
食物繊維は「第6の栄養素」と言われており、整腸効果が高いことで知られているが、実はダイエットに役立つ効果も多く意識して摂取すると効率的な減量を目指せる。この記事では、食物繊維がダイエットに効果的な理由、1日の目安摂取量、摂取する際のコツなどを解説。食物繊維が多い食べ物や、手軽に作れるおすすめメニューも紹介するので、参考にしてみよう。
この記事の監修者

古谷 彰子さん
博士(理学) 管理栄養士
食物繊維がダイエットに効果的な理由
食物繊維はダイエットをはじめ、健康維持をサポートしてくれる効果が多いため積極的に摂取したい。ここでは、まず食物繊維がダイエットに効果的な理由を紹介。
- 満腹感が高まり、食べすぎを防げる
- 脂質や糖の吸収が抑えられる
- 血糖値の上昇がゆるやかになる
- 腸内環境が整うことで代謝が高まる
満腹感が高まり、食べすぎを防げる
食物繊維が豊富な食事は満腹感を高め、食べすぎを防いでくれる。食物繊維は水分を吸収して胃の中で膨らむため、少量の食事でも満腹感を得やすい。また、食物繊維は消化に時間がかかるため、満腹感が持続する。
そのため、次の食事まで過度な空腹を感じにくくなり、「間食」「ドカ食い」を防いでくれる。
さらに、食物繊維を多く含む食べ物を食べると、次の食事の血糖値上昇がゆるやかになる。ほか、食物繊維が豊富な食べ物を先に食べるだけでも血糖値の急上昇は抑えられるので、ダイエット中は意識して取り入れよう。

食物繊維は「食べ物から摂取する」のが効果的です。一方で、「難消化性デキストリン」のような食べ物からでない形で摂取しても、十分な満腹感は得られない可能性があります。
また、満腹感の持続時間は、食物繊維の「種類」「摂取量」「食べ合わせ」などによっても変わります。普段から食物繊維を意識してとる習慣を身につけて、ダイエットを健康的に進めましょう。
脂質や糖の吸収が抑えられる
食物繊維は消化に時間がかかるため、「脂質」「糖」と一緒に食べることで消化・吸収スピードを遅らせてくれる。最近の研究では、食物繊維を豊富に含む食事をとると脂質の吸収率を「20~30%程度減らせる」と言われている。
とくに水溶性食物繊維は腸内で粘性のあるゲル状になり、食事から摂取した「脂質」「糖」「ナトリウム」などを吸着。腸内をゆっくり移動して体外へ排出し、余分なエネルギーの蓄積を防いでぐれる。
血糖値の上昇がゆるやかになる
糖の吸収が遅くなると、比例して血糖値の上昇もゆるやかになる。その結果、蓄積される脂肪が少なくなる可能性が高くなる。一方、血糖値の急激な変動は肥満の原因になる。
これには、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が関係している。インスリンには脂肪の合成を促進する働きがあり、分泌量が増えるほど体内に脂肪を溜め込んでしまう。インスリンの分泌量は血糖値が急上昇したときに増えるため、食事をするときは食物繊維が豊富な食べ物を食べ、血糖値の上昇をゆるやかにしよう。
食事の際は「野菜から食べ始める」など、食物繊維を意識した食べ方をするのが、効果的なダイエットの秘訣。食物繊維の効果が発揮される時間は個人差や食事内容によって異なるが、健康的な食習慣をつけるためにも無理のない範囲で取り組んでみよう。

食物繊維の血糖値抑制効果は摂取した直後に現れるものではなく、ある程度時間がかかります。そのため、コース料理のようにサラダを一皿一皿を時間をかけてゆっくり食べ、「白米」「パン」「麺」などの糖質源はその後に食べるようにするのが理想です。
ただし、日本の食事スタイルでは「食物繊維源」と「糖質源」を同時に摂取することが多いです。順番を意識するときは、あくまでストレスにならない程度でおこなうことが大切です。
腸内環境が整うことで代謝が高まる
食物繊維は腸の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えてくれる。腸内環境がよくなると老廃物が体外へスムーズに排出され、代謝向上につながる。
また、食物繊維が善玉菌によって発酵されると、悪玉菌の増殖や食欲抑制作用のある「短鎖脂肪酸」が作られる。短鎖脂肪酸には便通をよくする作用があり、ダイエット中の便秘にも効果的。
また、「マグネシウム」は食物繊維との相性がよい栄養素。マグネシウムには善玉菌の一種である「酪酸菌」を増やす作用があり、食物繊維と一緒に摂取するとより腸内環境の改善が期待できる。野菜をはじめ、「海藻類」「豆類」「魚介類」に多く含まれているので、積極的に摂取しよう。

