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ネガティブ思考を改善する2つのアプローチ!ポイントは自己概念と思考パターンの理解【追手門学院大学・川口教授、信州大学・松本准教授】

本記事では、信州大学人文学部・松本 昇准教授、名古屋大学大学院・情報学研究科 片平健太郎准教授(研究当時)、追手門学院大学・心理学部 川口潤教授らが研究した、「ヒトが抱くネガティブな自己概念がどのように形成され,更新されていくか」の研究をもとに、松本教授と川口教授にインタビューを実施。ネガティブな自己概念はどのように形成されるのか?また、その改善方法はあるのか?お話を伺った。

自己概念とは?

「自己概念」とは、簡単にいうと「自分自身をどう捉えているか」。外部からの評価ではなく、自分自身の内面に関する評価や認知。人生の長い年月をかけ徐々に形成されていくもので、特に幼少期から青年期にかけての経験は、影響が大きく、自己概念の形成には時間がかかり容易に変わるものではない。

 

川口 潤さん

追手門学院大学心理学部 教授

認知心理学を専門としている。人間の記憶のしくみや機能について,実験や調査などの実証的手法を用いて研究を進めており,特に,過去の体験の記憶であるエピソード記憶・自伝的記憶がその人の自己にどのように影響しているかといった点や,それらに自分が気づいているかどうかといった意識の問題に関心がある。京都大学教育学部,教育学研究科修了,博士(教育学)。奈良女子大学助手,愛知県立芸術大学助教授,名古屋大学情報学研究科教授を経て,現職。

「なつかしさ」はビタースイート。記憶心理学者とたどるメカニズムと心理的効果|OTEMON VIEW

松本 昇さん

信州大学人文学部 准教授

公認心理師・臨床心理士。記憶のメカニズムの観点からうつ病やPTSDの効果的な治療について研究している。専門領域は自伝的記憶、スキーマ、トラウマなど。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員PD、オーフス大学客員研究員を経て現職。

本記事のリリース情報

1月22日 Wellulu「なぜ、ネガティブ思考になるのか?自己概念と上手に向き合うコツとは?【追手門学院大学・川口教授、信州大学・松本准教授】」

目次

ネガティブ思考・ポジティブ思考に影響する自己概念

自己概念は人生経験の総体「自伝的記憶」と密接に関連する

──まずは今回の研究に取り組まれたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

松本先生:この研究の始まりは、「自伝的記憶」に関する研究からです。自伝的記憶とは、個人がこれまでの人生で経験した出来事の記憶の総体を指します。人は日々の出来事を経験し、それらが蓄積されることで抽象的な記憶が形成されます。たとえば、過去に「忘れ物をした」「授業で間違った発言をした」「皿を割ってしまった」といった出来事が起こったときに、それらの蓄積から「自分はよく失敗する」というような自己認識が生まれるわけです。

さらに、これが抽象化されると「私は駄目な人間だ」というネガティブな自己概念が形成される可能性があります。うつ病や不安症の患者さんが持つネガティブな自己概念に注目し、これがどう形成され、治療にどう役立つかに興味を持ち、研究を始めました。

──過去の記憶が蓄積されることで抽象的な記憶となり、自己概念が形成されていくのですね。「自己概念」の定義についても教えていただけますでしょうか?

松本先生:「自己概念」は、簡潔にいうと「自分自身をどう捉えているか」ということです。例えば人は自分を「シャイな人間」というように抽象的に捉えることができますが、いわばこれも自己概念の一部です。自己概念は、自分自身の内面に関する抽象的な理解として存在し、ポジティブであれネガティブであれ、個人の人生経験と密接に関連しています。

川口先生:自己概念というのは、人生の長い年月をかけて徐々に形成されていきます。例えば、家庭環境や社会的環境などが影響しますが、自己概念の形成には時間がかかり容易に変わるものではありません。自己概念は、内部的な深い部分で形成され、外側の変わりやすい層と内側の変わりにくい層から成り立っています。

自己概念は幼少期から青年期にかけて大きく形成される

──幼少期から青年期にかけて自己概念がより形成されるとのことですが、これについても教えてください。

松本先生:幼少期から青年期にかけての経験は、自己概念の形成に大きな影響を与えます。新生児の頃は経験がほとんどないため、新しい経験が自己概念に大きな影響を及ぼします。子ども時代や青年期は多くのことが新鮮で、これが成長するにつれて理解が深まり、人格が形成され、自己概念が安定化していきます。

──自伝的記憶と自己概念の関連についてもう少し詳しく教えていただけますか?

