
上腕三頭筋を集中的に鍛えられるフレンチプレスは、腕まわりのボディメイクを目指す人に人気のトレーニング。ダンベルを使えば自宅でも手軽におこなえるが、「正しいフォームがわからない」「どの重さから始めればいいのか」「ひじを痛めないか不安」など、初心者にはハードルが高いという声も。
この記事では、フレンチプレスに期待できる効果や正しいフォームとやり方、効果を引き出すポイントを解説。理想の二の腕を効率的に手に入れたい人は、ぜひ参考にしてみて。
この記事の監修者

三矢 紘駆さん
日本体育大学助教 日体大ボディビル部監督
フレンチプレスで鍛えられる筋肉
主な役割 | 上腕全体の約60%を占めて、ひじを伸ばす動作を支える。日常生活では、物を持ち上げる動作や物を引く動作に関わる |
位置 | 二の腕の裏側に位置する筋肉 |
構成筋肉 | 長頭(ちょうとう)・外側頭(がいそくとう)・内側頭(ないそくとう) |

フレンチプレスの効果
効果 | ポイント |
二の腕の引き締め |
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腕の疲れを軽減 |
|
スポーツパフォーマンスの向上 |
|
フレンチプレスのやり方
- 両手でおこなうフレンチプレス
- 片手でおこなうフレンチプレス
両手でおこなうフレンチプレス
- 背筋を伸ばして両足が床につく程度に深く椅子に座るか、肩幅に脚を開く
- ダンベルを両手で持ち、ひじを軽く曲げた状態で腕を真上に伸ばす
- ひじが外側に開かないように意識してダンベルを下ろす
- ひじを伸ばしてダンベルを元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | イス・ダンベル |
負荷の調整 | 可能 |
片手でおこなうフレンチプレス
- 背筋を伸ばして両足が床につく程度に深く椅子に座るか、肩幅に脚を開く
- ダンベルを片手で持ち、地面と垂直になるように上腕を耳の横あたりに固定する
- ひじが外側に開かないように意識してダンベルを下ろす
- ひじを伸ばしてダンベルを元の位置に戻す
ケガのリスク | 高い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | イス・ダンベル |
負荷の調整 | 可能 |
【初心者も挑戦しやすい】フレンチプレスの種類3選
- EZバーフレンチプレス
- チューブフレンチプレス
- タオルフレンチプレス
EZバーフレンチプレス
- ベンチに座り、EZバーを肩幅程度に持つ
- ひじを曲げ、バーを頭の後ろまで引く
- 腕を伸ばし、バーを頭上に押し上げる
- バーをゆっくりと元の位置まで戻し、同じ動作を数回繰り返す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | イス・EZバー |
負荷の調整 | 可能 |
チューブフレンチプレス
- 片脚でチューブを踏み、反対側の手でもう一方の端を持つ
- ひじを伸ばし、チューブを頭上に引き上げる
- ゆっくりと元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | チューブ |
負荷の調整 | 不可 |
タオルフレンチプレス
- タオルを後ろ手にして両端を掴む
- 下の手で負荷をかけながら反対の手でタオルを上に引っ張る
- ひじを曲げ、タオルを肩の後ろに下ろす
- 数回繰り返した後、反対側も同様におこなう
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | タオル |
負荷の調整 | 可能 |
フレンチプレスの重量と回数
- 基本:8~12回、3~5セットできる重量
- 筋肥大目的:ギリギリ10回上げられる重量で3~5セット

基本:8~12回、3~5セットできる重量
基本的な回数は1セットあたり10±2回を目安におこない、セット間の休憩は60〜90秒程度。自重トレーニングなど負荷が軽い場合は毎日おこなってもOK。
初心者で正しいフォームでダンベルを扱えない場合や、ダンベルやバーベルがない場合は以下のトレーニングがおすすめ。
- ひざをついておこなう「プッシュアップ」
- 壁に手をついた状態での「プッシュアップ」
- 手幅を狭めておこなう「ナロープッシュアップ」

