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【武井浩三氏×堂上研】“共感資本主義”から考える、お金に縛られないウェルビーイングな生き方

私たちは日々、生きていくために必要なお金を労働によって得ている。その一方でたくさんのお金を稼ぐためにストレスを溜め込んだり、頑張りすぎて心身を壊したり……。お金の不安を解消するため働き続け、かけがえのない人生の意味を失いかけている人もいるかもしれない。

では、そもそもお金とは何なのだろうか? 今回は“お金のいらない世界”を目指す社会活動家/社会システムデザイナーの武井浩三さんとWellulu編集部プロデューサーの堂上研が対談。武井さんが提唱する共感資本主義とは何か、経済的な指標では測れない豊かさや、満足感を得る方法、お金に縛られない生き方を実現するために必要なことを伺った。

 

武井 浩三さん

非営利株式会社eumo 代表取締役/社会活動家/社会システムデザイナー

高校卒業後ミュージシャンを志し、渡米。Citrus College芸術学部音楽学科を卒業。帰国後に起業するも倒産・事業売却を経験。「関わるもの全てに貢献することが企業の使命」と考え、2007年に不動産IT企業「ダイヤモンドメディア株式会社」を創業。2017年には「ホワイト企業大賞」を受賞。ティール組織・ホラクラシー経営等、自律分散型経営の日本における第一人者として、メディアへの寄稿・講演・組織支援などを行う。
2024年現在、新井 和宏氏が立ち上げたコミュニティ通貨のプラットフォームを運営する非営利株式会社eumoのボードメンバーとして新しい金融経済に関わりながら、SDGs関連や組織開発、フェアトレード、地方創生等、多数の企業にてボードメンバーを務める。

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザイン ディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

“働く人全員が幸せになる会社”を立ち上げるまで

堂上:まずは武井さんがどういう活動をされているか、教えてください。

武井:自己紹介がとても難しいのですが(笑)、一言で言うと、資本主義社会の次の社会を作る活動を15年以上やっています。

堂上:「資本主義の次の社会」について、今日は具体的に伺っていきたいのですが、その前に武井さんがそのような活動を行うことになったきっかけを聞かせていただきたいです。横浜の高校を卒業して、大学はアメリカに行かれたのでしたっけ?

武井:そうですね。ミュージシャンになりたくて、アメリカの音楽大学に入りました。ロサンゼルスに住んでいたのですが、そこにはさまざまな人種、バックグラウンドを持った人がいて、学生のうちから趣味の延長で起業する人もいたんです。自分も漠然と何かを成したいと思い、帰国して2006年に起業したんです。

堂上:それが今の「資本主義の次の社会」を目指す会社ですか?

武井:いえいえ! 最初はアパレルのインターネットメディアの会社を作りました。友人を誘って、それぞれ軍資金を出し合って起業したものの、上手くいかず、1年で倒産してしまい。大学を中退したり、新卒で入った会社を辞めてまで合流してくれた友人もいたので、彼らに迷惑をかけてしまったことが本当に申し訳なくて辛かったですね。

堂上:彼らの人生を変えてしまった、と。

武井:奇跡的に事業売却ができて借金は返済できたのですが、その時「人は何のために働くんだろう」ということを深く考えたんです。

堂上:おお、ウェルビーイングに近づいてきました。

武井:何のために働くのかと考えた時に、関わる人全員が幸せじゃないと意味がないと感じたんです。クライアントやユーザー、一緒に働く仲間やその家族、そして自分が幸せであること。さらにもっと広げると、地域経済や地球環境まで含めてプラスに働くことは可能かと思うようになって、2007年にダイヤモンドメディアという会社を立ち上げたんです。

堂上:そこではどういう事業をされていたんですか?

武井:ビッグデータを使ったAIの不動産査定システムを構築するなど、不動産テック事業をメインに行なっていました。

堂上:以前の経験を踏まえて、どういったことを大事に経営されていたのでしょう?

武井:働くみんなが幸せになることが会社の目的だとすると、まず管理職層が社員を支配する構造をやめようと思って、「管理しない」マネジメント手法を用いた自律分散型経営を目指しました。

堂上:役職関係なく、従業員がフラットな関係で、意思決定権が一人ひとりに分散されているということでしょうか?

武井:はい。階層型組織と違って、働く一人ひとりが選択肢を持ち、働く時間・場所、休日の設定や副業について基本的には本人が決められるようにしました。つまり、イニシアチブを逆転させた状態で会社をやりたいと思ったんですね。

堂上:おもしろい! うまくいきましたか?

