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【岸畑聖月氏】「いのちを守る側の人間になろう」。闘病を経て決意した助産師と起業の道

「人の人生にさわることがしたいんです」

そう語るのは、株式会社With Midwife(ウィズ・ミッドワイフ)の岸畑聖月さんだ。起業家であると同時に、助産師・看護師・保健師の資格を持つ医療人である。

With Midwifeは「助産師があなたの世界を明るくする」をミッションに、企業向けウェルビーイングサービスの提供や、人事部門への働きかけなどを提案している。岸畑さんの起業の経緯や、ウェルビーイングを大切にする社会の実現に向けた具体的な取り組みについて、Wellulu編集部プロデューサーの堂上研が話を伺った。

 

岸畑 聖月さん

株式会社With Midwife CEO/助産師

14歳での闘病の経験と、ネグレクトを目にしたことから助産師を志す。学生時代にも一度事業を起こし全国展開を果たす。助産師の可能性とビジネス経験から「これからの時代を支えるために、助産師の価値を最大化する新しいシステム構造が必要」と考え、助産学と経営学を学ぶため京都大学大学院へ進学。卒業後は助産師として年間2,000件以上のお産を支える、関西最大の産科で臨床を経験。リアルな社会課題に直面し、課題解決は急務であるとプランを前倒し、2019年に株式会社With Midwifeを設立。国内唯一の助産師が対応する従業員支援サービス「The CARE」は、伊藤忠商事株式会社やロート製薬株式会社など、大企業を中心に導入され話題を呼んでいる。

堂上 研

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

同級生の家まで徒歩2時間! 自然いっぱいの集落で愛されて育った幼少期

堂上:お久しぶりです! 先日大阪の女性起業家が集まるイベントでお会いしたのがきっかけで、今回オファーさせていただきました。実はWellulu編集部の中にもファンがおりまして、度々取材できたらいいねと話していたんです。今回は聖月さんと呼ばせていただきますね。

岸畑:嬉しいです! 本日はよろしくお願いいたします。

堂上:Welluluでは、その人のウェルビーイングな生き方についてお伺いしているんですが、起業のきっかけや原体験も聞かせてもらえたらと思っています。まずは聖月さん自身について教えていただいてもいいですか?

岸畑:2019年に株式会社With Midwifeを立ち上げ、代表をしています。また看護師、助産師、保健師の3つの国家資格を生かして病院で勤務をしたり、女性起業家のみなさんを支援するプロジェクトのマネージャーもしています。

堂上:すごいですね! 三足の草鞋だ。

岸本:色々している人って思われるんですけど、でも結局は「人の人生にさわる」っていうところが軸になっています。病院は出産というかけがえのない瞬間に立ち会える場所ですし、「The CARE」というサービスでは、企業専属の助産師が、働く人の仕事とプライベートの両面をサポートさせていただいています。起業も人生の大きな転換期ですよね。あらゆることに置いて、人生に寄り添うということを大事にしているんです。

堂上:なるほど。聖月さんは、どんな子ども時代を過ごしていたのですか?

岸畑:私はすごい田舎育ちなんですよ。香川県出身なのですが、愛媛との県境あたりで、一番近所に住んでいる同級生の家まで歩いて2時間くらいかかります(笑)。

堂上:おお、すごい。

岸畑:なので、今、東京の赤坂でインタビュー受けているのも緊張しちゃって。自然が恋しいです(笑)。

堂上:元々、都会に飛び出したいという気持ちがあったのでしょうか?

岸畑:中学校に上がる時、県内に新しく公立の中高一貫校が2つできたんです。母が新しいもの好き、かつ、母の母校だったこともあって入学を勧められました。

堂上:進学をきっかけに地元を出たのですね。地元は好きですか?

岸畑:はい! 今も定期的に帰っています。いつも帰省することは、家族以外には言っていないのですが、翌朝玄関に野菜が届くことがあるんです。近所の方が帰省を聞きつけて持ってきてくれて。そんなアットホームな距離感の地元です。

堂上:いいですね、聖月さんは地元の人たちみんなに愛されていますね。村全体がまるで家族みたい。

岸畑:村のみんなは大体地元から出ないので、今、東京の都心で取材されてるなんて知ったらびっくりしちゃうかも。

堂上:Welluluの記事が公開されたら、みなさん喜んでくれるかな。

岸畑:きっとお祭り騒ぎです! 2023年に、某女性誌に掲載させていただく機会があったのですが、地元のみんながこぞって買ってくれましたね。みんな行きつけの美容室に持っていってくれて、地元中の美容室にはその女性誌が置かれているみたいです。

堂上:もう地元のヒーローじゃないですか!