水量で重量が調節できるダンベルは、100円ショップなどでも販売されています。ペットボトルよりも握りやすく、重量も自由に調整できるので、初心者の方でも活用しやすいのがメリットです。
筋力に自信がない場合は、筋力アップのためにフレンチプレスよりも負荷が低く、正しいフォームを維持しやすい壁に手をつくプッシュアップがおすすめです。
筋肥大目的:ギリギリ10回上げられる重量で3~5セット
筋肥大を目指す場合は、10回で限界を迎える重量がベスト。上腕三頭筋に十分な負荷を与えるため、最初の数セットは10kg、筋疲労で10kgが10回上がらなくなったら7kgにするなど「10回で限界を迎える重量」をセットごとに調整することも大切。
セット間の休憩時間は60〜90秒を確保し、トレーニング頻度は最低でも48時間はあけて週に2〜3回のペースを維持すると効率的に筋肥大できる。
フレンチプレスの効果を高める6つのポイント
- ひじは痛くない範囲で正面に向ける
- 動作は反動を使わずゆっくりおこなう
- 手首の位置を意識して関節の負担を減らす
- ウォーミングアップやクールダウンを取り入れる
- セット間の休憩は1分程度しっかり取る
ひじは痛くない範囲で正面に向ける
ひじの向きを正面に向けると、上腕三頭筋の中でも一番大きな部位である長頭を鍛えやすくなる。反対に、ひじを広げすぎると上腕三頭筋への負荷が分散し、効果が半減してしまう。動作中は常にひじと肩が一直線になるように意識して。
また、ひじの位置が内側に入りすぎるとひじ関節に負担がかかり、ケガのリスクが高まる。安全にトレーニングをおこなうためにも、慣れないうちは鏡を見ながらひじの位置を確認し、痛くない範囲で両腕が平行になるよう調整することが大切。

ひじの向きをなるべく正面をむけると上腕三頭筋の長頭が鍛えられて、効率的に上腕三頭筋を大きくしたり、腕の引き締めにつながったりします。ただし、トレーニング中のひじの向きは、動作中に痛くならないのが大前提。
やりながら徐々に痛くならずに、できるだけ正面に向けられる角度がわかってくるのも、筋トレの「やり込み要素」ですので、醍醐味だと思って自分なりにベストな向きを探ってみましょう。
動作は反動を使わずゆっくりおこなう
ゆっくり動作すると上腕三頭筋にしっかり負荷がかかり、より効果的に筋肉を刺激できる。とくに、ダンベルを下げる動作では、重力に任せて落とすのではなく、意識的にブレーキをかけよう。
反動を使わない動作は、ケガのリスク軽減につながる。 フレンチプレスは、比較的ケガをしやすい部位のトレーニングでもあるため、動作は丁寧におこなうことを心がけて。

上腕三頭筋やひじはケガをしやすい部位ですので、丁寧な動作を意識しつつ、あまりにもゆっくりおろしすぎないようにしましょう。
ダンベルの上げ下ろしの動作は一定のリズムを保ち、上げる動作に2秒、下げる動作に2秒かけるように意識してみてください。
手首の位置を意識して関節の負担を減らす
手首が曲がった状態でトレーニングを続けると、手首の痛みや違和感の原因になる。そのため、ダンベルを持つ場合は、手のひらが常に天井と並行になるように意識しよう。バーベルの手幅は肩幅程度を目安に、手首が曲がらない位置を意識して。
親指でしっかりと重りを包み込むように握ると手首の安定性が増しやすい。
ウォーミングアップやクールダウンを取り入れる
ひじや肩への負担を軽減するため、トレーニング前は肩を大きく回す運動などで肩の可動域を広げておこう。また、トレーニング後は肩を回したり、ひじの曲げ伸ばしをしたり、肩をもみほぐすなど、軽い運動で身体をケアするとよい。
ただし、クールダウンでストレッチをやりすぎると、かえって筋肉痛の原因になることも。 トレーニング後のストレッチは過度におこなわず、痛みがある場合は冷やすなどして炎症を抑えて。

セット間の休憩は1分程度しっかり取る
フレンチプレスのセット間の休憩は約1分間を目安にしっかり取ろう。休憩が短すぎると筋肉が十分に回復せず、フォームが崩れやすくなる。
また、休憩中は軽く腕を振るなどして血流を促進すると、疲労回復を早められることも。余裕があれば重量を再調整したり、フォームを復習したりして、トレーニングに集中できる環境をつくろう。
フレンチプレスと合わせておこないたいトレーニング5選
- ナロープッシュアップ
- ダンベルキックバック
- ベンチディップス
- ナローベンチプレス
- プロネイト・ロープ・プレスダウン