松本先生:自伝的記憶は、人生で経験した全ての出来事を含みます。人はポジティブな経験もネガティブな経験もするため、これらが自伝的記憶に含まれます。一般的に、人はポジティブな経験を自己に取り入れやすく、思い出しやすい傾向がありますが、精神疾患を持つ人の場合、この傾向が変わる可能性もあります。

川口先生:また、年齢を重ねると、青年期の記憶が特に鮮明に残ることがわかっており、これは「レミニセンスバンプ」と呼ばれます。青年期は人格形成にとって重要な時期であり、その時期の経験が自伝的記憶に強く影響を与えるのです。実際に高齢者に過去について尋ねてみると、多くの人が青年期の頃の出来事を話すのです。

感覚の誤解釈が、ネガティブな自己概念の原因に

──精神疾患と自己概念の関わりについても詳しく教えていただけますか?

松本先生:まず、自己概念が存在する理由は、将来の出来事を予測し、それに適切に対応するためです。例えば、自分を「無能だ」と認識している人は、難しい挑戦を避けるような予測を立てることがあります。またうつ病の患者の場合、例えば「人から嫌われている」というネガティブな自己概念を持っていると、それが原因で友達との約束を避けたり、社交の機会を失ったりすることがあります。これは、ネガティブな自己概念が行動に制限をかける一例です。

「ドキドキ感」をどう捉える?過度にネガティブな解釈をする人も

松本先生:身体的な影響については、人は身体の感覚を解釈して生きています。例えば、心臓がドキドキするとき、その感覚の原因をどう解釈するかによって、自己概念が影響を受けます。パニック症の患者は、ドキドキ感を「死に至るような危機」と誤解釈することがあります。このような誤解釈は、「私はパニック症である」という自己概念に基づいたもので、パニック症に限らず精神疾患の人によく見られる傾向です。つまり、身体の感覚自体は良くも悪くもないのですが、その解釈がネガティブに傾くことがあります。

──こういった患者は、ネガティブな自己概念をどのように変えていけるのでしょうか?

川口先生:自己概念を変えるには、まずその認識を正確にすることが重要です。例えば、ドキドキする感覚を過度にネガティブに解釈しないように意識することが必要です。精神療法では、患者が自己概念を現実的に再評価することを支援します。うつ病の患者には、行動活性化のアプローチが有効であるとされています。これは、ベッドに横になって考え込むのではなく、積極的に外に出て、楽しい活動を行うことを奨励するものです。自己概念を変えるためには、そのような積極的な行動が重要です。

ネガティブな自己概念はどのように形成されるのか?

──次に、先生たちが実験を行った「ネガティブな自己概念はどのように形成され更新されていくか?」についてお伺いさせてください。まずはどのような研究方法だったのでしょうか?

松本先生:この研究では、ネガティブな自己概念の形成と更新の過程を探究するため、心理学実験およびシミュレーションを用いて検討しました。まず、参加者には心理検査に似たテストに参加すると説明します。また参加者は認知的反応性やうつ病の程度を測る質問も含まれる様々なアンケートに回答しました。回答後、機械学習によるフィードバックの段階に入り、参加者には一連のフィードバックが提示されるのですが、実際には、機械学習は行われておらず、予め用意された70のフィードバックをランダムな順序で提示します。

「あなたは成功します!」自己認識との一致・不一致が自己概念に影響

松本先生:フィードバックは、「あなたはこういう人です」を述べる内容で、例えば、「あなたはお金持ちになります」「あなたは将来成功します」「あなたはよく失敗します」といったようなものです。参加者はこれらのフィードバックがどれだけ自分に当てはまるかを評価し、かつ「自分は有能だ」「自分は無能だ」という自己概念に関する質問にもその度に答えます。

