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【大隅聖子氏】営業の力で会社に変革をもたらす。ウェルビーイングに働くための仕組みとは

事業を進めるうえで欠かせない「営業の力」。製品やサービスの素晴らしさを伝える人がいるからこそ、それらは世の中に広まっていくのだ。

リクルート社にて17年間も営業に携わり、自身のことを生粋の営業パーソンだと語る大隅さんは、現在、株式会社チェンジウェーブグループにて企業の営業戦略事業などを推進している。

企業における営業の役割とは? また、大隅さんが考えるウェルビーイングな組織、働き方とは。自身も営業経験があり、現在は企業の代表として営業活動にも邁進している堂上研が話を伺った。

 

大隅 聖子さん

株式会社チェンジウェーブグループ 代表取締役副社長/COO

大学卒業後、リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社、17年の勤務で営業組織を率いたのち、2006年株式会社ローソン入社。2009年開発統括本部・オーナー開発部長、新たなフランチャイズシステムの構築責任者、さらに2012年理事執行役員就任。ヒューマンリソースステーションダイバーシティ担当として女性の活躍推進を牽引する。物流業としてメーカー企業に接するうちに良いものを作りたいという純粋さ・切実さに心を打たれ、2015年に株式会社永谷園に入社、健康食品事業部長就任。
同年、チェンジウェーブおよびリクシス取締役就任。2024年、両社の統合により現職。
https://changewave-g.com/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
https://ecotone.co.jp/

目次

小さい頃から営業気質。経営者の父の影響で得たビジネス観

堂上:Welluluを通じて「ウェルビーイングな会社はどんな会社か?」を追求していると、経営者がオープンだったり、社員が言いたいことが言える環境だったりすることが重要だとわかりました。大隅さんにはまさにそんな雰囲気があるように思いますし、チェンジウェーブグループ内には大隅ファンも多くいらっしゃると伺ったので、今日は大隅さんのプライベートについても伺えればと思います。

大隅:よろしくお願いします!

堂上:早速ですが、大隅さんはどんな幼少時代を過ごされていましたか?

大隅:子どもの頃は、とにかく群れないタイプでした。愛知県蒲郡市の中でも山のほうに住んでいたのですが、小学校からの帰り道が誰よりも長かったこともあって、一人でいるのが好きだったんです。

堂上:そうだったんですね。勝手に人が好きなイメージを持っていました!

大隅:一人でいるほうが気楽です。どちらかというと大人しい感じでしたね。それに、意味のないこと、目的のないことは絶対にやらないというちょっと生意気な子どもでした(笑)。

それなのに人の前に立つのはなぜか得意で、児童会長やリーダーなど何かしらの役割を与えられることが多かったです。「本当はやりたくないのに……!」と、当時はすごくジレンマを抱えていました。

堂上:当時からリーダーシップがかなりあったのでしょうね。意見などが合わない人とはどのように接していましたか? 実は僕も子どもの頃からリーダーをやる機会が多かったので、大変だった記憶があるのですが……。

大隅:そう言われてみると、そもそも私は周囲から反対されることが少なかったように思います。「この人にこう言えば賛成してもらえる、喜んでもらえる」というのがわかっていたというか……。今思い返すと、当時からかなりの営業気質だったのでしょうね(笑)。

堂上:観察眼があって、そのうえで周囲を共感させる天才だったんですね。僕も子どもの頃から相手の気持ちを読む癖があって、それは広告営業の仕事で大いに役立ちました。

大隅:もしかして、ご実家が商売をされてましたか? うちは実家がベンチャー企業を経営する父の振る舞いを見ながら育ったからこそなのかも……。

堂上:おお! 実は僕の父も、僕が小さい頃に脱サラして創業しています。いわゆる経営者が身近にいたので、もしかすると「人たらし術」なるものが染み付いているのかもしれませんね。

大隅:面白い! 意外な共通点ですね!

堂上:そんなお父様やお母様から言われたことや、感じ取ったことで覚えていることはありますか? 今の大隅さんにつながっている原体験のようなものがあればお伺いしたいです。

大隅:「サラリーマンでいるのは早くやめろ」と言われていましたね。と言いつつ、私はずっと会社勤めで、50歳を過ぎた頃にようやく父のその言葉を思い出して脱サラしたわけですが……。きっと、父は自分で事業をやって生きていることにプライドを持っていたのだと思います。その精神にはすごく影響を受けていますね。

「究極のおせっかい」は社員が生き生きと働くことにつながる

堂上:ウェルビーイングに生きるためには、コミュニティが大切だと言われています。家族や会社、趣味のつながりなど、大隅さんはコミュニティにどのくらい属していますか?