「バナナ」「ひじきなどの海藻類」「玄米」「ほうれん草」などは、マグネシウムを多く含む食材です。2023年の研究データによると、食物繊維は単独で摂取するよりもマグネシウムと一緒にとった方が「腸内環境の改善効果が高い」とわかっています。どちらも腸内環境を整えるために役立つ成分なので、バランスよく取り入れましょう。
ダイエットの味方!食物繊維の種類
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、どちらもダイエットの強い味方になる。ここでは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いを解説。代表的な食品群も紹介するので、ぜひダイエット中の食事に取り入れてみよう。
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、水に溶ける性質を持つ食物繊維。水分を吸収するとネバネバとしたゲル状になり、「糖」「脂質」の吸収を遅らせたり、コレステロールを体外に排出する働きがある。これにより血糖値の急上昇や脂肪の蓄積を抑えられる。
水溶性食物繊維の代表的な食品群は、以下の通り。水溶性食物繊維は不足しやすいため、ダイエット中はこれらの食品を積極的に摂取しよう。
【水溶性食物繊維:食品例】
- オートミール
- 大麦
- りんご
- バナナ
- いちご
- にんじん
- さつまいも
- なす
- オクラ など
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、水に溶けない性質を持つ食物繊維。おもに腸内環境を整える働きがあり、間接的にダイエットをサポートしてくれる。
水分を吸収すると膨らみ、便のカサを増やして腸の動きを活発にするのも、不溶性食物繊維の特徴。体内の老廃物や毒素をスムーズに排出するほか、「乳酸菌」「ビフィズス菌」など善玉菌のエサになることで、お腹の調子を整えてくれる。
不溶性食物繊維の代表的な食品群は、以下の通り。食べごたえのあるものが多く、満腹感を得やすいのも嬉しいポイント。
【不溶性食物繊維:食品例】
- 玄米
- 全粒粉
- 豆類
- きのこ類
- ごぼう
- れんこん
- ブロッコリー
- キャベツ など
【野菜編】食物繊維が多い食べ物11選
野菜にはさまざまな種類があるが、総じて食物繊維が多い。とくに「緑黄色野菜」「葉物野菜」は食物繊維の含有量が多く、低カロリーで栄養価も高いので、ダイエット中におすすめ。
- キャベツ
- じゃがいも
- もやし
- ごぼう
- ブロッコリー
- 大根
- きゅうり
- ほうれん草
- 大豆・枝豆
- れんこん
- アスパラガス
キャベツ
キャベツには「水溶性」「不溶性」の両方の食物繊維が含まれているが、とくに「不溶性食物繊維」が多い。不溶性食物繊維は腸の活動を活発にし、便秘解消に役立つ。
また、キャベツは「ビタミンC」「ビタミンK」などの栄養素も多く、ダイエット中の栄養補給に最適。「サラダ」「スープ」「炒め物」などさまざまな料理に使いやすいのも嬉しいポイント。
じゃがいも
じゃがいもは主食として食べられるほど栄養価が高い食品。炭水化物が多い野菜として知られているが、食物繊維も豊富で「水溶性」「不溶性」のバランスがよい。
また、「ビタミンC」「葉酸」などの栄養素も多く、腸活はもちろんのこと肌の健康維持にも役立つ。ただし、油を使う調理法は脂質量が多くなるため、「蒸す」「焼く」などなるべく油を使わないヘルシーな調理法を選ぶのがポイント。
もやし
もやしは手軽に購入でき、簡単に調理可能な野菜。野菜の中でも低カロリーで淡泊な味わいのため、食事のかさ増しにも使える。
もやしは「不溶性食物繊維」が中心で、そのほか「ビタミン」「ミネラル」も含んでいる。クセがなく、「炒め物」「鍋物」「サラダ」などさまざまな料理に活用できるため、ダイエット中の飽き対策にも役立つ。
ごぼう
ごぼうは野菜の中でもとくに食物繊維が多い食材。とくに「不溶性食物繊維」を多く含んでおり、「煮物」「きんぴら」「サラダ」などにすると、効率的に食物繊維を摂取できる。
また、ごぼうには血中コレステロールを下げる作用もある。ダイエットにはもちろん、健康のサポートにも役立つので積極的に食事に取り入れよう。
