を選ぶ
・リサイクル素材を使用した製品を選ぶ
・地元で生産された製品を選び、輸送によるCO2排出を減らす
・プラスチック製品の代わりに、木製や竹製の製品を選ぶ

たとえば、省エネ家電に切り替えることで、製品や使用状況に応じて年間数十キログラムから100kg以上のCO2削減が期待できるとされている。また、プラスチック製品の使用を減らすことで、製造過程や廃棄時のCO2排出を抑制できる。

カーボンニュートラルに関するQ&A

カーボンニュートラルが矛盾している・おかしいと言われるのはなぜ?

A. 他国と相殺しているケースなど、経済的・社会的な格差を助長しているという声もある。

カーボンニュートラルの目標は、排出する温室効果ガスをただ削減するだけでなく、残った排出量を森林や技術で吸収・除去して「相殺」することで実質的な排出をゼロにしています。排出そのものをゼロにせず、相殺によって帳尻を合わせているため、実質的には化石燃料の使用を続けることができ、根本的な排出削減に対するプレッシャーが弱まるという指摘もあります。また、先進国が自国の排出を相殺するために、発展途上国で植林や環境保護活動をおこなうなど、先進国が自国の排出を他国での活動で相殺することで、経済的・社会的な格差を助長しているとの批判の声もあります。

カーボンニュートラルの取り組みに適用される補助金は?

A. 各国政府がさまざまな補助金制度を導入しており、日本では国の支援制度に加え、独自の補助金制度を提供している地方自治体もある。

カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギー、省エネ技術、電気自動車などを対象としたさまざまな補助金や支援制度が提供されています。企業や地方自治体が太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーを導入する際の費用を一部カバーする「再生可能エネルギー導入支援」、企業や自治体が省エネ技術を導入する場合に、導入にかかる費用の一部が補助される「省エネルギー設備導入支援」、カーボンニュートラルの一環として、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への切り替えを支援するための「エコカー購入補助金」などがあります。

カーボンニュートラルとネットゼロカーボンの違いは?

A. 対象とする温室効果ガスの範囲が異なる。

カーボンニュートラルは、おもに二酸化炭素(CO2)の排出と吸収のバランスに焦点を当てていますが、ネットゼロカーボンは、CO2だけでなく、メタン、フロンなどを含むすべての温室効果ガスを対象としています。さらに、カーボンニュートラルでは、CO2の排出量を削減しつつ、残った排出を森林による吸収や技術的な手段(CCSなど)で相殺することで、実質的な排出量をゼロにするという考え方ですが、ネットゼロカーボンでは、排出を極限まで削減することを目指します。

カーボンニュートラル燃料とは?

A. 実質的なCO2の排出がゼロになるように設計された燃料のこと

カーボンニュートラル燃料とは、燃料の使用によって排出される二酸化炭素(CO2)の量が、燃料の製造や使用において吸収されたCO2と等しくなり、実質的なCO2の排出がゼロになるように設計された燃料のことです。代表例として、植物や動物由来の有機物を原料とした「バイオ燃料」、水素とCO2から人工的に作られる「合成燃料(e-fuel)」、排出されたCO2を再利用して燃料を作り出す「カーボンリサイクル燃料」などが挙げられます。

カーボンニュートラルポートって何?

A. 港湾におけるCO2排出量を実質ゼロすることを目指す港のこと。

物流の要となる港湾(ポート)の運営や関連活動において、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す取り組みをおこなう港のことを指します。港湾での物流やエネルギー供給、施設運営などに伴うCO2排出を削減し、残った排出量を再生可能エネルギーやカーボンオフセットを通じて相殺することで、実質的にCO2排出ゼロを目指します。具体的には、荷役機械の電動化や水素燃料の活用、再生可能エネルギーの導入などが推進されています。日本では、2050年カーボンニュートラル実現に向け、主要な港湾でこの取り組みを展開しています。

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【田牧そら氏】挑戦こそがウェルビーイング。18歳、仕事も学業もどちらも頑張りたい