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「ソーシャルグッド転職」に特化する人材エージェントが重視する“世界観”の一致とは?〈プロビティ・グローバルサーチ〉

転職は人生の大きな転機でありながら、業界やスキル、年収、役職といったトピックでしか企業を探すことができない。結果、入社してみて文化や価値観のギャップを感じるというのは「転職あるある」ではないだろうか。

さらに近年増えているのが、「社会をより良くする」会社で働きたいというニーズ。環境や社会問題はもちろん、企業のサービスの根底にある想いに着目する人は多い。しかしそれを企業のHPや求人票から読み取ることは非常に困難だ。

こういった課題を解決するのが、ソーシャルグッド転職に特化する人材エージェントであるプロビティ・グローバルサーチ株式会社。「想い」や「文化」をマッチングするために編み出した独自メソッドとは?

​​Wellulu編集部の左達也とライターの齋藤優里花が話を伺った。

 

高藤 悠子さん

プロビティ・グローバルサーチ株式会社 代表取締役

慶應義塾大学卒業後、新卒にてメーカーへ入社。海外営業部に配属。
コンサルティング業界やMBAホルダーに特化した紹介会社へ転職し、外資系戦略コンサルティングファームや世界的IT企業、ベンチャー企業などへ若手からエグゼクティブレベルの人材を紹介。未経験・社内最年少ながら月間売上社内トップの成績を連続して達成する。
その後大手人材紹介会社、JACリクルートメントのタイ法人へ入社。執行役員として現地でスタートアップの段階から日系売上高第一位まで規模を拡大する事に貢献。述べ200名以上の海外就職、海外から日本への帰国の転職のサポートを行う。常に社内トップの成績を残す。
2012年に日本へ帰国、プロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立。
若手優秀人材から年収数億円の世界的エグゼクティブなどヘッドハンティング・採用支援実績多数。

左 達也さん

Wellulu編集部プロデューサー

福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業後、博報堂に入社。デジタル・データ専門ユニットで、全社のデジタル・データシフトを推進後、生活総研では生活者発想を広く社会に役立てる教育プログラム開発に従事。ミライの事業室では、スタートアップと協業・連携を推進するHakuhodo Alliance OneやWell-beingテーマでのビジネスを推進。Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。毎朝の筋トレとランニングで体脂肪率8〜10%の維持が自身のウェルビーイングの素。

齋藤 優里花さん

ライター

慶応義塾大学文学部卒業。JTB首都圏(現:JTB)、リクルートコミュニケーションズ(現:リクルート)にて勤務したのち、独立。マーケティングからweb制作ディレクション、取材・ライティング、メディア運営と幅広く活動。幼少期の海外在住経験や、大学時代にシェイクスピアについて学んだ経験から、芸術が自身のウェルビーイングに必要不可欠。

「ソーシャルグッド転職専門 人材エージェント」誕生秘話

左:まずは、「ソーシャルグッド転職専門」の人材エージェントが誕生するまでを紐解いていきたいと思います。高藤さんが、プロビティ・グローバルサーチ株式会社を設立するに至った原点はどこにあるのでしょうか?

高藤:幼少期から、ほかの人の人生を想像するのが好きな子どもでした。マンションの上層階までエレベーターで行って、遠くに見える車を運転している人には、その人が主人公の物語があって、私にとっては他人だけれど、その人から見たら私が他人で……ということを考える幼稚園児だったんです。

左:幼少期からそういったことを考えられていたのですね。

高藤:小学生の頃は伝記を読み漁るようになり、人にはそれぞれ才能があって、その才能を使って社会に貢献するのだという考え方がインストールされました。自分の才能は何だろう、友人の才能は何だろう、と考えていました。

左:人材エージェントの原点となる考え方ですね。

高藤:はい。また、祖母が終戦の日には毎年すいとんを作っていたり、学生ボランティアでネパールに行った時の経験だったりから、世の中をより良くしたい、ソーシャルグッドな事業に関わりたいという想いが生まれました。ネパールでは電気のない村で識字調査などをしたのですが、同年代の女の子に何気なく「将来は何になりたいの?」と聞いたら、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして驚かれたんです。「お母さんか先生になるしかないんだから、将来何になりたいかなんて一度も考えたことない」と。彼女にも才能があるはずなのに、環境によって将来の夢も選べないことがある。そういった経験がきっかけとなり、人が輝ける場所で働くことを支援したいと考えました。

左:ものすごく印象的な体験ですね。大学卒業後、すぐに人材エージェントに入られたのでしょうか?