ブロッコリー
ブロッコリーも、食物繊維量が多い野菜。「ビタミンC・E」「ベータカロテン」など、抗酸化作用の高い栄養素も多く、美肌効果や疲労回復効果も期待できる。長く加熱すると栄養素が壊れやすいため、炒め物など短時間で火を通せる調理法がおすすめ。
大根
大根は「不溶性食物繊維」が豊富な野菜。とくに葉の部分に多く含まれているので、炒め物やみそ汁の具材として活用しよう。また、大根には消化吸収をサポートする成分も含まれている。
きゅうり
きゅうりは水分が多く、低カロリーな野菜。不溶性食物繊維をはじめ、利尿作用のある「カリウム」も豊富に含んでおり、便秘やむくみの解消に役立つ。サラダの具材にしたり、炒め物の具材として入れるのもおすすめ。
ほうれん草
ほうれん草は緑黄色野菜の1つで、栄養価が高いことで知られている。水溶性・不溶性のバランスがよく、腸内環境の改善や便秘解消に効果的。
そのほか、「鉄分」「ベータカロテン」「ビタミン」なども多く、ダイエット中の栄養バランスを整えるのにぴったり。根本部分も栄養が豊富なので、「細かく刻む」「炒める」などして、なるべく捨てずに食べるのがポイント。
大豆・枝豆
大豆や枝豆は食物繊維のほか、タンパク質も多く含んでいる食材。タンパク質を多く摂取すると効率的に脂肪燃焼ができる上、満腹感も得やすいのでダイエット中は意識して摂取したい。
また、「イソフラボン」「サポニン」「レシチン」など、大豆・枝豆には健康によい栄養素も多い。煮物やサラダ、スープなどさまざまな料理に取り入れよう。
れんこん
れんこんは食物繊維をはじめ、「ビタミンC」「ビタミンB群」「カリウム」が豊富。とくに「食物繊維」「ビタミンC」が野菜の中でも豊富で、「疲労回復」「風邪予防」「美肌」「便秘改善」などの効果が期待できる。
また、ポリフェノールの一種である「タンニン」は強い抗酸化作用があり、老化防止に効果的と言われている。とくに皮の部分は食物繊維の量が多いため、きんぴらや煮物、サラダなどに取り入れるときは、なるべく皮ごと調理するのがおすすめ。
アスパラガス
アスパラガスは食物繊維のほか、「ベータカロテン」「ビタミン類」も豊富。食物繊維は水溶性・不溶性どちらもバランスよく含んでいて、腸の働きを活発にし、便秘を予防する効果が期待できる。
また、アスパラガスに含まれる「アスパラギン酸」はエネルギー代謝を活発にし、疲労回復やデトックス作用がある。食物繊維は根元部分に、アスパラギン酸は穂先部分に多く含まれているので、どちらも捨てずに調理しよう。
【果物編】食物繊維が多い食べ物6選
ここでは、ダイエット中におすすめの食物繊維が豊富な果物を紹介。果実類は自然な甘みと豊富な水溶性食物繊維を含んでいて、ダイエット中の「おやつ」「間食」に最適。
- バナナ
- りんご
- みかん・オレンジ
- アボカド
- キウイ
- パイナップル
バナナ
バナナは果物の中でも食物繊維が多い。とくに水溶性食物繊維が豊富で、便秘の解消や腸内環境を整える効果が期待できる。
また、バナナには「カリウム」も豊富に含まれており、むくみ解消にも役立つ。バナナに含まれる「ペクチン」は満腹感を得やすい食物繊維なので、ダイエット中の空腹感対策として上手に活用しよう。
りんご
りんごには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれている。とくに皮は水溶性食物繊維が多いので、食物繊維を効率的にとるなら、皮ごと食べるのがおすすめ。
また、りんごには「りんごポリフェノール」という強い抗酸化力を持つ成分も含まれている。「美肌効果」「口臭予防」「血流改善」などさまざまな効果が期待できる。
みかん・オレンジ
みかんやオレンジは、水溶性食物繊維を含んでおり、「腸内環境の改善」「便秘解消」「ダイエット中の満足感アップ」につながる。また、ビタミンCも豊富で、美肌効果や免疫力向上も期待できる。
加えて、みかんやオレンジに多く含まれる「クエン酸」には、疲労回復を助ける効果も。運動後やリフレッシュしたいときにも積極的に摂取しよう。
アボカド
アボカドは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく含んでいる。そのため、「便秘解消」「血糖値の上昇抑制」「コレステロール値を下げる」などの効果が期待できる。
