いつまでも若々しいカラダとココロで人生を謳歌したい。誰もが願う永遠のテーマのひとつではないだろうか。そんな実現が難しそうなトピックスに光が差してきた。調査を進めるうちに、時間は平等に過ぎ去るけれども老化には個人差があることが分かってきたのだ。さらには、加齢の時計を遅らせる秘訣もあるという。
この分野に24年前から取り組む日本抗加齢医学会では、老化を病と位置付け。健康寿命を伸ばす研究を続けている。日本抗加齢医学会理事長である山田秀和氏と、学会員であるヘルスケアコーディネーターの大木都氏に若さを保つための習慣について、 Wellulu編集部の堂上研が話を伺った。
山田 秀和さん
日本抗加齢医学会理事長
近畿大学アンチエイジングセンター創設者 客員教授
大木 都さん
ヘルスケアコーディネーター
株式会社310LIFE 代表取締役
株式会社ラフール CHCO(Chief Healthcare Officer)
病院の立ち上げ運営に携わり、医療/生体データでの産学研究発表も多数。第24回日本抗加齢医学会では、研究発表が優秀演題を受賞。1,000名以上への個別パーソナルコーチング経験から「日本らしく、ちゃんと続けられる」ヘルスケアを提唱。自身が過労で入院した経験も活かし、忙しくても実践できるヘルスケアメソッドを研究、スマートウォッチなどのヘルステックツールの活用を推奨している。
堂上 研
Wellulu編集部プロデューサー
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。
およそ四半世紀前からアンチエイジングに取り組む
堂上:今日は、楽しみにしておりました。日本抗加齢医学会の山田理事長に、お話をお伺いできる機会をいただきありがとうございます。大木さん、睡眠の時も含めて、いろいろな方をご紹介いただき感謝です。では山田先生の自己紹介からお願いできますか?
山田:現在、私は日本抗加齢医学会で理事長を務めています。医師としての専門は皮膚科学。なかでも免疫やアレルギー疾患を以前は研究しておりました。アトピー性皮膚炎の臨床を行うなかで、国内から海外までさまざまな研究を続け、老化と免疫の関係性に興味を持ちました。
そうして予防医学の観点からのアンチエイジングへとたどり着き、2007年に近畿大学でアンチエイジングセンターを設立。血管年齢、体組成、神経年齢、骨年齢、肌年齢を測定できるアンチエイジングドックを作りました。健康で長生きするためにはどうすればいいか、ということを細胞レベルで考えています。
大木:山田先生とは、私がヘルステック新規事業でクリニックを立ち上げ、臨床研究の発表を行った日本抗加齢医学会総会でお会いしました。その時は、スマホアプリとウェアラブル活動量計をモニタリングしながらアドバイスをする体質改善サービスを構築していて、監修してくださった先生が「素晴らしい体調改善成果を、日本抗加齢医学会で発表しよう」と言ってくださったんです。それがきっかけで、2016年に日本抗加齢医学会に加入しました。
はじめは山田先生の講演を聴いて学ぶばかりでしたが、2021年頃にメーカーの新規事業で私から山田先生にお声がけをし、一緒にお仕事もすることになりました。AI画像解析での肌解析プログラム構築や、蓄積データのエビデンス研究をするもので、女性に向けた体内から見た目まで老化を防ぐ、アンチエイジングのサービス開発になります。
私が先生のすごさを一般の方にお伝えする時は、「伝統医療から最先端医療まで精通し、見た目から細胞の代謝まで幅広く研究をされている。海外の医療機関へも出向き、ホリスティックに健康になれる方法を追求しながら、学会も束ねていらっしゃる」と説明していますね。
堂上:なるほど。日本抗加齢医学会での活動が、山田先生の生き方そのものになっているんですね。では、この学会ができた背景を教えていただけますか。
山田:日本抗加齢医学会は2001年に発足しています。僕は第1回目の医学研究会には参加できず、開催後に発表を見ました。なんて面白いことを話す人がたくさんいるんだと衝撃を受けましたね。
というのも、医師の世界は縦割りが基本で、皮膚科にいると内科や婦人科など他の診療科とつながりもなく、情報も入ってこない。この構造に疑問を感じていたので、総合的な情報を手に入れられる場所を探していたのです。ここではいろんな科の第一人者が、抗加齢をテーマにさまざまな研究をしていました。「絶食をすると症状が緩和する」とか、当時の皮膚科ではタブーとされているようなアプローチも盛んにおこなわれていたんです。
堂上:面白いですね。学会って、難しい先生方が研究の発表をされているイメージですが、本学会の発足にワクワクされたんですね!
