
腹斜筋は鍛えることで「お腹周りがすっきりする」「体幹が安定する」など、さまざまな効果が期待できる。
この記事では、自重やダンベルを使った腹斜筋を鍛えるのにおすすめの筋トレメニューを紹介。また、腹斜筋を鍛えるメリットや効果を高めるコツも紹介しているので、筋トレ初心者の人はぜひ参考にしてみよう。
この記事の監修者

岡部 友さん
NSCA-CSCS公認コンディショニングスペシャリスト
ACSM-CRT公認パーソナルトレーナー
分子栄養学健康指導士
腹斜筋とはどんな筋肉?
お腹は「腹直筋」「腹横筋」などさまざまな筋肉で構成されているが、腹斜筋はどこにある筋肉でどのような役割を持つのだろうか。まずは腹斜筋の位置と役割を確認してみよう。
- 腹斜筋はどこにある?
- 腹斜筋の役割
腹斜筋はどこにある?
腹斜筋は、腹部の側面から背中にかけて位置する筋肉で、外腹斜筋と内腹斜筋の2つの層で構成される。
外腹斜筋は、腹部の表層に位置し、肋骨から腸骨稜にかけて斜めに走る大きな筋肉群。一方、内腹斜筋は、外腹斜筋の内側に位置し、外腹斜筋とは逆方向に斜めに走っている筋繊維。
腹斜筋は、腹部全体の約3分の1を占める大きな筋肉。身体の表面に近い位置にあるため、ウエストラインの形成において重要な役割を果たす。腹斜筋が発達するとかえってくびれがなくなり、胴回りが厚く見えてしまうので、自重でのトレーニングや腹横筋など他の腹筋も使うトレーニングなどをおこなうのがおすすめ。
腹斜筋の役割
腹斜筋のおもな役割は、身体を左右にひねる動作や回旋、側屈のサポートなど。身体の回旋や側屈、体幹を安定させることはゴルフのスイングなど、さまざまなスポーツで使われる動作のパフォーマンスアップにもなり、日常生活の動作をスムーズにすることにもつながる。
腹斜筋を鍛えることで得られる効果
腹斜筋を鍛えることで、お腹周りの見た目を変えるだけでなく、日常生活やスポーツにおける嬉しいメリットも期待できる。
- 体幹が安定し姿勢がよくなる(ほかの腹筋と合わせて鍛える必要あり)
- 運動パフォーマンスが向上(ほかの腹筋と合わせて鍛える必要あり)

体幹が安定し姿勢がよくなる(ほかの腹筋と合わせて鍛える必要あり)
腹斜筋など、お腹の筋肉を総合的に鍛えることにより、体幹の安定性が向上し、背骨をしっかりと支えられる。
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による猫背や巻き肩などの姿勢の乱れを防ぎ、姿勢を整える効果が期待できる。
お腹周りを鍛えて腹圧を高めることで、内臓をしっかりと支えられるため、腰痛予防にも効果的。日常生活での動作も安定し、長時間のデスクワークや座位姿勢による疲れも軽減される。

運動パフォーマンスが向上(ほかの腹筋と合わせて鍛える必要あり)
腹斜筋を強化することで、全身の動きがスムーズになり、スポーツ時のパフォーマンスが向上する効果が期待できる。とくに腹斜筋はボクシングでよける動作など、斜めの動作に関与する。
さらに、腹斜筋を含む腹筋全体を鍛えることで、走る、跳ぶ、投げるなど、あらゆるスポーツ動作の基礎となる体幹の安定性が向上。バランス能力も改善されるため、急な方向転換や姿勢の崩れにも即座に対応できる身体を目指せる。
もちろん、運動のみならず日常生活での動作も安定するため、階段の昇り降りや重い荷物を運ぶなどの動作も楽になる。
また、パフォーマンスが上がることで、けがのリスクも軽減され、より安全に運動やスポーツを楽しめる点もメリットのひとつ。

【自重】腹斜筋を鍛えるおすすめの筋トレ4選
- サイドクランチ
- バイシクルクランチ
- プランク
- サイドプランクの状態でのクランチ
サイドクランチ
腰は床から離さないように注意して、側腹部に力を入れて上体を持ち上げること。呼吸は止めないように意識して、ゆっくりとおこなうことが大切。
上体を持ち上げる際はあごを引き、頭と首に負担がかからないように注意しよう。
<やり方>
- 横向きに寝て、ひざを立て、上にきた脚を前にするように脚を重ねる
- 手は上に上げてバランスをとる(バランスがとれるようであれば腰においてもOK)
- 上体を持ち上げ、数秒間キープしてから戻し、反対側も同様におこなう

