受験生の親の気持ち

株式会社ECOTONE代表取締役社長 Wellulu編集長

堂上 研

中学受験を迎える息子へ

東京で迎える中学受験。2月1日という日のために、一生懸命努力してきました。5年生で小さいころからやってきたサッカーのコーチから、受験とサッカーどっちかにした方が良いよ、と言われて、あなたはサッカーを選びましたね。そして、大好きなサッカーをやっていたけれども、6年生の秋くらいから「行きたい学校があるから」と言って本気で受験勉強することにしました。周りのお友だちからは「遅すぎだよ。」と言われながら、あなたは塾にも行かないで、一生懸命勉強してきました。

父ちゃんは、「本気でやるなら応援する。けれども、中途半端にやるなら、辞めた方が良い。」と言い続けました。いつになったら本気モードになるか、と思いながら、楽しそうに勉強しているあなたを見て、こんな中学受験は理想かもしれないと思い直しました。最後の最後まで、楽しそうにしているあなたの姿が嬉しかったです。

6つ上のお姉ちゃんのときの中学受験は、僕はあんまり関与せずに、何か質問してきたら、「そんなん、父ちゃんに分からない。塾に行っているんだから、塾の先生に聞いてきて。質問もできない塾なら辞めてしまえ。」とよく言っていました。しかも、お姉ちゃんの試験日に、人生初めてのインフルエンザに罹患してしまう、という大失態をおかしてしまいました。

2つ上のお兄ちゃんのときの中学受験は、11月に入ってから3か月、一切の会食を断り、塾から帰ってきてから1時間ほどいっしょに勉強につきあっていました。最後は、あまりにも辛い中学受験で、入学式まで父ちゃんと喧嘩していました。中学受験って、この小学生のいろいろなことを経験できる大切な時期に、なんて残酷な仕組みだろうと思いました。

一番末っ子のあなたの中学受験は、一度、「辞める」と決めたので塾にも行かず、父ちゃんは起業して1年と仕事が忙しくなっていたから、なかなかいっしょに勉強を教えたりできませんでした。とはいえ、父ちゃんができることは何か考えて、毎日「朝の散歩」をすることにしました。朝の散歩では、父ちゃんが社会で感じていることや、最近のニュースなどをただお話する時間でしたが、朝の7時~8時というこの時間の散歩は、父ちゃんにとっても素敵な時間でした。

いわゆる基礎学習における国語、算数、社会、理科という受験科目は、お姉ちゃんとお兄ちゃんもたくさん手伝ってくれましたね。末っ子という役得で、塾に行かなくてもたくさん勉強を教えてくれました。

もうひとつ、毎朝パン食だった我が家は、朝に味噌汁とおにぎりにしました。これは、僕がはじめての受験(高校受験)のときに、味噌汁をつくってくれて、見事合格したことからゲン担ぎのような感じではじめました。毎朝、一杯のお味噌汁と小さなおにぎりをにぎる。それが受験に向けたメッセージでした。

世の中のことをたくさんお話できて、あなたがこの受験を通してどんどん成長しているのが分かりました。自分の頭で考えて、自分の言葉で、インプットした情報を整理して、引き出しから出してくる、アウトプットがどんどんと研ぎ澄まされて行きました。

朝の散歩で話した内容は、世の中の不思議がいっぱい詰まっていました。
なぜ、貿易戦争というものが勃発しているのか?関税をあげることって?
なぜ、世の中、戦争がなくならないのか?戦後80年って?
なぜ、日本は失われた30年と言われているのか?挑戦をしなくなったのは?
なぜ、AIがある時代に、人間力が必要になってくるのか?
なぜ、日本の教育は先生が主導しているのか?もっと、生徒が自由にできるには?
なぜ、自然との共生はできないのか?クマが民家にでるのはどうしてか?
なぜ、経済が優先されるのか?お金ってなんなのか?
なぜ、僕らは生きているのか?可能性と選択肢を増やすために何ができるのか?