山田:そう。可能性に溢れていましたね。当時の僕は、アトピー性皮膚炎の治療法で行き詰まっていました。あらゆる手を尽くしても治せないものがあるんだと……。ここにはそのヒントが転がっていたんです。ちなみに当時は、アトピー性皮膚炎は転地療養が効果的だとされていました。実際に大阪から北海道へと引っ越した患者さんから、症状が緩和したという話も聞きました。
堂上:僕は新規事業の立ち上げにも携わっています。そのなかでイノベーションを起こしたい時に変えるといい3つのポイントを提唱しています。まずは「場所を変える」、続いて「時間の使い方を変える」、そして「会う人を変える」です。医療でも同じような現象が起こっているんですね。環境を違えるだけで、そんなに影響が出るなんて……。
大木:そうやって見つけ出される感性がすごいですよね。自分の範疇外の話をされたり、気にもとめないような情報が溢れていても、山田先生はその中から光るものを常にキャッチされている。いろんな新発見を、いつも教えてくださるんです。
堂上:どんどん深いところへと探究されていくことを楽しまれている。まさに山田先生のウェルビーイングにつながっているように感じます。
山田:というよりも、ジェネラルに見るのが好きなんです。学生時代は情報誌『ダカーポ』(マガジンハウス)から世の中のあらゆるトピックスを吸収していました。今のスマホなんて最高ですよね。ChatGPTは出た瞬間に取り入れて活用しています。どの情報が本当に良いものなのか判断するためにも使い続けているんです。一見すると関係のないトピックスでも、いつかつながっていく。だから、面白い。それはやってないと発見できないことです。
健康寿命の鍵を握る「生物学的年齢」の概念を普及させたい
堂上:この鼎談の前に一度お話をお伺いして興味深いものがありました。我々生物は、受精卵の時点で老化が始まっているという……。
山田:アンチエイジングは0歳から始まるのでね。老化を引き起こす25〜30%が遺伝子にプログラミングされている、というのが僕たちの共通認識です。女の子はお母さんのお腹の中で、卵子の元になる卵母細胞を約700万個を持っています。それが出生時には約200万個に減る。成長に伴って初潮を迎えるわけですが、卵子は赤ちゃんの頃から同じ状態であって、細胞分裂などで進化はしません。ちなみに、残りの7割強は環境が左右します。
大木:女性の視点でいうと、出産の時点で子どもへのアンチエイジングがスタートします。自分の力量で子孫に及ぼす変化があることは、気になる点でもありますよね。
また思春期が10代にあるように、40〜50代を迎えると更年期は必ず訪れます。ただ更年期“障害”があるかどうかは、個人差が大きいわけです。最近の調査では、20代の過ごし方が影響するということが分かってきました。そこで国でも研究会を設けて、次世代に向けた女性の健康政策が推進されていたりします。女性がプレゼンティズムにかからずに働くには、20代のヘルスケアリテラシーを高めないといけない、ということになりつつあります。
堂上:それって、もっと言うと子どもの頃から学んだほうがいいんじゃないでしょうか。そういう教育を受けたかどうかで、生き方や習慣が変わってきますよね。
大木:そうなんです!それこそ、学校教育の中に入れ込むべきだと思っています。
堂上:なんで日本はやらないんでしょうかね?