また、アボカドには良質な「脂質」も豊富に含まれており、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすサポートにも。果物の中では脂肪分が多いので食べすぎには注意しつつ、適度に摂取するのがおすすめ。
キウイ
キウイも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスがよいのが特徴。「腸内環境の改善」「便秘解消」のほか、お肉の消化を助ける効果がある。
また、「ビタミンC」「ビタミンE」などの抗酸化物質も豊富で、美肌効果や免疫力向上にも役立つ。皮つきのまま食べるとより多くの栄養素を摂取できるので、皮ごとミキサーにかけてスムージーにしたり、薄くスライスしたりして食べよう。
パイナップル
パイナップルは不溶性食物繊維が多い果物。「カリウム」「マンガン」などのミネラルが多く含まれていて、ダイエット中の健康サポートに活用しやすい。
また、タンパク質分解酵素の一種「ブロメライン」が豊富なのもパイナップルの特徴。「食後のデザートに取り入れる」「お肉と一緒に摂取する」などをおこなうことで、消化吸収をサポートしてくれる。
【海藻編】食物繊維が多い食べ物4選
海藻類は低カロリーで食物繊維が豊富な食材が多い。種類にもよるが「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」のどちらもバランスよく含まれているのが特徴。
- わかめ
- ひじき
- もずく
- 寒天
わかめ
わかめは味噌汁やサラダの具など、毎日の食事に取り入れやすい食材。とくに乾燥わかめは食物繊維が多く、「ごぼうの1.5倍」の食物繊維を含んでいる。生わかめに比べて保存もきくので、常備しておくと便利。
また、わかめには肌の老廃物を排出し、美肌をサポートする働きも期待できる。「血圧上昇の抑制」「コレステロール値を下げる」など効果もあるので、ダイエット中は意識して摂取したい。
ひじき
ひじきは、海藻類の中でもトップクラスに食物繊維が多い食材。とくに不溶性食物繊維が多く、腸内環境を整えて便秘を解消する効果が期待できる。
また、「カルシウム」「鉄分」なども多く、ダイエット中に不足しがちなミネラルの補給源としてもおすすめ。わかめと同じく乾燥タイプは保存がきくので、常備しておくとよい。
もずく
もずくは水溶性食物繊維が多く、「コレステロール値を下げる」「血糖値の上昇を抑える」のに役立つ。もずくの特徴を生かすなら、「サラダ」「スープ」「酢の物」として食べるのがおすすめ。ぬめりが苦手な人はしっかり洗うことで食べやすくなる。
寒天
寒天は「天草」「オゴノリ」などの海藻から作られる食品。約8割が食物繊維でできていて、残りは水分と微量のミネラルが含まれている。
特徴は、無味無臭でカロリーがほとんどないこと。おもに「サラダ」「スイーツ」「和菓子」などに使われており、腸内環境の改善をはじめ、「満腹感を高める」「血糖値の上昇を抑える」などダイエット中の強い味方になってくれる。
【その他】食物繊維が多い食べ物6選
そのほか、食物繊維が多い食べ物を紹介。どれもダイエット中に適した食材なので、普段食べているものと置き換えて活用するのがおすすめ。たとえば、白米は「玄米・雑穀米」に、パスタやラーメンは「そば」に変更すると、ダイエット効果が得られやすくなる。
- 玄米
- 雑穀米
- そば
- アーモンド
- えのきなどきのこ類
- 豆腐・納豆などの大豆製品
玄米
玄米は白米よりも「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」が豊富。不溶性食物繊維が多く含まれ、腸内環境の改善や便秘予防に効果が期待できる。白米に比べて血糖値の上昇もゆるやかなので、余計な脂肪の蓄積を抑えられる。
雑穀米
雑穀米は、水溶性と不溶性の食物繊維がバランスがよく含まれ、手軽に食物繊維を摂取できる。「ビタミン」「ミネラル」「ポリフェノール」など健康によい成分も豊富で、白米だけでは不足しがちな栄養素の補給に効果的。
噛み応えのある独特な食感は満腹中枢を刺激してくれるので、少量で満足感が得やすい。含まれる雑穀によって得られる栄養素や味わいは異なるので、好みのものを探してみよう。

とくに、「大麦」「押し麦」にはβグルカンという水溶性食物繊維が多く含まれています。ダイエット中は白米の代替品として、雑穀米や麦ごはんを選ぶのがおすすめです。
そば
