前野夫妻とのWellulu鼎談
12月に入って、ウェルビーイングな人とお会いしてWelluluTalkをする時間よりも、ECOTONE社の説明の時間が増えた。とはいえ、ずっと願っていたスペシャルな方たちとのTalkを展開することができた。それは、ウェルビーイング学会の理事長であり、慶應義塾大学の教授であり、武蔵野大学のウェルビーイング学部の学長である前野隆司先生だ。なんと、前野マドカさんにも赤坂に来ていただき、おふたりとお話をさせていただくことができた。ウェルビーイング界ではあまりにも有名なお二人なので、この日を楽しみにしていた。
前野先生とは、日本イノベーション協会の理事でもご一緒させていただいており、イノベーションとウェルビーイングが密接につながっているとあらためて感じている。僕自身が、「ウェルビーイング共創社会」というものをつくろうと思ったきっかけは、新規事業開発をしている中で出会ったものだった。「挑戦している人」「事業やサービスを創っている人」が、だれのためにやっているのか?なんのためにやっているのか?そんな問いを考えたときに、我々の開発したサービスを使う人がウェルビーイングになってほしい、そういう想いからはじまったのである。こんな話を前野先生とさせていただき、同じ想いではじまったんだと共感しかなかった。
マドカさんとは、書籍や講演でのお話しを聴いていたのだが、はじめてご挨拶させていただいた。僕の最初の印象は、「なんて人を幸せにする巻き込み力のある方だろう。」だ。お話をさせていただいていると、あふれんばかりのパワーとポジティブなオーラが格好いい。今回は夫婦ででていただくという貴重なお時間をいただいたのだが、これがまた夫婦のお互いの信頼が見えて、素晴らしい関係だった。まどかさんは、前野先生に支えられながら、自分で行動にしていくことで、どんどん人を巻き込み、みんなに幸せを感じさせてくれるリーダーだった。
ウェルビーイングの世界で、マドカさんのPTAのお話は、たくさんの学びがあった。詳細は本編の記事で紹介したいと思うが、PTAは僕の中では闇の印象が強かった。けれども、まどかさんや前野先生のような方が、PTAや周りにいるだけで、先生も子どもも「自分の意志」で歩きだしたりするきっかけをいただけることが分かった。
僕は、子ども3人が同じ地元の小学校に通っている。長女が入学したころは、PTAというものをよく分からず、たまたま同級生のパパがPTA会長になったこともあり、コロナ前だったので、親同士で飲みに行くなどの交流も深かったので、PTAというものに積極的に参加することにした。
ある日、みんながやりたがらないPTAの副会長の立候補がいない、という話があったので、僕は広告会社の仕事においてプロデュースするのは得意だと思っていたし、娘がお世話になっている小学校ということもあり、副会長に立候補した。すると、当時の現副会長のお母さんふたりから、「堂上さん、相談したいことがあって。」と近くのカフェに呼ばれて話を聴いたのだ。なんて時代錯誤も甚だしい、ということになるのだが「副会長は、女性でお願いしているのです。」とのことだった。「お母さまに立候補お願いできないでしょうか?」なんてこったい。僕は、あきれてPTA副会長の立候補を取り下げた。後々、くじ引きで女性の副会長が誕生したらしい。
そのあと、小学校の校庭が天然芝になるとのことで、当時のPTA会長から「天然芝委員会」を発足するから、堂上さん入ってほしいと依頼をいただいた。僕は学校のコミュニティに貢献できるのなら、ということで「ふたつ返事」で快諾した。これが、後ほどのPTAとの関係を、僕がうまくまとめきれないきっかけにつながったのである。
マドカさんが、PTAに8年間携わった話、最後はPTA会長までやって、みんなを巻き込んでいった話はめちゃくちゃウェルビーイングなコミュニティづくりにおいて、実践されており素晴らしかった。僕に当時、そのくらいの寛容であり、巻き込み力があれば、変わっていたかもしれない。そういう想いを思い出させるお話だった。
PTAは、そもそもボランティアであり、任意団体である。けれども、誰かがやらないといけない。昔と違って、専業主婦も減っていて、共働き夫婦が多い中で、子どものためとはいえ、進んでPTAに時間を割くのは避けたいと願うのは普通だろう。くじびきで決まって、ほとんど欠席する人もいれば、有給をとってPTAの活動をしている人もいる。こんな状態をまとめあげる会長の手腕は計り知れない。
僕もPTAで「天然芝委員会」に入って、このジレンマに陥った。そもそも年間60回ほどの芝刈りをボランティアでまわす必要があるのだが、マニュアルづくりから、ボランティア活動の人員整理、進行管理などすべてめちゃくちゃ時間が取られるのである。各学年からこのメンバーに入るのを義務にしないとまわらない、と思っていた僕と、あくまでも有志だけで回したいと思っている当時の会長の意見がまっぷたつに分かれたのだ。結果、僕自身が芝刈りに一人で行く時間が増えて、関係者の人数も固定化されてしまった。
僕は、だんだんとPTAの活動が「無駄な時間」と思ってしまうようになった。拍車をかけたのがコロナだ。あの頃は仕方がなかったのかもしれないが、学校の校庭が全面的に使用禁止になった。全国で解除されてからも、ずっと校庭は使えないままの日が続いた。子どもたちは、近くの公園で密になっている状態で遊んでいるのに、学校の校庭にはひとりもはいれない。その上、天然芝は伸び続けるので、だれも使わない校庭の天然芝を刈るだけに通っている。マスクをして、ひとりで芝刈り機を動かす。僕は、当時の校長先生やPTA、地域の方々と話し合いを重ねたが、折り合いがつかなかった。
「何かあったら、だれが責任とるんですか?」この言葉がいまだに僕の頭に残っている。誰も、校長先生や地域の方のせいにはしないよ、と思いながら・・・。
マドカさんとのお話に戻る。そう、こんなPTAのカオスをうまくまとめあげられたまどかさんがすごいと思ったのと、ウェルビーイングを学ぶ、体感することができれば、もっとうまく組織をまとめあげることができたと反省したのだ。今、こうやってウェルビーイングのことをもっと理解している僕が、当時にタイムマシンで戻ったら、もっとうまくまとめ上げていたのだろう、と思う。
前野夫妻とのお話は、心地よく、そしてずっとお話したいと思える時間だった。おふたりの貴重な時間をいただき感謝しかない。どうもありがとうございました。
写真は、博報堂の先輩、かあくんも参加いただき、最後に撮影させていただきました!!
堂上 研 Wellulu 編集部プロデューサー