高藤:最初は国連を目指していて、国連に入る前にビジネスを学びたいと思ってメーカーに入社しました。海外事業部で中近東の国々を担当させていただいていたのですが、次第に大きな組織で働くことが自分に合っていないと感じるようになって……。国連も大きな組織だと知っていましたから、私の最適な場所ではないかもしれないと思い至りました。

左:具体的にどういった点が、大きな組織に向いていないと思われたのでしょうか?

高藤:手続きが多かったり、案件が大きすぎて自分一人の手では動かせないことが多かったり。そうした中で、自分の成長実感が得られないと思えてきてしまったんです。もっと手触り感のある仕事をしたいと感じました。それから手に職をつけて、将来シニアボランティアで海外に行けたらいいなと方向転換をして、人材エージェントで働くことにしたんです。そこでコンサルティングファームや世界的なIT企業のエグゼクティブクラスの人材紹介に携わらせていただきました。

左:大きな組織に対するもどかしさに共感する読者は多いと思います。そこからなぜ独立に至ったのでしょう?

高藤:結婚を機にバンコクに行くことになり、仕事を辞めたのでカリスマ専業主婦を目指そうと思ったのですが、全然適性がなくて……。掃除をしてもしても片付かないし、料理も美味しくできないし、自分には専業主婦は向いていないなと気づきました。

齋藤:適材適所で働くことを一番ご存じの高藤さんだからこその気づきですね。

高藤:そうなんです。当時ちょうど人材紹介会社JACリクルートメントのタイ法人が設立されるということでしたので、執行役員として7年間携わらせていただきました。その後、日本に帰国することになり、グローバル人材に特化したエージェントを始めました。海外にいると、駐在員の方にも適性があると感じることが多く、またタイでの日本に対する期待値が下がっていくことも肌で感じていたので、海外の駐在員として適性のある方を私が推薦したいと思ったんです。

齋藤:だから社名が「グローバル」サーチなのですね。

高藤:そうです。ただ、人材紹介業をしているうちに、社会的意義を追求する企業や、そういう想いを大切に仕事をしたいと考えている方をお手伝いするほうが楽しくなってきてしまいました。

左:「楽しくなってきてしまった」というのはポイントですね。ご自身のウェルビーイングに気づかれたということで、法人として儲けるという観点とはまた別だと思います。儲けや効率を考えれば、エグゼクティブクラスの人材を取り扱う方が遥かに良いですよね。

高藤:おっしゃる通りです。法人を設立した当初は、旦那の扶養に入っていましたし、稼ごうというより、専業主婦は向いていないから自分に向いている仕事をしようという感覚でした。

左:そこから「ソーシャルグッド」に特化されるようになった背景は何でしょうか?

高藤:人材エージェントとして働くようになって20年ほど経ちますが、当初はビジネスを大きくすることに重きを置く企業が多かったように思います。しかし10年ほど前から、社会課題の解決や世の中をより良くしたいという想いの強い企業が増えてきました。一方で、そういったことに仕事で取り組みたいと思う方も増えてきていて、「ソーシャルグッド転職」をご支援する機会が自然と増えていきました。

ソーシャルグッド転職に携わって気づいたのは、転職者の転職後の様子が全く違うことです。別人のように楽しそうにされていて、どんどんアイデアが湧いてくるし、勉強したいことがいくらでも出てくるとお話しされる。生き生きとした姿を見ていると、私もやりがいを感じていました。

左:ソーシャルグッド転職を通じて、働く人のウェルビーイングが変化していくことを実感されたのですね。

高藤:はい。ですから、自然とそういった案件に力が入っていきました。そうしているうちにSDGsなどソーシャルに対する意識が世の中でも高まってきて、「ソーシャルグッド転職専門」と掲げるようになりました。

ソーシャルグッド転職のポイントとなる、「世界観」とは?

齋藤:ソーシャルグッドな仕事だと、なぜ皆さん生き生きとされるのだと思われますか?

高藤:禅の普及に尽力された鈴木大拙さんによれば、人間には「慈悲と創造性」の衝動が内蔵されているのだそうです。ソーシャルグッドな仕事は、まさに「慈悲と創造性」を発揮する場所ですから、それを満たすことで輝いて見えるのではないでしょうか。

左:ソーシャルグッドな仕事に就くことは、ウェルビーイングにつながるということですね。今までの印象的な転職事例はありますか?

