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【田中美和氏】女性が自分らしく働ける環境をつくる

キャリアもプライベートも充実させたい。働く人の誰もが願う状態ではないだろうか。でも、実際にはそのハードルは高い。ライフイベントによって、仕事の上でも影響を受けやすい女性は尚更だ。

そんな現状を変えようと「〜Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。〜」を掲げて、女性たちの多様な生き方・働き方を実現する活動をしているのが、Warisの共同代表である田中美和さんだ。女性が生き生きと働き続けるためにはどんなサポートが必要なのか、Wellulu編集部の堂上研が話を伺った。

 

田中 美和さん

株式会社 Waris(ワリス)共同代表
一般社団法人 プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事

慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、日経BPで編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。取材や調査を通じてのべ3万人以上の女性の声を聞き、生き生きと働き続けられるサポートをすることを決意する。2013年に多様な生き方と働き方を実現する人材サービス企業Waris(現在、ベネッセグループ入り)の共同代表として独立。女性の就労支援に尽力する。

https://waris.co.jp/

堂上 研

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザイン ディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

物語の世界に没入した幼少期

堂上:本日は良いご縁をいただき、対談が実現して嬉しいです。まず美和さんのプロフィールをお聞きしてもいいですか。

田中:はい、田中美和と申します。『日経ウーマン』の編集記者を経て、Warisという会社を2013年に仲間と創業しました。そして、フリーランスなどの自分の名前で自律的なキャリアをつくりたい人を支援するフリーランス協会で理事を務めております。

田中:Warisは、フリーランスとして働きたいという女性と、企業をマッチングしています。創業時は働き方改革関連法案や、女性活躍推進法がなく、長時間労働が当たり前でした。当時は4割以上の女性が、第一子出産とともに離職していたのです。そういった環境のなかで、自分たちもふくめて周囲にライフとキャリアの両立に不安を抱えている女性たちが大勢いました。そこでライフとキャリアの両立ができるように、時間と場所にとらわれないフリーランスの仕事を、女性たちに紹介し始めました。私自身、前職退職後にフリーランスに転身し、時間と場所の自由度が高く、経験も活かせる生き方が性に合っていると感じたんです。こういう働き方を女性に紹介することで、選択肢が広がるのではないかと考えました。

堂上:美和さんの「働く女性を応援したい」という想いが、事業の出発点にWarisがあるわけですね。

田中:そうなんです。ただWarisでのマッチングを続けるうちに、保育園に子どもを預けにくい、学びの機会が少ない、報酬や契約のトラブルといったフリーランス特有の悩みにも直面します。今の日本の働き方は、会社員がベースになっているため、どうしても苦労が多くなってしまう。課題解決の道を探っている時に、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会を立ち上げようとしている平田(麻莉)と出会い、仲間に入りました。そして、現在は協会を通じたフリーランスの支援もしています。

堂上:話を記者時代まで遡らせてください。『日経ウーマン』には何年間在籍されていたのですか? 編集記者を目指したのはものを書くのが好きだったからでしょうか!?

田中:記者として11年働いていまして、そのうち7年は日経ウーマン編集部でした。文章を書くことが非常に好きでした。大学時代の共同通信でのアルバイトが、メディアの世界に飛び込むきっかけとなっています。日々、各国からニュースが入ってくる現場の高揚感が楽しかったんです。

堂上:学生時代から、いずれは物書きになりたいという気持ちがあったんですね。

田中:はい。雑誌を読むのも好きでしたので、作る人になりたいとも思っていました。

堂上:さらに美和さんの幼少期に時間を巻き戻してもいいですか。どんなお子さんだったんでしょうか?

田中:なんていうんでしょうか、とにかく本を読むのが楽しいので、好きな場所も図書室でした。

堂上:あんまり友達と外で遊ぶということよりも、読書が好きな子どもだったのですね。

田中:友達がいなかったわけでもないんですけれど、みんなが外で遊んでいても、私は図書室にいました。小中高を通じて、学校で一番好きな空間だったんです。

堂上:良いですね。好きなもの、熱中できるものを小学生時代に見つけられるって幸せですね。どんな本を読まれていたのですか?

田中:『赤毛のアン』や『小公女セーラ』とか、いわゆる名作文学です。『シャーロック・ホームズの冒険』などの推理小説も好きでした。

堂上:美和さんが物語の世界に没頭するのは、ご両親の影響もあるのですか?

