
今回ご登場いただくのは、女優・声優の原菜乃華さん。映画『すずめの戸締まり』の声優として、また、NHK大河ドラマ『どうする家康』などで彼女の姿を観たことがある方も多いのではないだろうか。
女優という仕事柄、多彩な役を「演じる」ことが多い菜乃華さんは、どんなウェルビーイングな時間を過ごしているのか、誰と何をしている時が1番幸せなのか。『すずめの戸締まり』で菜乃華さんのファンになったというWellulu編集部の堂上研が話を伺った。

原 菜乃華さん
女優/声優

堂上 研
Wellulu編集部プロデューサー
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。
役者の仕事は自分にとって生活の一部。多忙な中でも大切にしている「ひとりの時間」
堂上:今日は、ドラマやTVCMなどでは見られない、素の菜乃華さんについてお伺いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
原:こちらこそ、よろしくお願いします。
堂上:早速プライベートなお話をしてしまいますが、菜乃華さんはどんなお子さんでしたか?どんな遊びが好きだったとか……。
原:私は、公園に行くとずっと砂場で遊んでいるような子どもでした。運動や体を動かすことがとにかく苦手で、砂場でずっと砂をいじっていましたね。
堂上:そうだったんですね! とはいえ幼少の頃から、芸能のお仕事をされていて、仕事と学校の毎日の中で「これをしている時が楽しかったな」という思い出はありますか?
原:小学校低学年の頃、好きなドラマの小説を本屋さんで買って、好きな役のセリフをひたすら読むという遊びをしていて、それがすごく楽しかったという記憶があります。
堂上:そうなんですか。 やっぱり昔からドラマがお好きだったんですね。
原:ものすごく好きでした。ドラマっ子でしたね。
堂上:そもそも、菜乃華さんは小さい頃から子役をやることになるこの世界に入るきっかけは何かあったのでしょうか。
原:物心ついた時にはもう役者の世界にいたので、正直あまり覚えていないんです。続けていたのも、演じることが楽しかったからというのももちろんありますが、習い事のような感覚でしたね。学校が終わって同級生がピアノやダンスに行くように、私はオーディション会場に向かう……というような。
堂上:僕にはあまり想像ができないので、すごく面白いです。小さい頃から役者さんをやっていると、ツラいことも多くないですか? 友達と遊べなかったり、食べたいものを食べられなかったり……。
原:もちろんその時々で大変なことはありました。でも私にとってのお仕事は、食事や入浴と同じくらい「もともとあるもの」「あって当たり前」のものだったので、辞めようとまで思ったことはないんです。それに、昔から勉強も運動もそこまで得意ではなくて、周りの方に「すごいね」と褒めてもらえるものが、お芝居だけだったのも大きいと思います。
堂上:すごい。どうしても仕事というと、普段の生活と切り離している方が多いような気がしていて、特に俳優さんはそうだと思っていました。だけど、菜乃華さんにとって仕事は生活の一部なんですね。今日は素の菜乃華さんのお話をお伺いしようと思っていたのですが、そういう意味では、お仕事をしている菜乃華さんも「素の菜乃華さん」ですね。
原:たしかに、どの自分が本物か、偽物かという感覚はまったくなくて、全部が自分ですね。いろんな面があって、それを相手や状況によって無意識のうちに切り替えているだけなのだろうと思います。
堂上:仕事柄、たくさんの人と接する機会も多いと思いますが、菜乃華さんは、誰かと一緒にいるほうが良いとか、ひとりの時間のほうが好きとかありますか?
原:ひとりの時間をつくるのが、すごく好きです。お仕事が続くと、どうしても考えてしまうことがたくさんあるので、ひとりで集中して頭の中を整理したり考えをまとめたりする時間が必要なのだと思います。1日働いたら、本当は3日お休みがほしいくらい(笑)。
堂上:いいですね。僕も1日働いたら、3日自分の時間で休みたい(笑)。きっと俳優さんというものすごく集中力が必要で、さらに不規則なお仕事をしているからこそ、ひとりで考える時間が必要なのでしょうね。
原:お休みが続くと、それはそれで不安になる気持ちもあるので、忙しくしているほうが精神的には安定するなとは思いつつ、やっぱり頭を整理する時間は必要ですね。きっと何かに追われている感覚が苦手なのだと思います。
堂上:お休みの日は何をしていることが多いですか?