大隅:一人が好きなのは子どもの頃から変わっていないので、コミュニティの数は少ないと思います。ただ、リクルートやローソン、永谷園のメンバーとは今でも集まるんですよ。弊社にジョインしてくれている方のなかには、これまでのつながりで出会った方も多いですし、つながりという意味ではコミュニティは多いかもしれません。

堂上:大隅さんのように一人でいるのが好きな方のなかには、周囲との関わりを最低限にして過ごしている方もいらっしゃいますよね。ともすれば孤独を感じやすくなってしまうこともありそうです。大隅さんが、一人が好きと言いつつもみなさんから好かれる理由は、お話するのが得意でオープンだからなのでしょうか。

大隅:プロデュース力が高いからかもしれません。その人をどうやって活かしたら良いかを常に考えているんです。育てるという感覚とも違ってもっとシンプルに「この人はどう進めばもっと格好良くなるか」「どのポジションに置けばもっと収入が上がるか」を考えているんですが、それが本人に伝わっているのかもしれませんね。

堂上:なるほど。大隅さんとお話しするうちに、自分の生き方を発見する方が増えているということですね。

大隅:そんな大げさなものではないですが……。弊社でも、もちろん本人の希望も聞きながらですが、「この道のほうがあなたはもっと輝けるかも」という話はよくします。

堂上:社員のみなさんと日頃から密にコミュニケーションを取っているからこそ、その人のベストが見えてくるのでしょうね。素晴らしいです。僕が広告業にハマったのも、商品の良いところを見つけてそれをどう表現するかというプロデュースの部分だったので、今の大隅さんのお話にはすごく共感します。業界や職種は違えど、すごく近いお仕事をしていたのかもしれませんね。

大隅:そうですね。人かモノかというだけで、同じだと思います。

堂上:特に大隅さんは、相手のことを慮って相手がどうなったら幸せかを考えていらっしゃるので、ある意味「究極のおせっかい」ですね。言葉は良くないかもしれませんが、実は僕もWelluluを通じて人と人とをつなげることがよくあって、良い意味で「究極のおせっかい」と思っているんです(笑)。そうすることで仲間が増えたり新しい事業が生まれたりして、人や組織、社会のウェルビーイングにつながっていく。大隅さんは、意識せずともそれができていらっしゃるので素晴らしいです。

働く一人ひとりを救う「営業の力」と「収入」

堂上:大隅さんは、リクルートで17年も営業の仕事に携わられていたんですよね。

大隅:大学時代にあまり熱中して何かに取り組んだ経験がなくて、厳しい環境に身を置きたいと思ったのがきっかけです。当時、飛び込み営業が主流だったリクルートに入社したんですが、やってみたら思いのほか得意なことがわかったんです。それで気づいたら17年も続けていました(笑)。

堂上:営業の仕事で評価をしてもらって、自分の強みを発見できたということですね。今も営業戦略の事業をやられているとのことで、つながる部分はありますか?

大隅:ありますね。営業の仕事は一見地味に見えるんですが、組織のなかではすごく重要なんです。特に、今私たちが取り組んでいる「仕事と介護の両立」という分野はまだ馴染みが薄く、多くの会社でその重要性が認められていません。だからこそ私たちみたいな営業部隊が必死になって、各企業に「これは重要なことです」と伝えて浸透させないと、社員一人ひとりは救われないんですよ。

私たちの事業に関わらず、事業を続けていくためには企業の主張をお客様に伝えて世界観を変える「伝道師」が必ず必要です。

堂上:わかります。僕が代表を務めるエコトーン社も創業して3カ月が経ちますが、なかなか営業に割ける時間がなくて苦労しています。事業を続けていくためには、営業の力を使って共感してくれる人をどう増やすかというのが欠かせませんよね。

大隅:まさにおっしゃるとおりです。企業を強くするためには、営業を強くすることが必須だと思っています。

堂上:大隅さんご自身が営業として活躍されていた際のやりがいはどんなものでしたか? 達成感とか?

大隅:当時は、「私の成果は金額で示して」と思っていました(笑)。「偉いね」「すごいね」という言葉ではなくお金をくださいって。

堂上:なるほど……。実は、収入とウェルビーイングの関係はすごく難しいんです。たしかに、お金があるのとないのでは、もちろんあるに越したことはありません。自分たちのやりたいことや希望を叶えるためには、ある程度のお金が必要だという「ファイナンシャルウェルビーイング」という考え方もあります。その一方で、お金がなくてもウェルビーイングに生きている方は多くいますよね。

僕たちが大切にしているのは、ウェルビーイングの価値観の押し付けをしないことです。「お金があるから幸せ」「お金がないから不幸」ではなく、「お金を得て美味しいものを食べたり欲しいものを買ったりして、その人が精神的に満たされるのであれば、お金があることがその人にとってウェルビーイング」なんです。大隅さんは、何のためにお金が必要だとお考えですか?