山田:僕は、知識は幼少期から身に付けましょうと、ずっと言ってますけどね。
堂上:そこはどんどん変えないといけないところですよね。そして、今の少子高齢化の日本ならではの課題をどんどん解決させていくよう導き、世界に発信していかないとですね。
山田:教育はとても重要です。人間には生まれてからの経過年数を指す「暦年齢」と、健康状態をもとに算出した「生物学的年齢」があるということを浸透させなくてはいけません。
大木:若い世代にヘルスケアを意識してもらうために、大阪・関西万博に出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」では、エンタメ要素を含む内容を考えていらっしゃるんですよね。
山田:そうです。来館者の健康データを取得して、最適な食事や運動を提案します。
堂上:そうなのですね。「生物学的年齢」について、もう少し詳しく教えていただけますか。
山田:細胞や組織の状態に基づく年齢です。健康状態や老化の進行具合に加えて、心筋梗塞、がん、アルツハイマー病などに代表される加齢関連疾患リスクを捉える指標になっています。僕はこれを「エピジェネティック・クロック」で測定しています。
「エピジェネティック・クロック」とは、DNAのメチル化から「生物学的年齢」を割り出す方法です。そもそも遺伝子は「A(アデニン)」「T(チミン)」「C(シトシン)」「G(グアニン)」の4種類の塩基配列が基本です。その中の「C(シトシン)」にメチル基が付くと、5メチルシトシンとなります。これを「DNAのメチル化」と呼び、老化の指針にもなる。「生物学的年齢」が「暦年齢」を上回ると、健康寿命は短くなります。
じつはWHO(世界保健機関)が国際疾病分類を作っているんですが、老化関連(XT9T)についても新設されていて、老化を「病い」ととらえる時代がきています。そして研究分野では、老化の分子メカニズムが解明されてきています。実際に老化ペースを抑制したり、巻き戻して若返りを図ったりする技術の開発が、本気で世界では進んでいるのですよ。
大木:「暦年齢」と「生物学的年齢」の相関性については、デンマークの双子約1,800人を調査した記録があります。
山田:そう! 2人のうちで年上に見えるほうが、先に寿命を迎える傾向が明らかになりました。同じDNAを持っていても、老化は細胞レベルで起こります。そして、それは見た目の若さにも関わってきます。一卵性双生児の双子であっても、環境つまりはライフスタイルの積み重ねで老化進行状態が大きく変わることが、さまざまな研究でわかっているんです。
堂上:そうなんですか! では老化を抑えるにはどうすればいいのでしょう?
山田:「暦年齢」の進む速度を遅くすればいいんです。ととのえる柱となるのは、「運動」、「栄養」、「精神」、「睡眠」、「環境」です。
大木:1年に1歳分の年齢を重ねるのは「暦年齢」の通りですよね。それを、0.9や0.8に下げていく。結果的に0.8が5年、同じ状態が続いたとすれば、生物学的には4歳分しか老化しないので1歳分は若いわけです。私のように40代にもなると、同級生でも老けて見える人、若々しい人の違いって明確に感じますよね。すでにこの違いは、身近な事実だと思います。
堂上:具体的にはどのような行動をしたらよいのでしょうか?
山田:運動が最も重要ですが、食事も重要です。たとえば白米を口にしているようなら、玄米に切り替えてカロリー制限をするといいですね。ビタミンやミネラルも豊富な完全食なので。
そしてなによりもストレスを溜めないこと。ストレスがもっとも老化を加速させます。ただし気候や人間関係など、ストレスが及ぶ範囲は広大です。
堂上:やはり、食とウェルビーイングの関係は深まりそうですし、健康寿命延伸には、「何を食べているか?」が影響しそうですね。
PPK(ピンピンコロリ)が当たり前になるように
大木:一般の方にぜひ知っていただきたいのが、医学の常識は日々更新されているということです。若返りなんてお伽話だと思われるかもしれませんが、可能になる未来も見えてきた。ワクワクしますよね。
堂上:これから僕らは何歳くらいまで元気に生きられるのでしょう?
山田:120歳くらいだと考えています。長生きするにしても寝たきりではなく、PPK(ピンピンコロリ)が理想ですよね。
※ピンピンコロリ:病気に苦しまずに、元気に長生きし、寝込まずにコロリと死ぬことを意味する
堂上:僕は『Wellulu』を始めたこの1年間で、いろんな方と会話をするだけでもウェルビーイングになっています。いろいろと新しい視点を授けてもらい、自分はどう生きるかを考えるようになりました。それで今は週に1度パーソナルトレーニングを受けています。食生活にも気を配るようになりました。おかげで風邪を引きづらくなっています。
大木:前回、私が鼎談させていただいた時(※)と比べて、顔つきが違います。目の下のクマやシワが変わって、若返っていますよ。
※「データから見えてくる睡眠不足の原因。睡眠を切り口に日常生活のデザインを考えてみる」
堂上:大木さんにそう言われると嬉しいなぁ。それまで僕は10年以上、3時間くらいの睡眠で過ごしていたのが、大木さんと出会ってからは6時間以上寝るようになったんです。劇的な違いを感じています。ちなみに山田先生の若さを保つ秘訣とは何でしょうか?
山田:毎日のバイタルデータを取りつつ、プールに通っています。
堂上:そうなんですね! やっぱり水泳はいいですか?