この「フィードバック+自己概念に関する質問」プロセスを70回繰り返し、フィードバックごとの自己概念の変化を観察しました。参加者は計50名で、うち8名は途中で心理検査の設定に気づいてしまったため彼らは除外し、42名の結果を分析しました。また被験者の年齢は平均約20歳で、大学生や大学院生男性15名、女性27名でした。

──ありがとうございます。研究結果について詳しく教えてください。

川口先生:フィードバックが参加者の自己概念に与える影響には顕著な傾向が見られました。特に、フィードバックが自分に当てはまると感じた場合、ポジティブなフィードバックは自己概念をプラス方向に、ネガティブなフィードバックはマイナス方向に動かしました(グラフの緑の結果)。しかし、フィードバックが当てはまらないと感じた場合、反応は逆になりました(グラフの赤の結果)。これには心理的リアクタンス、つまり反発心が影響している可能性があります。

また、「認知的反応性」が高い参加者は、この緑・赤の傾斜がより強くなる、つまり傾向がより強く現れることが分かりました。

──「認知的反応性」とは?

松本先生:「認知的反応性」とは、ネガティブな気分に陥った時に、その気分に反応して行動したり考えたりしやすいかどうかということになります。つまり、認知的反応性が高い人ほど、ネガティブな状況や気分に左右されやすいのです。今回の結果で興味深い点としては、認知的反応性が「ポジティブなフィードバックにも強く反応する」ことが明らかになったことです。

──認知的反応性の高さがネガティブ・ポジティブともに反応する、つまり内容にかかわらず「流されやすい」といったことでしょうか。これが示唆する具体的な気づきは何かありますか?

川口先生:この結果は、うつ病の再発を防ぐ上での重要な示唆を与えています。これまでの研究で、認知的反応性の高さはうつの再発に寄与すると言われています。ただ今回の研究で、ポジティブな側面にも高く反応することがわかり、認知的反応性が高くても、ポジティブなフィードバックならば患者に良い影響を与えてることを示唆したと言えるでしょう。

恵まれた環境でもネガティブ思考に!育つ環境と自己概念の関係性について

──実験の二つ目、シミュレーション検証についても詳しく教えていただけますか?

松本先生:シミュレーション検証では、フィードバックそれぞれを「人生で経験した出来事」に見たてた架空の20名分のモデルをたてています。ここではフィードバック、つまり人生で経験する出来事が計100個あり、そのうち約8割がポジティブ、約2割がネガティブな出来事で形成されています。8割がポジティブな経験なのでこれはつまり、「良い環境」の人生という設定での検証です。

──恵まれた環境で育った場合の自己概念の形成についての検証ということですね。結果について詳しく教えていただけますでしょうか?

松本先生:グラフを見ながら結果を説明します。まず、グラフの縦軸は自己概念で、上がポジティブな自己概念、下がネガティブな自己概念を指しています。横軸は100個の出来事の蓄積です。言い換えれば恵まれた環境で育ったときに、自己概念がどのように発達するのかをシミュレーションした結果を示します。色のついた線は架空の20名それぞれの自己概念の軌跡です。

また、この研究ではパラメータを以下のように設定しています。

・パラメータ α :一回の経験による自己概念の変化のしやすさの程度を決めるパラメータ

・パラメータ w :フィードバックの自己一致度におけるフィードバックの感情価と自己概念の

価の交互作用を決めるパラメータ (wが大きいと,例えば自己概念がネガティブになっているときにネガティブなフィードバックは自分に当てはまっていると感じやすく,ポジティブなフィードバックは自分にあてはまっていると感じにくい)

 

自己概念の形成には初期の経験が大きな影響を与える

松本先生:まず、右下のパネルを見てください。これはパラメータαとWが大きい場合の自己概念の発達です。グラフの序盤で下方向に向かっている人はネガティブな出来事を最初に経験しており、そのままネガティブな自己概念が形成されています。その後ポジティブな経験を約80したとしても、自己概念はポジティブに転じないのです。

