健康は「口から始まる」と聞いたことはあるだろうか?この言葉の通り、口腔内環境の悪化は、健康全体に影響を及ぼす。口腔内が清潔であることと健康の関係性や口腔内のバランスを整える成分DOMAC(ドゥーマック)のはたらき、そして日々の口腔ケアの重要性など、今回、UHA味覚糖の浅野さんに詳しくお話を伺った。
浅野 年紀さん
UHA味覚糖株式会社 バイオ開発 セクションリーダー
本記事のリリース情報
ウェルビーイングに特化した「Welulu(https://wellulu.com/)」にてDOMACに関するインタビューを受けました。
口腔内環境の悪化は乾燥から。ストレスや加齢による乾燥リスク
──まず、口腔内環境が悪化する原因やメカニズム、その対策について教えていただけますか?
浅野さん:これにはいくつかの要因が考えられますが、特に大きな影響を与えるのは「口腔内の乾燥」ですね。通常、口の中は一定の唾液によって保湿され、清潔が保たれていますが、この唾液の分泌が低下した場合、様々な問題が発生します。
──唾液の分泌が低下する原因には、どういったものがあるのでしょうか?
浅野さん:そうですね。主に加齢やストレス、特定の薬剤の使用などが、自然な唾液分泌を減少させ、口腔内が乾燥しやすくなります。また、生活習慣においては口呼吸をすることが多い人は、口腔内が外部の空気に触れるため乾燥しやすくなります。
──「口呼吸はやめなさい!」と小さい頃、親によく言われてました。でも、乾燥が口腔内環境の悪化にどう影響するのでしょうか?
浅野さん:唾液が持つ抗菌作用が低下し、食べ物の残りかすや細菌が口腔内に滞留しやすくなります。これが口腔内の環境を悪化させ、歯周病や虫歯などのリスクを高めることにつながります。
そのため、口腔内を常に清潔に保つことはもちろん、同時に、乾燥を防ぐためにも水分補給や適切な唾液分泌を促す方法を取り入れることが大切です。
口腔トラブルの原因になるカンジダ菌とは?
──清潔とともに乾燥を防ぐことが重要なのですね。では、口腔内のカンジダ菌もよくないと聞いたことあるのですが、カンジダ菌とは何なのでしょうか?
浅野さん:カンジダ菌とは、真菌の一種でヒトの体内に常在している微生物です。通常は体内の自然な微生物群の一部として存在し、健康な状態では特に問題を引き起こすことはないのですが、免疫力が低下した場合、増殖し、感染症を引き起こす可能性があります。口腔内の場合は、口腔カンジダ症といって舌苔(ぜったい)が増えたり、口内炎といった不快感や痛みを伴います。
──なるほど。カンジダ菌の量が多い人の特徴はあるのでしょうか?
浅野さん:そうですね。特に高齢者に多く見られる傾向があります。高齢者というのは、自然な生理的変化によって唾液分泌量が減少しているため、口腔内環境の乾燥を引き起こしやすく、乾燥はカンジダ菌の繁殖にとって好条件なため、感染のリスクが高まるということです。
また、年齢に関係なく、口腔ケアを怠っている人や、ストレスが多い環境にいる人、睡眠不足などで不規則な生活を送っている人にも多く見られます。口腔内が清潔ではない、ドライマウス(口腔乾燥症)である人に多いです。
──なんか…、ここまでのお話を聞いて、口腔内を清潔に保つ大切さがすごく伝わりました。
浅野さん:そうですね。また、糖分を好む虫歯菌とは異なり、カンジダ菌の栄養源は特に限定されておらず、タンパク質であれ糖質であれ、利用可能な栄養があれば増殖する性質を持っているため、食べ物が口腔内に残っている状態は、カンジダ菌の増殖にとって非常に有利になりますので注意してくださいね。
マスク着用も口腔内環境に影響するの?
──近年特に気になっているのですが、マスクの着用が口腔内環境に与える影響について教えていただけますか?
浅野さん:当社の研究では、マスクを2時間着用した際、マスク着用前後でのデータを比較すると口腔内の細菌数が少し増加していることを確認しました。ただし、マスクをしていない場合でも細菌数は増加することがあるため、これをどう捉えるかはまだ研究が必要と考えています。
──マスクで口臭が気になる人もいると思うのですが、まだマスクが原因ということでもなさそうですね。
浅野さん:はい。一方で、マスク着用による保湿効果もあるという意見もあり、これが逆に口腔内環境を改善する場合もあるかもしれません。しかし、全体的な免疫力や健康状態にも依存するため、一概に良いか悪いかを判断するのは難しいといったところです。
ただし、マスク着用時には、マスクの清潔を保つのが重要と考えています。
汚れたマスクを長時間使用すると、それ自体が細菌の温床になる可能性があります。また、マスクを着用していても定期的に水分を摂取し、口腔内の乾燥を防ぐことも大切です。もちろん日常的な歯磨きや口腔ケアを怠らないことも重要です。
──マスクが原因で口腔機能低下症が増えていると耳にすることがありますが、実際はどうなのでしょうか。
浅野さん:以前に比べ、全世界的にマスクを着用する人が増えましたが、その結果として口腔機能低下症が顕著に増えているという証拠は特になく、マスク着用が口腔内の健康を顕著に悪化させるという事実は確認されていないと考えています。
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カンジダ菌に注目して開発されたDOMAC(ドゥーマック)とは?