山田:いいと思う。ただ僕は、基本的には水中ウォーキングをしています。いろいろと考え事をしながら歩くのは楽しいので。それに、ずっと泳ぐのはしんどいですしね(笑)。やる気が出てきたら泳ぐようにしています。
堂上:散歩やランニングもそうですけれど、自分の中で考える時間を持てるのはいいですよね。頭の切り替えにもなりますし。
大木:ジムにも通われているんですか?
山田:いえ、プールだけです。
堂上:大木さんはどんな「自分の身体と向き合うための習慣」がありますか?
大木:食事に気を配り、しっかりと眠る。リカバリーの時間は、本当に大事です。忙しくなるとキッチン周りに洗い物が溜まってしまいます。以前は片付けるまでベッドに入りませんでした。どうしても気になるので……。でも、今は効率化を図るために、眠ってリラックスする時間を設けています。そしてお皿は朝洗う。そんな風に優先順位を変えました。小さな積み重ねによって大きな変化が起こります。
堂上:大木さんはFitbitやOura Ringなどで、睡眠スコアや心拍数などのいろんなデータを取っていますよね。やっぱりそうやって記録することは良いですか?
大木:自分のカラダの中が可視化されると、数値管理しやすくなり達成感を得られます。女性の場合は日々の行動や睡眠状態が、肌の状態や生理周期にも関わってきます。記録が蓄積されるうちに、ぐっすり眠ると肌ツヤが良いといったことが分かるようになる。健康管理が自分ごと化できるので、ステップアップにつながります。また健康意識の高い人がそばにいると、なお良いですね。
堂上:その人が上手くいったパターンを知れますもんね。
大木:はい。それに自然と習慣を真似できますよね。たとえば、ヘルスコンシャスな人とグループでランチに行ったとしたら、先にオーダーをしてもらいます。人間の心理としてトップバッターがサラダとか健康的な一品を注文すると、後に続く人も同様のメニューを選ぶ傾向にあるんです。
堂上:なるほど。だったら大木さんが隣にいてほしいなぁ(笑)。
大木:じつは私の周りはダイエット成功率が高いんですよ。あるコンテンツ制作に携わってくださったライターさんと、企画が終わる間際にお会いしたんです。顔を合わせた瞬間にお礼をしてくださって。どうやら私とやりとりをするうちに、16kgもの減量が叶ったそうなんです。運動が嫌いで趣味は歌うことくらいだったけれども、頑張らずに痩せられたと。
堂上:それはすごい! 出会いって大事ですね。
大木:ひとつ加えるなら、自分のスタンスと合う方が良いですよね。私はカラダを動かさない派なので、運動が嫌いなライターさんとマッチしました。でも、アクティブに動きたいなら運動が好きな人をメンターにするほうがおすすめです。
山田:堂上さんはパーソナルトレーナーをつけないとカラダを動かせなかったんですか?
堂上:僕は外圧が必要だったんです。1人だと自分に負けちゃう。忙しいフリをしてトレーニングをめんどくさがるんですよ。
今日お話しを伺って、習慣を変えることで「暦年齢」では50歳でも、「生物学的年齢」では46歳になれるというのを知りました。小さな一歩がPPK(ピンピンコロリ)につながる。これを広めるチャレンジをしなくてはと思いました。
幼少期からのヘルスケア教育を徹底したい
山田:周知のためには教育が重要です。繰り返しにはなりますけれどね。
堂上:その教育はどの段階で始めたら良いでしょうか? 小中学生くらいから?
山田:そうですね。
大木:教育の話でいうと、婦人科の医師と組んでセミナーを開く機会があります。40代の人ですら、月経時の正常な経血量を知らないことが多いです。たとえば、大容量ナプキンに頼り続けないといけないくらい出血が多い場合、本来であれば婦人科を受診したほうがいい。なぜなら過多月経と呼ばれ、子宮内膜症などの疾患が潜む可能性があるからです。でも、経血が多いだけで婦人科を受診したことがない、という人が大多数です。どんなにしんどくても痛くても我慢をする。女性は痛みに強いと思っている節もあります。一方で技術やテクニックは進化をし、大量出血を受け止められる生理用品も豊富に揃います。
堂上:それは言いづらい環境が関連しているのでしょうか?
大木:口外できないというよりも、そういう文化ではないからです。サービスやコンテンツは充実しているため、その場はしのげますしね。赤ちゃんを迎える準備のため、子宮内膜は厚くなります。それは食べたもので形成されています。受精が成立しない場合は、自分のホルモンで剥がすわけで、何を口にしてきたのかということにもつながります。不調があるなら食生活を見直す必要がありますよね。生理痛が軽減されると、ひいては日常が一気に変わっていくことでしょう。そんなふうに学ぶ機会をもっと提供しなくてはと考えています。
堂上:今からでも変わりますか?