岸畑:とんでもないです。でも、本当に可愛がってもらっています。

「あなたは将来妊娠も出産もできない」大病がきっかけで医療の道を決意した14歳

堂上:聖月さんが起業や医療業界を目指したきっかけは何でしょうか?

岸畑:実は、私は中学2年生の14歳の時に婦人科系の病気を患ってしまい、「あなたは将来妊娠も出産もできない」といわれてしまったんです。目の前が真っ暗になりました。周りには同じ境遇の同世代の人はいませんでしたし、気持ちをどう持っていったらいいのか分からなくて。
入院期間の初めは結構落ち込んでいたのですが、同時に命について深く考えるきっかけにもなりました。

ーー私が病気になった理由って、なんだろう。
ーー死ぬ人もいる中で、なぜ、私は生かされるほうにいったんだろう。
ーーこれから妊娠出産ができないということが、今後の人生に置いてどういう意味を持ってるんだろう。

考えて考えて、辿り着いたんです。

自分が子どもを産み育てられないのなら、命を守る側の人間になろう、って。

堂上:若くして辛い経験をされていたんですね。その病気は、治療したら治るものではなくて、聖月さんは今も産めないのですか?

岸畑:そうです、生涯産むことができません。

堂上:少し困らせる質問かもしれませんが、子ども関係の他愛の無い会話やSNSの投稿など、他人の言葉に傷つくことってありませんか?

岸畑:中絶の現場に立ち会って辛くなったり、人の子どもをみて羨ましくなったりしないのかと聞かれることはあります。でも、14歳に起きたこの経験を基に人格形成してきたので、そういった声に対してすごく傷つくとかはないですし、むしろこんな私だからこそ、そんな人たちの気持ちに寄り添うことができるのかなとは思います。

堂上:素晴らしいですね。そこから、どうして助産師を目指そうと思ったのでしょうか?

岸畑:はじめは、主治医の女医の先生に憧れて医師になることを目指しました。医療で「命を守る」ことができると思ったんです。退院する頃には決意を固めていましたね。

しかし、その後すぐにネグレクトの現場に出合いました。大きな泣き声が近所から聞こえてきたので、その家まで覗きに行ったら子どもを残したまま、そこには両親も誰もいなくて。

自分の病気以上に大きな衝撃を受けました。人の命は医療で救えると思っていたので、医療の届かないところで傷ついたり、亡くなったりする命があることを初めて知りました。そこでいのちに寄り添える助産師を目指すことにしたんです。

堂上:衝撃的な話が多すぎて、驚いています。こういうことは、日本にも結構あるものでしょうか?

岸畑:そうですね、周産期の母親が亡くなる一番の理由をご存知ですか? 実は自殺なんです。最近は男性も育児をするようになったので、男性の産後うつも少なくありません。他にも新生児の虐待死は、0歳児の虐待のうち約半数を占めるなど、いのちにまつわる社会課題はさまざまあります。

堂上:なるほど。そういった社会課題を、With Midwifeの事業を通して解決しているんですね。

岸畑:その通りです。助産師さんは、妊娠、出産、子育てなどに知見があり、広いフィールドで活躍できます。さらに弊社の助産師メンバーの半分以上が、保健師の資格を保有しているので、介護や地域医療にも精通しています。すごく長く、他者の人生に寄り添うことができるんです。

堂上:まさに「ゆりかごから墓場まで」ですね。

岸畑:はい、出産という点の関わりだと誤解されていますが、そこが助産師の本当の魅力だと思っています。

一方で、スキルを発揮して他者の人生に寄り添いたいと思っても、働ける場所が限られているという現実があります。病院勤務の場合だと、妊婦健診、出産前後、1ヶ月検診の時しか関われませんし、行政自治体の保健師として働くとハイリスクの時しか深く関われない。

これだと、助産師の能力を持て余しているし、私たちが助けたい「手が届かないいのち」には足りないと思ったので、病院や自治体という組織を出て、民間企業としてもっと柔軟に人の人生に寄り添えるような事業を作ろうと思い、起業しました。

企業に「顧問助産師」という選択肢を。助産師の新たな居場所づくり

堂上:サービスとしては、BtoBになるのでしょうか?