武井:今でこそティール組織やホラクラシーなどの概念が生まれましたが、2007年当時は前例がなかったので試行錯誤の連続でした。リーダーがいない組織づくりについて、先輩経営者からは「甘えたことを言うな。会社はサークルじゃないんだぞ!」と説教を受けることも(笑)。ただ、徐々に僕たちのやり方が理解され、おかげさまで2017年には「ホワイト企業大賞」を受賞させていただきました。経営の書籍も3冊ほど出版し、会社は今も続いています。僕自身は4年前に代表を降り、後任に譲りました。

堂上:素晴らしい。僕もこの仕事をしていると、人を育てて後任者を生み出すことが最終目標だなと感じています。そうしないと、サステナブルな経営ができないですよね。

武井:そうですね。僕は現在、コミュニティ通貨のプラットフォームを運営する、非営利株式会社eumo(ユーモ)の共同代表として活動したり、10社程度のソーシャルベンチャーの役員をやっていたり、20社ほどの企業の外部顧問やアドバイザーを務めたりしています。関わっている会社の半数はボランタリー、もしくは金銭ではなくモノで報酬を受け取っています。今日お持ちした冊子も、友人の坂井勇貴さんの活動を応援するためにボランティアとして協力制作したものです。

堂上:僕、この本を譲り受けた友人が嬉しそうに持っている写真をFacebookでアップしてて、ずっと気になってたんです。これはどういう冊子なんですか?

武井:現代経済では説明がしにくいような人たち、たとえば元自衛官の人、プロギャンブラーなど約80人に取材しています。「お金がない世界でも十分に生きられることを、思い出させる本を作りたい」という坂井さんの思いからスタートし、冊子づくりにかかる費用はすべてクラウドファンディングで募りました。この本はお金では買えず、書店にも並んでいません。知り合いから知り合いへ手渡ししていくんです。

堂上:「お金のいらない社会」を目指す武井さんたちらしいプロジェクトですよね。

既存の社会の仕組みから浮き上がったお金への違和感

武井:理想的な働き方を考えていくと、労働基準法や税法、会社法に疑問を感じるようになりました。いつ誰がどういう目的で作ったのか。作られた当時はそれ以外にやりようがなかったのですが、やはり今の時代にフィットしてないと思うわけです。その最たる制度のひとつが貨幣でした。

堂上:お金の仕組みがそもそもおかしいと?

武井:はい。先ほど堂上さんがおっしゃったサステナブルな観点からいくと、資本主義経済は持続可能ではない。これに気づいたのは、僕が不動産業界でビッグデータを扱っていたことと大きく関係しています。日本は2009年から人口が減り始めて、空き家問題が深刻化している。なのに、あちこちで新築を建て続けている。

堂上:需要と供給のバランスがおかしくなっていますよね。

武井:世界各国の法律と不動産の関係を見ていくと、先進国で新築住宅の供給量に対して行政の規制がかかってないのは、日本だけだということがわかったんです。たとえばアメリカは、新築が建てられるエリアが法律でかなり厳しく制限されています。ヨーロッパはもっと厳しく、基本的には新築を建てない方針なんです。

堂上:なぜ日本だけ違うのでしょう?

武井:僕も不思議に感じて調べていくと、これが貨幣論と繋がっていたんです。そこでお金とは何かを考えるきっかけになりました。そして、お金は植民地政策の延長線上にあって今なお、人を支配するために作られてると気づいたんです。

堂上:具体的に教えていただけますか?

武井:2023年12月時点で、日本のマネーストック(M3)は1,600兆円(※)ほど存在していますが、資本経済の中でそれをお互いに奪い合ってる状態です。これの何が問題かというと約99.7%が、誰かの借金で作られてるということです。
※出典:日本銀行「マネーストック速報(2024年2月)」

堂上:というと?

