大阪・関西万博とウェルビーイング

Wellulu 編集部プロデューサー

堂上 研

いのち輝く未来社会のデザイン

2025年4月13日(日) – 10月13日(月)184日間の大イベントがいよいよ開幕を迎える。そのテストランと呼ばれている実験に招待いただき、大阪の夢洲(ゆめしま)に向かった。万博に関するネガティブなニュースが流れる中、自分の目で見て、自分が感じる万博を実感したかったのと、早いタイミングで、Welluluで万博の魅力を発信したかったのである。そもそも、何においても文句やクレームをつけることはできる。けれども、ポジティブな面を見て、何よりも大きな価値につながるものになればと思っている。

万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」が発表されたとき、僕は「ウェルビーイングな共創社会のデザイン」と同じことを言っていると思った。宮田裕章先生といっしょにはじめた「Better Co-Beingプロジェクト」のコンセプトは、最大多様の最大幸福であり、「いのち、つなげる。いのち、輝く。」とした。そして、僕自身が考えたキーワードを3つ定めた。

「Co-Creat」新たな可能性や希望に向かって、共に社会を創っていく。(共創)
「Connect」データを共有資産として、新たな価値を提案していく。(共感)
「Empowerment」ひとり一人がお互い響きあい、社会で成長していく。(共律)

これは、ウェルビーイング共創社会をつくる上で、僕自身が大切にしているテーマだ。そして、僕らはECOTONE社を通して、多様な人々がつながり、そこから新たな生態系が生まれるように、新たな文化や価値観、事業や産業が生まれてきてほしいと思ったのである。

それは、勝手ながら、今回の万博のテーマと同じだと感じたのだ。世界中がパンデミックや戦争が起こっている今だからこそ、あえてオリンピックやパラリンピックと違う平和の祭典であり、世界中の文化を共有して、つながりを持てる可能性の祭典になればと思っている。「命の産業」というカテゴリーがあるとしたら、今後テクノロジーは、人々の「いのち」のために進化を遂げ、人々の生活が「ウェルビーイング」になっていくために、自分自身がどう生きるかにつながっていくと思っている。

もうひとつ、僕自身が10年前に文科省と仕事をしていたときに、日本の教育において大切な3つというのをウェルビーイング学会の副理事である鈴木寛さんに教えてもらったことがある。それは、「主体性」「多様性」「協調性」の3つ。確かに、日本の教育の中に、この3つがなかなか育たない環境があったように思う。すべて、「他人事」で「自分勝手」であるほうが、一見「自分が幸せなんだから良い」と思ってしまうし、他人を蹴落としてでも、自分が勝ち切ろう、という価値観には、分断と孤独を産んでしまうだろう。

僕は、ウェルビーイング共創社会は、100以上のウェルビーイング事業と呼ばれるものが、共創の中から生まれてくると思っている。そのきっかけになるのが、今回の大阪・関西万博であり、この大きな祭典が終わったときに、正のレガシー(遺産)として次の世代に引き継がれていくものになると思っている。やって良かったね。世界の人たちがつながっていたね。みんなの笑顔が増えたね。そんなことが言われると同時に、ここから生まれた新たな事業やプロジェクトが、たくさんの人たちをウェルビーイングにしてくれるだろう。

「我々は、何とつながりたいか?」「今、あなたは目を閉じて、何を感じるか?」「どうやったら、利他な社会が生まれるだろう?」

世界中の人たちに、こんな問いを投げかけてみたい。ウェルビーイング共創社会の主役は「自分自身」であり、「自分たち自身」である。多様な視点で見て、自然の声に耳をすまして、鼻から、きれいな空気を体内にゆっくり取り込む深呼吸をして、実際に触って、誰かと共にお話しながら、おいしいものを食べる。そんな日常があるだけで幸せだと思えるような社会になってほしい。

