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エネルギー補給だけでなく心にも寄り添う「ビスケット」が世代を超えて愛される理由【全国ビスケット協会】

小さな子どもから大人まで、世代を超えて愛されるビスケット。実は栄養たっぷりでエネルギー補給にもぴったりの食べ物。長い歴史とともになぜビスケットが愛され続けるのか?もっとビスケットの良さを知るため、今回、全国ビスケット協会の島田さんに詳しくお話を伺った。

島田 純さん

一般社団法人 全国ビスケット協会 専務理事

京都大学農学部農林経済学科卒 農林水産省等を経て現職。
目次

シンプルだけど実は栄養満点?小さくて手軽に摂取できる「ビスケット」

──まず始めに、ビスケットの主な原料や含まれる成分について教えていただけますか?

島田さん:はい、ビスケットには主に小麦粉、砂糖、植物油脂、そして食塩の4つの原料が用いられ、これらはビスケットの必須原材料とされます。この中でも特に基本的な原料である小麦粉には、炭水化物やタンパク質が含まれています。

さらに、これらの必須原材料をベースに、さまざまな食材が加えられることでその栄養価は上昇します。たとえば、牛乳や卵を加えると、カルシウムやビタミン、さらには追加のタンパク質が供給されます。また、ナッツや果物を加えることで、ビタミンやミネラル、食物繊維の量を増やすこともできます。つまり、ビスケットは炭水化物やタンパク質、脂肪分があり、さらにビタミン類が摂れるなど、栄養価が高い食品なのです。

──小麦粉、砂糖、植物油脂、食塩という4つの原料があることがビスケットである条件なのですね!

島田さん:そのとおりです。たとえば、小麦粉を使用していない米粉100%で作られたものは定義上ビスケットと呼ぶことはできないということです。

──なるほど。ビスケットのように見えても、小麦粉を使用していないものはビスケットではない。他にもクリームサンドやチョコレートがけのビスケットもよく見かけます。

島田さん:そうですね。たとえば、クリームを挟んだクリームサンド、ナッツやドライフルーツ、チョコレートなどを混ぜ込んだもの、チョコレートをかけたものなどがありますね。シンプルなビスケットにさらにカロリーやそれぞれの栄養が添加されます。

このように、ビスケットは小さいながらも、その中には栄養が凝縮されており、少量でも満足感を得られるため、忙しいときや小腹が空いたときのスナックやエネルギー補給の食事として非常に便利な食べ物なんですよ。

──手軽に食べられて、栄養いっぱい!実際に島田さんもよく召し上がりますか?

島田さん:もちろんです。私の場合は、朝食にビスケットを食べることが多いですね。ヨーグルトとビスケット、コーヒーを基本的な朝ご飯として楽しんでいます。

あとは、忙しくてなかなか食事が取れないとき、体調が優れないときや二日酔いのときにも、手軽で消化が良く、さくっとエネルギー補給ができるのでおすすめです。会議の合間や出張でバタバタしているけれどお腹が空いた!栄養補給したい!というときにさっと食べれるので重宝しています。

ビスケットは保存性が高く、長期保存が可能

──たしかに、個包装のものはカバンにも入れて持ち運びやすいですし、ちょっと食べるのにちょうどいいですよね!素朴な疑問なのですが…ビスケットの名前の由来を教えてください。

島田さん:ビスケットの語源は、ラテン語の「ビスコクトゥス・パーニス」(bis coctus panis)から来ていて、訳すると「2度焼いたパン」という意味なんですよ。「bis」は「2度」という意味で、「coctus」は「cook」の語源、「焼いた」という意味。そして「panis」はパンです。

2度焼くことで、保存性が高まり、長期保存が可能になるという特徴があります。これが現代のビスケットの原形とも言われています。

──なるほど!「2度焼いたパン」なのですね。ビスケットに似たものとしてクッキーがありますが、なんとなく似て非なるものとは思いつつも…明確な違いはあるのでしょうか?