バイシクルクランチ
腹筋運動に足の動きと上半身の捻りが加わり、腹直筋だけでなく、腹斜筋、腸腰筋などお腹の横側にも負荷をかけられる。
- 仰向けに寝て、ひじを開かずに手を頭の後ろに置く
- ひざを曲げ、足を床から離し、自転車をこぐような動作で足を交互に動かす
- 同時に、反対側のひじをひざに向けて上体を起こす

プランク
クランチなどの運動に比べて、運動初心者でも取り組みやすいのが魅力。一直線の姿勢をキープすることで、体幹を刺激して鍛えられる。
- うつ伏せに寝て、両ひじを肩の真下に置き、足の先で身体を支える
- 身体を一直線に保ち、腹筋に力を入れる
- ついている肘を自分の胸に向かって引くように持ち上げる
- 30秒〜1分間維持し、ゆっくりと元の位置に戻る

サイドプランクの状態でのクランチ
お腹の横側を中心に腹部全体に刺激を与えられるトレーニング。一直線の姿勢をキープするよう意識することで、姿勢を改善する効果も期待できる。ただし、難易度が高いため、そのほかの腹筋運動ができるようになったら挑戦してみよう。
- 手を肩幅より少し開いて床につき、つま先を立てる
- 右手を頭の後ろに添える
- お腹を丸めるようにして右ひじを左ひざに近づける
- 身体をひねる向きを変え、反対側も同様の動作をおこなう
【ダンベル使用】腹斜筋を鍛えるおすすめの筋トレ2選
やりすぎは禁物だが、自重よりも高負荷で効果的なトレーニングができるので、参考にしてみよう。
- ロシアンツイスト
- ウッドチョッパー
ロシアンツイスト
腹筋や脇腹など、お腹周りの筋肉を効率よく強化できるトレーニング。上半身をひねりながらバランスを取る必要があるため、体幹をしっかり鍛えられる。
- 体育座りの状態で、1つのダンベルを胸の前で両手で持つ
- 両足を少し床から浮かせてキープする
- ダンベルは胸の前で固定したまま、上体を左右にひねる

また、顔の位置も重要です。ダンベルと常に見るように上体をひねることを意識しましょう。
ウッドチョッパー
木こりが木を切る動作に似ていることから名付けられたトレーニング。木を切るようなイメージでダンベルを斜め方向に上げ下げすることで、腹部を集中的に刺激する。
- 脚を肩幅程度に広げる
- ひざを少し曲げた状態で、1つのダンベルを両手で持つ
- ダンベルを腰の横に持っていき、身体を斜めに動かしてダンベルを振り上げる

腹斜筋を効果的に鍛えるためのコツ
腹斜筋を効果的に鍛えるためには、トレーニング頻度や栄養バランスのよい食事、有酸素運動との組み合わせなどに配慮する必要がある。
- 適度な回数・頻度で取り組む
- トレーニング後にストレッチをおこなう
- バランスのよい食事を心がける
適度な回数・頻度で取り組む
腹斜筋のトレーニングは、週3~4回程度の頻度で、1種目につき15~20回を2~3セットを目安にしよう。とくに筋トレ初心者は、自重トレーニングからはじめ、徐々に負荷や回数を増やしていくことが重要。
トレーニングの間隔は最低でも48時間空けることで、筋肉の回復時間を十分に確保できる。同じ種目を連続しておこなうことは避け、トレーニングメニューにバリエーションを持たせることで、効率よく筋肉に刺激を与えられる。
体調や疲労度に応じて、適切に休息日を設け、効果的に筋力アップを目指そう。
トレーニング後にストレッチをおこなう
トレーニング後にストレッチなどの柔軟運動をおこなうことで、筋肉の緊張を緩和し、血行促進と筋肉の回復を促進できる。とくに腹斜筋は、体幹の回旋や側屈に関わる重要な筋肉であるため、丁寧なストレッチが不可欠。
1つのポーズを20~30秒程度キープし、呼吸を意識しながらゆっくりとおこなうことがポイント。反対側への体幹の回旋や、側方への軽いストレッチにより、筋肉の柔軟性を維持できる。
また、ストレッチ不足は筋肉の硬直や動きの制限を引き起こす可能性も。ストレッチの習慣をつけることで、けがの予防と運動効果の向上につながる。