日本の伝統的な食材として知られるそばは、食物繊維が豊富な麺類。とくに不溶性食物繊維が多く、便秘解消や整腸作用が期待できる。
また、そばには血行促進に役立つそば特有の栄養素「ルチン」が含まれており、「むくみ解消」「デトックス」「美肌作り」にも役立つ。そのほか、タンパク質やビタミン類も多いので、ダイエット中に麺類を食べるときはそばを選ぶのがおすすめ。
アーモンドなどナッツ類
アーモンドは不溶性食物繊維が多く、腸内環境を整える効果が期待できる。
また、美肌に役立つ「オレイン酸」「ビタミンE」も豊富に含まれており、ダイエット中の美容対策や健康維持にもおすすめ。血糖値の急激な上昇を抑える作用があるため、血糖値管理にも役立つ。
ただし、食べすぎると「肌荒れ」「便秘」「腹痛」などの原因になる。ダイエット中に関わらず、ナッツ類を食べるときは適量を心がけよう。
えのきなどきのこ類
「えのき」「しいたけ」「しめじ」などのきのこ類は、低カロリーながら食物繊維が豊富な食材。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランスよく含み、ダイエット中の健康管理に役立つ。
また、きのこ類に含まれる「βグルカン」には免疫力を高める効果があり、異物や細菌から身体を守ってくれる。種類も豊富なので、ダイエット中も飽きずに食べられるのが嬉しい。
おから・納豆などの大豆製品
大豆の加工品である「おから」「納豆」「味噌」なども食物繊維が豊富。水溶性と不溶性のバランスもよく、タンパク質が多いのも嬉しい。
また、納豆や味噌など発酵食品には「乳酸菌」「納豆菌」「酵母菌」などの善玉菌が豊富に含まれており、効率的な栄養摂取ができる。発酵によってうまみ成分が発生すると、少量でも満足感が得られやすい。
1日の食物繊維の目安摂取量
ダイエットをはじめ、日々の健康管理にも役立つ食物繊維。しかし、日本人の食物繊維の平均摂取量は多いとは言えない。食物繊維の効果を実感するためには、毎日十分な量を摂取することが大切。ここでは、1日の食物繊維の目安摂取量を紹介するので、しっかりおさえておこう。
- 女性の場合:18g以上
- 男性の場合:21g以上
女性の場合:18g以上
- 18g以上
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参照
減量中はこの目安量より多めに摂取すると、より高いダイエット効果が期待できる。「1日20~25g」を目標に意識して摂取しよう。
なお、食物繊維の摂取量を増やすときは、身体に負担がかからないよう段階的におこないたい。いきなり量を増やすと「便秘」「軟便」「お腹の張り」などの不調を引き起こす可能性があるため要注意。1週間ごとに「2~3g増やす」など、体調をみながら少しずつ調整しよう。

野菜の摂取量は、全世代で不足している傾向にあります。とくに、肥満傾向にある人や「血圧」「血糖」「脂質」などにリスクがある人は野菜の摂取量が不足していることが多く、肥満と食物繊維不足は関連づけられることも。
ダイエット中に限らず、食物繊維は意識的に摂取するのが大切です。日常的に十分な量の食物繊維をとっていれば高カロリーな食べ物の摂取量も自然と減り、結果としてダイエットや健康的な食生活につながります。
男性の場合:21g以上
- 21g以上
※厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参照
女性と同じく、ダイエット中は上記より少し多い「1日25~30g」を目安にとろう。一般的に、男性は女性より必要エネルギー量が多いため、食物繊維も多く摂取する必要がある。
しかし、必要な食物繊維の量を野菜だけでまかなうのは難しい。「小皿料理を複数組み合わせる」「レタスサラダにはトマトを加える」など、さまざまな食材からバランスよく食物繊維をとれるように工夫しよう。

効率的に食物繊維を摂取するには、水溶性食物繊維を多く含む食べ物を選ぶのがおすすめです。たとえば、「きのこ類」「海藻類」「こんにゃく」など。これらの食材はクセが少なく、たくさん食べやすいため、必要な食物繊維量を満たしやすくなります。
また、「さつまいも」「バナナ」「グラノーラ」なども食物繊維が多く含まれています。野菜の食感が苦手な人は、スムージーにしたり、加熱して柔らかくすると食べやすくなりますよ。
食物繊維は朝昼晩、いつとるのがいい?