つまり予想外の出来事に反応しやすく(α)、ネガティブなフィードバックが自分に当てはまりやすいと考える(w)傾向にある場合、「ネガティブな自己概念が形成されやすい」ことがわかりました。加えて、ポジティブな環境下でもネガティブな自己概念を持ちやすい人の状況を反映しています。

──なるほど、ネガティブな自己概念が初期に形成されると、その後も改善しづらいのですね。

松本先生:はい。また面白い結果が見えたのが左上のパネルです。パラメータαとWが小さい場合の自己概念の発達です。最初に2割のネガティブな経験をしているにも関わらず、長期的にはポジティブな自己概念が形成されているという結果です。つまり予想外の出来事に反応しづらく(α)、ネガティブなフィードバックは自分に当てはまらないと考える(w)傾向にある場合、ネガティブな出来事に反応しづらいため、ポジティブな経験の積み重ねが自己概念にプラスの影響を与えることを示しています。

──同じ「恵まれた環境」であるにもかかわらず、パラメータ次第で自己概念の発達が明確に違いますね。改めて、この検証からどんなことが言えるでしょうか?

松本先生:この検証から、恵まれた環境にあっても精神疾患に陥ってしまう人がいることが分かりました。初期の経験が自己概念の形成に大きな影響を与えること、そして認知的反応性が高い人はネガティブな経験に影響されやすく、その結果としてうつ病などになりやすい可能性があることが示唆されています。

また認知的反応性が高い(ネガティブな気分に対して過剰に反応しやすい傾向を持つ者)ほどこの傾向がよく出ることもわかりました。ただし、認知的反応性は生まれつきの特性で変更が難しいものですが、反応自体を変えることは可能で、これが精神的健康を維持するための重要な手立てになります。

ポジティブに導く2つのアプローチ!自分の思考や反応パターンを見つめ直そう

──自己概念をポジティブな方向に導くアプローチについて教えていただけますか?

松本先生:自己概念をポジティブに導くためには、「嫌な出来事から受ける影響を減らす」方法と「出来事の意味や詳細を深く考える」方法の主に二つのアプローチがあります。

アプローチ①:自分を客観的に観察し、嫌な出来事から受ける影響を減らす

松本先生:一つ目は、「嫌な出来事から受ける影響を減らす」方法です。これにはマインドフルネスの技法が有効で、自分を第三者的な目線から見ることで、ネガティブな影響を和らげることができます。たとえば、「今この人はなぜ失敗してしまったのかについて考えているな」「今この人は緊張に苦しめられているな」というように、自分の考えや感情を客観的に観察する練習をすることで、出来事やそれに伴う考えから受ける影響を減らすことができます。

アプローチ②:出来事の意味や詳細を深く考え、良い側面をみる

松本先生:二つ目は、「出来事の意味や詳細を深く考える」ことです。自己概念の形成は普段無意識的に行われがちですが、ネガティブな出来事を深く考察することで、ポジティブな側面にも目を向けることができます。例えば、失敗をしたとき、「自分は無能だ」と思うかもしれません。この時、「本当にこの出来事は自分が無能であることを示しているのか?」を考えてみるのです。直感的には無能だと思ったが、よく考えると努力した点、成果を上げた点が挙げられるかもしれません。こういった形で、出来事の良い側面をみることもとても重要なのです。

──客観的にみること、熟慮すること、どちらも一度立ち止まらないとできないことですね。こういった視点の変化は、他者からの声がけが日常的かと思うのですが、効果はあるのでしょうか。

松本先生:他者からの肯定的なフィードバックも自己概念の改善に寄与します。上司や同僚、友人などが、ポジティブな側面を指摘してくれることで、ネガティブな自己概念を和らげることができます。ただし、他者からのフィードバックは、「受け手がそれをどの程度受け入れるか」によってその効果が異なります。自分の中でフィードバックを吟味し、自己概念との一致を見極めることが重要です。

自己概念を改善するには、ワンクッション置いて、自分の思考や反応パターンについて深く考えることが効果的です。認知的反応性が強い人は、すぐにネガティブな方向に考えが傾くため、意識的にポジティブな側面を探し出し、考え方を修正する訓練が必要です。これは時間がかかるプロセスですが、徐々に自己概念をポジティブな方向に導くことが可能です。

子どもの自己概念形成で大切なこと

──子育て世代の方に向けて、子どもの自己概念の形成についても教えていただけますか?

