
毎日何気なく浴びている朝の光は、目覚めだけでなく心の健康や睡眠の質、さらには血圧や骨の健康にも影響していることを知っていますか?実はいま感じている不調や睡眠の悩みなども、私たちを囲む「光」を適切にコントロールすることで改善するかもしれません。今回「光のメリハリ」が私たちの健康的な日々をどう変化させるのか、光との上手な付き合い方など、ムーンムーンの竹田さんに詳しくお話を伺った。

竹田 浩一さん
快眠グッズメーカー ムーンムーン株式会社 代表取締役
本記事のリリース情報
Webメディア「Wellulu」にて代表竹田がインタビュー取材を受けました。
体内時計やホルモン、骨、メンタルまで!朝日が健康にもたらすもの
── 本日はよろしくお願いいたします!
竹田さん:よろしくお願いします!
──早速ですが、目覚めには日光が大事と言われる理由を教えてください。
竹田さん:朝の目覚めに「光」が重要な理由は、私たちの体内時計が光によってリセットされるためです。とくに、朝日を浴びると脳が「一日の始まり」を認識し、体内リズムを整える信号を送ります。
──脳が朝日を浴びることで目覚めるのですね!
竹田さん:この過程で「セロトニン」という脳内物質が分泌されるのですが、セロトニンには気分を前向きにする働きを持っています。また、夜になると「メラトニン」という睡眠ホルモンに変化し、質のよい眠りをサポートしてくれるんです。つまり、朝日光を浴びることは、目覚めから夜の眠りまで影響を与えているのです。
── 目覚めだけでなく次の眠りにまで影響していたとは驚きです。
竹田さん:これには起床時に明るい光を浴びることが重要で、この際、2500ルクス以上の光を浴びるのが理想とされています。これは野球のナイター照明の明るさに匹敵するほどで、一般家庭の室内照明(500~1000ルクス程度)の倍以上に相当します。
ただ、晴れた日の朝日の明るさと同じくらいなので、朝の日光で十分です。
── どのくらいの時間浴びるとよいのでしょうか?
竹田さん:起床直後の5分間だけでも効果的です。時間がない方でも朝の通勤時に自然光を浴びるのはよいことですね。
── たった5分でもよいのですね!
毎朝5~10分!朝日を浴びてスッキリ目覚め
──実は私自身目覚めが悪いというか、スッキリ起きれず昼間に眠くなることも多いんです。
竹田さん:そうなんですね。目覚めを改善させるためには、朝起きたらすぐにカーテンを開けて自然光を浴びるのが手軽でおすすめです。
もし部屋が暗い環境であれば、「光目覚まし時計」のような機器を使うのもおすすめです。これらは徐々に明るくなる光で目覚めを促してくれます。また、朝に5~10分程度でも日光を浴びることで、セロトニン分泌が活性化し、体内リズムがさらに整います。このように音だけではなく「光」を活用することで、スッキリした目覚めを実現できますよ。
──起きたらひとまずカーテンを開ける習慣をつけるとよさそうですね!
光を浴びないと集中力の低下や睡眠の質低下、うつ病のおそれまで
──もし光が全くない状態で生活した場合、私たちの身体はどうなるのでしょうか?
竹田さん:光が全くない状態で過ごすと、体内時計が乱れてしまいます。暗い部屋で長期間過ごす実験では、体内時計が徐々に遅れていき、いわゆる「夜型」になってしまうことがわかっています。朝起きるのが困難になるのはもちろん、一日中眠気が取れない、集中力が低下するなどの症状が出ることがあります。
さらに、体内時計が崩れることでホルモンの分泌バランスも乱れてしまうので、睡眠の質の低下にもつながってしまいます。
──暗い部屋で長期間というのは聞いているだけでも調子が悪くなってしまいそうです。
竹田さん:そうなんです。光が私たちの身体に与える影響は非常に大きく、たとえば血圧に関してだと、日光を浴びることで血管が拡張し、血圧が下がるという研究があります。日光浴を20分程度おこなうことで、心臓病や脳卒中のリスクを抑えられる可能性があるとされています。
──心臓病や脳卒中のリスクにまで関係するとは…。想像もしていませんでした。
竹田さん:さらに、日光を浴びると健康な骨を維持するために欠かせない栄養素「ビタミンD」が体内で生成されます。最近ではビタミンDがメンタルヘルスにも関与しているという研究が注目されていて、ビタミンDの不足がうつ病や不安症状の悪化と関連している可能性が指摘されているんです。
── なるほど、睡眠だけでなく血圧やメンタルまで光が健康に与える影響は多岐にわたるのですね。
起立性調節障害には身体のリズムを整える「光のメリハリ」がポイント
── 続いて、起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)についてお伺いしたいのですが、現在とくに小中高生で多く見られているとのことなんですよね。
竹田さん:はい、起立性調節障害は自律神経の調整がうまくいかないことで朝起きられない、日中に強い倦怠感や頭痛、吐き気を感じるといった症状を引き起こす病気です。現在、全国で約100万人の方が悩んでいるとされています。
── 約100万人もの人が!とくに小中高生に多いというのは何か理由があるのでしょうか?
