味噌汁、スープ、雑炊など、水やお湯を注ぐだけで簡単に食べられるフリーズドライ食品。軽くて持ち運びに便利で、長期保存も可能!そんなイメージをお持ちの人も多いはず。でも、最近のフリーズドライ食品の進化を知っていますか?実はとろろや大根おろしなんてものまでフリーズドライになっていて、その技術の進歩や商品展開の拡大には驚くばかり。家庭の日常的な食事はもちろん、アウトドアシーンや非常時の災害食として、あらゆる場面で気軽に便利に使えるフリーズドライ食品の魅力について、今回アスザックフーズの滝澤さんと等々力さんに詳しくお話を伺った。
滝澤 陽子さん
アスザックフーズ株式会社 R&Dセンター マネージャー
等々力志織さん
アスザックフーズ株式会社 営業部 企画開発チーム リーダー
美術大学卒業後、長野県内の食品メーカーに入社。パッケージデザインなどの業務に携わる。2020年アスザックフーズ入社し、商品開発チームにて商品企画・マーケティング・広報まで幅広い業務で奮闘中。座右の銘は「日々是好日」。
本記事のリリース情報
Webメディア「Wellulu」にアスザックフーズ㈱の記事が掲載されました。
低温での乾燥で栄養成分の損失が少ない!フリーズドライ食品の魅力
── 本日はよろしくお願いします。まず、フリーズドライ食品とはどういう特徴を持つ食品なのか教えてください。
滝澤さん:はい、フリーズドライ食品の特徴は、まず食品の形や栄養素がほぼ変わらないことです。調理後にそのまま冷凍し、乾燥させるのですが、通常の乾燥方法の場合、高温で乾燥させることが多いため、食品が熱で劣化してしまうことがあります。
しかし、フリーズドライの場合は、過度な熱をかけずに乾燥させるため、栄養素の損失は少なく、たとえば、ビタミンCやアントシアニンなどの成分が乾燥前後でほとんど変わりません。茹でたあとに乾燥させる場合、茹でる過程での損失はあるものの、乾燥の工程を通しても栄養素はほぼ同じということです。
── 栄養素がほとんど変わらないのは素晴らしいですね。
滝澤さん:また、軽量で持ち運びがしやすいという特徴もあります。たとえば、野菜の場合、10分の1ほどの重さになります。このため、登山やキャンプ、災害時の備蓄など、さまざまなシーンで利用されています。
さらに、長期保存が可能で、保存期間中の品質劣化も少ないため、非常食としても活用できる食品です。
──長期保存可能!持ち運びが簡単!そして栄養成分も問題なし!となると3拍子がそろっていますね。キャンプシーンでの利用や非常食として備えるのもわかる気がします。
等々力さん:そうですね。非常食という視点では、弊社はフリーズドライ製品を、災害時の支援物資としても提供しています。実際に以前、長野市からの依頼を受け、道路が寸断され大型車が入れない、被災地へ赴くキッチンカーへの製品提供を通して物資を支援したことがあります。
フリーズドライの乾燥具材は、現場での調理が簡単で、生野菜の調達が難しいときでも栄養素を補うことができるため、災害時の野菜不足の解消に一役買うことができました。
どうやってフリーズドライはできるの?
── 製造工程について教えていただけますか?
滝澤さん:まずは、普通の家庭でおこなうように具材を切ったり、茹でたり、蒸したりなどの調理をします。その後、おいしさが逃げないように凍結させてから、減圧状態で乾燥させます。真空状態で氷から気体へ代わる乾燥方法を「昇華」というのですが、この工程により、乾燥前と乾燥後の状態がほぼ変わらずに復元できるのです。
──ただ乾燥させている。という訳ではなかったのか…。
滝澤さん:調理、凍結、乾燥の全ての工程で工夫が必要で、具材に何を入れるか、凍結温度や乾燥時の温度、真空の状態などの条件の組み合わせにより、最終的な製品の食感や硬さが決まります。そのため、商品化の前には食材に合わせた最適な条件を試行錯誤しながら見つけています。
──あの手軽でおいしい食品には、そういった見えないストーリーがあるのですね。
滝澤さん:はい。ただ乾燥させただけの製法だと、食品が縮んだり、硬くなったりしてしまうことがあります。フリーズドライの最大の利点は食品の風味や食感がほぼそのまま保たれることなので、商品開発の際には苦労することも多いんですよ。
──ちなみにフリーズドライにできない、あるいはするのが難しい食品はあるのでしょうか?
滝澤さん:基本的にはなんでも乾燥させること自体は可能ですが、たとえば水分が多すぎるものは乾かしたあとに縮んでしまうことがあります。デンプン質が多いお餅なども元のモチモチした状態に戻すのが難しいですね。
しかし、技術の進化もあり、お米やそうめんなども工夫次第で元の状態に近い状態で復元できるようになっています。
とろろや大根おろし、スイーツまで…進化を続けるフリーズドライ食品
──では実際に、フリーズドライ食品にはどういったものがあるのでしょうか?お味噌汁やスープなどのイメージが強いのですが、なにか注目の商品はありますか?
