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免疫細胞のチームワークが免疫力の向上に!まずはチームを指揮する「pDC」の活性化から【キリンホールディングス】

免疫は外敵から身を守るもの?栄養が足りていない食事や睡眠不足など、私たちの身の回りでは免疫力が下がってしまうような要因がたくさんある。

そんな中、Lactococcus lactis Strain Plasma(以下、プラズマ乳酸菌)を摂取することで「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」を活性化できることがキリンホールディングスの研究で明らかと
なった。「pDC」は“免疫細胞の司令塔”と呼ばれ、複数ある免疫細胞全体の活性化に影響するんだとか…(ここポイント!)。

そこで今回はキリンホールディングスの桑場さんに「そもそも免疫システムってなに?」「pDCとは?」「免疫を高めるポイントを教えて!」など、免疫に関する初歩的なところから、キリンホールディングスが取り組んでいる研究について幅広くお話を伺った。

桑場 潮音さん

キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス研究所学術マーケティンググループ

京都大学大学院を卒業後、キリンホールディングス(株)に入社。プラズマ乳酸菌の機能研究に携わった後、学術マーケティングによる「科学的エビデンス」をお客様に発信する仕事に従事している。

本記事のリリース情報

ウェルビーイングに特化した「Welulu(https://wellulu.com/)」にて「プラズマ乳酸菌」に関するインタビューを受けました。

目次

免疫力は「健康の土台」!何が起きるかわからないからこそ大切

──まず初めに免疫そのものについてお伺いしたいのですが、キリンホールディングスでは免疫をどのように捉えているのでしょうか?

桑場さん:私たちは免疫を「健康の土台」として考えています。

コロナウイルスや食中毒など、さまざまな外敵(ウイルス)から身体を守る役割が免疫にはありますが、日常生活を元気に楽しく過ごすための基盤としても、とても大切なんです。

世界的なパンデミックはなぜ起こるのか?

──最近のコロナウイルスの流行を考えると、免疫ケアの重要性を感じている人は多いと思います。

桑場さん:そうですね。私たち人類は古代からずっと感染症と戦ってきた歴史があります。移動が容易になった現代では、国を跨いだ人の流れが増え、以前にも増して大規模な感染症が起こりやすくなっています。コロナウイルスの流行のように、いつ何が起こるかわからないため、免疫ケアに対する意識が最近はより強くなっていると思います。

──まさにコロナ禍では移動による感染拡大が起こりました。あれほど大きな事態になるとは誰も思っていなかったですよね。

「体温が1度上がると免疫力がアップする」ってホント?

──ちなみにですが、体温が1度上がると免疫力がアップし、逆に体温が下がると免疫が下がるという話を聞いたことがあるのですが、これは本当なのでしょうか?

桑場さん:はい、これについては研究データや論文でも報告されています。体温が上がることで免疫細胞やそれに関わる酵素が活性化します。これは、「細胞が働きやすい環境」を整えることによるものです。適度に高い体温を維持することで、免疫細胞が迅速かつ効率的に反応できるようになるため、結果として免疫力が向上するというものです。

2種類の免疫システムとさまざまな免疫細胞

先天的にある「自然免疫」と後天的に備わる「獲得免疫」

──それでは、具体的に免疫の仕組みについて教えていただけますか?

桑場さん:免疫システムには「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。

自然免疫は最初に働く防御システムで、外から入ってきた異物を感知し、体全体に知らせる役割を果たします。これは生まれつき持っている免疫システムで、迅速に反応する特徴があります。

一方、獲得免疫は一度感染した病原体を記憶し、同じ病原体が入ってきたときに迅速に対応するシステムです。これは後天的に獲得されるもので、病原体を記憶することで、次に同じ敵が現れた際にすぐに対抗できるようになります。

この両方の免疫があることで、初めて入ってきた外敵でも、再び現れた外敵でも効果的に対処することが可能なのです。

──もしかしてワクチン(予防接種)で得られるものも獲得免疫なのでしょうか?