竹田さん:要因はいくつかあるのですが、たとえば成長期には身体が急激に変化するため、自律神経や睡眠リズムの調整がうまくいかないことがあります。また、栄養不足や体力の低下が影響することもあります。
── 現代のスマホやゲームといった生活スタイルも関係するのでしょうか?
竹田さん:はい、大きく関係しています。スマホやゲームの長時間使用による夜更かしで、睡眠リズムが乱れてしまう子どもが増えていて、思春期特有の生活習慣の変化やストレスも、この病気を引き起こす一因になっています。
── なるほど。いまのところとくに効果的な治療薬はないのでしょうか?症状の改善にはどういった治療法が取られているのでしょうか。
竹田さん:まだ特効薬はなくて、おもに生活習慣や環境の改善をおこなうのが重要とされています。
夕方以降は照明を切り替えて明るい光を避けよう
── 生活習慣や環境の改善が重要とのことですが、具体的にはどういった改善が効果的なのでしょうか?
竹田さん:光環境を整えることが、起立性調節障害の改善に大きな役割を果たします。
先ほど朝日(明るい光)を浴びると体内時計をリセットするとお話しましたが、これは夜間も同じです。たとえば午後3時以降に明るい光を浴びると、体内時計が再度リセットされてしまい、睡眠の質を悪化させる原因になります。
── なるほど、明るい光を夜間に浴びることでも体内時計のリセットをかけてしまうのですね。
竹田さん:そうなのです。そのため、夕方以降はリビングや寝室を間接照明に切り替えたり、暖色系の薄暗い光を使うなど、「光のメリハリ」を意識することが重要です。
── 最近では調光機能付きの照明も多いですよね。
暖色系はリラックスモード、寒色系は集中モードに
── 暖色系の照明とのことですが、やはり寒色系の照明となにか身体への影響が異なるのでしょうか?
竹田さん:オレンジや黄色に近い色合いの暖色系の光にはリラックス効果があり、脳内で睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を促し、眠りやすい状態を作る働きがあります。
一方で、白や青に近い寒色系の光は、おもに日中、活動的に過ごす時間に使用することが多いように、目を覚ます効果や集中力を高める作用があります。そのため、夕方以降も浴び続けると、体内時計が混乱してしまい、メラトニンの分泌が抑えられてしまうため、眠りにくさにつながってしまうのです。
── なるほど!確かに寒色系の光はどこか落ち着かないというか…感覚としてあります!
竹田さん:学校やオフィスでは寒色系の光が使われることが多いですよね。その一方でホテルのようなリラックスできる空間では暖色系の光をよく見かけると思います。このように「光のメリハリ」をつけることで、身体のリズムが整いやすくなるんです。
── それぞれの特性から照明の使い分けが必要なのですね。
竹田さん:はい、昼は集中、夜はリラックスといった目的に合わせて光の種類を変えることで、身体を自然と休むモードに入れてあげる。とくに睡眠の質を上げたい方には実践していただきたいですね。
睡眠リズムを整える!おやすみモードに切り替える光の浴び方
── 現代社会では睡眠に悩む方が多いという印象がありますが、実際にそのように感じていらっしゃいますか?
竹田さん:はい、統計的には「3人に1人」が睡眠に悩んでいると言われていますが、私の感覚ではもっと多いのではないかと感じています。
── 統計上でも3人に1人とは…現代病というか、かなり深刻ですね。
竹田さん:むしろ「夜一度も目が覚めずに朝までぐっすり眠れる」という方のほうが珍しいと思います。よく眠れることが一種の特技のような状況になっている気がしますね。とくに、子育て中のお母さんたちから、睡眠不足や夜中に何度も目が覚めるといった悩みをよく耳にします。
── 私自身も周りで夜中に目が覚めたり、寝つきが悪いという話をよく聞きます。やはりここにも現代のライフスタイルが影響しているのでしょうか?
竹田さん:はい、とくにスマホやパソコンの普及は睡眠問題に影響を与えるおもな原因の1つです。
「コンテンツ」による刺激で脳が覚醒してしまう
── とくに目的もないのについついSNSを見てしまったり、癖になっているところもあると思います。
竹田さん:問題なのは「コンテンツの中身」なんですよね。SNSや動画、ニュースなどは、興味を引くものが多く、脳が活性化し、興奮状態になってしまうんです。とくに刺激的な情報や感情を動かされるものを視聴し続けると、脳内で覚醒を促す物質が分泌され、眠りにつく準備ができなくなってしまいます。この脳の覚醒こそが、睡眠に悪影響を与える大きな原因になっています。
── こればかりは心当たりしかありませんね…。
竹田さん:なのでまずは「寝る1時間前だけでも画面を見ない時間を作る」といったように、小さな取り組みから始めたいですね。
── 無理のない範囲から、ですね。スマホやパソコンの画面から出るブルーライトは私たちにどういった影響を与えているのでしょうか?
竹田さん:スマホやパソコンの画面から出るブルーライトは脳を刺激し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑えてしまいます。
── ブルーライトカットの商品も多く展開されていますが、取り入れることで効果はあるのでしょうか?