山田&大木:変わります!
山田:特に子どもの場合は、初潮を迎える前にその知識があると早い段階から対策ができますよね。
堂上:親のヘルスリテラシーから変わらなくてはいけませんね。
大木:ヘルスリテラシーの高さで、収入や生産性に影響を及ぼすという統計も出ています。親の知識が子どもの一生を左右するし、医療費の負担にも関わってきます。
堂上:親世代のヘルスリテラシーを高めることも重要ですね。
最後の質問になりますが、お二人は何をされている時が一番楽しいですか?
山田:論文を読んでいる時です。英語を読むのが得意ではないので、昔はすごく時間がかかっていました。でも、最近はAIのおかげで秒単位で知識が増えています。
堂上:冒頭でお話されていたように、いろんなコンテンツを使い分けているのもすごいです。同じ質問をしても答えは異なりますしね。
山田:さらにアンチエイジングに対する知識の教育もしています。「アンチエイジングとロンジェビティはどう違いますか?」とAIに聞いて、論文をつけてみたり。
大木:学生を育てるようなことをAIにされているんですね。
堂上:先生の若さの秘密には知識欲の強さも関係していそうです!
山田:ひとつ疑問があると、どんどん知りたくなります。そこで得たものはブレイクダウンもできますしね。
堂上:自分が知らないことがあることを知る機会に恵まれることと、より深い知識を持つ人はウェルビーイングだという研究結果もあります。だれかに物事を教えるというのは、新しい知識を吸収しないとできませんもんね。インプットとアウトプットを同時に行っている先生は、まさにウェルビーイングな状態ですね。ちなみに大木さんはどうですか?
大木:基本的には家族と過ごしている時間ですね。永遠に一緒にいられます。それを除くと、新しいトピックスにいろいろ気づけて学べる場があることです。またヘルスケアコーディネーターとして習得した知識を、ポッドキャストやラジオで伝えて、リスナーの方に行動をしていただけると、とても嬉しくなります。
堂上:大木さんも知識欲に溢れていますね! 今日はウェルビーイングなお二人にお話を聞けて楽しかったです。ありがとうございました。
堂上編集後記:
ある日、熊本で行われた日本抗加齢医学会の総会に出席していた大木さんから、「堂上さん、山田先生とお会いしたことありますか」というご連絡をいただいた。「山田先生は絶対に会っていただきたい人なんです」となって、とんとん拍子に広尾駅のカフェで打ち合せすることになった。
山田先生にはじめてお会いしたときに、機関銃のように話し続ける好奇心の塊のような先生の魅力にはまってしまった。僕は、その場で「ぜひ、Welluluで対談させてください」とお願いをした。そして、学術的なことが分からないので、大木さんにも入っていただくことでお願いをした。
この出会いが、僕の中での生活を変えていく。本文にはないが、山田先生との対話の中で、日常のウェルビーイング習慣をお尋ねしているときだ。山田先生は、「毎日の『便』の比重を見ます」とおっしゃった。『便』????? と思った僕は、思わず聞き返した。「『便』は、重すぎず、軽すぎず、ちょうど水に少しだけ浮いている状態がいいんです」とおっしゃった。僕はそれから毎日、自分の『便』の重さを意識して観るようになった。
これは睡眠のときと同じで、毎日の習慣になれば、それはそれで楽しい。自分の健康状態のバロメーターを、体重や睡眠以外ではかることができる。僕は、比較的「良い重さの便」をしていることが分かった。お酒を飲みすぎた翌朝は、だいたいが重い便で沈んでしまっている。
毎日の習慣を少し変えるだけで、120歳まで生きられる時代がすでに来ているのかもしれない。健康寿命延伸が当たり前になっている。山田先生、大木さん、どうもありがとうございました。
1981年近畿大学医学部卒業。専門は皮膚科学(免疫・アレルギー疾患)、抗加齢医学。オーストリア政府給費生としてウイーン大学や米国国立衛生研究所で学ぶ。2007年から近畿大学アンチエイジングセンターで、医学、薬学、農学、運動に関する共同研究をしている。現在は老化計測のためのepigenetic 時計を中心に、「見た目」を含めた、総合老化時計の作成とその調節機構の研究を進めている。2025年大阪・関西万博の大阪パビリオン推進委員会委員・ヘルスケア先端予防医療ディレクターも務める。