武井:債務貨幣システムというんですが、日本円と呼ばれる約1,600兆円のうち、約99.7%は負債から発行されていて、残りが純資産として発行されています。硬貨と紙幣を見比べてほしいのですが、硬貨は「日本国」と書かれています。これは政府が純資産として発行している「公共貨幣(パブリックマネー)」(※)と呼ばれるものです。一方紙幣は「日本銀行」と書かれていますよね。これは日本銀行が貸付(負債)として発行している。硬貨と紙幣で発行元が違うんですよ。
※出典:公共貨幣フォーラム「公共貨幣と債務貨幣」

堂上:そんなことも知らなかった。

武井:学校では教わらないので知らない人がほとんどだと思います。1,600兆円の約99.7%が負債から生まれていると言いましたが、日本政府は勝手にお金を発行することはできません。お金が発行されるのは誰かが借金する時です。このうち約半分は日本政府が国債発行を通じて日銀等の銀行から借りていて、残りの半分は個人や企業による金融機関からの借り入れです(信用創造)。

そして、民間の借金の約40%が不動産ローンです。ここが不動産と繋がっているんです。新築はローンが組みやすいですが、中古の住宅やリノベーションにはローンが組みにくい。なぜ日本が新築優位で経済を進めるかというと、それは借金を増やして、お金の総量(マネーストック)を増やしたいからなんです。

武井:人口は減っているのにどんどん家を建てろといわれる。銀行に借金することで金利が発生し、それを得たい人たちがいるからです。この問題は不動産だけでなくフードロスにも通じます。廃棄される食品は減らないのに、一方で食べれない人がたくさんいますよね。

日本の話では、現在7世帯に1世帯が三食満足に食べられないといわれているほど、貧困問題は深刻です。また貯蓄がゼロの世帯は、2023年時点で約30%(※)ともいわれています。足りない人がいる一方で別のところでは余ってる。社会課題の焦点は、物やお金が足りないのではなくて、きちんと分かち合えてないことが問題です。
※出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年以降)」

堂上:なるほど。でも、その人たちを救おうという政策もない。

武井:そうですね。日本政府は経済成長と適切な分配を目標に掲げていますが、分配はほとんど機能していないと思います。

サステナブルな経済を語る上で貨幣論が避けられない理由とは?

武井:日本政府は国債の金利で、年間平均10兆円近くを払い続けています。そして、民間も多額の金利を払っている。では、その金利はどこに行くのか? 日本銀行は実は政府の機関ではなく、株主がいるプライベートバンクです。

堂上:プライベートバンクの株主たちが国や企業、個人に借金を抱えさせて利益を吸い上げている?

武井:そうです。これが資本主義経済が無限成長を求め、暴走する理由です。日本という国を100人の国だと考えてみてください。僕が国民100人に100万円ずつ貸して、1年後には10%の金利をつけて110万円にして返してねと言ったとします。100人に100万円で1億円。その総量は変わらないのに、1年後には1億1000万円にして返さないといけない。債務者たちは経済活動をしてお金を増やそうとする。1年後、お金が増やせた人は返済できますが、増えない人や減った人は返せません。

堂上:では、もう1回借りる?

武井:そうです。そうやってまた貸す、ということを繰り返して、貸し出しを止めた瞬間にバブルが崩壊する。これがずっと明治維新以降、繰り返されている近代経済の仕組みです。

堂上:なるほど。貨幣の発行の仕組みをたどると分かってきますね。

武井:これがサステナブルな経済を語る上で、貨幣論を避けて通れない理由です。一人も取り残さない社会を目指そうといわれていますが、現代の貨幣発行の仕組み自体が、誰かを取り残す仕組みになっています。ごく一部の人たちだけが金利収入を得て儲かって、あとの人は取り残されてしまう。

お金に依存しない、ウェルビーイングな社会の作り方

堂上:富を得たい人がお金を貸して、ノットウェルビーイングな人を生み出してしまった。武井さんはこの問題に気づいて、社会をどう変えようと思ったのですか?

武井:暴走する貨幣制度を変えるためには、資本主義に変わる次の社会を作る必要があると思います。そのためには、お金に依存しない新しい仕組みが必要で、鎌倉投信共同創業者の新井和宏さんらと共に「eumo」という共感型資本経済を促すプラットフォームを構築しました。

堂上:eumoについて詳しく教えてください。

武井:eumoは前払式のデジタル通貨で、購入したeumoは電子マネーと同じように加盟店での支払いに使うことができます。ただし、eumoを使用できるのは3カ月のみ。

堂上:使用期限があるんですね。

武井:経済的な不安を減らすため、多くの人がお金を貯めることが良いことだと信じて、できる限りお金を使いたくないという心理が働いています。その結果、所有する人とそうでない人の格差が拡大してしまい、多くの社会課題が生まれています。なので、eumoは使用期限を設けて、貯蓄ではなく循環を促そうとしています。