田中:父が本好きだったんです。自宅の一室は書斎になっていました。週末のお出かけは書店が基本で、現地では別行動だったんです。父は興味のあるジャンルの棚を物色し、妹と私は児童書コーナーで立ち読みをするという。そこで欲しい1冊が見つかると必ず買ってもらえていました。

堂上:すごい。小さい頃の経験が見事に仕事へとつながっていますね。大学も文学部とか、そういった方向で学ばれたのですか?

田中:大学は法学部です。高校生になると、国連で活躍される緒方貞子さんに憧れました。あんなふうになりたいと思って調べると、国際政治を学ぶことで、道が拓けるかもしれないと分かり進学したんです。学生時代を送るなかで、共同通信でのアルバイトをはじめ、大学にあるメディア・コミュニケーション研究所を通じて、マスコミで働く人たちと触れ合う機会もありました。あとは雑誌も好きで、なかでも『日経ウーマン』は愛読書でもありました。当時は女性のキャリアに焦点を当てた刊行物は少なく、自分が社会に出た時にどんな働き方をするんだろうという興味から手にしていました。

堂上:そうして、編集記者となったわけですね。おもしろいですね。いろいろな興味と学びを本から得て、実践していくことにつながっていますね。

僕も、本を読むことも好きでしたが、どちらかというと何かを創る工作のほうが好きでした。夏休みの工作や作画が好きでたまらなかったのを思い出しました。そして、読書感想文も、なんか賞を取りたいと思って燃えていました。その頃から文章を書くのも好きでした。

さまざまなポジションで働く女性の葛藤を聞いた記者時代

田中:『日経ウーマン』で過ごした7年間はすごく楽しかったです。編集記者となって、私は誰かのお話を聞くというのがとても好きだということも分かりました。経営者や大企業の管理職、読者の方まで、いろんな立場で働く女性を取材したものです。取材をしていると、いつまで仕事を続けられるのかと悩まれている方が多くいました。

堂上:それは、結婚をはじめとしたライフスタイルにまつわるものでしょうか? もしくは日本ならではの男性優位社会のようなものなど、いろいろな理由が想像されますけれど、みなさんがもっとも悩まれているのはどんなことだったのでしょう?

田中:もう20年近い前の話になるので、今とは少し事情が変わってくるかもしれないですけれど「ライフとキャリアの両立はできるのか」ということですね。

堂上:日本の会社の仕組みとして、女性が働きやすい環境ではなかったんですよね。よく分かります。

田中:そうですね。そもそも当時は、テレワークという概念もありませんでした。そのため基本的には出社スタイルです。そして働き方改革が広まる前は、重責を担う職務をしたいのであれば、長時間労働をするのが当たり前とされている時代でした。そういった働き方とライフバランスで悩まれていたり、ライフイベントが起きていなくとも将来が不安になったりといった内容をよく聞いていました。

堂上:日本は働くということに対して、女性と男性で悩みが振り分けられています。美和さんは、現場の女性の声を聞いていたわけですね。僕が新入社員だった頃と比べると、現在は環境も働き方もかなり変わりました。

田中:コロナの影響によって、テレワークが普及したのは大きいですよね。まだまだフルリモートの職場は少ないにしても、週何回かはリモートOKという会社もめずらしくありません。会社員がその選択をできるようになったのは、劇的な変化です。Warisの創業当時は、リモートで働きたかったらフリーランスになるしかありませんでした。以前に比べて柔軟性が高まっています。人的資本経営という概念も広まり始めていますね。

堂上:意識が高まってきていますよね。我々Welluluでも、人的資本経営の中で、社員ひとりひとりがウェルビーイングに働ける環境を追求しています。そのなかで一番意識しているのは、アンコンシャスバイアスを取り除くことです。女性だから、男性だからというのを無くして働くことを意識して活動しています。

田中:最近は、その人らしくいられる環境が構築されつつあります。産休・育休はもちろんですけれども、時短勤務やテレワークなど、さまざまな人が置かれた事情と組み合わせて働くことができるようになってきていますね。

堂上:僕の知人が3度の育休を終えたあとに会社に戻ったら、ポジションがなくなったと退職せざるを得ないということがありました。また、違う知人の会社は、子どもが熱を出してもテレワークを認めず、家で仕事していても欠席扱いになるという会社の方針を嘆いている人がいました。美和さんなら、そういった会社の経営者に出会ったら、どうアドバイスされますか?