── UHA味覚糖が注目している舌ケア成分「DOMAC(ドゥーマック)」について教えてください。
浅野さん:DOMACは特定の口腔内感染の予防をサポートする成分で、口腔内の細菌の全体数を減少させることが期待されます。
そのはたらきには、特にカンジダ菌の菌糸の発育を抑制することや、カンジダ菌は口腔内でバイオフィルムを形成し、菌糸を使い拡散しますが、DOMACはこの菌糸の伸展を特異的に阻害することが確認されています。
──口の中にいる良くないカンジダ菌と戦ってくれるのですね。
浅野さん:はい。DOMACの抗菌活性は他の一般的な殺菌剤に比べて強力ではありませんが、その特徴的な作用により、全ての菌を殺菌するのではなく、カンジダ菌の活動を抑制することにより、良い菌と悪い菌のバランスを保つことができる可能性があります。
──全ての菌に作用するのではなく、良い菌と悪い菌のバランスを保つというのは驚きです。では、DOMACに配合されている成分について教えていただけますか?
浅野さん:DOMAC(ドゥーマック)は、主にアロマ成分を中心に構成されている複合アロマ成分で、複数の天然物由来の生物活性成分から成り立っており、それぞれが特定の機能を担っています。デカン酸、オリゴノール、プロタミンペプチド、メチルセルロース、アクア、シナモン、シトラールが含まれていて、これらが組み合わさることで、DOMAC(ドゥーマック)はカンジダ菌の菌糸の発育を抑制するという特徴的な働きがあると考えています。
舌苔(ぜったい)を減少させる?DOMAC配合タブレットの研究
──DOMACの摂取による研究についてお伺いしたいです。まずは、DOMAC配合タブレットによる舌表面数の抑制作用についての研究に関して教えてください。
浅野さん:この研究では、65歳以上の高齢者22名を対象に、DOMAC配合タブレットとプラセボのどちらかを7日間続けて摂取してもらった後、2週間のウォッシュアウト期間を設け、もう一方のタブレットを7日間続けて摂取してもらい、舌の表面にある細菌の数がどのように変化するかを調査しました。
その結果、DOMAC配合タブレットを使用したグループでは、プラセボグループと比較して舌苔やその他の細菌の数が有意に低下することが確認されました。これは、タブレットが舌の表面に直接作用し、物理的に微生物を除去する「擦り取る効果」と、DOMACの抑制作用が組み合わさって生じるものだと考えています。
──そもそもなんですが、 DOMACの研究開発に至ったきっかけは何だったのでしょう?
浅野さん:DOMACの開発は、帝京大学で行われていた抗カンジタ活性を持つ複合体の研究からスタートしました。私たちは、これらの成分が持つ可能性に注目し、これを生かした製品開発に乗り出しました。研究段階で、天然物から得られる成分の効能を如何にして食品や日常生活に取り入れられるか、素材を探し、原料化する過程で多くの試行錯誤を行ってきました。
──今後、どのような健康への提案や取り組みをしていく予定でしょうか。
浅野さん:DOMACを含めたオーラルケア製品が全身の健康にどう影響を与えるか、という部分により注力していきたいと考えています。
虫歯予防や口臭防止といった基本的な効果に対する認識はありますが、まだまだ歯や口の衰えであるオーラルフレイルや口腔環境の全身健康への影響の認識は十分に得られていないという実感があります。また、若年層からの意識改革も重要で、若い時からの口腔ケアの重要性を伝えていきたいですね。
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健康は「口から始まる」!口腔環境を清潔に保つ習慣を
──最後に、口腔環境を清潔に保つためのアドバイスをお願いします!
浅野さん:やはりまずは日々の歯磨きが重要です。それに加えて、洗口液の使用や、適切なタイミングでのタブレットやキャンディの利用が効果的になります。これらを使用することで、口腔内の潤いを保ち、乾燥を防ぐ助けになります。また、食事の後や外出前の使用で、口臭を抑え、清潔感を保つことにも繋がります。
── 洗口液はよく知られていますが、タブレットやキャンディの使用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
浅野さん:タブレットやキャンディを用いた口腔ケアの最大のメリットは、その使用が非常に手軽であることです。口腔内でゆっくりと溶けるため、有効成分が長時間口腔内に留まり、より効果的に作用してくれると考えています。
──DOMAC(ドゥーマック)に似た効果を持つ物質や食品はあるのでしょうか?
浅野さん:シナモンやライチ、柑橘類など、日常よく食べられているハーブ類、乳酸菌、ラクトフェリンなどがあり、DOMACは主にハーブベースに構成されています。DOMACと全く同じ効果を持つわけではないと考えています。
──生活者への健康へのアドバイスや提案があれば教えてください。
浅野さん:これまでにもお話した通り、健康維持のためには、口腔からのアプローチが非常に重要です。口腔内の環境が整っていないと、全身の健康に様々な影響を及ぼす可能性があります。
そのため、口腔ケアの重要性を理解し、日々の生活の中で適切に、習慣的に行うことで、将来的に全身の健康を守ることができます。
健康は「口から始まる」ことを意識して、若い世代を含む全ての年代の方に継続的にケアを行っていただきたいです。この記事を読んだ方が、口腔ケアに意識を持ったり、その重要性を知り、ケアをスタートしたり、それが日常的なものになったり、長期的な健康維持につながることを願っています。
Wellulu編集後記
今回、口腔内の環境の良し悪しが健康にどう影響するかだけでなく、健康寿命が注目される中オーラルフレイルについての意識の重要性など、日々の習慣ベースでの口腔ケアが私たちの長い人生に与える影響がいかに大きいか強く感じられた。DOMAC(ドゥーマック)を使用した研究からも参考に、日々の口腔ケアの見直しや意識の変化など、多くの気づきを与えられるきっかけになることを期待しています。