共通の興味関心をもとに、職場とは別のつながりを築くコミュニティ。コミュニティへの参加がウェルビーイングに結びつくと、ここ数年、高い注目を集めている。一体、コミュニティ運営は人々になにをもたらすのだろうか。
そのヒントを探るべく、コミュニティの企画・運営を支援する2018年創業のリーディングカンパニー・株式会社テイラーワークスの執行役員・土手本 怜さん、そして自身も地域の課題解決を目指すコミュニティ『まんまる高知』を運営するコミュニティプロデュースチームの楠瀬 まどかさんに話を伺った。
本記事のリリース情報
・【メディア掲載】ウェルビーイング がテーマのWebメディア『Wellulu』にご紹介いただきました
ジブンゴトで社会課題の解決を目指す、新しいコミュニティを開設
- まずはじめに、テイラーワークスについて簡潔に教えてください。
土手本:テイラーワークスは、多様な人々と共感やビジョンでつながり、世界を変えるアイデアを実現する共創コミュニティプラットフォーム「Tailor Works」を提供する会社です。コミュニティを立ち上げたいオーナーに対して、参加者の自発的なつながりを作り出し、安心安全に交流やアイディアの共創ができるオンラインプラットフォームを提供しています。
創業から現在の登録ユーザー数は23,000人・登録企業数は11,000社を突破しており、地域産業と先端テクノロジー企業が交流するDXコミュニティ、大学発スタートアップ企業と金融機関を結ぶ産学連携コミュニティなどの事例も生まれています。
- ここ最近のコミュニティにニーズの変化を感じますか?
土手本:コロナ以前から、先進的な企業や団体では取り入れられ始めていましたが、コロナ禍を経て「人とのつながりの重要性」を多くの人が感じるようになり、より一層ニーズが高まっているように思います。
特に地方では、その地域特有の課題解決に向けて、コミュニティを有効的に活用しようという動きが活発です。本日同席している楠瀬さんの『まんまる高知』も、その流れを汲んで立ち上げられたものですよね?
楠瀬:そうですね。『まんまる高知』は、地元・高知県の地域課題を解決するために立ち上げたコミュニティです。オンラインとオフラインの両方で、つながりの機会を作っています。
現在私はフルリモート社員としてテイラーワークスで働いていますが、『まんまる高知』は高知県の機械メーカーで勤務していたときに旗揚げしました。
- なぜ、『まんまる高知』を立ち上げようと思われたのですか?
楠瀬:前職で人事を担当していたとき、高知県内企業向けの合同説明会に参加する機会が多くありました。しかし、学生の参加者数は年々減っていく一方で、企業数と学生数が同じというイベントもありました。若者の地方離れはもちろん知っていましたが、「ほんまにヤバいんや……」と衝撃を受けました。
そこで、知り合いの人事にコンタクトをとって、学生に地元企業を知ってもらうためのワークショップを企画。企画が通るまで苦労しましたが、学生に地元企業の魅力を知ってもらいたいという想いに共感してくれる先生と出会うことができ、公立中学校でキャリアに関する特別授業を開くことに成功しました。
この成功体験がきっかけとなり、有志の集まりに『まんまる高知』と名づけたのが始まりです。
コミュニティは、自然体で成長できる空間
- 『まんまる高知』のコミュニティに参加する人は、どのような動機なのでしょうか?
楠瀬:私たちが掲げている「地域課題の解決」に関心をお持ちの人が集まってくれています。そのうえで、自分の考えに共感してくれる人が周りに見つからない、だからこそ自分の考えを共有できる場所がほしいという動機の人が多いですね。
ここ高知は、東京と比べると当然人や情報の動きが少ないので、多様な考えを受け入れる地盤がまだ固まっていないように感じます。だから、家庭や仕事場で自分の考えが受け入れてもらえず、少し寂しい思いをしている人が一定数いらっしゃるのです。
- そんな参加者にとって心地よいコミュニティをつくるために、どんなことを心がけていますか?
楠瀬:彼らにとっての「第三の場所」でありたいという想いが私にはあります。そのため、『まんまる高知』ではどんな考えや意見もまずは肯定的に受け入れて「それいいね!」とリアクションできる空気を大切にしています。
というのも、はじめて参加された人は、やっぱり緊張して自分をあまり表現できないことが多いんですね。でも、『まんまる高知ならどんな意見も受け入れてもらえる、共感してもらえる』と分かった瞬間に、参加者の表情がパァーっと明るくなるんです。
人は誰しも他人から共感してもらえたり、受け入れてもらえたと感じた瞬間、ウェルビーイングな気持ちになりますよね。『まんまる高知』に限らず、良いコミュニティは自然体で飾らない自分を受け入れてくれる場所なのかなと思います。
- 土手本さん自身も個人的にコミュニティによく参加していたとお聞きしました。どのような体験でしたか?