田中:「働き盛りのいい人が採用できなくなりますよ」と言いますね。今の日本は、労働人口が減少しています。そのため圧倒的に個人が優位なんですよ。

堂上:社員のウェルビーイングを図らないと、事業が立ちゆかなくなるということですよね。それを理解してくれる経営者が増えたら、もっと働きやすくなりそうです。

田中:採用をして終わるのではなく、定着をしてもらわないといけないですしね。

堂上:実際に、社員の採用もですが、教育コストもかかりますもんね。

田中:働き方自体がウェルビーイングじゃないと「ここでは力を発揮できない」という判断をして、次に移る可能性が高くなる要因になります。

10年間で40代女性の転職率が10倍に

堂上:社員のウェルビーイングを考慮できないと、転職する人が増える一方ですよね。転職が普通になってきている印象があります。

田中:実際に転職数は右肩上がりです。リクルートの過去の調査(※)によると、2013年と比べて、40代女性の転職率が10倍以上になっています。10年前は職場を変える女性は少なかったという前提があるかもしれませんが、それを考慮しても多いですよね。
※出典:株式会社リクルート「Press Letter」(2023年3月28日)

堂上:子どもが大きくなって再就職をしたいという人が多いんでしょうか? あと、女性活躍の国の支援も影響していそうですね。

田中:働き続けている人が、よりよい環境を求めて転職をするというケースが考えられますね。30〜40代のライフスタイルの変化に応じて、自分らしくいられる状況を作っているのではないでしょうか。一方で、育児や介護で仕事を離れていたけれど、復帰をしたいという方もいらっしゃいます。私たちもその支援をしていますが、難しさを感じるのは日本の労働マーケットが、離職期間のある人を遠ざける傾向にあることです。

堂上:そうなんですよね。著書『自分らしく働くための39のヒント』の事例でも、たくさんの人の働くことへの想いが書かれていました。でも、そこに再就職するのが困難だったりしていましたね。

田中:新卒一括採用のカルチャーがまだ根強いことにも原因がありますね。

堂上:実力があっても難しいのですね。働き方が多様になっている今だからこそ、そういう方たちに力を発揮していただくのは、とても重要だと思うのですが。

田中:この問題は女性に限りません。育児や介護をしている男性もいます。それぞれがいろんな事情を抱えながらも、力を発揮できる仕組みを整える必要があります。労働市場自体ももっと流動性が高まって、離職期間の有無よりもその人が「今」何をできるかということ、そして「Will(意志)」が大切です。その人がやりたいことを重視するマッチングが行われるようになると、状況は変わっていくと考えています。

自分と対話して「強み」を棚卸し

堂上:著書の話となるのですが「私、何もできないんです」と言う人が多いと書いてありました。その状況は、なんとかしたいですね。

田中:本当です! 記者時代からたくさんの方のキャリアを見ていますけれど、「何もできない」という方はいないんです。みなさんに強みはありますし、重ねてきた人生の時間の中に必ず何かあります。でも、それを正しく自己理解できていない方が多いのではないかと思うんです。それはなぜなのかというと、すごく忙しいから。そもそも私って何者? とか、私には何ができるの? など、振り返る時間がありません。

堂上:そのエピソードに付随して「ライフラインチャート」がとても面白いと思いました。仕事に限らずライフイベントも記入して満足度や充実度を記入していくという。

出典:『自分らしく働くための39のヒント』P118-119

田中:ありがとうございます。さまざまなキャリア研修でも取り入れられているものです。おそらく就職活動や、新人研修で記入して終了になる方も多いとは思うのですが、私としては何度でも書いていただきたいですね。紙とペンがあればできるので!

堂上:自分を振り返ることは大事ですね。僕自身もどんなタイミングがウェルビーイングを感じたか、振り返る習慣を持つようにしました。そして、自分がいきいきと働いているときに、どんなシチュエーションだったか考えて、自分と対話するのが自分にとって良い状態をつくれるように思います。

田中:書き出すことで「何もないわけではない」ということが分かります。私ってこういうときが楽しくて、充実感を抱くんだなとか。そうすると“自分”の解像度が上がります。こういう話をすると「それってちょっと怖いです」という反応を示す方もいます。なぜかというと、その先に何もないと思い込んでいるからなんですよね。繰り返しにはなりますけれど、それはありません。強みは絶対にあります。

堂上:「ライフラインチャート」を書き出すにあたって、壁打ち相手がいたほうがいいんでしょうか?