原:ドラマやアニメを観たりすることが多いですね。あとは、いろんなことを考えながらウィンドウショッピングをしたり、お仕事が続いてできていなかった身の回りのことをしたり……。私はメモを取るのがすごく好きなので、前日に「明日やることリスト」を作って、それを一つひとつ消化しています。
堂上:「このドラマを観る」とか「部屋の片付けをする」とか?
原:はい。一つずつ取り組んで、リストの項目を消していく感覚が気持ちいいんです。
堂上:わかる気がします。
原:「明日やることリスト」以外にも、「今月中にやりたいことリスト」や「今年中にやりたいことリスト」、「友達と一緒に叶えたいことリスト」もあります。とにかくメモを取ることが好きで、暇さえあればスマホのメモアプリを開いてますね。
映画『すずめの戸締まり』で声優にも初挑戦。原動力は「楽しい」という気持ち
堂上:今ではテレビや映画でお見かけすることの多い菜乃華さんですが、ご自身がこれまで観てきた中で1番好きだった作品は何ですか?
原:堺雅人さん主演の『リーガル・ハイ』という法廷ドラマをきっかけに、ドラマの世界にすごくハマりました。小学生の頃に放送されていたんですけど、「正義とは何か? 悪とは?」「世の中、白と黒ではなくてグレーのことのほうが多いのでは?」など、考えさせられること、発見することがとにかく多くて。それから、お芝居のすごさにも衝撃を受けた記憶があります。
堂上:ご自身も子役として活躍されていた中で、勉強になるという感覚ですか?
原:そうです。お芝居を見てワクワクするようになったのは、この『リーガル・ハイ』を観てからなんです。当時はすごくハマって、食い入るように観ていました!
堂上:素敵ですね。ドラマやお芝居のお話をする菜乃華さんの表情がすごく生き生きしていて、やっぱりドラマやお芝居がお好きなんだなとあらためて感じました。アニメもお好きだとおっしゃっていましたよね。
原:アニメもすごく好きで、友だちやお仕事関係の方からおすすめされたものを片っ端から観ています。
堂上:実は僕、菜乃華さんがヒロインの声をやられていた『すずめの戸締まり』が公開された時、息子や娘と家族で観に行ったんです。
原:嬉しい! ありがとうございます。
堂上:声優さんのお仕事は、『すずめの戸締まり』が初めてだったんですよね。どうでしたか?
原:私は、もともと新海誠監督の『君の名は。』がすごく好きで、まさか自分がヒロインの声を務めさせていただくとは思ってもいなかったので、お話をいただいた時は、嬉しい気持ちと緊張とが入り混じっていましたね。でも現場では勉強することも多くて、すごく楽しかったです。
堂上:俳優さんのお仕事と声優さんのお仕事は、やっぱり違いますか?
原:そうですね。どちらもすごく楽しいんですが、声優のお仕事は初挑戦だった分、より楽しかった記憶があります。レッスンを受けながら2カ月くらいかけてアフレコしたので、挑戦しながら色々なことを吸収できて、すごく良い経験でしたね。
堂上:実際、スクリーンから自分の声が聞こえるのは不思議な感じでしたか? 小さい頃から俳優さんのお仕事をしていると、慣れているものなのかな……。
原:『すずめの戸締まり』に関しては、すごく違和感がありました。自分の声なので、映画を観ていても自分の声にしか聞こえないんです。見てくださっている方には「すずめちゃんの声」として聞こえているのか、すずめちゃんのイメージに私の声がしっかり当てはまっているのか、特に公開当初は不安でした。
堂上:やっぱり、最初は違和感があるものなんですね。でも僕はすごく楽しませていただいたし、今日も息子たちに「すずめちゃんの声をしている人に会ってくるんだよ」と言ったら「えー!すずめちゃんに会うの!?」なんて喜んでいました(笑)。
原:そうだったんですね! 嬉しいです。ありがとうございます。
食べることは、「誰と食べるか」がウェルビーイング
堂上:今日は、『丸亀うどーなつ』新商品・新TVCM発表会後に株式会社丸亀製麺さんのオフィスにお邪魔させていただいています。今回、『丸亀製麺』さんの『丸亀うどーなつ』の新TVCMが発表になったんですよね。僕も以前はTVCMを作る仕事をしていたのですごく懐かしい気分なのですが、TVCMのお仕事は、ドラマや映画とはまた違った印象がありますか?
