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子どもたちの「可能性」を広げたい。心を通わせる国際交流で、ウェルビーイングなつながりをつくる〈HelloWorld〉

「子どもを留学に行かせたいけど、経済的な余裕がない」「大人になってもう一度挑戦してみたいが、休職制度もなくなかなか踏み出せない」。

留学を夢見るも、さまざまな事情で断念せざるを得ない人たちに「まちなか留学」という新しい国際交流のシステムを編み出した、HelloWorld株式会社。日本にいながら言語はもちろん、協力してくれる50カ国籍以上のホストファミリーのもとでホームステイを通じて各国と文化交流ができる。

そんな魅力的な事業を展開する思いや、サービスの本質について、社員の兒玉優香さんとGiulia Verziniさんに​​、Wellulu編集部の左達也が話を伺った。

 

兒⽟ 優⾹さん

HelloWorld株式会社 まちなか留学事業/PR統括ディレクター

兵庫県出⾝。⼤阪⼤学外国語学部卒業。東京で約11年、⽇系企業やベンチャー企業で働いた後、家族の沖縄転勤をきっかけにHelloWorld株式会社に入社。これまでに約30カ国を巡る大の旅好き。「子どもたちの選択肢と可能性を広げる」ことをライフワークに、多様性や個性を尊重し、自分の人生を生きる子どもたちを増やしたい! という一心で活動している。

Giulia Verziniさん

HelloWorld株式会社 コーディネーター

イタリア出身。幼少期から語学に興味を持ち英語、スペイン語、日本語の4カ国語を習得。ヴェネツィア大学に進学後、今まで触れてこなかった国の文化を言語を学びたいと日本語を専攻。その面白さにのめり込み大学院まで進学する。大学院卒業後日本の企業で働きたいという思いで、Hello World株式会社に入社。現在はホストファミリーのリクルーティングを中心に、外国人と日本人のコミュニティを強化することに貢献している。

左 達也さん

Wellulu編集部プロデューサー

福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業後、博報堂に入社。デジタル・データ専門ユニットで、全社のデジタル・データシフトを推進後、生活総研では生活者発想を広く社会に役立てる教育プログラム開発に従事。ミライの事業室では、スタートアップと協業・連携を推進するHakuhodo Alliance OneやWell-beingテーマでのビジネスを推進。Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。毎朝の筋トレとランニングで体脂肪率8〜10%の維持が自身のウェルビーイングの素。

コロナ禍で生まれた新発想「まちなか留学」とは?

左:5カ月ほど前に、50人ほどのWellulu読者へインタビューをおこなったところ、特に興味関心の高いトピックが「子どもの教育」と「地域」でした。本日はこの2つと親和性の高いHelloWorld株式会社の取り組みについて、深掘りさせていただきたいと思っています。

兒⽟:ぴったりだと思います! よろしくお願いいたします。

左:まずは簡単に、どのような事業をされているかお伺いできますか。

3つの国際交流事業の内容について

兒⽟:はい。私たちは3つの国際交流事業をおこなっています。1つ目は、関東や沖縄の外国人宅へホームステイができる「まちなか留学」。2つ目は、より手軽に国際交流ができるようにお台場やみなとみらい、ソラマチなど各所で実施している3〜4時間のプログラム「まちなかロゲイニング」。これは外国人とチームを組んで英語でコミュニケーションを取りながら指定されたミッションを探してクリアしていくという内容です。

そして3つ目は、ICTツールを活用したプロダクト「WorldClassroom」。現在は中学校・高校に導入していて、通常の英語の授業の中で生徒一人ひとりがスピーキング練習などをおこない、それを実践する場として世界各国にいる同世代の子ども達の教室とオンラインでつながり、国際交流できるプラットホームです。

左:これらの事業を起こしたきっかけを教えていただけますか。

兒⽟:創業者であり代表の野中と冨田は、沖縄県、三重県出身と地方出身なんです。野中が沖縄で外国の方と出会った時に「3カ月間日本にいるけど、日本人の知り合いは君がはじめてだ」と言われたことが、事業のきっかけです。