竹田さん:もちろん取り入れるのはよいことですが、ブルーライトカットで睡眠での問題を大きく改善できるというほどではありません。光の影響を減らすためにブルーライト軽減モードを使ったり、画面を暗くするなどの対策は前提として取り入れてほしいですが、一番大事なのは「寝る前の時間の過ごし方」を見直すことです。
理想は寝る前の1~2時間はスマホやゲーム、パソコンの使用を控えること。これだけでも寝つきの悪さは結構改善するんですよ。
── スマホやパソコンを使っていた時間をほかの趣味や休息に活用したいですね。
竹田さん:そうですね。本を読んだり、リラックスできる活動がおすすめです。穏やかに夜の時間を過ごすことで自然と身体が休むモードに切り替わるため、眠りにつきやすくなるはずです。
3週間を目安に光環境を整えてみる
── 改めてにはなりますが、睡眠リズムを整えるためのポイントを教えてください。
竹田さん:「朝起きたらすぐに光を浴びること」「夜は光を控えめにしてリラックスすること」「短時間でも日光を浴びること」の3つを意識してください。
── カーテンを開けたまま寝るのはどうなのでしょうか?
竹田さん:確かにカーテンを開けたまま寝るのが一番楽な気はしますが、たとえば夏の早朝のように朝4時台に明るくなってしまうような場合、その光を浴びることでむしろ眠りが浅くなり、睡眠の質を下げてしまうことにもつながります。そのため、夏でも冬でも、カーテンは閉じた状態で寝ていただきたいですね。
── なるほど!季節によって外が明るくなる時間は異なりますもんね…。
竹田さん:カーテンを閉めることで、睡眠の妨げとなる余計な光をカットし、深い眠りを確保できます。そして起きたあとにはしっかりと光を浴びることで、セロトニンが分泌され、夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンに変化し、夜もぐっすり眠れるようになります。
── カーテンも光のメリハリをつけるために重要な働きをしているのですね。ちなみに遮光カーテンはいかがですか?
竹田さん:とくに、朝早くから日が昇る夏場や、夜間に街灯や外の光が差し込むお部屋の場合は、遮光カーテンを活用するのはおすすめです!完全に真っ暗にする必要はありませんが、目覚めるまで光が直接目に入らない環境を作るのが理想ですね。
── 睡眠リズムが整うまでにはどれくらいかかると考えたらよいでしょうか?
竹田さん:個人差はありますが、睡眠リズムを整えるためには3週間ほどかかると考えておくとよいかと思います。早い人だと1週間ほどで効果を感じることもありますが、多くの場合は、身体が現状を維持しようとするホメオスタシス(恒常性)の働きもあり、定着し始めるには3週間くらいかかりますね。
── なるほど。まずは3週間ほどは続けてみるのが大切なのですね。
子どもは大人より光に敏感!子育て家庭での睡眠リズムの整え方
竹田さん:子育て中の家庭の場合、赤ちゃんや子どもは、大人よりも光に対する感受性が高く、夕方以降に明るい環境にいると、眠りが浅くなったり夜泣きの原因になることがあります。そのため、とくに夜間はリビングの照明を暖色系の薄暗い光に切り替えることをおすすめします。また、カーテンを閉めて光を遮ることも大切です。寝室には遮光カーテンを取り入れるのがおすすめです。
── 夜泣きの原因になってしまっているかもしれないのですね…!スマホやゲームの使用についてはいかがですか?
竹田さん:そうですね、睡眠リズムを整えるには、夜9時以降にスマホやゲームを控えるルールを作るのがおすすめです。小学生のころから「寝室にスマホを持ち込まない」「充電はリビングでおこなう」などの習慣をつけると、中学生以降もスムーズに継続できるのではと思います。
── 親子で話し合ってルール作りというのは効果がありそうですね。ほかにも家庭でできる睡眠環境づくりでアドバイスはありますか?
竹田さん:たとえば、夜中にトイレに起きる方は、できるだけ強い光を避けたいですね。トイレの照明が明るすぎることで、眠気が一気に覚めてしまう原因になります。対策としては、足元を優しく照らすようなセンサー付きの間接照明の設置がおすすめです。
また、帰宅時間が遅く、寝る前にお風呂に入る場合も同様です。お風呂場の照明が明るすぎることで、リラックスできず、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑えられてしまいます。この場合は、脱衣所に暖色系の間接照明を置き、その光だけでお風呂を利用するのもおすすめです。
── まさに夜トイレで眩しい!と思ったことが何度もあります。
竹田さん:ですよね。こうした細かな部分でも工夫をしていくことで睡眠環境がより整うのでおすすめです。
Wellulu編集後記:
朝の目覚めで日光を浴びることが身体から心までさまざまな健康に影響を与えることも驚きでしたが、体内時計を整える・リセットするという「一日の始まり」としての役割はとくに忙しい毎日を繰り返す現代人とって大きな意味を感じるお話でした。忙しく過ごすからこそ、適切に体内時計を管理し、よい睡眠にもつなげる。光と上手に付き合って日々の健康の土台をしっかりと築いていきたいですね。
詳細なプロフィール
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