
厳しいアマゾンの環境で強く育ったアサイー。健康によい・おしゃれな食べ物のイメージが強いものの、近年改めて注目が集まっているとのこと。さらに「アグロフォレストリー」という持続可能な農業とは?スーパーフード「アサイー」に秘められた健康パワーや意外な活用法など、今回フルッタフルッタの長澤さんと舟橋さんに詳しくお話を伺った。

長澤 誠さん
代表取締役社長執行役員 CEO

舟橋 舞さん
食品科学の修士課程修了、食品メーカーの商品開発担当を経て2022年フルッタフルッタに入社。商品開発部におけるR&Dのグループリーダーとして機能性研究に従事する傍ら、フルッタフルッタの強みである「商品開発力」を支えるキーマンのひとりとして商品開発と品質管理も担当。
アサイーの健康効果を研究で明らかにすること、より多くの人が毎日の食事にアサイーを取り入れてもらえるような商品開発を志す。
本記事のリリース情報
健康系WEBマガジンの『Wellulu』で当社代表および社員のインタビュー記事が公開されました。
多様で持続可能な農業「アグロフォレストリー」と「アサイー」について
──本日はどうぞよろしくお願いします。まずアサイーとの出会いについて、教えていただけますか?
長澤さん:はい、実は私が最初に探しに行ったのはアサイーではなく、クプアスという果物で、そこからアマゾンに行くことになったのです。
──クプアスも初めて聞きました。そのような中で、とくにアサイーに力を入れた理由はあったのでしょうか?
長澤さん:私たちもこれほどアサイーが注目を浴びるようになるとは思ってもいませんでしたが、当時はアグロフォレストリーという農法を広めるためのスター選手が必要で、アサイーに注目したんです。
──アグロフォレストリーとはどういった農法なのでしょうか?
長澤さん:アグロフォレストリーは、混植することで多様性を保ちながら持続可能な農業を目指す方法です。多様性、つまりバイオダイバーシティが重要で、これがアマゾンの持続には欠かせません。
しかし、当時はまだこの概念が広まっていませんでした。大半の農業がモノカルチャー、つまり1つの作物に特化するのに対し、アグロフォレストリーは多種多様な作物を育てるという特徴があります。
──とても興味深い観点ですね。
長澤さん:アサイーについては、最初にアマゾン地帯を訪れるようになった1990年代から知ってはいたのですが、2000年ごろに後のサプライヤーとなる、日系農協のトメアス総合農業協同組合に属する生産者のアグロフォレストリーの畑を訪れ、多種多様な作物のうちの一つとしてアサイーの魅力を知るようになりました。
画像提供:フルッタフルッタ
アマゾンでは子どものころから木に登ってアサイーを食べて育ちます。かつては産地でしか食べられなかったアサイーが加工されてピューレになり、ブラジルの都市部や海外に出荷されるようになりました。都市部で活躍するアサイーの産地出身の有名なサッカー選手やグレイシー柔術の選手たちが喜んで食べる様子がメディアで報道され、その結果、「試合前に食べてるあれは何?」「何かしらのエネルギー源に違いない!」と注目が集まっていったんです。
──有名なアスリートが食べていることで注目されるようになったんですね!
長澤さん:そのころ、格闘技ブームやJリーグの影響もあり、日本でもアサイーが注目されるようになったんです。
──なんとなくではありますが、アマゾンのような環境で育った食物は多様な栄養素を含んでいそうなイメージがあります。
長澤さん:子どもたちに、野イチゴと市販のイチゴを比較したとき、どちらが栄養価が高いと思う?と聞くと、ほとんどの子どもが野イチゴと答えるんです。これって理屈ではなく、人間のDNAに刻まれた知恵なんです。自然の中にあるものはしっかりと栄養を持っているというイメージを人は持っているんです。
このような部分からも、アマゾンのワイルドトロピカルフルーツというイメージを強調してアピールしています。「厳しい環境で育つ植物は強くなる」という感覚は、そのとおりなんですよ。
アサイーはどこで栽培される?
──なるほど!この感覚は間違いではなかったんですね。アサイーはどのようなところで生育し、収穫が行われるのでしょうか?
長澤さん:アサイーはブラジルのアマゾン地域、とくに川べりの特定の地域か湿った土地を好みます。
画像提供:フルッタフルッタ
一般的には自然にアサイーが生えてくるような河川沿岸地帯や潅水設備を設けた農場での単一栽培が多く見られます。
当社のアサイーはアグロフォレストリーで栽培されており、耕作地でも多種の混植による地表面の被覆で土壌の乾燥に強い栽培技術が確立され、生物多様性の維持にも繋がっています。
──ちなみに日本でもアサイーの栽培は可能なのでしょうか?