岸畑:そうですね、「The CARE」はBtoBサービスになります。ただ、ひとつのサービスだけでは社会課題は解決できないと思っているので、今は「The CARE」を重点的に広げ、企業というコミュニティに助産師の価値を提供できる仕組みを作っている段階です。

With Midwifeは「The CARE」をはじめとした事業を通して、助産師と生活者が交わる世界線を増やし、その先にあるいのちを救うことが目的なので、まだ目指すところの一部でしかないんです。

堂上:つまり一番やりたいことは、他者の人生に寄り添うような、ライフステージ全てにおける事業を多様に作っていくことなんですね。

岸畑:まさにその通りです!

堂上:素晴らしい。少し僕の話をさせていただくと、博報堂に入社して十数年経ちますが、企業のCMなど作らせていただくと同時に、彼らの新規事業を作る仕事も手伝ってたんですよ。その時に新規事業の面白さを知って、社内の新規事業開発チームに入って、新しいチャレンジをたくさんしてきました。僕自身、新規事業が大好きなので、聖月さんのように新しい事業を作った人たちを応援したいと思って、Welluluを立ち上げたんです。なので、共感しかないです。

コミュニティの規模としてはどれくらいなのでしょうか?

岸畑:国内外の助産師さんが400人ほど集まるコミュニティになっています。

加えて、助産師のリスキリングを応援する「License says(ライセンス・セズ)」を運営しており、質の底上げもおこなっています。このカリキュラムの受講とライセンス発行を経ているのが、現在120人ほどで、そのうち活躍していただけている方はわずか30人程度になります。まだまだ十分な余力があるので、はやく社会課題への接点を設けたいですね。

堂上:コミュニティでリスキリングした人たちが、事業で生まれた新しい仕事とマッチングし、社会課題を解決するという構図ですね。

岸畑:はい。まだまだ利用者が足りない、というよりも届けられていないことが課題なので、力を入れていきたいと思っています。コミュニティのように同じ志の助産師と繋がることは得意なのですが、事業を作っていくというところが未熟なので、もう少し頑張らなきゃなと思っています。

堂上:ぜひ一緒にやりましょうよ! 利用者の方たちには、どういった課題があるのでしょうか?

岸畑:みなさんの課題はさまざまです。ですが、中でも健康やメンタル、子育てに関する悩みが多く、特に働く女性の健康や妊娠出産期にあたるご夫婦などからご相談がきています。

堂上:男女間の違いだったり、プライベートすぎる話題だったりすると、相談すること自体が悩ましいことってありますよね。そもそも誰に相談していいのか分からないというか。

岸畑:「死にたい」というお悩みをいただくことも少なくないです。あとは、実は男性からの相談も3割程度あります。男性も50代を過ぎる頃から更年期の症状に悩まされるので、ご自身の健康だったり、ご家庭の中で居場所がないというパートナーシップの話だったり、匿名だからこそ、強がらずに教えてくれるのかなと思います。男女で健康課題や、健康課題が顕在化する時期が異なるので、看護師・保健師の資格を生かして、健康診断の結果を見ながら相談にのったりもしています。

堂上:企業の話を聞くと、悩みを抱えている方の多くが40〜50代の中間管理職なんですよ。部下の体調もマネジメントに影響しますし、ストレスも多い。

岸畑:分かります。そしてそういう中間管理職の方に対して、セミナーや講座でインプットさせようとするんですよね。でもそれって、日々の業務も忙しい中で少し負担感もありませんか?

「The CARE」は24時間365日、オンライン通話やチャットで利用いただけるので、思い立った時、まずは気軽に相談してみることから始めていただけたらいいなと思っています。博報堂さんで導入くださったら、堂上さんのご家族のみなさんも使うことができますよ!

堂上:なんと、家族まで! ……あ、でも奥さんは僕に対する悩みとか相談しそうで怖いなぁ(笑)。

岸畑:匿名なので安心してください(笑)。企業専属の担当を付けるので、継続的な支援ができますし、会社独自の制度は社風なども理解した上で対応します。たとえば、育休を取りたいと考えていると相談された時に、会社特有の休暇制度や、他の社員様の利用状況なども把握したうえで最善の提案ができます。

堂上:事業を起こす際には、起業のプロが付いている必要があるし、さらに事業を進めていく上にはメンター的なプロがいると安心しますよね。それと同じで「The CARE」のように有識者の方が、企業に専属で寄り添ってくださるというのは、なんとも心強いですね。

一方で、助産師さんや保健師さんが相談にのっていく中で、ご自身のメンタルを壊してしまうこともありそうですが、その点はどうされているのでしょうか?