原:そうですね。TVCMって、一つひとつ細かいところにまですごくこだわって作られるじゃないですか。
堂上:そうですよね。15秒や30秒のTVCMのために数日かけて撮影することも珍しくないですよね。
原:もちろんドラマや映画もこだわって作られていることに変わりはないのですが、限られた時間の中でどんどん撮影が進んでいくので、「最高のものを即座に出さなければ」というプレッシャーが実は少しあって。その中で純粋に「楽しい」という気持ちで進められるのは、TVCM撮影かもしれません。これってすごく贅沢なことだし、嬉しいと思いますね。
堂上:『丸亀製麺』さんのTVCMだと、きっと食べるシーンもたくさんありましたよね。どうでしたか?
原:今回の撮影は新商品の『丸亀うどーなつ』だったのですが、とても美味しくいただきました。『丸亀シェイクうどん』もダンスは大変でしたが、美味しくいただけて楽しかったです。
堂上:「食べる」ってウェルビーイングとすごい関係しているんですよね。何を食べるか、誰と食べるか、どの時間に食べるか、誰が調理したか、気温や季節などもすごく影響を受けます。
堂上:食べ物の話になったところで、菜乃華さんの食生活について伺っても良いですか? 多くの方に見られるお仕事をしているということで、食生活も意識していることが多いのでしょうか。
原:私、1回ハマったものを飽きるまで食べてしまう癖があるんです……。
堂上:へぇー! たとえば、これまでどんなものにハマりましたか?
原:去年の夏は、ナスやきゅうりやオクラなどの夏野菜を炒めて、麺つゆに漬けて一晩置いたものにハマっていて、本当にこればかり食べていました。今は、ドライイチジクにハマっていて、朝ご飯やおやつの時間によく食べています。
堂上:そういう意味では、栄養バランスをしっかり考えて食べるタイプではないんですね。意外でした!
原:そうですね。3食きちんと食べるようにはしているのですが、好きなものをずっと食べ続けて、ある日突然飽きて食べなくなる……というのを繰り返しています。ドライイチジクも、きっともう一生分というくらい食べていて、そろそろ飽き始めているんです(笑)。
堂上:きっとまた別の食べ物にハマるのでしょうね。今回、『丸亀製麺』さんのTVCM撮影を通じて、なにか食生活について考えるきっかけになりましたか?
原:TVCMの撮影をしていると、「美味しそうな顔をしてください」と依頼されることがあるのですが、そうすると自分が「何かを食べている絵」を思い浮かべるんですよね。でも、何を食べているかではなく、誰と食べているかを思い出すことが多いんです。
そう思うと、何も考えずにひとりで食べる食事よりも、家族や友だちと「美味しいね」と言い合いながら食べる食事のほうが、記憶に残るんだなって。だから、自分の好きなものは食べつつも、誰かと食べる時間を大切にしようとあらためて思いました。
堂上:実際、ひとりで黙々と食事をするよりも、好きな人と楽しく食事をするほうがウェルビーイング度が高いといわれています。菜乃華さんは、忙しい生活の中でも、ご自身でどうしたらいい表情ができるか、どういう笑顔がでるか、普段から心がけているのですね。素晴らしいです!
おばあちゃんになるまで今の仕事を続けていきたい
堂上:最後に、菜乃華さんの今後について伺わせてください。これから10年・20年……と人生が続いていく中で、どんな仕事がしたいとか、どういうふうに生きていきたいとかの展望はありますか?