身体の状態によって適切なストレッチ方法が異なります。猫背気味で骨盤が後傾しているような場合は、お腹周りが縮まっている可能性が高いので、より積極的にストレッチをおこなうようにしましょう。
一方、骨盤が前傾で、骨盤やあばらが開いているような場合は、ストレッチよりも呼吸のトレーニングであばらを下げていく動作をおこなうのがおすすめです。
バランスのよい食事を心がける
痩せたいからといって厳しい食事制限は禁物。適度なカロリー摂取と栄養バランスを意識した食事内容を心がけるようにしよう。
具体的には、筋肉の修復と成長に必要なタンパク質を中心に、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取すること。とくにタンパク質は体重1kgあたり1.2~1.6g程度を目安に、できるだけ良質な食材から補給するとよい。
また、現代人の食生活で不足しがちな、野菜や果物からの食物繊維の摂取も忘れずに。食物繊維をとることで、腸内環境の改善と代謝の促進につながる。
水分補給も重要で、1日2L程度を目安に、トレーニング前後でこまめに摂取しよう。
なお、脂質も制限しがちだが、筋肉を構成する細胞膜のもとになる大切な栄養素。不足しがちな「オメガ3系脂肪酸」と言われる魚やオリーブオイルなどの良質な脂質もしっかりと摂取しよう。

腹斜筋の筋トレに関するQ&A
腹斜筋のトレーニングには腹筋ローラーの使用も効果的?
A:腹斜筋だけが使われるわけではないが、使用は効果的。

お腹周りの別の部位も同時に鍛えるべき?
A:鍛えるべきかどうかは、人によって異なる。

筋肉のバランスは人によってさまざまです。たとえば、お腹の外側の筋肉が強く、中側の筋肉が弱い場合は、けがや腰痛の原因にもなる可能性もあるため、さらに筋肉を鍛えるというよりは、逆に外側の筋肉を緩める対策が必要になります。
また、お腹周りの脂肪が気になるという人は、腹筋関係なく減量・ダイエットが必要です。
お腹以外のほかの部位のトレーニングをする際にも、腹筋は非常に重要ですので、もちろん腹筋は鍛えたほうがいいですが、お腹だけを鍛えるのはおすすめしません。ほかの筋肉との連動を考えて、身体全体をバランスよく鍛えるのがおすすめです。
筋肉痛や腰の痛みが出たときの対処法は?
A:痛みによって対処法が異なるが、基本的には筋肉痛であればトレーニングをしてもよい。

痛みが出た場合は、痛みの種類によって対処法が異なります。筋肉痛の場合は、トレーニングを継続しても問題ありません。腰の痛みであれば、トレーニングをおこなうときに痛いのか、動かさなくても日常的に痛いかを確認しましょう。
トレーニングの際に痛むという場合は、フォームの見直しが必要です。また、腸腰筋を使用するトレーニングでは、腸腰筋が脊椎につながっているため、筋肉が過度に緊張して腰に違和感を感じる人もいます。
腹斜筋は鍛えすぎないほうがいいって本当?
A:鍛えすぎると、くびれがなくなってしまう可能性がある。

腹斜筋が肥大するくらいの強度や頻度でトレーニングをおこなった場合、筋肉は太くなっていくため、ウエストも太くなってしまいます。筋肉が引き締まりスポーツマンらしい体型にはなりますが、くびれを目指す人にとっては理想の体型にはならない可能性が高いです。
また、腹斜筋だけでおこなうという動作はなく、腹横筋などのほかの腹部の筋肉も一緒に動くことで動作がおこなわれます。そのため、腹斜筋だけでなくほかの筋肉を鍛えることでパフォーマンスが向上します。
女性が腹斜筋を鍛えるときの注意点は?
A:くびれがなくなる場合があるので、自分のなりたい体型を考えて必要かを判断しよう。

アメリカでは運動生理学、解剖学を学び、フロリダ大学在学中にNSCA-CSCS*の資格を取得。「SPICE UP FITNESS」(フィットネスジム)を運営する株式会社ヴィーナスジャパン代表取締役社長。美尻トレーナーとして女性から絶対的な支持と信頼を得ている。 外見的なボディメイクに限らず、心の強さと優しさを鍛えることをモットーとしている。「筋トレが折れない私をつくる!」(2018年 宝島社)「美尻トレ 究極のヒップメイク」(2017年 文藝春秋)「じぶんBIG LOVE! ~ゆりやん体づくり本~」(2024年 集英社)など著書・共著多数。