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ウェルビーイングが政府の「骨太方針」に。次のフェーズへと進んだその先にあるものとは

鈴木 寛先生

2023年3月5日(日)、「第1回ウェルビーイング学会学術集会 〜ウェルビーイングを協創しよう〜」がオンラインにて開催。

ウェルビーイング学会は2021年12月の立ち上げ以来、「ウェルビーイングレポート日本版」の毎年発刊や、ウェルビーイング指標のニュースリリースの発表、2022年10月には会員募集を開始するなど、着々と歩みを進めてきた。今回の第1回学術集会では、まず代表理事である慶應義塾大学大学院 教授/前野 隆司氏による開会挨拶と基調講演、そして発起人たちによる講演やパネルディスカッションが行われ、ウェルビーイングに関するそれぞれの活動や研究内容が語られた。

ここでは、東京大学公共政策大学院 教授、慶応義塾大学政策・メディア研究科 教授/鈴木先生の講演「ウェルビーイングと政策」のレポートをお届けする。

 

鈴木 寛

鈴木 寛先生

東京大学公共政策大学院教授・慶応義塾大学政策・メディア研究科教授

1986年に東京大学法学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)に入省。資源エネルギー庁、国土庁、産業政策局、生活産業局、シドニー大学、山口県庁、機械情報産業局などで勤務する。1999年慶應義塾大学SFC助教授 2001年には参議院議員に初当選(東京都)。12年間の国会議員在任中に、文部科学副大臣を2期務める。2014年より現職。主な著書に『ドラえもん社会ワールド政治のしくみ』(小学館刊)『熟議のススメ』(講談社刊)などがある。

ポストSDGsといわれる「ウェルビーイング」をしっかりと議論していく大きな意味

ポストSDGsといわれる「ウェルビーイング」

2001年に参議院議員に初当選した鈴木先生。12年間の国会議員在任中に文部科学副大臣、文部科学大臣補佐官を務めるなど、政策の推進にたずさわってきた。ウェルビーイングと政策という観点で、講義がスタート。

鈴木先生:ウェルビーイングという言葉が、日本でも急速に使われるようになってきました。ウェルビーイングという言葉を使った新聞記事数は、2022年に4,780件になり、2019年と比べて約75倍に。アンケート対象者の8割の人が知っている言葉「SDGs」が普及していったときに照らし合わせても、3年後の2025年には、ウェルビーイングは7~8割の人が知っている言葉になっているのではないでしょうか。

データと共に、ウェルビーイングの急速な広がりを伝える鈴木先生。ウェルビーイングについて議論を進め、測定していくことには、どんな意味があるのだろうか。

鈴木先生:例えばイギリスの場合、客観的ウェルビーイングつまり1人当たりのGDPは、2009年頃から緩やかに上がっていっています。しかし主観的なウェルビーイングは、2013年から急激に下がっているのです。その直後に何が起こったか。イギリスの「Brexit投票」、そしてEUからの離脱だったのです。

同様にエジプトの「アラブの春」、ウクライナに反ロシア政権が樹立した「尊厳の革命」が起こったときにも主観的ウェルビーイングの急落が起こった直後だったと鈴木先生は語る。

鈴木先生:これらの事例からも、「主観的ウェルビーイングの低下は、政治や社会に大きな混乱をもたらす」という仮説は十分に成り立つのではないでしょうか。

日本にもウェルビーイングが浸透していく中で生まれた新たな指標GDW(国民総充実)

日本にもウェルビーイングが浸透していく

では、世界と比べて、日本のウェルビーイングの現在地はどこにあるのだろうか。鈴木先生は日本の現状をこう語る。

鈴木先生:あくまでも現在の指標でのランキングではありますが、日本の「現在の人生満足度」は61位。さらに「5年後の人生満足度」は122位と、かなり低い位置にあるのではないでしょうか。しかし、日本でも遅ればせながら、2019年に「グローバルウェルビーイングイニシアチブ」をスタート。2021年にはウェルビーイングを政策に積極的に取り入れていくように変わってきています。

ウェルビーイングが日本国内にも浸透していく中で、ウェルビーイング学会には「国民の主観的なウェルビーイング実感を表す指標」を作る大きな目標があると鈴木先生は考えている。

鈴木先生:GDP(国民総生産)が各国の政策において非常に重要な指標だと位置づけられている中で、それと並んで相互補完する指標が必要だと考えました。そうしてできたのがGDW(国民総充実)。2022年12月8日、GDPの公表に合わせて第一回のGDW四半期公表を開始しました。その主体となったのが「ウェルビーイング学会」なのです。

ウェルビーイングを国家戦略に。2021年に大きく動いた日本の政策

2021年6月、「経済財政運営と改革の基本方針2021」が閣議決定され、日本の国家戦略として「個人と社会全体のWell-beingの実現を目指す」という文言が盛り込まれた。

鈴木先生:それまでは「人々の満足度(well-being)」のように、カッコ書きで表現されていましたが、2021年からそのカッコが取れるようになりました。この事実だけをみても、国にとってウェルビーイングの位置づけが大きく変わったことを物語っています。政府においても「Well-beingに関する関係府省庁連絡会議」が設置されています。さらに、各省庁が所管する32の計画にウェルビーイングの文言が盛り込まれ、岸田内閣の最重要課題である「デジタル田園都市国家構想」では、最上位にウェルビーイングの項目がおかれることになっています。

まさにウェルビーイング元年と言える2021年。そして、これからの日本が国際社会に対して担っていく役割を鈴木先生はこう語る。

鈴木先生:2023年には日本がホスト国としてG7広島サミットが開催され、2025年には日本で大阪・関西万博が開かれます。この流れの中で、ウェルビーイングについてどのように発信していくのか、日本の真価が問われています。特にウェルビーイングの測定ガイドラインを改訂し、日本が主体となって世界に向かって発表していく必要があるのではないでしょうか。そのためにも、このウェルビーイング学会でさらに議論を進め、新たなアイデアを提供していただければと期待しています。


Wellulu編集部あとがき

すずかん先生(あえて、親しみをもってすずかん先生と呼ばせていただきます。無礼お許しください!)のお話は、グローバルの中の日本での役割を伝えていただきました。これから、世界の中で日本はどういう生き方をすると良いのか、課題先進国である日本こそが、先にウェルビーイング国家となって、うらやましがられる国になればと思います。

そのときに、ただ政策としてのウェルビーイングや、ウェルビーイングの枠組みだけが決まっているのは意味がなく、ウェルビーイングを実践する個人や企業、自治体などがつながりをもって進んでいくことが大切だとあらためて感じました。

6年前、すずかん先生と対話させていただいたときに、日本人は「主体性・協調性・多様性」をもっと意識的に形にしていくことが学びの上で大切だとお話くださって、今回のウェルビーイングでも、ダイバーシティ&インクルージョンのお話にもつながると思います。

私たちひとりひとりが主体性をもって、世界の多様な人たちと協調の中で、新しいウェルビーイングな生活をつくっていきたいと思います。

Wellulu 編集部 プロデューサー・ウェルビーイング学会 会員 堂上研

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