長澤さん:本来発芽能力があるアサイーの種子の持ち出しは禁止されているのですが、日本で栽培を試した人もいるようです。ですがやはり難しいようですね。アサイーの栽培には特定の環境が必要で、それを日本で再現するのは困難です。
──では、アサイーがどのような果物か、風味も合わせて教えてください。
長澤さん:アサイーはヤシ科の植物で、ココナッツの仲間です。約95%が硬い種で食べられる果肉はわずか5%と少なく、油分を多く含んでいます。
画像提供:フルッタフルッタ
そのため、ほかのフルーツのように果肉を潰してジュースにすることはできません。味や香り、甘味や酸味もほとんどなく、初めて食べる人は「味がない」と感じるかもしれません。食べ続けることで独特の風味がわかってきますね。
──先ほどブラジルでは子どもたちも食べるとのことだったのですが、どのような食べ方をしているのでしょうか?
長澤さん:現地の子どもたちは木に登って自然に実っているアサイーを取って食べます。口の中でふやかして生の実を食べています。
──採れたての味も気になります!日本でも生のアサイーを食べることはできるのでしょうか?
長澤さん:生の実を食べることはできないですね。収穫後は、すぐに搾汁作業が行われます。まずはぬるま湯につけてふやかし、ざるで皮を削り落とします。現在は機械化もされていますが、産地に行けば昔ながらの手作業で搾る人もいます。
産地では、日本でいうとコンビニみたいに、街の至る所にアサイーショップがあって、簡単な機械でアサイーを搾ってくれて飲めるんです。現地の人々にとって、アサイーは日常的で身近な食事なんです。
アサイーに含まれる豊富な栄養素
──アサイーに含まれる栄養素にはどのようなものがあるか教えてください。
舟橋さん:アサイーには非常に多くの栄養素が含まれています。たとえば、食物繊維、良質な脂質(オメガ3、6、7、9)、鉄分、マグネシウム、カルシウム、銅といったミネラルがあります。ビタミンも豊富で、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンK、ビオチン、葉酸などが含まれています。また、ポリフェノールも多く含まれており、非常に多様な栄養素が詰まっています。
──豊富な栄養素が含まれているんですね。それらの栄養素による身体への影響としてどのような働きがあると言われているのでしょうか?
舟橋さん:そうですね。アサイーの摂取で貧血が改善されたという声もよく聞くかと思います。アサイーには元々鉄分が含まれているものの、マウスにアサイーを摂取させた結果、造血ホルモンのエリスロポエチン(EPO)の分泌が促され、赤血球数が増加することが明らかとなりました。ただ、こちらに関しては原因物質がまだ明らかになっていません。
その他の身体への影響としては、便通改善や疲労回復、美肌なども期待できます。
──貧血に悩む女性が多いので嬉しい働きですね!
舟橋さん:正式な文献はまだ限られていますが、アスリートの方々からはアサイーを摂取することで次の日の目覚めが良くなるという話をよく聞いていて、疲労回復にも効果があるのではないかと期待しています。
──栄養素も多く含まれているアサイーに続いて注目しているものはあったりしますか?
長澤さん:アサイーに匹敵するものを探すのは難しいですが、「アマゾンフルーツ」というグループ全体で多様性を保つことが重要だなと感じています。
アサイーだけが売れると、どうしてもビジネスを優先するあまりアサイーの畑ばかり増えて自然破壊につながる恐れがあるんです。私たちの目的は、アマゾンの荒廃地を回復させることなので、多様性を保ちながら進める必要があります。
CO2削減マーク
──多様性や持続可能な、という部分につながるのですね。商品に記載されているCO2削減マークについて教えてください。
長澤さん:CO2削減マークは、たとえば1本の商品が240グラムのCO2を削減したことを示しています。これはアグロフォレストリーだからこそ実現できるものなんです。
アグロフォレストリーでは森を再現するために何十種類もの植物を混植します。この方法で初めて作物を栽培しながらCO2を吸収するような森が作れます。単一栽培では持続性がなく、次の年には病虫害や天災で枯れてしまうこともあります。しかし、アグロフォレストリーならば多様性によって持続可能な森が再現され、尚且つCO2を吸収できるんです。
──興味深いです。これまで見たことのないマークでした。
長澤さん:これがおもしろいことに、Z世代の消費者にマッチしていて、このマークが付いた商品を選ぶ人が増えているんです。環境問題についての教育を通して高い関心を持っており、持続可能な商品を選ぶことに積極的な層で、価値観に合致しているんです。
──Z世代の消費傾向とマッチしたんですね!