大隅:私は経営者として、ジョインしてくれたメンバーにできるだけ早くお金の問題を解決させてあげたいという思いがあるんです。リクルートは持ち株制度だったので、多くの社員が若いうちにある程度のお金を手にすることができました。すると、それによって自由を得られたんです。同じような環境を多く作ることで、自分の好きなことをできる人が増えたらいいなと思っています。

堂上:なるほど。お金のために働くというのとは少し違うんですね。自由な時間を得るために、自分の好きなことに没頭できる時間を作るために、お金が必要だよねってことですね。

大隅:はい。その人らしさやその人のこだわりみたいなものが奪われないよう、縛られている状況から早めに脱却してほしい……経営者をしている理由は、実はそれだけなんです。やっぱり、その人が輝けるかどうかって活かし方次第じゃないですか。だから、「自分の活かし方がわからないなら、うちに来て稼ぐ方法を一緒に考えようよ」って思うんです。

堂上:かっこいい家に住む、欲しいものを買う、という物欲的なものだけじゃない。その人が自由に生きるためにお金を稼ぐことが必要だという考えは、まさに「ファイナンシャルウェルビーイング」の考えと一緒です。素晴らしいですね。

リクルートやローソン、永谷園と色々なお仕事をされてきた大隅さんですが、働くうえで大切にしていることは何かありますか?

大隅:事業を作ることです。これまで色々な会社に在籍していましたが、事業が出来上がって誰かが出世するという状況を多く見てきました。事業には、作る側だけじゃない、誰かの状況を変えるパワーがあると思うんです。

堂上:わかります。僕も新規事業に多く携わらせてもらうなかで、多くの人が楽しく働ける環境を作りたいという思いのもとエコトーン社を立ち上げたんです。楽しく働く環境というのは人それぞれ違うけれど、その人に合った働き方を提供できる事業がどんどん生まれたら良いなと思います。

大隅:素晴らしいですね。そしてそこには、やっぱり営業力が必要だと私は思うんです。

社員の生活を変えるには会社の仕組みを変える必要がある

堂上:大隅さんがやられている事業である「仕事と介護の両立」についてもお伺いしたいです。実はウェルビーイングに関するある調査によると、40〜50代がもっともウェルビーイング度が低い傾向にあることがわかりました。その要因には親の介護や子どもの受験、中間管理職という立場など様々な要因が考えられるのですが、「自分の居場所を感じにくい」というのが大きな理由になっているそうなんです。大隅さんのご経験などから、こういった世代にアドバイスするとしたら、どんなことをお話ししますか?

大隅:私たちの事業は、そういった世代の考えややり方を変えて、できるだけ悩まなくて済むようにすることが目的です。アドバイスするとしたら、「あまり自分でやらないように」ということになるでしょうか。

堂上:それは、アウトソーシングのように専門家にどんどん任せて良いということでしょうか?

大隅:そうですね。介護は私自身も経験がありますが、わかることってほとんどないんです。プロの方と話をしないと進まないことが多いので、それを全部自分でやろうとするのはそもそも無謀なんですよ。だからこそ、どうやって制度を使っていくのか、どうやってサービスを活用していくのかなどを考えることを含めて、自分でやらないほうが良いというのが私たちの主張です。

私自身はチェンジウェーブグループにいたおかげで介護の知識はたくさん持っていましたが、一番自由になれたのは「自分だけで抱えようとするのはだめ」と認識できたことです。この考えを持っておけたことで自分を責めることはありませんでしたし、気持ちがすごく楽でした。こういった考え方を、私たちは営業の力を通して企業に落とし込みたいんです。

堂上:介護があるから会社を辞めなくちゃいけない、両親が亡くなってもすぐに職場に復帰しなくてはいけない……、そうではない環境を会社がいかに用意できるかで、社員や会社全体のエンゲージメントもきっと高まりますよね。それを叶えるためには会社と社員一人ひとり、それぞれが知識を持つことが大事だと思うのですが、チェンジウェーブグループはそういったことを事業としてやっていらっしゃるのでしょうか?

大隅:そうですね。介護の問題は、一人ひとりという目線で見てみるとものすごく深刻な問題なんです。ただ、たとえ一人ひとりが介護の知識や「自分だけで抱えようとするのはだめ」という認識を持っていたとしても、職場をはじめ周りの人みんなが同じ考えでないと、助け合うことはできません。だからこそ、会社を説得しなければいけない。それが私たちの仕事です。

堂上:なるほど。人事や労務が率先して組織の仕組みを変えていくことが重要なわけですね。

大隅:何より大切なのは経営者ですね。社長が一言「俺も介護なんだよ〜」と言ってくれたら、社員は一気に楽になりますよ。

堂上:たしかに。会社から見ると社員は一人の人かもしれないけれど、その社員の後ろには家族というコミュニティがあるわけですもんね。エコトーン社では積極的に言うようにします!

最後に、大隅さんご自身のウェルビーイングについて聞かせてください。何をしているときが一番楽しいですか?

大隅:やっぱり、事業体が固まっていく状況そのものですね。チェンジウェーブグループを含めた関わってる人たちの事業がどんどん大きくなっていくことが、どうしようもなく幸せなんです。

堂上:まさにプロデュースですね。顧客の課題を解決しようと新しい事業に取り組む方は大隅さん含め、ウェルビーイングに生きている方が多いような気がします。本日は貴重なお話をありがとうございました!

大隅:こちらこそ、ありがとうございました。

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