ナロープッシュアップ
- 腕立て伏せの姿勢になり、手は肩幅程度に置く
- ひじを曲げ、胸が床に近づくまで身体を下ろす
- ひじを伸ばして元の姿勢に戻り、同じ動作を繰り返す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | 床マット |
鍛えられる部位 | 上腕三頭筋・大胸筋内側 |
負荷の調整 | 可能 |
ダンベルキックバック
- 左手と左脚のひざをベンチにつき、上体を前傾させる
- 右手でダンベルを持ち、上腕を地面と平行、ひじを直角に曲げて固定する
- ひじを伸ばし、ダンベルを後方に引く
- ダンベルをゆっくりと手前に戻し、動作を繰り返す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル・イス |
鍛えられる部位 | 上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 可能 |
ベンチディップス
- ベンチに座り、両手を端に置く
- 脚を前に伸ばし、ひじを曲げながらお尻をベンチから下ろす
- 腕の力で支えながら、身体を上に持ち上げる
- ひじを元の位置に戻し、数回繰り返しおこなう
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | イス |
鍛えられる部位 | 上腕三頭筋・大胸筋下部 |
負荷の調整 | 可能 |
ナローベンチプレス
- ベンチに仰向けになり、バーベルを肩幅程度に握る
- ひじを曲げ、バーベルをゆっくりと胸の近くまで引き寄せる
- 腕を伸ばし、バーベルを天井に向けて持ち上げる
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | スミスマシン |
鍛えられる部位 | 上腕三頭筋・大胸筋内側 |
負荷の調整 | 可能 |
プロネイト・ロープ・プレスダウン
- ケーブルマシンにロープを取り付け、足は肩幅程度開く
- 手のひらを平行に向けてロープを持ち、ひじを体側に固定する
- ロープを太ももの方向に向けて下ろす
- ゆっくりとロープを元の位置まで戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | ケーブルマシン |
鍛えられる部位 | 上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 可能 |
フレンチプレスに関するQ&A
フレンチプレスは毎日おこなっても大丈夫?
A.毎日おこなう必要はない。

筋肉の回復を考慮して、トレーニング後は少なくとも48時間程度の回復時間を設けるのがおすすめです。週に3回を上限にして、週に2回おこなう程度が理想的です。
フレンチプレスに限らず、同じ部位を鍛えるトレーニングの頻度が多すぎると筋肉が十分に回復できず、かえってパフォーマンスの低下やケガのリスクにつながります。上腕三頭筋を効果的に鍛えるためにも、適切な休養日を設けましょう。
効果が出るまでにどのくらい時間がかかる?
A.2〜3ヵ月程度。

筋肉はすぐには大きくならないため、フレンチプレスの効果を実感するには、2〜3ヵ月ほどトレーニングを続ける必要があります。トレーニングを始めてから数週間は身体が運動に慣れる期間なので、力こぶがつき始めたと感じても、まだ腕自体は太くなりません。
効果が目に見えてわかるまでには時間がかかりますが、徐々に身体は変化していきますので諦めずにトレーニングを続けましょう。
初心者でも安全に取り組める?
A.高重量を扱う場合だと初心者には難しい種目だが、注意点を押さえれば実施は可能。

フレンチプレスは、高重量を扱う際にバランスを崩しやすく、ケガのリスクがあるため、初心者には難しい種目です。ただし、「無理のない重量から始める」「重量は徐々に上げる」「補助者を設ける」などすれば初心者でも安全に取り組めます。
また、トレーニング前はウォーミングアップで身体を十分温めると、ケガのリスク軽減につながります。加えて、動画や記事を参考に正しいフォームをしっかり身につけたり、疲れたら無理をせず休憩したりするのも忘れないようにしましょう。
女性がおこなうと男性のような太い腕になる?
A.ならない。

女性は筋肉の発達を促す男性ホルモンの分泌量が少ないため、男性に比べて筋肉がつきにくい傾向があります。そのため、女性がフレンチプレスをおこなっても、男性のような太い腕になることはありません。
それでも太く見えるのが不安であれば、余力を残しながら15回3〜4セットおこなって程よく疲労感を感じる程度の重量に調節し、筋肥大自体が起きにくい状態にするのがおすすめです。
腕が筋肉痛のときはトレーニングを休むべき?
A.腕に筋肉痛がある場合は、トレーニングを休むべき。

筋肉痛は筋肉を修復しようとしているサインです。筋肉は修復をするタイミングで太く、強くなるので無理にトレーニングを続けるとケガはもちろん、筋トレの成果が出にくくなることもあります。
しっかり睡眠や栄養をとるなど、次のトレーニングに備えながら休んでくださいね。
フレンチプレスと同じ効果を得られるトレーニングは?
A.ナローベンチプレス、ライイングエクステンション、プッシュダウンなど。

「ナローベンチプレス」は、通常のベンチプレスよりも手の幅を狭くすることで、上腕三頭筋への刺激を高められる自重の筋トレです。
また、「ライイングエクステンション」は仰向けに寝ながら上腕を地面と垂直に前ならえをしてひじを曲げ伸ばしすることで上腕三頭筋を鍛える種目、「プッシュダウン」はケーブルマシンを使って上腕三頭筋を鍛える種目です。
上腕三頭筋を鍛えるトレーニングはフレンチプレスだけではないので、フォームが正しくできる種目を選んで挑戦してみましょう。
2024年日本体育大学大学院体育科学研究科博士課程修了。博士(体育科学)。日本体育大学体育研究所助教であり、同学のボディビル部にて監督およびボディビルクラブ代表を務める。2024年におこなわれた第38回東京クラス別ボディビル選手権大会では、ミスター75kg以下級にて優勝。
【資格】
NSCA-CSCS