岸畑:おっしゃる通り、相談の内容があまりに重いと、いくらトレーニングを受けていても、ダメージを受けてしまうことは少なくありません。ですので、コミュニティでは事例検討会を開いて、事象の捉え方や対応方法を全体で議論したり、起業専属の担当者も最低3人で1組なので相互に声を掛け合ったり、ストレスコーピングする方法を定期的にトレーニングしています。

堂上:コミュニティを通じて、自分たちで守り、学び合えるという環境を作れているということですね。素晴らしいです。

岸畑:病院ではコーチングを学び合う時間はなかったので、その点も助産師さんに喜んでいただいています。

岸畑さん流のセルフメディケーション「ご褒美カード」とは

堂上:聖月さんは、何をしている時が一番ウェルビーイングを感じますか?

岸畑:ウェルビーイングって、ウェルネスととても近い感覚な気がします。「ウェルネスホイール」の8要素というものがありまして……。

堂上:ウェルネスホイールの8要素?

岸畑:ウェルネスホイールは、身体的、知的、環境的、感情的、金銭的、職業的、社会的、精神的から構成される、ウェルネスを構築する項目です。状態とあり方だけの違いであって、ウェルビーイングと近い考え方なんじゃないかと思っています。

堂上:確かに。僕は普段ウェルビーイングっていってますけども、良い状態を維持させていることを指しているので、まさにウェルネスのことですね。社会や、人と人との繋がりの中でウェルビーイングを感じるという感覚も、通じるものがありそうです。

岸畑:ウェルネスホイールの8要素の中で、私は「感情」が一番ウェルビーイングに繋がっているタイプです。感情の起伏がないほうが楽なんです。

堂上:感情の起伏が起きた時はどうするんですか?

岸畑:少し忙しかったり、仕事がうまくいかなかったりすると、イライラしたりモヤモヤしちゃいますよね。そんな時のために「ご褒美カード」を用意しているんです。

堂上:ご褒美カード? どんなものでしょうか?

岸畑:自分自身をご機嫌にさせるアイテムです。たとえば、私は某コンビニのアイスコーヒー用カップに書かれている海の絵柄が大好きなんですよ。眺めていると幸せな気持ちになれるので、感情の波が襲って来た時は、コンビニへ行くって自分の中で決めています。

堂上:なるほど! 自分の中でちゃんとコントロールできるようにしているんですね。

岸畑:すぐにご機嫌な状態に切り替えられるので、ちっちゃいご褒美カードをたくさん持つようにしています。他にも、映画を観る、たっぷり寝るなどのカードがあります。あとは、嬉しいことをシェアすると、負の感情が薄まる傾向にあるので、良い話は口にするように心掛けています。

堂上:ご褒美カードの考え方、面白いですね。僕は、夜中に企画書を書いてるとポテトチップスを食べてしまう癖があるんですよ。身体に悪いことは分かっているんですが、僕の中ではこの行動をしているとちょっと気持ちが落ち着くんです。社会人になって30年近くずっと続いているんですが、これが僕のご褒美カードにあたるのでしょうか? 罪悪感はありますが……(笑)。

岸畑:可愛らしいご褒美カードですね! ポテトチップスがあれば企画書が書けるなんて「僕はなんてチャーミングな人間なんだ」と思うようにしましょう(笑)。

岸畑:ところで、堂上さんは家族のウェルビーイングで気をつけていることはありますか?

堂上:そうですね、僕はなるべく子どもたちと一緒にご飯を食べるように意識しています。コロナを経て会食が減ったのもありますが、実は僕、我が家の料理担当なので、今朝も息子のお弁当を作ってから来ました。

岸畑:素敵ですね! 奥様はどんなウェルビーイングを求めてそうですか?

堂上:部屋をきれいにするのと、子どもと会話してる時に携帯を見ない、の2つかなぁ。

子どもが3人いるんですけど、家が狭いうえに物が増えていって大変なんですよ。毎日洗濯機を2回まわしているので、洗濯物がリビングに積まれている状態になっちゃって。気づいたら片付けるようにしてるんですけど、その途中に仕事のメールが来たらスマホを触っちゃって。食事中も同じですね。ついつい、仕事を優先させちゃう。

岸畑:奥様からしたら、携帯を触らずにお子さんと接してほしいというリクエストなんですね。

堂上:聖月さん、質問上手ですね。気づいたら僕の話になってる(笑)。

岸畑:もう少し聞いてもいいですか?