基本的に食物繊維は、毎食バランスよくとるのが理想的。一方で、食物繊維の「吸収率」「代謝効率」は時間帯によって違い、目的ごとに理想的なタイミングがある。大切なのはどれだけ食べるかだけでなく、「いつ食べるか」も意識すること。ここでは、時間栄養学の観点から食物繊維の摂取タイミングを解説。
- 朝食:満腹感が持続し食べ過ぎを防ぐ
- 昼食・間食時:血糖値上昇を抑える
- 夕食:お通じをよくする
朝食:満腹感が持続し食べ過ぎを防ぐ
朝食時に食物繊維を摂取すると、腸の働きが活性化し排便のリズムが整う。また、食物繊維が豊富な食べ物は腹持ちがよいため、1日を通して満腹感が続きやすく、「間食」「過食」を防ぐ効果が期待できる。
「オートミール」「フルーツ」「ナッツ」などは食欲がなくても食べやすい。普段朝食を食べない人は「野菜ジュース」「スムージー」などの口に入れやすいものから始めて、無理なく習慣化を目指そう。
昼食・間食時:血糖値上昇を抑える
血糖値の上昇を抑えるなら、「昼食」「間食時」に食物繊維を摂取するのが効果的。朝や夜に比べると、昼は野菜や果物の摂取量が減りがちなので、意識的に摂取する習慣をつけたい。
昼食時に食物繊維が豊富なものを食べることで、午後の「だるさ」「眠気」が起きにくくなり、脂肪の蓄積も抑えられる。野菜ジュースやサラダなど、手軽に摂取できるものから始めよう。
また、間食時に食物繊維をとると空腹感が和らぎ、夕食のドカ食いを防ぎやすい。昼食には「サラダ」を、間食には「ナッツ類」を食べるなど、日常的に取り入れてみよう。
夕食:お通じをよくする
お通じを改善したいときは、夕食時に食物繊維をとるのもおすすめ。
夜に食物繊維をとると就寝中に腸内で食物繊維が発酵し、翌朝の排便がスムーズになる。もともと夜は代謝が落ちるタイミングなので、糖質は控えめに。満腹感を得るためにたっぷりの野菜でかさ増ししよう。
さらに、夕食に食物繊維を多く摂取すると寝つきがよくなり、深い睡眠に入りやすいという研究結果も。これは、食物繊維の食後血糖値をゆるやかにする作用が睡眠の安定化につながるためと考えられている。
食物繊維でダイエット効果を高めるためのコツ
食物繊維を上手に活用すれば、ダイエット効果は現れやすくなる。ただし、それだけでダイエットを成功させるのはなかなか難しい。ここでは、食物繊維の効果を効率よく実感するためのコツを紹介。
- 水分をしっかりとる
- 水溶性・不溶性はバランスよく摂取する
- 食物繊維が豊富な食べ物から先に食べる(ベジファースト)
- 穀類・脂質が多いおかずは食物繊維の多い食品と一緒に食べる
- 水溶性食物繊維には乳酸菌を含む食べ物もプラスする
水分をしっかりとる
食物繊維を摂るときは、水分も十分に摂取しよう。水分不足は便秘など消化器系のトラブルを引き起こし、ダイエットの挫折にもつながる。また、「水溶性食物繊維」は水と一緒に摂取すると膨らみやすくなる特性があるため、より満腹感を高めてくれる。
一方、「不溶性食物繊維」は水と一緒にとっても膨らまないが、便のかさが増すことで腸が刺激される。蠕動運動が活発におこなわれ、スムーズな排便を促してくれる。
理想的な水分の摂取量は、運動量や体格によっても違うが「1日1.5~2L程度」。水だけでなく、「お茶」「スープ」なども水分量としてカウントしてよい。ただし、食物繊維を多くとるからといって水分量も大幅に増やす必要はない。普段から適切な水分摂取を心がけることが、ダイエットや健康維持の秘訣。

「水」「お茶」などの水分の種類が食物繊維の効果を変えることはありません。ジュースやアルコールなど、ダイエットの成果に影響があるものは避けつつ、一般的な水分摂取の範囲内で好みに合ったものを選びましょう。
水溶性・不溶性はバランスよく摂取する
ダイエット効果を高めるには、水溶性・不溶性のどちらか一方に偏るのではなく、両方をバランスよくとることが大切。両者には異なる特性があり、それぞれの利点を生かすことで、より効果的な減量が期待できる。
たとえば、「オートミール(水溶性)」と「全粒粉パン(不溶性)」を組み合わせたり、サラダには「りんご(水溶性)」と「にんじん(不溶性)」を一緒に入れたりと、一度の食事で両方の食物繊維をとれるよう工夫してみよう。