島田さん:そうですね。海外でいうと、イギリスでは一般的に「ビスケット」と呼ばれ、アメリカでは「クッキー」と呼ばれていますが、これらは基本的には同じものを指しています。その一方、日本では「ビスケット」と「クッキー」を主に糖類と脂肪分の割合に基づき区分していて、糖類と脂肪分が40%以上含まれる製品を「クッキー」としています。つまり、ビスケットという大きな括りの中にクッキーが属するという形です。

──糖類と脂肪分が40%以上含まれるものがクッキーだったのですね!確かにクッキーのほうがリッチな味わいのイメージでした。海外とは違い、日本でこのように区分をするようになった背景が何かあるのでしょうか?

島田さん:まだ区分がなかったころ、「ビスケット」や「クッキー」と名付けられた商品が多くあった中、有名なメーカーが出している「クッキー」のイメージで他の「クッキー」を購入したら、「クッキー」らしくない、「ビスケット」ではないのか?と消費者の混乱が起きていました。

このようなことがあり、消費者庁(当時は公正取引委員会)から消費者に誤解を与えないように明確なガイドラインを設定することが求められたのです。消費者の混乱を避ける、つまり消費者ニーズに合わせて明確な製品情報を提供するためにこのような区分ができたんですよ。

──これにより消費者のイメージと実際の商品の内容のすれ違いが解消されたのですね。クッキー以外にもビスケットの種類としてどのようなものがあるのでしょうか。

島田さん:たとえば、一般的な硬いビスケット(ハードビスケット)やソフトビスケット、脂分や糖分が多くてポロポロとした食感のクッキーをはじめとして、さまざまな種類があります。プレッツェルもその1つで、これは表面をアルカリ性の溶液に浸して硬くしたものです。クラッカーもビスケットの一種です。

──プレッツェルやクラッカーといった塩味のきいたものもビスケットの一種なのですね。

島田さん:他にも、アップルパイやミートパイ、チョコパイといったパイ類も実はビスケットの一種なんですよ。これはみなさん意外に思われるかもしれませんね。

──それは意外です!つまり「生地を作って焼く」という工程がキーなのですね!

育ち盛りから高齢者まで!世代を超えて長く愛されるビスケット

──手軽で栄養価が高いビスケットが幅広い年代層におすすめの理由を教えてください。

島田さん:まず、ビスケットは非常にシンプルで食べやすく、年代を問わず楽しめます。クセが少なく、どんな味付けや飲み物とも相性がよい。他のお菓子と比べてみても、比較的安価で、嵩もあり、栄養素やカロリーも豊富です。そのため、満腹感も得られます。近年の物価の高騰が悩ましい中でも、比較的価格が安定しているのも魅力の1つです。

さらに、子どもの場合、どうしても栄養不足になりがちなのですが、ビスケットを食べれば鉄分やビタミン、カロリーの補給ができますし、鉄分不足で悩みがちな女性にもおすすめですね。

──まさに老若男女、世代を超えて一緒に楽しめるものですね。

島田さん:そうです。これは、ビスケットブランドの歴史も物語っていて、たとえば、森永マリーのように100年以上愛され続けるブランドもあります。ほかにも、グリコのビスコは90年、三立製菓の源氏パイは60年、ブルボンのルマンドも50年、イトウ製菓のチョコチップクッキーも40年を超えるような歴史があります。

私たちビスケット協会の会員である25社でも、歴史が50年、60年を超えるビスケットブランドというのは非常に多く、やはり長い間、世代を超えて多くの人々に支持されてきたことがわかります。

──親から子どもへ、またその次の世代へと愛されているのですね。自分が幼いころに食べていたものだからこそ安心して子どもに食べさせられるというのもあると思います。

島田さん:もちろん、これらのブランドは時代ごとに少しずつ味をアップデートしながらも、基本的な品質と味わいを保ち続けています。ビスケットの魅力はその変わらない馴染み深い味にあり、適宜時代に合わせた変化を加えながらも、その本質を守り続けることで、長年にわたる愛され方をしているんだと思います。

──日常的な場面だけでなく、非常時や災害時用のビスケットも見かけます。実際に非日常的な場面でもビスケットは有効なのでしょうか?