原:大きな夢はずっとないんですが、小さい頃から当たり前のようにやってきたこの仕事を、おばあちゃんになるまで続けられたら幸せだなと思っています。直近だと、これまでは学生服を着る役が多かったので、これからは専門用語を使う役にも挑戦したいです。
堂上:『リーガル・ハイ』の堺雅人さんのような?
原:まさに! すごく大変だとは思うのですが、挑戦してみたいなという気持ちがあります。
堂上:それは、新しい挑戦によって学べることが多いからなのでしょうか?
原:それもありますし、これまでできなかったことを挽回したいという気持ちもあります。小さい頃からお仕事をしていて、友だちが当たり前のように経験してきていることに対して「自分は足りていないな」と思うことが何度かあって。
もちろん仕事は楽しいですし、経験できなかったことを悲しいとかツラいと思ったことはほとんどないのですが……。「役の中で経験できることは全部やってやろう!」という気持ちです。
堂上:素敵です。小さい頃からお仕事をされていて、おばあちゃんになるまで続けたいと思うほど、それが生活の一部になっている。まさに菜乃華さんは、ウェルビーイングな状態にいるのだなと思いました。これからも、きっと色々な菜乃華さんを観られるのでしょうね。楽しみにしています! 本日は、どうもありがとうございました。
原:こちらこそ、ありがとうございました!
堂上編集後記:
今回は、『丸亀製麺』さんの『丸亀うどーなつ』新商品・新TVCM発表会後に、お時間をいただいて対談の機会を設けていただいた。仕事が本当に楽しいし、女優としての仕事が生活の一部になっている菜乃華さんとお話させていただき、彼女の格好良い生き方を感じることができた。
娘くらいの年の差の彼女は、より多くの人を楽しませてくれる俳優という仕事をずっと続けていくのだろう。2050年、彼女が今の僕と同い年くらいになったときに、ふとこの対話を思い出してくれて、「今の自分はウェルビーイングな生活を送れているのか?」と自分自身と向き合う時間を持ってほしい。そして、より多くの人の笑顔を創っていく俳優というお仕事を楽しみ続けてほしい。
素敵な生活の先に、いろいろな価値観を受け入れて、その人柄になりきる。多様な自分が、ひとりの中に存在する。すべてが自然体で、それぞれの自分が本来の自分である、という彼女の生き方に、仕事をフロー状態になって楽しんでいる姿が思い浮かび上がった。貴重なお時間をいただきありがとうございました。
原 菜乃華さんが出演する新TVCM 丸亀製麺「もっちもちがとまらない!丸亀うどーなつ」篇、
丸亀製麺「二つの味だよ!丸亀うどーなつ」篇を6月25日(火)より全国(一部の地域を除く)で放送しています。
下記URLからもご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。
■新TVCM概要
タイトル :丸亀製麺「もっちもちがとまらない!丸亀うどーなつ」篇(15秒)
放送開始日 :2024年6月25日(火)
放送エリア :全国(一部の地域を除く)
タイトル :丸亀製麺「二つの味だよ!丸亀うどーなつ」篇(15秒)
放送開始日 :2024年6月25日(火)
放送エリア :全国(一部の地域を除く)
丸亀製麺「もっちもちがとまらない!丸亀うどーなつ」篇メイキングムービー
丸亀製麺公式YouTube: https://www.youtube.com/channel/UCmlAeLv0l1c3ajaWTMKJljA
2003年8月26日生まれ、東京都出身。2009年、6歳で芸能界デビュー。
トライストーン・エンタテイメント所属。数々のテレビドラマや映画に出演。
『すずめの戸締まり』(新海誠監督)では声優初挑戦で主人公・岩戸鈴芽役を演じたり、NHK大河ドラマ『どうする家康』に千姫役で出演したりと、活躍の幅を広げている。2024年3月、オーディションを経てヒロイン役を務めた映画『ミステリと言う勿れ』で第47回日本アカデミー賞新人賞を受賞した。配信&映画『【推しの子】』、NHK2025年前期連続テレビ小説『あんぱん』への出演が決まっている。