高藤:中高校生向けのIT・プログラミング教育サービス「Life is Tech !」を運営するライフイズテック株式会社への転職を支援した方がいます。その方はエージェントを通じてお声がかかっていたのですが、プログラミングには興味がないからとお断りされていたらしいんです。ただライフイズテックさんと長くお付き合いしている私から見ると、ライフイズテックさんはプログラミングというよりは、ITによって創造性を高め、人々を変容させようとしている会社です。その方とは教育に対する根本的な考え方が一致していたことから、相性が良いと感じてご紹介したところ、それだったらと関心を持っていただきました。今はライフイズテックでご活躍されています。

左:そういった企業の根幹の想いは求人条件からは見えないことも多いかもしれません。転職者にとってもソーシャルグッドについて履歴書に書く欄はないです。高藤さんはどのように転職者の想いを見える化しているのでしょう?

高藤:面談で深く掘り下げていきます。具体的に教育領域に関心があるという方もいれば、もっと抽象度高く、一人ひとりが生き生きとする社会をつくりたいという方もいます。その方にとってのソーシャルグッドとはどういった状態のことなのか、それが理解できれば、もともと希望していない業種でもご紹介すると興味を持っていただけることが多いです。

齋藤:具体的にどのように掘り下げていかれるのですか?

高藤:例えば、環境の仕事をしたいと一言に言っても、グローバルに活躍できるから脱炭素をやりたいという方もいれば、実家の山を何とかしたいという方もいますし、今後産業として安定しそうだからと考える方もいます。そういった言葉の奥にある思いを見極めるために、3次元マッチングという独自のメソッドを用いています。業務経験などのスキル、仕事への思いやビジョン、そして世界観の3つの項目があります。

齋藤:世界観というのは、具体的にはどういったものでしょうか。

高藤:どういった認知・認識をするタイプかということですね。世の中をどう捉えているかで仕事の仕方も違うし、人生の生き方も異なります。何かに従うことを受け入れられる方もいれば、自分で創造したいという方もいる。自分でつくり出すためには競争があっても良いと思う人もいれば、競争はしたくないという方もいます。

左:それは本人が気づいていないところも多いでしょうから、相当な深掘りが必要ですね。

高藤:コミュニケーションする中での言葉の使い方や反応も見て判断しています。例え業界やビジョンに共感していても、世界観が合わないと短期離職になるケースも多いです。

左:短期離職になってしまうと、企業にとっても転職者にとっても不幸ですよね。診断テストなどで判断することもあるのですか?

高藤:基本的には、定性的なインタビューでチェックしています。ただ、転職の支援を前提としないキャリア相談サービス「モヤキャリ相談室」では、世界観アセスメントを受けていただき、今の会社が求めている認識と、ご自身の認識の違いを見ていただくことがあります。

左:転職を前提とせずにキャリア相談ができるのは良いですね。かなりニーズがありそうです。

高藤:そうですね。有料サービスで特に宣伝していないのですが、定期的にお申し込みをいただいています。

一人ひとりの“才能=花”を咲かせるために

左:高藤さんがご支援される企業はどういった企業が多いでしょうか? 求人票を見ているだけでは、ソーシャルグッドな企業を見つけられなさそうです。

高藤:教育や医療、貧困といったいわゆる社会課題に取り組む企業だけでなく、テクノロジーが社会をより良くすると心から想っている企業、地域密着で無添加調理の商品開発を行う食品会社など様々です。スタートアップから、大手企業のCSRや新規事業部署まで幅広くサポートさせていただいています。インパクトスタートアップの会員企業は非常に多いですね。

齋藤:インパクトスタートアップとは、「社会課題の解決」と「持続可能な成長」の両立を目指すスタートアップ企業ですね。先ほどお話に挙がったライフイズテックの代表取締役CEO 水野雄介さんも協会理事を務めていらっしゃいます。

左:スタートアップ企業では状況の変化のスピードも速いですから、情報のキャッチアップも大変そうです。一言でCOO(最高執行責任者)を探しているといっても、営業戦略を立てて欲しい場合もあれば、営業の顧客となる企業を紹介して欲しい場合もあり、求人の深掘りも大切ですね。

高藤:もちろん、要件は常にキャッチアップしておく必要があります。ただ企業の根幹にある世界観が大きく変わることはないので、スタートアップ企業であれば創業者・経営者の世界観を理解することを何より意識しています。競争志向の方、フラットな組織をつくりたい方、階層をつくることで組織化したい方もいます。そこに合わない方を紹介するとミスマッチが起きてしまいます。