長澤さん:実際にZ世代は環境志向が高く、おいしいものを求める一方で、環境に配慮した商品を選ぶ傾向があります。彼らの価値観は、私たちが目指す持続可能な社会の実現に大きく貢献してくれると期待しています。CO2削減マークなどの取り組みを通じて、彼らにアピールし続けていきたいと考えています。
混ぜて!かけて!どんなものとも相性のよいアサイーのおいしい活用方法
画像提供:フルッタフルッタ
──アサイーといえばアサイーボウルのイメージが強いのですが、おすすめの食べ方はありますか?
舟橋さん:アサイーボウルは非常におすすめです!弊社ではアサイーボウル用の冷凍ピューレを販売しており、これを使ってアサイーボウルを作る方が多いです。また、アサイードリンクにしていただくのもよい方法です。アサイーは味に特徴が少ないため、ほかの料理にも簡単に取り入れることができます。
もしアサイーボウルは冷たくてお腹が冷えると不安な方は、オートミールを温めてアサイーと混ぜたり、ぜんざいに入れて白玉と食べたりする方法もあるのでおすすめです。
──アサイーの1日の推奨摂取量について教えてください。
舟橋さん:アサイーピューレ100グラムを1食の目安に召し上がっていただければと思います。
──料理にも取り入れられるとのことですがどういった使い方がありますか?
舟橋さん:アサイーのフリーズドライパウダーがあるのですが、たとえば、カレーに入れると数日煮込んだような深みが出ますし、味噌汁に入れると旨味がアップします。アサイーパウダーは調味料としても使え、塩と混ぜてアサイー塩にしたり、ドレッシングやタレに加えてもおいしいです。
──ちなみに舟橋さんはどんな使い方を普段されていますか?
舟橋さん:私がとくにおすすめするのは唐揚げを作る際、鶏胸肉を漬け込むタイミングでアサイーパウダーを加える方法です。おいしく仕上がるだけでなく、お肉が柔らかくジューシーになります。
実際に代替肉特有の風味をより美味しくするためにレトルト食品にアサイーが使われるといった例も最近ではありますね。
──女性におすすめのアサイーの活用方法はありますか?
舟橋さん:ドレッシングに入れたり、オートミールにアサイーピューレを加えたりするとおいしいです。フリーズドライパウダーをグラノーラやオートミールに混ぜるのもよい方法です。ヨーグルトにアサイーピューレやパウダーを加えると手軽に栄養摂取も可能です。
──アサイーボウルのおすすめトッピングはありますか?
舟橋さん:摂取したい栄養素によってフルーツやナッツやプロテインをのせたり、色どりで赤や緑を加えると色鮮やかになります。また、はちみつやアガベシロップなどといったシロップ系のものをかけるとツヤが出て映える上、おいしいのでおすすめです!
──意外な食品とのおいしい組み合わせはありますか?
舟橋さん:そうですね、和菓子とも相性がよく、あんこと組み合わせたり、寒天に加えたりするとおいしいです。カップ麺に入れると旨味が増しますし、罪悪感も減っておいしく食べられます。
あとはアボカドと組み合わせてサラダ代わりにするのもおすすめです。
──カフェのヨーグルト&アサイードリンクが好きでよく飲んでました。
舟橋さん:ありがとうございます!SNSで話題になり、一時期なかなか飲めない時期もありましたよね。朝食代わりにもよいですよね。
Wellulu編集後記:
これまでアサイーというと、カフェでのおしゃれなアサイーボウルのイメージばかりでしたが、段々とアサイー自体が持つ力に注目が集まってきていること、また、多様で持続可能な農業であるアグロフォレストリーの考え方やCO2削減について、とくにZ世代の消費者との価値観の合致など、大変興味深いものでした。健康によいだけでなく、おいしく、環境にも優しいというのはこれからの私たちのウェルビーイングにもつながっていくのではと感じました。
京セラ株式会社や食品メーカーを経て2002年に株式会社フルッタフルッタを創業。「アサイー」のパイオニアとして日本でいち早く輸入を開始するとともに、アマゾンフルーツを通じてアグロフォレストリーを先進国市場に結びつけるビジネスモデルを展開。「自然と共に生きる」を企業理念に据え、アグロフォレストリーの商業的普及と自然資本を原点とする経済と環境の共存社会を目指す。