土手本:私自身は社会人2年目くらいから、コミュニティに育ててもらったという感覚がとても強いです。会社以外のコミュニティに積極的に参加していたのですが、同じ会社員の人だけでなく、フリーランスの人も多くいらっしゃって、多様な価値観に揉まれて学びを深めていきました。
社会人のなかには、仕事とプライベートのオンオフを明確に分けている人も多いかもしれません。ただ個人的には、自分を飾らずに自然体で新しい出会いに向け循環させていくことが重要なのではないかと思います。
仕事がプライベートにつながることもあれば、その逆もあるかなって。社内外の人と垣根を超えて、コミュニティに飛び込んでいったことにより、今の自分が成長できていると感じます。
人は、人に受け入れられてはじめて貢献意欲がアップする
- コミュニティがどのように参加者のウェルビーイングにつながっていると考えていますか?
楠瀬:私は周囲からの共感がベースとなり、ウェルビーイングな状態につながっているのだと考えています。「他者からの共感」が生まれると、今度は「他者に貢献したい!」と心が動いていくモチベーションになります。
そして、「このコミュニティにいるのは私の仲間なんだ」と思えるようになると、見返りを求めずにギブしたくなりますし、周りに刺激されて新しい分野にもチャレンジしたくなる。それが結果的に能力開発やリスキリングの機会となり、本業にも活かされていくのです。
逆にいうと、普段の職場では「自分が周りに貢献している」という実感が少ないからこそ、コミュニティに価値を感じるのかもしれませんね。特に地方の企業では、ゼロイチで新しい機会をつくるという発想自体が少ないので、社員がチャレンジしづらいという課題があります。
- 『まんまる高知』に参加して変化した人の具体的なエピソードはありますか?
楠瀬:ある人はとても引っ込み思案な性格で、コミュニティに参加した当初はとても無口な感じだったんですね。ですが、話をしていくうちにコミュニティの良さに気づいた瞬間があったようなんです。
そのきっかけは自分の大事にしているモットーを話したときに、他のメンバーから「すごくいいね!」「私も分かる!」って受け入れてもらえたと。他の場所で話すと関心を集めない発言が、このコミュニティのメンバーは耳を傾けてくれると気づいた瞬間に、その人にとってコミュニティが大切な存在になったそうです。
その人いわく「破壊的な気づき」であったと。コミュニティだからこそ、お互いの年齢や立場を超えて意見交換や議論ができる。これが、新しい学びにとてもつながっているというお言葉をいただきました。
コミュニティは、新しい自分に出会える刺激と成長の機会
- 今ウェルビーイングという観点で、コミュニティへの参加が人々の間で関心を集めているのはなぜだと思いますか?
土手本:コミュニティという新しい場所に飛び込むことは、知らないことに出会えるという“知の探索”の側面が強いのだと感じます。
例えば、楠瀬さんのように高知の会社に勤めていて、その会社のことしか知らなかった人が他の働き方を知ったとき、「自分にもこんなキャリアの選択肢があるんだ!」という、気づきの部分で喜びを感じられるのがコミュニティの良さです。
他のメンバーとの対話を繰り返すなかで、モデルケースが増えれば増えるほど言語化ができるようになるんですよね。一言でいうと、『新しい自分を知る』という体験です。
自分が明確になると、これまで表面的な自己理解で行動していたことが、深い自己理解にもとづいた行動に変わっていきます。それが、「本来の自分が求めているウェルビーイング」に気づくきっかけになるのだと思うのです。
だから、コミュニティに注目が集まっているのだと考えています。
-では、最後に『まんまる高知』の今後の目標を教えてください。
楠瀬:最近メンバーと話しているのは、全国的には副業という働き方が浸透してきているなかで、高知ではまだ副業という概念がないよねということ。
だからこそ、『まんまる高知』では仕事とは違う軸で、それぞれのメンバーがチャレンジできる場を育てていきたいねという話をしています。
現代の社会は、人や情報がうまく循環していない場面が多く見られます。地方発信のコミュニティを通じて、もっと人と人との新しい循環のモデルケースを創出していけると考えています。
自分の持っているものは積極的に社会に提供し、一方で受け取る側にまわり学ぶ時間も増やす。こうして、それぞれの所属を越境して、より良い循環を生み出していく、そんな存在になりたいです。
Wellulu 編集後記
インタビューの終盤、楠瀬さんに「コミュニティへの参加に一歩が踏み出せない人へ、届けたい言葉はありますか?」と聞いてみました。すると彼女から返ってきたのは「最近、日々のなかで自分が素直に幸せや面白味を感じた体験はありましたか?」という言葉でした。
私たちは油断すると、仕事や家庭のやるべきことについ忙殺されてしまいがちです。そんな私たちの毎日に、新しい気づきや出会い・喜びを与えてくれる「第三の居場所」がコミュニティなのかもしれませんね。
あなたも自分が共感できるコミュニティに、少しだけ勇気を出して、顔を出すところから始めてみてはいかがですか。
詳しくはこちら▶「Wellulu Club」
楠瀬 まどかさん
テイラーワークス・コミュニティプロデュースチーム
土手本 怜さん
テイラーワークス執行役員