田中:一人でできますよ。ただ、客観的な意見も聞いてみたいということでしたら、キャリアカウンセリングを受けてみることをおすすめします。

堂上:Warisの会社でも実施されているのでしょうか?こういったサービスは、ウェルビーイングな働き方で重要だと思います。

田中:2024年8月現在、リニューアル中なんです。でも、今はオンラインで受けられるサービスが豊富にあります。キャリアカウンセリングというと、転職エージェントが提供する無料サービスを思い浮かべるかもしれませんが、それはあくまでも仕事をマッチさせるためのものになります。有料のカウンセリングは「私の強みは?」「転職をしたほうがいいのかな?」といった、ふわっとしたモヤモヤを整理したい時に向いています。最近では、福利厚生に取り入れている会社も増えています。

堂上:僕たちもウェルビーイングを探求するなかで、悩みも多様であることが分かりました。それを社内で解決しようとすると、どうしても内輪になってしまいがちです。自分は何をしている時にワクワクしているだろうという問いは、第三者の視点を頼るのもありですね。

田中:社内に相談をすると、その中での価値観に当てはめられてしまうので、他の視点を頼るのはいいと思います。そしてロールモデルは一人じゃなくて、いいとこどりでもいいんですよ。

働くことは生きること

堂上:美和さんが「働くことは生きること」だと書かれていた文章に、とても共感をしました。僕は働いている時間が、めちゃくちゃ楽しいんですよ。趣味を聞かれたら「仕事」だと答えるくらいです。その答えに友達からは、少しバカにされるんですけれど(笑)。でも、楽しく働くための能力があるとすれば、それを鍛えるのはとても重要だと思っています。だって、一日のうち長い時間を占めているわけですから。

一方で、働くことが「苦」だと考えている人が多い気もします。それはいわば「生きることが苦」と同じになるので、楽しむためにはどうすればいいんだろうとか、探求できる人が増えるといいなと思っているんです。

田中:先程の話とつながるところですが、そのためにも「自分を知ること」が重要です。自分の「快」「不快」を理解すると、充実感を得るためにはどうすれば良いかも分かります。おっしゃるように、1日の1/3や半分くらいが仕事をする時間となります。せっかく働くのであれば、充実度の高い仕事をしたいですよね。

堂上:ウェルビーイングの文脈でいうと「自分自身」のウェルビーイングが重要です。だからこそ、自分と向き合うのはすごく大事で、こんなふうに美和さんとの対話からも自分を知ることができます。

田中:自分を知った先に、具体的なアクションへと変化が起こります。この過程がとても大事です。

堂上:美和さんのお話に戻りますが、なぜ編集記者を辞めてWarisを立ち上げたんですか?

田中:メディアを通じて10年以上「伝えること」に携わらせていただきました。取材を通じて、女性たちの働き方に大きな課題を感じ、具体的に解決をしたいと考えるようになりました。そんななかで東日本大震災が起こり、一旦立ち止まったんです。明日が訪れるのは当たり前ではないし、人生は一度きりだと。だったら、やっぱり自分が今興味のあることに取り組みたいと考えました。

堂上:そうしてWarisを立ち上げられたのですね。友達や知り合いでもなかった3人で、共同創業をされています。それってウェルビーイングにつながるとも思いました。ゆるいつながりはイノベーションを起こしやすいんですよね。絆が強く濃い団体よりも、ゆるさがあることで多様な人が集まりやすく、新しいことにチャレンジできたり、お互いの価値観が違うからこそ意見をぶつけ合えたりします。そうして新たなものが生まれる。3人が集まったお話を、詳しく聞かせていただけますか。

田中:日経BPを退社して、フリーでライターとキャリアカウンセラーをしていました。「女性が働き続けられる社会をつくる仕事をしたい」ということを、会う人全員に話をしていたんです。そこから、同じようなことを話している人がいると米倉(史夏)を紹介してもらいました。さらに、他の友達が河(京子)をつないでくれたんです。

堂上:共感する人たちが周りに集まってきたんですね。

田中:そうなんです。やりたいことやビジョンは胸に秘めているだけではダメで、口に出さなければいけないと学びました。

堂上:ウェルビーイングな組織やチームづくりには対話が大切です。事業開発もそうだと思っています。言葉にすることで、解像度も上がっていきますよね。自分の中で閉じてしまうと共感も得られません。『Wellulu』ではこうやっていろんな方にお会いして、たくさん言葉にしています。そうすることで、ゆるいつながりのあるコミュニティが形成されていきます。美和さんたちは、まさにウェルビーイングな状態を体現されていますね。

田中:「3人寄れば文殊の知恵」と言いますか。創業期は人手はもちろん、アイデアとネットワークが必要です。スタートアップは本当にゼロからのスタートなので、自分たちを知っていただくとか、想いに共感して集まっていただくとか、誰かに紹介をいただくとか。人とのつながりが多ければ多いほど、起業はゆるぎないものになります。3人は共同代表なので想いの熱量も同じなんです。すべて自分ごとですしね。

堂上:人間関係はウェルビーイングを高める要因にも、阻害する要因にもなりえますからね。そんななかでみなさんの意見が合わなくて、揉めた経験はありませんか?