これらは、受験とは関係ないかもしれない。けれども、生きている上で、たくさんの「なぜ」を知ってほしいし、この「なぜ」が、未来を変えるきっかけになるかもしれない、と思っています。父ちゃんは、あなたとのこの散歩の時間が楽しかったです。深呼吸をして、腕を振りながらストレッチして、あなたと二人で歩いている時間が好きでした。

1月31日の夜、父ちゃんのほうが緊張していました。普段痛くならないお腹が痛くなり、あんまり眠れませんでした。そんな父ちゃんの想いとは別に、あなたは、まるで明日ピクニックか運動会に行くかのように楽しそうに準備をしていましたね。

2月1日の朝、お母さんとお姉ちゃんがつくってくれたお弁当をもって、受験会場に向かう。電車に乗ると、青い顔して緊張している受験生もいる。ずっと参考書を見ている受験生もいる。みんな、不安とやる気の狭間で、電車の中がピンと張りつめた雰囲気に感じました。みんな、カバンにはお守りがぶら下がっていました。

父ちゃんは、一生懸命やり切ったあなたを誇らしく思います。もちろん「桜、咲いたね。」と合格できれば良いが、受験はそんなにあまいものではないのも分かっています。結果がどうであれ、自分が挑戦し続けたか、自分がやり抜いたと思えるかが大事だと思います。途中で、投げ出したくなることもありましたね。途中で、自分に負けてさぼってしまったこともありましたね。けれども、最後の最後、あなたは自分の力を出し切って、最後まであきらめずに挑戦し続けました。その過程を通して成長したあなたを見て、あなたが受験して良かったと思います。

父ちゃんは、元々中学受験には反対でした。大事な小学校の時期を「暗記ベース」の勉強になるのが嫌でした。あなたも同じ気持ちで、受験を辞めたのでしょう。勉強が好きな子が中学受験をすれば良くて、サッカーが好きな子はサッカーをやれば良いし、いつになっても勉強ができるのだから、この時期にやる必要がないと思っていました。けれども、今回のあなたの受験を通して、親と子どもが向き合う時間と思えば、こんな受験だったら良いなと気づかせてもらえました。

試験がはじまりました。

親は、みんな祈るしかない。我が子を想う気持ちは、誰もが同じ。
「神様、どうか我が子の頑張りを、本人が行きたい学校に通わせてあげてください」
ただ、サッカーに勝ち負けがあるように、受験にも合格と不合格があります。サッカーをしていると、自分のミスを、同じチームの人が助けてくれることがあります。失敗を正解にすることができるスポーツです。けれども、受験は、自分と向き合い、ミスを誰もサポートしてくれないです。

とはいえ、これがすべてではありません。人生において、たくさんの選択と挑戦をする機会があり、失敗の数の方が多くなります。父ちゃんがやっている新規事業なんてものは、失敗が当たり前の世界。やり続けているからこそ、新たな発見につながっています。

あなたに伝えたい。

あなたは、自ら考えて、自ら行動しました。
だから、結果がどうであれ、自信をもって突き進んでほしい。
これからも、たくさんの「好き」を探究して、失敗を恐れずに突き進んでほしい。
自分の進んだ道を正解にしてほしい。
あなたは、受験を通して、めちゃくちゃ成長しています。
父ちゃんは、あなたの頑張りを一番よく知っています。

中学受験という挑戦で、あなたと過ごす時間をつくれた父ちゃんは幸せです。
ありがとう。そして、よく頑張ったね。

・・・・

とはいえ、なんとか合格してほしいなあ。と親心としての気持ちの方が勝っていますね。えらそうに書いたけれど、僕がドキドキして、心が揺れ動いているから、こんな文章になってしまった。僕自身が強くならないと。。。

 

 

 

 

 

堂上 研 株式会社ECOTONE代表取締役社長 Wellulu編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

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