堂上:どうぞどうぞ! でもインタビューされる側って、めっちゃ大変なんですね。これまでたくさんの方にインタビューをしてきましたが、少し気持ちが分かりました(笑)。

岸畑:奥様が「携帯を見ないでほしい」「食卓をみんなで囲みたい」と思う欲求のもう1個下には、どんな気持ちがあるからだと思いますか?

堂上:変わってほしい……のかなぁ? 家族と正面から向き合ってほしい、ちゃんと動いたり示してほしいと思っていそうです。それぞれ仕事が忙しかったり、週末も出かけたりするけれど、今の時間は今しかないんだから、もっとコミュニケーションをとってほしいんだと思います。

岸畑:家にいるのが嫌だとか、家族に居場所がないという人がいる中で、ちゃんと向き合って考えられていらっしゃるんですね。その意識があるだけで、本当に素晴らしいです。

堂上:奥さんは「携帯を見ないでって言ってるでしょ」「部屋は掃除してって言ってるでしょ」と思ったことを伝えてくれてる人なので、僕は理解してるつもりでいられるのかもしれません。相手に言わずに裏で愚痴っていたら、多分こんな環境にはならないです。

岸畑:「こうしてほしい」は言い合えている印象がある一方で、もしかしたらその下にあるレイヤーの気持ちは、案外憶測で認識し合っているかもしれませんね。奥様の「なんで携帯見ているの?」の根底にある思いは、向き合ってほしい、なのかもしれませんし、さみしい、かもしれませんね。なので、そのお願い事に「アイ(I)メッセージ」で気持ちを加えて話し合いに出すと、もう少し関係が変わるかもしれません。

堂上:なるほど、学びが深い! 今のような対話を「The CARE」で法人向けにやっているということですよね。こういった対話を、社員一人ひとりがやっていったら、本当にウェルビーイングな会社に変わっていきそうですね。

また、今日の話を受けて、ウェルビーイングって面と向かって「対話」する時間をいかに作るかが大事なんだな、と改めて気づかされた気がします。聖月さんは、何が原因でウェルビーイングな状態から逸脱しているのかを、きちんと分析して導いてくれる感じがしました。自分の中で気づきを得たり、少し深掘りして解像度を上げていくと、人ってみんなウェルビーイングに近付いていくのかもしれませんね。

専門家が側にいれば、社会から逸脱する人なんていない。助産師が全ての人の人生に寄り添える世界を目指して

堂上:聖月さんは、これから10年・20年先、どんな社会を創っていきたいですか?

岸畑:社名の「With Midwife」の「Midwife」は助産師という意味なのですが、全ての人の人生に寄り添える社会を目指しています。もし近くにちゃんとサポートしてくれる人がいれば、みんながウェルビーイングになっていくと思うんです。

2023年に、幸福度No.1といわれるフィンランドへ訪問した際、社会が一人ひとりをちゃんと見ていることに感動しました。たとえば、思春期の不登校の子がいないかを注視するユース指導員の方々がいて、問題があれば支援センターに繋げるという機能がありました。彼らは、家庭の問題を家庭の責任にはしません。あなたのお子さんの問題、あなたの家庭の問題は、社会の問題と認識してケアを届けているんですね。彼らがいることで、悩んでいる人がいても、ちゃんと社会のレールに戻していくっていう役割があるんです。

ユースセンターの見学にて

堂上:社会が寄り添ってくれる環境ですね。

岸畑:ちゃんと専門家が見てくれていたら、人って社会から大きく逸脱することってないと思うんです。ただ、その専門家が側にいるという環境をつくることがすごく難しい。

「The CARE」は、会社の中で専門家の居場所をつくる活動をしていますが、自分たちだけでは到達できないこともあります。なので、企業やさまざまな方々と連携し、地域自治体や学校教育といったあらゆる社会の中、コミュニティーの中に、専門家がいる環境をつくっていくことによって、結果的にWith Midwifeの目指す社会の実現に繋げていきたいなと思っています。

堂上:間違いなく必要なサービスになると思います。本日は、素敵なお話をありがとうございました! 引き続き、ご活躍を応援しております!

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