桑場さん:その通りです。ワクチンは弱毒化したウイルスやその抗原を体内に導入することで、免疫システムにその病原体を記憶させます。これにより、次に実際の病原体が体内に入ってきたときに即座に対応できるようになります。まさに獲得免疫のシステムを活用した一例です。

──そうだったのですね!免疫システムが私たちの体を守ってくれる、本当にありがたいものですね。

桑場さん:はい。そして、免疫システムの働きを支えるのが免疫細胞です。私たちの身体には本当に多くの種類の免疫細胞があり、それぞれ異なる役割を果たしながら一生懸命働いてくれています。

ヘルパーT細胞・B細胞・NK細胞…。役割の異なる免疫細胞たち

──免疫細胞の役割について、簡単に教えていただけますか?

桑場さん:一例としてですが、異常細胞を殺傷する「NK細胞」、外敵に侵された細胞を殺傷する「キラーT細胞」、外敵に対する抗体をつくる「B細胞」、キラーT細胞やB細胞の働きを助ける「ヘルパーT細胞」などがあります。

目には見えないため、その働きを実感しにくいかもしれませんが、実際には絶えず私たちの体を守ってくれているんですよ。

──外敵に直接働きかける細胞もいれば、サポートに徹する細胞もいて…、役割の違う細胞同士が連携して外敵から身体を守ってくれているんですね。例えとして変かもしれませんが、野球やサッカーなどのチームスポーツみたいです。

桑場さん:そうですね。さらにそれぞれの免疫細胞に指示を出す“司令塔”のような免疫細胞もいるんですよ。

──え…、スポーツで言うとキャプテンや監督みたいな細胞ですか!ぜひ具体的にお伺いしたいです。

免疫細胞の司令塔「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」

桑場さん:免疫細胞に指示を出す・命令を出す“司令塔”と言われているのが「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」です。「pDC」が活性化すると、多くの免疫細胞に適切な指示を出すことができ、免疫システムの活性化にもつながります。

──免疫システム、つまり自然免疫と獲得免疫の両方に働きかけるということですね!

桑場さん:はい。「pDC」は免疫力を包括的に向上させるための要(かなめ)の細胞であると言えます。

そして、弊社ではこの「pDC」の活性化につながるような乳酸菌の研究もしていて…、続けてそのお話をしてもよいですか?

──はい。お願いします!

pDCを活性化する「プラズマ乳酸菌」の研究

桑場さん:これまで多くの機関で免疫細胞に働きかける乳酸菌についての研究結果が発表されているのですが、そのほとんどが一部の免疫細胞のみに働きかけるものになっています。

その中で、国立研究開発法人理化学研究所が運営する菌株バンク、JCM(Japan Collection of Micro­organisms)から発見された「プラズマ乳酸菌」は、先ほどお話しましたpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を活性化できることが報告されています(キリン・小岩井乳業・協和発酵バイオ及び国内外の大学・研究機関との共同研究で発表)。

──珍しい特性も持つ乳酸菌なのですね!

桑場さん:以前までpDCを活性化できる乳酸菌は存在しないと考えられていましたが、弊社のヘルスサイエンス研究所所長・藤原はそれを疑い、100種類以上の乳酸菌を調査し、プラズマ乳酸菌がpDCを活性化させることを発見しました。

──100種類以上の中から探し出した乳酸菌だったのですね。藤原さんの執念に感服です!そもそもなのですが、キリンホールディングスが乳酸菌の研究を始めたきっかけや理由を教えてください。

桑場さん:キリンが乳酸菌研究を始めた理由は、元々はビールの品質を守るためでした。

実はビールに乳酸菌が混ざると、味が悪くなったり色が濁ったりするので、工場にとって乳酸菌は大敵でした。そのため、敵を知ることで自分たちのビールを守る、これが研究の原点で乳酸菌の研究が進んでいきました。

──ビールの大敵が乳酸菌とは意外です!全然知りませんでした!

桑場さん:いまでもビール会社が健康食品を…?とよく言われます。協和キリンという医薬会社もあり、昔から抗体薬などの研究も並行して行なっていたりと、これらを組み合わせることで起こるシナジーから、食品で健康に寄与できるものはないか?将来的に免疫が重要になるよね!との思いから研究を続けてきたんです。

生活習慣の乱れや不摂生が免疫力を下げる

睡眠不足や偏った食事などが免疫力を下げる

──免疫力が下がる原因にはどういったものがあるのでしょうか?