松本先生:子どもの自己概念形成には、ポジティブな経験を積ませることが非常に重要です。虐待やいじめなどのネガティブな経験をさせることは絶対に避けることは前提ですが、なるべく「褒める」「達成感を味わう」などの良い経験を積ませてあげることが大事です。こうした経験がポジティブな行動を増やし、自己概念を強化することができます。

叱ることで子どもをコントロールしようとするよりも、褒めることで育てることを意識しましょう。

ポジティブな行動に対して報酬を与え、子どもが望ましい行動をとることを奨励することが大切です。叱ることで子どものネガティブな行動が減るかもしれませんが、ポジティブな行動が増えるわけではありません。子どもが良い行動をとったときにそれを褒めて、サポートすることが重要です。

また、シミュレーション検証でのフィードバックについての具体的な分析は行っていませんが、報酬と罰に関する一般的な研究からは、報酬の方が効果的であることが多いです。ポジティブなフィードバックを積極的に行うことが、子どもの自己概念をポジティブに形成する助けになります。

──なるほど。叱ることでネガティブな行動に対処することに目が行きがちですが、ポジティブな行動を褒め、増やせるようにしていくことが大切ですね。

川口先生:はい、その通りです。ただもちろん叱らないというのは大変難しいことだと思います。子どもに良い環境を提供するためには、大人自身が良い状態にあることが重要です。大人が忙しくてイライラしていると、子どもに対して叱る傾向が強くなるかもしれません。したがって、自分自身もケアすることが、子どもの自己概念形成にも良い影響を与えると言えます。

──最後に、現在取り組んでいる研究や今後の研究について教えていただけますか?

松本先生: 私たちの研究チームは、人が自己概念をどのように更新・変更していくかに焦点を当てています。具体的には、効果的な自己概念の形成に必要な思考プロセスについて研究しています。例えば、自分が有能であると感じた時、その感覚を裏付ける証拠をどのように集めるか、ということです。このプロセスは、有能な自己概念を形成する上で非常に重要ですが、人それぞれ収集方法が異なるため、この思考方法や推論過程に注目しています。

また、これらの記憶と自己概念の関係にも興味を持っており、例えば過去に有能だった経験を思い出せるかどうかが、自己概念に大きく影響します。思い出せれば自信につながりますが、思い出せないと自己評価が低くなることがあります。この記憶の取り出し方を改善することで、人々の自己概念をポジティブに変えることが可能かもしれないのです。こうした記憶の活用方法を通じた自己概念のトレーニングや治療方法の研究にも取り組んでいます。

──記憶の取り出し方と、記憶の自己概念への活用方法、大変興味深いです。川口先生はいかがでしょうか。

川口先生: はい、私の研究は記憶に関するもので、特になつかしい記憶の意味とその効果に注目しています。なつかしい記憶が持つ意味については、過去の研究ではあまり深く掘り下げられていない領域です。誰もがなつかしい記憶を持っていますが、これらの記憶がどのような意味を持つのかを研究しています。今取り組んでいるのが、「毎日なつかしい記憶を思い出す」実験です。この実験では、参加者に一週間毎日なつかしい記憶を思い出してもらい、その前後で幸福感の変化を測定しています。結果として、なつかしい記憶を思い出すことで幸福感が上昇することが見えてきています。

──お二方とも、記憶に関わる研究を行われていて、あらゆる人の生活や自己概念をよりよくする可能性を秘めていますね。今後の研究にも注目させていただきます。

Wellulu編集後記:

今回、自己概念の形成が私たちにどのような影響を与えるのかについて信州大学の松本先生、追手門学院大学の川口先生のお二方にお話をお伺いしました。自己概念は私たちの心理状態、特にうつ病や不安症といった精神疾患にまで影響を与えます。そのような中で、いかにポジティブな自己概念を育成するか、この記事を通して、参考にしていただければと思います。

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