田中:決定的に違うというのはないですね。創業前に勉強会を共同で主催して、価値観とコミュニケーションのスピードが合うなと感じました。いくら想いは同じでも歩調が違うと、物事は進みません。そういう共同作業があったのはよかったですね。あと、3人ともバックグラウンドが異なるので、強みが違うのも利点となっています。

堂上:チームとなって、腹を割って話せる環境も整ったんですか?

田中:当時はそれぞれ別の仕事をしていたので、物理的に机を並べて働くという時間は少なかったです。その分、コミュニケーションを密にしました。早朝に集まったり、スカイプを駆使したり。量が質につながると考えているんです。現在、河は福岡を拠点にしていて、米倉は最近までベトナムに住んでいました。だから3拠点があったんです。現在は2~3カ月に1度はリアルで会って話をしています。

女性のリーダーを増やしていきたい

堂上:ちなみに美和さんは何をしているとウェルビーイングを感じますか?

田中:娘と過ごす時間ですね。先日、女性経営者の仲間たちとプールに行ったのですが、子どもと一緒に水に浮かんでいたら、心が穏やかになるのを実感しました。

堂上:リラックスされていたんですね。そういった体験の中で、また新たな気づきがある。

田中:ちょっとしたことなんですけれどね。夏休み中は毎朝、アサガオの花びらの様子を2人で観察していました。

堂上:良いですね。我が家のアサガオは毎年枯れていましたよ(笑)。夏休みを終えて、枯れた朝顔の鉢だけ学校に持っていく息子たちがつらそうだった……。

田中:正直、娘が生まれるまでは開花を気にする生活をしていませんでした。私も堂上さんと同じで仕事が好きなので、放っておくとずっと働いているタイプです。

堂上:日常のなかでも、新しい発見を楽しまれているのですね。ところで、美和さんは10年後、さらに20年後の社会をどんなふうにしていきたいですか?

田中:創業当時と比べて、働き方の自由度は上がりました。フリーランスも珍しいものではないし、リモートワークも普及しています。一方で女性のリーダーは増えていません。管理職比率も、この10年間で3%程度しか上がっていないという現状です。

私たちが目指す「 〜Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。〜」という意味で言うと、意思決定層のジェンダーギャップも解消して然るべきだと思っています。女性のリーダーが活躍できる状態になるのが、各人の自分らしさにつながっていくと思うので、引き続き注力していきたいですね。数年前から、女性役員の紹介事業にも着手しています。あと、2024年からは女性管理職として働きたい方と、企業のマッチング事業もスタートします。さらにリスキリングを通じて、新たなスキルを学んで新しい仕事を獲得していく支援もしています。

堂上:『Wellulu』の想いと全く同じです! 女性が働きやすい社会の実現も少しずつ前進していて、美和さんの活動がそれをさらに後押ししてくれると感じました。今日は素晴らしいお話をありがとうございました。

堂上編集後記:

僕が新規事業に携わったタイミングの知人に、美和さんをご紹介いただいた。お会いした瞬間に、「ああ、このタイミングで、出会うべくして、出会ったんだなぁ」と直感で感じる方だった。

著書にもある「働くは生きること」。働くのが楽しい環境をもっともっと創ったら、人はウェルビーイングになっていくだろう。けれども、多様な働き方があるように、多様な生き方がある中で、性格や社風など、自分とは違う価値観で、苦しんでしまう人もいる。

人はもっと寛容になれないのだろうか? 男性も女性も、大人も子どもも、身体にハンデを持つ人も持たない人も、地域も都会も、上司も部下も……みんながお互いをリスペクトして、お互いを助け合うボーダレスな社会にならないだろうか? そんなことを想う対談だった。

美和さんは、Welluluの想いを体現しているような生き方をしている。ぜひ一緒にウェルビーイング共創社会をつくっていきたい。

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