島田さん:はい、ビスケットは長期保存が可能で、カロリーも適度に含まれているため、非常食としてもとても役立ちます。

そのほかにも、ビスケットの慣れ親しんだ味は、人々に心の安定をもたらすこともあります。先日の能登半島地震の際も、被災地にビスケットをお送りしたのですが、あのような非常時の中、普段の生活で食べてたビスケットを食べることで、被災前の生活を思い出すという声が寄せられたんです。ビスケットが心の平穏が訪れるきっかけとなったという言葉に、ビスケットは栄養面を支えるだけでなく、心の健康も支えているのだと感じました。

その他にも、認知症の方に昔の記憶を呼び覚ますきっかけになることもあったりと、ビスケットはただのお菓子ではなく、身体にも心にも寄り添う食品だと言えますね。

──私たちに日常や平穏を思い出させてくれる食品でもある…心があたたかくなる素敵なお話ですね。

アレンジも自由自在!朝から晩まで楽しめるビスケット

──ビスケットの1日あたりの摂取量の目安を教えてください。

島田さん:一般的には、ビスケット100グラムあたり約350キロカロリーとされています。個包装のものの場合、1袋あたり約100キロカロリーが一般的ですので、1日に2、3袋を目安にするとよいと思います。カロリーが十分にあるため、食べ過ぎるとカロリー過多になってしまうので、他の食事との栄養バランスを考えながら摂取するようにしてください。

──ついついおいしくて食べ過ぎそうですが気をつけます。全粒粉を使用したビスケットをよく見かけます。身体によさそうなイメージがあるのですが、どうなのでしょうか?

島田さん:実際に全粒粉は通常の小麦粉に比べ、食物繊維を多く含んでいるため、便秘が気になる方や糖尿病の方にもよいと思います。ただし、糖尿病など血糖値が気になる人は医師の指示に従うなど、自身の健康状態を考慮して食べるようにしてください。

──ビスケットといえば、牛乳に浸けて食べるとおいしいイメージがありますが、おすすめのビスケットの種類はありますか?

島田さん:そうですね。ハードタイプのビスケットは牛乳とよく合いますね!ただ、それぞれの好みに合わせて選ぶのが一番です。

──島田さんは朝食に召し上がるとのことでしたが、ビスケットを食べるタイミングでおすすめはありますか?

島田さん:朝食の代わりだけでなく、たとえば、出張中や外出時にもおすすめです。個包装のものは、軽くて持ち運びが容易な上、さっと食べられるのも魅力ですよね。

忙しい朝や、前日の疲れが残っているときに簡単に栄養補給ができるご飯、パン、シリアル類とともに、ビスケットを「第4の朝食」として、お昼をとる時間がないときや手軽に食事を済ませたい時にも便利です。洗い物も少なくて済むのもメリットですね。また、晩酌時のおつまみとしてクラッカーをカナッペのようにアレンジして楽しむのもおすすめです!

──朝から晩までいつでも楽しめますね!ビスケットを使ったおすすめのアレンジレシピがあれば教えてください。

島田さん:ハードタイプのビスケットは、カップケーキやチーズケーキの土台として使えます。ビスケットを細かく砕いてバターと混ぜ、型に敷き詰めるだけで簡単に土台が完成します。

また、フルーツと組み合わせたデザートやマシュマロ、サワークリームやクリームチーズを塗るなど、いろいろな素材や味とよく合います。クリームやジャムを塗ってもおいしいです。

──シンプルなのでアレンジしたり、他の食材と合わせたりと自由自在ですね。

島田さん:ビスケットはもちろんそのまま食べてもおいしいですが、単体だとどうしてもパサパサしてしまうこともあるので、牛乳やコーヒー、紅茶などの飲み物と一緒に楽しむのがおすすめです。

また、ビスケットをクラッシュしてヨーグルトやアイスクリームのトッピングとして使用するなど、いろいろな食べ方で楽したのしんでほしいですね。

Wellulu編集後記
これまでは単純にお菓子の1つとして、何気なく食べてきましたが、実は小さな中に栄養が凝縮されていて、食事の代わりにも活躍してくれること、また、プレッツェルやアップルパイなど意外なものまでビスケットの一種であることには正直驚きました。世代を超えて愛されるビスケットの魅力やその歴史を知る貴重な機会になりました。

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