また法定通貨は流動性が高く効率的な場所で使われやすいため、必然的に都会に集まり、地域社会との格差が開いています。うまくお金を循環させるためには、「共感」が鍵になると思いました。思いのある人たちが作り上げた事業や、コミュニティに共感した人が、eumoを介して繋がることで、地域社会にもお金が循環するようにデザインしています。

武井:eumoが普及した共感資本社会は、お金を稼ぐために生きるのではなく、幸せになるためにお金を使う世界を目指しています。eumoの特徴は奪い合いではなく、分かち合うこと。だから、貯蓄できないという点と、支払時にチップを上乗せして支払うという点がすごく重要なんです。それをデジタル技術を使って実装しています。

堂上:とてもおもしろい仕組みなのですが、どうやって構想されたのですか?

武井:使用期限があるお金は「エイジングマネー(腐るお金、減価するお金)」と呼ばれるのですが、その構想はすでに存在していたんです。起業家・思想家のシルビオ・ゲゼルや哲学者のルドルフ・シュタイナーらが提唱していますし、児童文学作家のミヒャエル・エンデも著書で言及しています。

堂上:ミヒャエル・エンデってあの『モモ』の原作者?

武井:はい。『エンデの遺言』にエイジングマネーのことが触れられているんですよ。ゲゼルをはじめとする先覚者は、お金は生産活動の等価代償でしかなく、利子を生まない貨幣が使える新たな社会を夢想しました。世の中の自然物は基本的に時間と共に劣化していきますよね。お金も食べ物のように消費されるべきだと説いたのです。

ゲゼルの経済思想を実践した街があります。オーストリアのヴェルグルという田舎町です。町の負債と失業対策のため、貨幣と共に「エイジングマネー」を導入したんです。町の人たちは額面を維持できないお金を積極的に使ったため消費が促進され、経済が活性化しました。世界恐慌後世界恐慌後あっという間に地域経済が復活し、ヴェルグルの奇跡と呼ばれています。ただ当時のオーストリア政府がエイジングマネーは認めないとして、あっという間に回収されてしまったんですが……。

堂上:その後、エイジングマネーだけで成り立っている社会はないのでしょうか?

武井:ないと思います。近い考え方の地域通貨は少しずつ増えていますが。eumoは円と違って一定地域でのみ使えるコミュニティ通貨ですが、社会で生きていくためには税金を支払ったり、生活材を購入するためにお金は必要です。なので、加盟店はユーザーから受け取ったeumoを日本円に変えられるようにしています。これがeumoをブロックチェーンにはしていない理由です。ただ、いつかはオンチェーン化させて、eumoと法定通貨との兌換性を切り離して、独自経済をつくりたいと思っています。

堂上:eumoの課題は何ですか?

武井:ユーザーや加盟店、共感株主などの共感者を広げていくことです。私たちの活動を理解・共感してくださる方に出資をしてもらっています。一般的な株主は「出資したんだから、リターンをよこせ」とおっしゃると思いますが、僕たちは非営利株式会社で株価を固定してるので、キャピタルゲインもありません。純粋に思いに共感していただいて仲間になってくださっています。現在370名ほどいらっしゃいますが、もっと仲間を増やしたいですし、ユーザーも加盟店も通貨を作るコミュニティマネージャーも増やしていきたいです。

堂上:現在、eumoのユーザーは何人ぐらいいるのですか?

武井:ユーザーは1万人弱。加盟事業者は550くらいです。最近は自治体との連携も増えてきています。

堂上:eumoが描く新しい未来に、僕は可能性をすごく感じています。仲間を増やすためには何が大事だと思いますか?

武井:やはり「共感」が大事だと思います。ここ数年多くのペイメントサービスが誕生し、電子マネーのプラットフォームも増えましたが、これらを普及させるため、経済合理性によってユーザーや加盟店を獲得する方法が取られています。いわゆるマーケティングですね。

地域通貨が一定数流通していた地域でもpaypayなど、より利便性が高く、お得感が高いプラットフォームが出てくればあっという間にユーザーはそちらに流れます。共感でお金が循環する仕組みをデザインしないと、地域通貨は資本の論理で駆逐されてしまう。マーケティングという発想そのものが資本主義の産物だと思っています。

堂上:まさに僕たちのような広告会社は資本主義の権化で、物欲を煽るための広告を作ってきたわけです。経済活動を促していたけれど、それは豊かな人をより豊かにし、弱者から搾取していただけでした。猛省し、我々が変わるべきタイミングなのだと思います。