当時の2020年は、コロナウイルスの蔓延にともない、日本人が海外へ行くことができなくなっていたタイミングでした。そこで「日本で友人を作りたい外国人」と「海外に行きたくても行けない日本人」をつなげればいいんじゃないか、という発想に至ったんです。

左:「行きたいけど行けない」という状況を逆手にとったのですね。日本に住む外国人家族の中には、周りとうまく馴染めず孤立してしまう方もいると思います。現在、どれくらいの国籍の方が参加されているんでしょうか。

Giulia Verzini:50カ国以上になります。関東・沖縄それぞれで、英語ネイティブの家庭だけでなく、第2言語として英語を流暢に話される家庭まで、本当に多種多様な国のホストファミリーが参加してくれています。

身近だった「教育」の現場に新しい風を吹かせたい

左:兒玉さんがHelloWorldに携わったきっかけを教えていただけますか。

兒玉:私はこれまで営業やマーケティングなどに携わっていましたが、ずっと教育に関わる仕事をしたいと思っていたんです。そんな時、家族の転勤で沖縄県に移住してHelloWorldの事業に出会い、それはもう共感の嵐でした。

たった1日の「まちなか留学」を体験した子どもたちが、はじめ緊張や不安でいっぱいだったところから、頑張って英語を話そうとトライしてみたり、将来を考えるきっかけを掴んだりする姿を目の当たりにして、この世界を深めていきたいと思い入社を決意しました。

左:以前から教育に興味があって、ご自身の追い求める理想型がHelloWorldにはあったんですね。教育に関心を持った原体験などがあったのでしょうか?

兒玉:父が高校教師という環境で育ったことや、もともと子どもがすごく好きだったというのが大きくて、実は中学と高校の教員免許も取得しているんです。

また海外に行った時に、たくさんの人との出会いを通じて「ステレオタイプに流されない多様性にあふれる世の中を作って、みんながより生きやすい社会にしたい」と思うようになりました。そのためには教育の現場に身を置くしかないと思い、その第一歩がHelloWorldの取り組みだと感じています。

左:子どもが好きなんですね。ジュリアさんも、もともと教育に関心があったのですか?

Giulia Verzini:はい。兒玉さんのように私も両親が高校教師だったので、子どもの頃から教育への関心が高かったです。私の実感として、学校教育そのものが教室で完結されてしまい、すごくもったいないなと感じてきました。だからこのHelloWorldで受けられるプログラムを通じて、もっと教室以外の教育現場でも子どもたちによりよい影響を与えられる活動がしたいんです。

左:学校の教室という「箱の中の教育」という枠から出たうえで、活動されたかったわけですね。

兒玉:異文化体験や海外経験は、視野を広げる大きなきっかけになるにもかかわらず、留学は金銭的に恵まれた子しか行けないものになりがちです。教室での英語の授業となると、どうしても「科目」という意識が生まれて「嫌い」とか「苦手」と思ってしまっている子も多い。このギャップを私たちの活動を通して埋められたらいいなと思っています。だから英語はあくまでコミュニケーションツールであり、そこから何を学ぶのかを重視しています。

左:おっしゃる通りだと思います。いかに機会を与えられるかが大切だと感じます。

兒玉:公的な留学は予算も100万円以上かかってしまうこともあり、そもそも留学できる人数制限もあるので、行きたくても行けない子がたくさんいるんです。日本でできる「まちなか留学」なら、その何十倍もの子どもに国際交流の場を提供できるメリットがあります。

多様性を重視することこそが、よりよい社会を作る

左:「まちなか留学」は、何歳からスタートできるプログラムなんでしょうか?