一般的に、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は「2:1」で摂取するのが理想と言われている。とくに「水溶性食物繊維」は不足しやすいため、普段の食生活で意識して摂取したい。
食物繊維が豊富な食べ物から先に食べる(ベジファースト)
ダイエット中の食事は、食物繊維が豊富なものから先に食べることを意識しよう。
食物繊維には水分を吸収して膨らむ作用があり、満腹感を早く得られるメリットがある。そのため、食事の最初に野菜など食物繊維が多いものを食べると食事量が自然と減り、カロリー摂取量を抑えられる。
まずは食物繊維が豊富な野菜から食べ始める癖をつけ、次に「肉」「魚」「穀類」を食べるように意識しよう。
穀類・脂質が多いおかずは食物繊維の多い食品と一緒に食べる
「穀類」や「脂質」が多いおかずを食べるときは、食物繊維が豊富な食品と一緒に食べるのがおすすめ。食物繊維には「糖」「脂質」の消化・吸収を遅らせる働きがあり、コレステロールを体外へ排出するのに役立つ。
また、「お米」「麺」「パン」などの穀類は血糖値を上げやすい食べ物だが、食物繊維と一緒にとると血糖値の上昇がゆるやかになる。肉類には「イモ」「豆」を添えたり、パスタには「きのこ」「野菜」をたっぷり入れたりと、食物繊維が多い食材と組み合わせると効果的。
水溶性食物繊維には乳酸菌を含む食べ物もプラスする
水溶性食物繊維の効果を高めるには、「乳酸菌」を含む食品と組み合わせるのが有効。水溶性食物繊維の発酵で生まれる「短鎖脂肪酸」は、有害物質を作り出す悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やす働きがある。
一方、乳酸菌は腸内環境を直接的によくする「善玉菌」の一種。水溶性食物繊維と乳酸菌、両方を組み合わせてとると相乗効果が生まれ、より効果的に腸内環境を整えられる。
乳酸菌を多く含む食品は、「ヨーグルト」「チーズ」「キムチ」「ぬか漬け」などがある。動物性乳酸菌と植物性乳酸菌は、どちらも腸内環境の改善に役立つのでバランスよく摂取しよう。

善玉菌には、「納豆菌」「ビフィズス菌」「酪酸菌」など、乳酸菌以外の種類も数多く存在します。腸内環境を整えるには、さまざまな食材から多様な種類の善玉菌を取り入れることが大切です。特定の菌ばかり偏ってとるのではなく、バランスよく摂取する意識を持ちましょう。
食物繊維が豊富!ダイエット中におすすめのお手軽メニュー
食物繊維を手軽にとるなら1品料理を作って食事に足すよりも、いつものご飯に食物繊維が豊富な食材をプラスするのがおすすめ。ここでは、手軽に食事にプラスできるアレンジメニューを紹介。

日本人の場合1日に「大体14g程度」の食物繊維しか摂取できていません。そのため、1食あたり約2~3gほどの食物繊維を食事にプラスする必要があります。
また、「白米1膳150g(うち食物繊維は2.3g)」から「麦ごはん150g(うち食物繊維は12.9g)に変更するだけでも、基準量を満たしやすくなります。野菜以外にも食物繊維が含まれている食品はたくさんあるので、1品プラスするのが難しい場合は置き換えだけでもOKです。
麦ごはんのおにぎり
麦ごはんのおにぎりは「1個あたり(約150g)12.9g」の食物繊維を摂取できる。枝豆を入れた「豆ごはん」、タンパク質をプラスした「鮭おにぎり」など、アレンジがしやすいのも魅力の1つ。
また、海苔巻きなどに使われる海苔1枚分をおにぎりで使用すれば「約1g」の食物繊維をプラスできる。麦ごはんのほか、「雑穀米」や「玄米」も白米の数倍もの食物繊維を含んでいるので、気分や好みで変えて試してみよう。
じゃがいもとわかめの味噌汁
じゃがいもは「可食部100gあたり(皮付き)9.8g」もの食物繊維を含んでおり、いも類の中でも食物繊維が多い食材。また、わかめなどの海藻類も食物繊維を多く含んでいるので、お味噌汁やサラダに追加すると手軽に食物繊維が摂取できる。
なお、より多く食物繊維をとりたい場合は生わかめではなく乾燥わかめがおすすめ。栄養素が凝縮されているので、生わかめに比べて「約1.6倍」もの食物繊維を含んでいる。