等々力さん:弊社はOEMとしてカップ麺やほかの商品向けの製品を数多く供給していますが、自社商品ではユニークな商品がとても多いんです。
最近のおもしろい商品だと、「国産の長芋とろろ」と「大根おろし」があります。フリーズドライのブロックに水をかけるだけで、すぐにとろろや大根おろしができるんです。YouTuberの方々に取り上げられて話題となりました。
──とろろや大根おろしまでフリーズドライのものがあるのですね!
等々力さん:そうなんです。ほかには、ワインを注ぐだけでサングリアができる「サングリアベース」という商品もあります。フリーズドライのブロックにレモンや桃などのフルーツを閉じ込めており、ワインを注いで少し待ってからかき混ぜるだけでサングリアが楽しめます。
また、具材入りのフリーズドライ麺もあり、お水だけで簡単に美味しく味付けされたそうめんができる商品も提供しています。とくに夏場に人気の商品です。
──どれもユニークなものばかりですね!これまで持っていたイメージはほんの一部のようです。
等々力さん:ほかにも、お菓子もあります。たとえば「いちごの雪どけ」という商品は、ホワイトチョコといちごをフリーズドライしたお菓子です。口に入れるとふわっとチョコが溶け、いちごの酸味が広がり、食感はまるで雪解けのようです。
これ以外にもニンニクを乾かした製品など、食感と味わいが楽しめる商品を提供しています。
──フリーズドライの進化、恐るべしですね…。想像以上にラインナップがあるんだと驚いています。今後どのようにフリーズドライの食品が進化していくと思いますか?
等々力さん:私たちはフリーズドライ技術はまだまだ可能性を秘めていると考えています。これからも新しいアイデアを取り入れて、幅広いニーズに応えられる、消費者のみなさまに驚きと便利さを提供できる商品を開発していきたいと思っています。
アウトドアや災害時、日常の食事でも!フリーズドライを活用して栄養もおいしさも
── フリーズドライ食品を使用するのにおすすめの場面を教えてください。
等々力さん:フリーズドライ食品は、水だけでも復元できるので、お湯が使えない状況でも役立ちます。家庭内でも外出先でも使えますし、調理の手間を省くことができます。たとえば、カットされた野菜を戻すだけで、すぐに食べられる状態になります。ネギやホウレンソウなどはカットする手間が省け、そのまま乾燥された状態で提供されるので、簡単に調理できます。
── 普段の料理にちょっとしたアクセントを加えることもできますね。時短レシピで活かせそう。
等々力さん:また、キャンプなどで調理が面倒な時にも手軽に使え、さらにゴミも出にくいので、アウトドアシーンでも多くの方にご利用いただいています。
たとえば、スープにして食べるだけでなく、パスタソースやハンバーグのソースにも応用できます。野菜や具材を追加してボリュームを出すことができるため、カップ焼きそばにフリーズドライの野菜を追加するのもおすすめです。
──手軽に野菜の摂取につながるのはよいですね。
等々力さん:そうなんです、食物繊維などの栄養不足や野菜不足の解消に非常に便利です。とくに、1人暮らしや少人数の家庭では、野菜を大量に購入しても使いきれないことがありますが、フリーズドライなら必要な量だけ使えるので便利です。スープにフリーズドライ野菜を追加したり、コンビニ弁当やカップ麺に加えるのもおすすめです。
──とくにフリーズドライ食品をおすすめしたい人はいますか?
等々力さん:そうですね、1人暮らしや高齢者の方には、簡単に栄養が摂れるのでとくにおすすめしたいです。たとえば、スープをそのまま飲むのではなく、そうめんと合わせたり、和風スープを炊き込みご飯のベースに使ったり、梅味のスープを焼きおにぎりと一緒にお茶漬けにすると、簡単でおいしい一品が出来上がります。
──食事も1人分だと品数も少なくなってしまいがちですよね。活用アレンジレシピを教えてほしいです。
等々力さん:たとえば、ミネストローネを炊飯器にご飯と一緒に入れると、トマト風味のケチャップライス風のご飯が簡単に作れます。パスタソースとして使うのもおいしいです。また、あめ色玉ねぎのスープを濃いめに戻してハンバーグのソースに使うことで、手間をかけずに本格的な味わいが楽しる、そんなレシピもHPやInstagramで多数ご紹介しています。。
フリーズドライ食品は、スープなどのイメージが強いかもしれませんが、実際には日常の食事にも幅広く使える便利な食品ですので、ぜひ活用していただけたらと思います。
編集後記
フリーズドライ食品は、軽くて、長期保存ができお湯を注ぐだけ!というイメージだったのですが、実は栄養素や形状もほぼ変化がないとのことに驚きました。長期の保存が可能であり、またお湯の入手が難しい状況でも、水を注ぐだけで使えることもあり、日常のおいしい食事だけでなくアウトドア、そして非常時までカバーできる素晴らしい食品だと感じました。
大学は農学部を卒業後、食に携わる仕事がしたいと念願の食品会社へ入社。
入社以来、R&Dセンター一筋で新製品の開発に没頭してきた。
これまで担当した製品は300件以上にのぼる。
乾燥食品に関わる特許も取得し、日々新たなフリーズドライの可能性を探求している。