兒玉:年齢制限は設けておらず、これまでに2歳から80歳の方まで参加いただいています。特にシニア層は、定年退職されてからセカンドライフとして英会話を学びたいという方がいらっしゃいますね。

左:シニア層もいらっしゃるんですね。60歳〜70歳で海外に行く費用や体力がないという方も、国内にいながら学べる。定年退職して次の人生を歩むちょっとした冒険ですね。

兒玉:ほかにも社会人の方や、兄弟でいらっしゃる方もいます。私には4歳と6歳の子どもがいて、すでに3回参加しています。ホームステイを経て、英語のコンテンツに興味を示すようになりました。バングラディシュのお宅で手でご飯を食べる習慣を体験したり、アメリカのお宅の時は「英語がわからないからいやだ」と言ったり……。そういった子どもの感情の変化も見ていて面白いと感じました。

左:子どもの成長や変化を感じられるのは嬉しいですね。

Giulia Verzini:お子さんにとってはホームステイをしたというのが、自信につながるみたいなんです。外国人である私に対してもそうで、初めて会う時にはとてもシャイなんですが、体験を終えて見送るときには笑顔で話しかけてくれるようになって。

左:英語のスキルのみならず、コミュニケーション能力もアップして帰ってくるんですね。

Giulia Verzini:そうなんです。だから「英語は完璧じゃなくても、コミュニケーションをとることができました」というコメントをもらうと、心で通じ合えることの大切さを感じてもらえたんだと、とても感動します。

兒玉:あとは「異文化をより多く知りたい」と、多様な文化や価値観への興味関心が高まったという意見もありました。プログラム参加後の感想はマインドの変化や気づきに関する声が多いです。

左:心理的な変化がすごく大きいんですね。プログラムを通して非日常の体験や、これまでふれたことのない文化と出会った時の対応力を養うことは、子どもたちの成長にはとても大事だと思います。

兒玉:私たちの事業はまさに多様性の実装だと思うんです。多様性ある社会こそが、イノベーションを生み出します。将来的には「多様性のインフラ」になることを目指しています。

子どもたちの秘めた「可能性」と「自信」を引き出す

左:体験した人の声のなかで、印象に残っていることはありますか?

Giulia Verzini:私は「WorldClassroom」のオンライン国際交流授業で、司会として参加した時にすごく印象深い出来事がありました。日本の生徒さんと、オンライン先の海外の子どもたちが好きな音楽の話をしていたようで、たまたま同じポップアーティストのファンだったことが分かって。その場がすごく盛り上がったんです。初めて交流する国籍の人だけれど、お互いの国境を超えて好きなものを共有し、おまけに共感し合えるなんて、なんて素晴らしい経験だろうと感じました。

左:好きなことに共感してもらえるだけで、あっという間に親近感もわきますよね。“好き”を共有することは国際交流を深めるきっかけになり得るんだなと思います。

兒玉:「まちなか留学」は基金も設立していて、経済的な理由などで自費での参加が難しい子どもたちに無償で提供しています。「これまでにない貴重な経験をありがとう」という言葉を子どもや保護者の方たちからもらった時は、とても感動しました。

左:事業やサービスを展開していく中で「ありがとう」と言ってもらえるのは、自身にとってもウェルビーイングな体験ですよね。

兒玉:はい。またその子たちが「自分には留学なんてできるわけない」と、そもそも体験することを諦めてしまっていたパターンが多いのも事実です。

Giulia Verzini:自分自身に過度にプレッシャーをかけてしまい、自信を失っている子もいて。本当は素晴らしいスキルがあるのに、もったいないですよね。だから英語が完璧に話せなくてもいい、伝わればそれでいいんだ! ということに気がついてほしいと、いつも思います。

兒玉:自分もできるんだ! ということに気づけたら無敵ですよね。

左:そうした葛藤を乗り越えて、はじめは不安そうだった表情が「諦めていた自分の可能性」に気づき、24時間後には目がキラキラしている。

Giulia Verzini:はい。英語だけでなく、プログラムをきっかけに「やればなんでもできるんだ」というマインドになってくれたらいいなと思います。外国人と話すというハードルを乗り越えた自分は、これからなんでもできるという自信へとつなげていってほしいです。

左:子どもたちのマインドセットを高めることこそが、プログラムを受講するメリットであるのは素晴らしいです。

兒玉:自分の殻をどんどん破っていく姿を見られた時は、私自身ウェルビーイングを感じます。

左:素晴らしい。それに勝るものはないですよね。

食文化の共有が心の距離を近づけるきっかけに

まちなか留学 料理体験

左:「まちなか留学」に参加する際、これをやるとホストファミリーが喜ぶよ、ということはありますか?