サラダ+ナッツ、グラノーラ、オートミール
コンビニなどで売られているサラダは、「量が少ない」「レタスなど食物繊維が少ない野菜がメインになっている」ものが多い。
そんなときは「ナッツ」「グラノーラ」「オートミール」をプラスして、食物繊維の増量をはかろう。これらは簡単に持ち歩きしやすく、振りかけるだけで食物繊維をプラスできる便利な食材。
とくに、グラノーラは食物繊維が豊富な「ドライフルーツ」「オーツ麦」などを多く含んでいる。主食としても優秀だが、ヨーグルトに振りかけてデザート感覚で食べるのもおすすめ。
ただし、ドライフルーツは量が多すぎると糖質の過剰摂取につながるので、食べすぎには注意しよう。また、夕食のデザートとして食べると血糖値が上がりすぎる恐れがあるので、朝や昼に食べるとよい。
食物繊維とダイエットに関するQ&A
食物繊維サプリメントにもダイエット効果は期待できる?
A:一定の効果は期待できるが、食事から摂取できる場合はサプリメントに頼る必要はない。

食物繊維サプリメントには特定保健用食品として認可されている製品もあり、「腸内環境の改善」「血糖値の上昇抑制」など、一定の健康効果が期待できます。ただし、一般的に販売されている食物繊維のサプリメントは「1包あたり3g程度」と、通常の食事から簡単に摂取できる食物繊維量であることも多い傾向にあります。
また、野菜や果物などの食べ物と違い、食物繊維サプリメントでは満腹感を得にくいため、継続的な摂取が難しい傾向もあります。あくまで、どうしてもとれない場合の補助的な食品としてとらえ、食事から十分な量の食物繊維が摂取できる場合は、無理にサプリメントからではなく、食事から取り入れるようにしましょう。
過剰摂取の影響で下痢や便秘になることはある?対処法は?
A:ある。過剰な食物繊維の摂取は控え、十分な水分を摂取しよう。

食物繊維を過剰に摂取すると、おもに下痢の症状がみられます。お腹が痛くなったり、下痢になってしまったときは食物繊維の摂取量を調整し、自分にとって適切な量を確認しましょう。
また、食物繊維によって便秘になった場合は、水分不足が原因の可能性が高いです。食物繊維と水分のバランスが崩れないよう、水やお茶は十分に摂取してください。
食べないダイエットはしない方がいい?
A:しない方がいい。

「1日1食ダイエット」「サラダのみしか食べないダイエット」「ファスティング(断食ダイエット)」など食べないダイエットは、特別な事情がない限りおすすめできません。極端に食事量や回数を減らすと心身に大きな負担がかかり、体調不良やリバウンドのリスクが高まります。
また、筋力が低下して代謝が落ちたり、空腹感から強いストレスを感じたりと、メリットよりデメリットの方が多いため、基本的には避けることをおすすめします。ダイエットをするときはバランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、無理なく健康的に痩せることが大切です。
博士(理学) 管理栄養士
愛国学園短期大学 家政科 准教授、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘研究員、(株)アスリートフードマイスター 認定講師、発酵料理士協会特別講師としても勤務。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とする。科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。『食べる時間を変えるだけ! 知って得する時間栄養学』(宝島社/2022)、『10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社/2023)、他多数の書籍を執筆。
【所属】
愛国学園短期大学 家政科 准教授
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
あきはばら駅クリニック 非常勤管理栄養士
アスリートフードマイスター認定講師
発酵料理士協会特別講師