左:もしかするとスキルより、世界観の一致の方が企業を左右するかもしれません。スタートアップ企業は特に、人の雰囲気が変わると一気に組織が傾きやすいです。

高藤:当社では「フラワーリング」という活動コンセプトを掲げています。一人ひとりは才能を持ったお花で、土壌が合わないと咲ききれない。合う土壌にお連れすると、生き生きとお花が咲きます。そして、新しいお花が来るとその土壌全体の彩りが豊かになり、お花畑、つまり組織が活性化します。お花畑を見ていると人が嬉しくなるのと同様に、社会に良い影響も与えられる。ソーシャルグッドな事業であればなおさらです。

齋藤:非常に分かりやすいです。私も以前一緒に働いていた方が、別部署だと高い評価を受けていたのに、異動してきたら全く才能を発揮できず、本人も周囲も苦しい思いをしました。

高藤:ご支援する企業に対しては、この組織にどんなお花が来たらもっと綺麗なお花畑になるだろうかと想像します。そういった視点で考えるので、企業が出しているポジション以外にもご提案しますし、「紹介してくれるなら書類ノールックで面談します」と信頼いただいている企業様も多いです。

左:そういった関係性は理想的ですね。

モチベーションの源泉は、未来に開花する花を育てていくタイでの教育支援

高藤:当社も、ソーシャルグッドな取り組みとして、タイでの教育支援も行っています。1名の人材紹介・転職支援実績を作るごとに、1名のアジア地域に住む子どもの就学支援を行うというものです。就学した生徒の情報は採用企業・転職者の方と共有していて、中学3年間の成長を共に見守っています。

齋藤:この取り組みを始めたきっかけはありますか。

高藤:息子が2歳半になるまでタイに滞在していたのですが、同年代のタイの子どもがストリートチルドレンをしているのを目の当たりにしていました。ネパールでの思い出ともつながって、生まれた環境の違いで才能を開花させるチャンスがないことがやるせなくて。元々国連に行きたい想いもありましたから、そういった様々な想いがつながってこの取り組みをするようになりました。経営者としても、売上100億円を目指すというのはときめかなくて、100人の子どもを支援するぞ! と思うと頑張れるんです。

左:確かなモチベーションにつながっているのですね。

高藤:タイにいた時、日本企業の人気が下がっているのを感じていたので、支援した子どもたちが日本企業に関心を持って、将来日本企業で働いてくれたらという想いもあります。元は自分のモチベーションで、自己満足でやっていたのですが、ある時SNSで発信したらとても反響がありました。この支援があるならと登録してくれる方もいるんです。

齋藤:そこに共感されるのは、ソーシャルに関心の高い方ならではですよね。

高藤:そうなんです。だからタイでの教育支援を前面に出すことで、よりソーシャルグッドに関心の高い方に気づいていただく機会にもなっています。

認識の仕方で世の中はいくらでも変わる

左:高藤さんご自身のウェルビーイングな瞬間は何でしょうか。

高藤:何かを学び、そこから新しい認識の扉が開いた時です。認識の仕方で世の中はいくらでも変わります。転職のご支援やキャリアのご支援、組織開発の募集をさせていただく時も、認識を変えることで転職をしなくても前向きになれることもあるし、転職活動がうまくいくこともあります。自分自身も、苦労しても経営の勉強を頑張ってみることで認識の変化があったり、そういったチャレンジをできることが楽しいですね。

左:今までのお話を通してもそれが伝わってきます。

高藤:今、時代の変化とともにソーシャルグッドな仕事をしたい、そういった人材を獲得したいと思う企業は増えています。そうした方々をしっかりとつなげて、「良い会社」を基準に投資する投資信託会社・鎌倉投信の人材版になりたいですね。

左:どういった方々に利用してもらいたいとお考えでしょうか?

高藤:優秀で力があるんだけれども、環境や土壌が合わないせいで上手く活躍できず、想いが乗り切れていない方。そういった方を合う土壌にお連れすると爆発的な能力を発揮することを知っているので、そういった方を増やしていきたいです。

左:最後に、プロビティ・グローバルサーチとして取り組んでいきたい未来像を教えてください。

高藤:ソーシャルグッド転職は海外のニーズも大きいと実感しています。以前、海外のシリコンバレーのスーパーエグゼクティブの方が、人類の幸福に貢献したいと日系企業に転職するのをご支援したことがありました。ソーシャルグッドなキャリア観を持つことでウェルビーイングになれるというのは海外にも共通していると思いますので、そういった理念を海外にも輸出していきたいですね。

左:若い世代にもソーシャルグッドへの関心は高まっており、今後、ソーシャルグッドなキャリア観を持つということはどんどん広まっていくのだろうと感じました。それがウェルビーイングな社会にもつながっていきますね。本日はありがとうございました。

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