兒玉:日本の文化に興味のある家族が非常に多いんです。私たちは新年にはホストファミリーを招待して、餅つき大会を開催しましたが、とても喜んでくれました。

左:日本文化の体験を通じて距離も縮まりますね。

Giulia Verzini:私が印象的だったのは、アパレル関係の方のお話です。ホストファミリーの洋服のサイズをあらかじめ聞いておいて、着物を仕立ててお持ちになったそうなんですが、すごく喜んで着ていたそうです。

兒玉:ほかにも、参加した学生さんが朝食におにぎりと味噌汁を作ってくれて嬉しかった、とホストファミリーから感想をもらったこともあります。同様にちらし寿司もすごく喜ばれていました。

左:食文化の共有ってすごく有効ですよね。特に料理は一緒に作業するので、関係性がぐっと近くなるのが想像できます。

Giulia Verzini:基本的に「まちなか留学」はホストファミリーの日常生活にお邪魔して、体験をしてもらうことに重きを置いているので何か特別なことをしなくてはいけない、ということはありません。日常生活で「料理をすること」は、左さんがおっしゃるように、一緒に作業することで子どもたちと仲良くなれ、緊張していたお互いの関係をアイスブレイクするきっかけになります。

私はホストファミリーのリクルートマーケティングをしているのですが、日本に住んでいる外国人の気持ちがとても分かるので、どうしたらこのプログラムを通じて、より日本人とつながりの強いコミュニティを築けるかを常に考えています。

子どもたちにたくさんの選択肢を与え、自由な将来を歩むきっかけ作りを

左:子どもたちの教育現場をはじめ、もっとウェルビーイングな世の中にしていくために、これからやりたい事業はありますか?

兒玉:私は子どもたちに選択肢を与えられる活動がしたいです。特に小さいうちから「気の向くまま、心の動くままに自由にやっていいんだよ」ということを伝える場を作りたい。ゆくゆくは保育園や学校を作りたいなと思っています。

左:素敵ですね。ジュリアさんはいかがでしょうか?

Giulia Verzini:私はまだまだ模索中です。留学の経験をしてきたけれど、HelloWorldに入社して、いろんなホストファミリーや共に働く仲間たちと交流を深めるなかで、すごく世界が広がりました。同時にまだまだ自分にも選択肢があるということに気がつき、どんな将来になるのかワクワクしているんです。

左:いいですね。イタリアのご両親は、今の日本でのジュリアさんの仕事に関してどのように感じられているのでしょうか?

Giulia Verzini:両親は英語が話せないのですが、私には「英語を話せた方が将来役立つ」ということで、3歳の頃からインターナショナルスクールに通わせてくれていたんです。父はその時に「ジュリアの世界はこれでもっと広がるだろう」と感じていたようです。だから今こうして、国際交流の事業に関わっていることが嬉しいと言ってくれています。

左:なるほど、ジュリアさんの経験がどんどん広がっていくようにお父さまがレールを敷いてくださって、その光景を見るのがご自身でも楽しいわけですね。

Giulia Verzini:はい。だから父にはすごく感謝しています。父は私を10歳でイギリスに1週間留学させてくれました。そのおかげで留学の大切さに気がついて、今の仕事につながっているんです。

兒玉:私も親が教育に携わっていることもあり、ホストファミリー側を何度か経験したことがあります。我が家はオープンマインドな家庭だったので、私自身もそうでありたいし多文化体験の魅力を伝えたいと思う原体験になっています。その点がジュリアさんと共通しているなと感じました。

左:本日お話を伺っていて、兒玉さんとジュリアさんの誰とでもフレンドリーに接していける人柄と、「どこでも生きていけるバイタリティ」みたいなものを感じたのですが、オープンなご家庭での原体験があってこそなんですね。本日は興味深い貴重なお話をありがとうございました。

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