武井:そうですね。昔は同じ部族の中ではお金は存在せず、別の部族と取引をする時にお金を介在させたといわれています。知らない人とその場限りで取引をするための道具として生まれたのがお金です。金融のことをファイナンスといいますが、その語源は「フィニッシュ=終わらせる」という意味があるんです。そして、知らない人と取引をする場がマーケットです。マーケティングは知らない相手から効率よく収奪することが目的なので、相手が破産しようが借金しようが関係ない。だから、少々暴力的な力が働くわけです。

マーケットの反対は何だと思いますか? それは「コミュニティ」です。コミュニティは人間関係を意味します。eumoはマーケティング的な手法でお金でユーザーを獲得せず、共感で広がっていかないと意味がない。仲間を増やすには待つしかないと思っています。

僕自身、人間関係が豊かであることがウェルビーイングだと思っています。多様な人たちが同じ空間で、偶発的に親しくなっていくことがすごく好きなんです。

堂上:僕も同じです。だから、こうやって会いたい人に会って話せるのがうれしくてしょうがない(笑)。

お金ではない、共感が資本の社会へ

堂上:武井さんは10年後や20年後、どんな社会になっていると思いますか?

武井:現在の貨幣制度は、近い将来破綻すると考えています。経済メカニズムも変わらざるを得ないのではないでしょうか。円に変わる貨幣がどういう形になるかは、まだわからないですが。

堂上:お金に頼らない世界を作るには、僕らはどうやって生きていくといいでしょうか?

武井:仲間をたくさん作ることが大事だと思います。極論を言うと、友達が多かったらお金を使わなくても助け合って生きていけますよね。自分で畑を耕して収穫した作物と引き換えに別の食糧を得たり、自分のできることで困っている人を助けたり、誰かに助けられたり。僕は2023年に、出資者300人ほどを募ってお米の販売会社を立ち上げました。地方で自然農をやってる農家さんのお米を買って応援したり、農作業を手伝ったりしています。また僕自身、都心で畑もつくって「農コミュニティ」を始めています。

堂上:互いに食糧を供給しあい、支え合いながら生きていける社会が理想ということですね。

武井:はい。僕は10歳、8歳、3歳の子どもが3人いるんですが、彼らが社会に出る頃には、もう違う世界に移行してると思っていて。彼らにはお金を稼ぐとか、効率的に物事を動かす能力よりも、とにかく友達を作ることが一番大事だよと伝えています。

先日10歳の子どものハーフ成人式に参加した時、120人ぐらいの子どもたちが将来なりたいものを発表する時間がありました。そのうちの3分の1以上が「優しい人になりたい」とか「困ってる人を助ける人になりたいです」と言ったんです。お金持ちになりたいという人が、一人もいなかった。

堂上:いい学校だなぁ。

武井:普通の公立学校なんですよ。一方で、ビジネス思考が強い方にeumoの仕組みを伝えた時「これ、何のメリットがあるんですか? 経済メリットがないと消費者は動かないでしょう?」といわれることがあります。でも、eumoは消費者ではなく、応援者なんですよね。eumoの株主や加盟店、ユーザーはeumoの理念に共感して集まった仲間で、互いを応援し合っている。すごくいい関係なんですよ。この辺りをどうやったら理解してもらえるか。でも、あともうちょっとな気がしています。

堂上:実は僕も“共感株主”として仲間に入れさせてもらっているんですが、eumoはお金の資本ではなくて共感を資本とするというのがいいですよね。

武井:そうですね。貧困問題や文化財保護問題など、今日本が抱えている社会課題は予算がつかないため、解決できていない状態です。人はどうしたらお金ではない力学で動くかというと、やはり共感だと思うんです。

堂上:武井さんたちが掲げる共感資本社会を普及させたいですね。eumoがひとつの成功事例として認知されたら、理想の社会に近づきそうです。

武井:今までビジネスでの成功事は上場することだったり、会社の規模が大きくなることだったと思いますが、関わる人たちがみんな幸せであること。それが僕たちの成功だと思っています。

堂上:今日はめちゃくちゃ面白い話を聴かせて頂きました。共感資本社会が生まれたら、もっと世界はお互いの依存と自律の中で成長していけそうですね。武井さん、一緒に大きな新たな社会を創っていきたいです。ありがとうございました。

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