桑場さん:一般的に、睡眠不足、ストレス、偏った食事、肥満、無理なダイエットなど挙げられますが、「不規則な生活を避けましょう」ということです。

睡眠時間をしっかり確保することも大切で、忙しい日々の中で長時間の睡眠を取るのは難しいかもしれませんが、意識して寝る時間を増やすよう心がけるようにしてほしいです。

──食事に睡眠と基本的な部分を整えることの重要性を感じながらもつい疎かにしがちというか…。

桑場さん:ただ、睡眠もしっかりとって、栄養バランスの良い食事を作って食べて…などバランスがとれた生活を毎日完璧に送るのは難しいと思います。どうしても忙しくて日々の生活に自信がないな…という方は、「免疫ケア」を取り入れていただくのもお勧めかもしれません。

──毎日のケアが重要だということですね。

肥満も免疫力の低下につながる

──免疫力を下げる原因として肥満もありますが、生活習慣病のリスクを高めるだけでなく、免疫力にも悪影響を与えるのですね。

桑場さん:そうなんです、これについてはちょうど2023年の秋ごろ発表をした研究があります。花王さんと肥満とpDCの関係についての共同研究をおこない、その結果、肥満の方はpDCの機能が低下しやすく、風邪をひきやすいことが分かりました。

これは、肥満の方の体内で炎症性の物質が多く出るため、免疫バランスが崩れてしまうことが原因です。慢性的な炎症が免疫システムに悪影響を与えるのです。

──では、適度な運動と体型の維持が免疫力の維持につながるのですね。

桑場さん:その通りです。免疫力を維持するためには、適度な運動とバランスの取れた食事が大切ですが、あまり無理をしてしまうと、それ自体がストレスになることもあり、免疫力を下げることにつながってしまうので、楽しんでおこなうのがポイントです。

バランスよく栄養を摂取しよう!免疫力を維持するための食生活

──食事で意識した方がよいポイントなども教えてほしいです。

桑場さん:発酵食品、たんぱく質、食物繊維、ビタミン・ポリフェノールをバランスよく摂取することが基本です。

とくにビタミンCは免疫細胞の生成に欠かせない栄養素であるものの、体内で作ることができず、外から摂取するしかないため、意識的な摂取が重要です。

──ビタミンCの摂取において気を付けるべきポイントはありますか?

桑場さん:ビタミンCは水溶性であり、体内に蓄積されず、排出されやすいため、一度にまとめて摂取することより、朝昼晩に分けるように、こまめに摂取することがおすすめです。また、熱に弱い特性があるため、調理方法にも注意が必要です。可能であればフルーツや生野菜などを取り入れるのもおすすめです。

──そのような特性があったのですね。せっかくなのでこまめに摂取して効率よく摂取したいですね。

幼少期から自然環境に触れることも大切!

──ちなみに、年齢によっても免疫力は変化するのでしょうか?

桑場さん:はい、データによると、20代を過ぎると免疫力が徐々に低下し始め、50代や60代になるとさらに急激に低下する傾向があります。年齢には抗えない部分もありますが、免疫力をできるだけ下がらないように、維持するという部分は取り組める部分だと思っています。

──最後にお伺いしたいのですが、子どもたちが免疫力を養うにはどのような行動が役に立つのでしょうか?

桑場さん:たとえば、土や自然環境に触れることが免疫力向上に役立つと言われています。大人になってから初めて出会う病原体よりも、幼少期に適度に接触することで、獲得免疫が適切に働くようになります。

──本日はありがとうございました。

編集後記
免疫力はこれまで病気から身を守ってくれるものというイメージばかりでしたが、「健康の土台」であること、またたった30分の間でも上下するというのは驚きでした。現代の忙しい日々の中では、自身の健康において基本的である栄養摂取や睡眠ですらも、わかってはいるものの、どこか疎かにしてしまっているなと感じたとともに、免疫力を上げるというより維持をするためには日々継続して意識的に健康的な生活習慣を心がける必要があると感じました。

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