静けさの森、Better Co-Beingパビリオン

万博に到着して、すぐに大屋根リングを一周した。この大屋根リングの木造で立てられた道は、様々なパビリオンを上空から眺めることができて、世界旅行をしている気分になるし、地球をぐるっとまわっている気になった。大屋根リングから見ている世界は、あらゆる生命がひとつにつながっているように感じる、空と海がつながっているように感じるものだった。

そして、大屋根リングを歩いた後に、向かったのは「静けさの森」。

僕はこの万博会場の中央部に位置し、会場の喧騒の中にあって、ひときわ静かで落ち着ける場所として位置されたこの森の中心にある、まん丸な「池」がひときわ気に入った。忙しい時間から離れて、ゆっくりと息を吸うことができる。この時期ならではの桜が咲き、さまざまな木が植えられている。水盤から森へとつながり、季節の変化を感じさせてくれる木々と石と水が、心を癒してくれる。空を見上げて、そのまま目を閉じて、深呼吸をしたあとに、池をのぞき込むと、そこに写る空と木々に吸い込まれそうな気分になる。これをプロデュースした宮田さんが、「世界中の空はつながっている」ということをおっしゃっていた。それを実感できる場所だし、「自然との共生」を今の時代だからこそ、感じるべき素晴らしい場所だ。小鳥たちが巣箱にとまったり、昆虫たちがこのど真ん中に生息するタイミングにもう一度訪れたい。

そして、「静けさの森」の隣にあるBetter Co-Beingの会場に向かった。大林組による「Better Co-Beingアプリ」があり、そこで体験した感覚を世界中の人と共鳴し合うことができる。その瞬間に集まった来場者同士の体験・選択を、万博の7つのテーマを軸に分析・表現し、自分自身の価値観と他者の多様な価値観への気づきを与えてくれるものだった。各場所で誰かの想いや感動に出会え、つながりや共鳴が生まれるきっかけとなって面白い取り組みにワクワクした。また、村田製作所が提供する、ふしぎな石ころ「echorb (エコーブ)」 は、特殊な振動により、ふしぎな触感・手ごたえ感を来場者同士で共鳴体験ができるもの。来場者それぞれの鼓動を自分の石ころに宿し、自分のいのちを手のひらに感じながらまわることができた。

Better Co-Beingの3つのインスタレーションは、それぞれに「自然との共生・調和・対話」が生まれていた。そこに訪れる時間や季節、タイミングで異なる感覚を味わえるというのは同じかもしれない。そして、ここに集まったクリエイターたちの想いがつまっているものだった。

塩田千春氏の「言葉の丘」、赤い糸の作品は、様々な国の人々との「つながり」を感じさせる共に、赤い糸から感じる「自我」と「希望」も感じられる空間だった。何よりも、風が糸を動かし、太陽の光が糸に力を与える。ここにも自然との調和が生まれていて素敵な空間だった。個々人の多様な背景や価値観を尊重しながら、いかに他者や世界とのより良い共存を目指すか、宮島達男氏の「Counter Voice Network – Expo 2025」、この後の様々な国のカウントダウンにも表れていた。カウントダウンを通して、自分自身が、何を遺していくか、考えさせられる時間だった。そして、五感すべてがフル稼働している自分がいつもと違う自分に気づかされる瞬間だ。

Better Co-Beingを体現できる、最大の見せ場が、宮田氏自らが手掛ける、様々な形のサンキャッチャーが取り込まれている「人と未来の共鳴」の場所だ。そして、そこに人工的に「虹」を出現させるという取り組みをする。ここに、ひとつの可能性や希望を感じたのは僕だけだろうか?そこに集まっている人々の表情からは、みんなが共鳴し合っている状況を感じ取ることができる時間だった。

ウェルビーイングな共創社会は、はじまっている。そして、この共鳴の先には、世界の人たちや、自然、そして自分自身との対話と共生があるのだろう。この万博を通して、たくさんのウェルビーイングな日常が生まれますように。宮田さん、ありがとうございました。

 

堂上 研 Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

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