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【島根県】「ご縁」と「美肌」。地元住民と共に創る島根ならではの「ウェルネスツーリズム」とは?

島根県は出雲大社等で知られ、「ご縁の国しまね」と銘打ち、これまで多くの旅行客を歓迎してきました。5年前からは、美肌を育む気象条件、温泉、食を切り口に、「美肌県しまね」としてのプロモーションも開始し、「ご縁も、美肌も、しまねから。」をキーワードにした誘客施策を進めています。

他の都道府県にはない島根県ならではの「ご縁」と「美肌」を感じられる体験を訪れた人に提供し、独自の価値として地域事業者との連携を図りながら、島根県が考える新しい旅の形を探求しています。今回は観光振興課の中尾さん、小田川さん、渡部さんに、島根ならではの「ウェルネスツーリズム」についてお話を伺いました。

中尾 寛子さん

島根県商工労働部観光振興課 美肌誘客係 係長

京都大学卒業後、島根県へ入庁。初任地は隠岐。水産課(宍道湖自然館ゴビウス担当)、教育施設課を経て、2020年度から観光振興課にて美肌県しまね推進事業を担当。島根県を元気にし、”日本一の癒しの地”とすべく活動中。県内のイチ推しウェルネススポットは三瓶山・石見銀山(大田市)。

小田川 雄志さん

島根県商工労働部観光振興課 観光宣伝係 主任

広島大学卒業後、民間企業で販売業と広告業を経験。2022年度に経験者採用枠で島根県へ入庁。企業のプロモーションや情報発信に携わった経験から、島根観光の魅力をWEB、SNS、メディア等を通じて県内外へ発信する業務に従事。県内のイチ推しウェルネススポットは宍道湖(松江市)。

渡部 一貴さん

島根県商工労働部観光振興課 美肌誘客係 主任主事

関西学院大学卒業後、2018年度に島根県へ入庁。初任地は本庁で中小企業支援を担当、その後、(一社)広島県観光連盟への出向を経て、2023年度より島根県に帰任。観光振興課では、各地域の資源を活かした県内事業者によるコンテンツ造成を支援している。県内のイチ推しウェルネススポットは摩天崖(西ノ島町)。

本記事のリリース情報

「Wellulu」に本県の取組みが紹介されました!

デジタルメディア「Wellulu」で島根県の取り組みが紹介されました

地元事業者とともに、“島根ならではの「ご縁」と「美肌」”をコンテンツ化する

──本日はお時間いただきありがとうございます。まず、島根県が持つウェルネスに通ずる資源はどんなものだとお考えですか。

中尾さん:2013年の出雲大社の「平成の大遷宮」を契機に、「ご縁の国しまね」としてプロモーションを開始しました。この「ご縁」のテーマに加えて、大手化粧品メーカーのポーラが開催する「美肌県グランプリ」で島根県が複数回にわたって1位に選ばれたことが大きなきっかけとなり、2019年には「美肌県しまね」としてのプロモーションも開始しました。

美肌を育む要因として、島根県は年間を通じて日照時間が短いことで紫外線の影響を受けにくく、特に冬季の湿度が高い環境が肌に優しいとされています。また、県内には約60カ所の温泉があること、そして豊かな自然と新鮮な食材が多くあることも大きな魅力です。これらの要素を組み合わせ、日常の疲れを癒す旅、心も体もきれいになる旅というコンセプトでコンテンツ作りを進めてきました。

──「出雲大社」「ご縁」「美肌」と資源がユニークですね。ウェルネスツーリズムに着目したその理由や背景を教えていただけますか。

中尾さん:2022年9月に、県内事業者向けに“美肌観光セミナー”を開催し、ウェルネスツーリズムの第一人者である琉球大学の荒川雅志先生を招いて講演いただきました。そこでウェルネスツーリズム市場の可能性について県内事業者も一丸となって考え始めました。

先生のお話や事業者とのディスカッションからも、これまで培った「ご縁」と「美肌」のコンテンツがウェルネスツーリズム市場にも非常に相性が良いということが確認できました。そして今年5月に、東京ビッグサイトで行われた第1回国際ウェルネスツーリズムEXPOに島根県としてブース出展し、多くの反響を得ました。

──これらのテーマを軸にした具体的なプロモーションや商品開発について、もう少し詳しく教えていただけますか。

中尾さん:私たちは「ご縁も、美肌も、しまねから。」をキーワードに様々なプロモーションや商品開発を進めています。例えば、“SHIMANE WELLNESS TRIP ”と題した特設サイトでのプロモーションや、地元事業者とのコラボレーションを通じた、旅の目的となるコンテンツづくりです。美肌県しまね推進事業という補助制度も設け、2022年度までに、美肌をテーマにした商品を30事業者が開発しました。2023年度も同様に、更なる事業者を採択し、事業を継続しています。

──地元事業者を巻き込んでの商品作りが活発ですね。何か特別な取り組みはあるのでしょうか。

渡部さん2023年度からは「横のつながりづくり×商品造成ワークショップ」という新しい取り組みを始めました。これは、地域事業者が主役の参加型のワークショップで、「ご縁」や「美肌」をテーマに、コンテンツの魅力向上や、宿泊プランへの体験の組み込みによる販路と観光消費額の拡大、仲間づくりといったことを目的としています。県内で6回以上開催し、合計延べ約80の県内事業者が参加しており、参加者数を見てもアクティブな取り組みです。さらに、旅行会社やメディア向けに造成した商品のPRの場として商談会を開催し、販売や情報発信に繋げていきます。

小田川さん:美肌県しまね うるおい研究室」もその一環で、美肌に良いローカル食材やストレスフリーな時間を過ごせる”美肌宿”など、「美肌」をテーマにした新しいコンテンツや取り組みをサイト内で紹介しています。肌だけでなく心も満たされるような体験を通して、島根の魅力を伝えていきたいと思っています。

──地域事業者も積極的な姿勢で新たなコンテンツ作りをしていること、そしてその発信の土台もきちんとあるのが、素晴らしいですね。

中尾さん:私たちの目標は、『地域一体となって魅力的な旅先を作り上げ、「ご縁も、美肌も、しまねから。」をテーマに、島根県の魅力を伝え、来訪につなげること』です。その中でもウェルネスツーリズムの市場は将来的な拡大が見込まれており、私たちの取り組みが、訪れる人々に新たな活力を与えることを期待しています。

ウェルネスツーリズムの地としての島根。五感とつながりが生む新しい旅の価値

──島根県が発信する「SHIMANE WELLNESS TRIP」について、その具体的な取り組みについて教えていただけますか?

小田川さん:島根ならではのウェルネスツーリズムの魅力を発信するプロモーションの一環として、今年度から「SHIMANE WELLNESS TRIP」と題した情報発信をスタートしました。プロモーションのコンセプトは、「自然の恵みとご縁に出会う癒しの旅」です。島根県は、旅を通してウェルネスな体験がたくさん出来る土地であることを、より多くの方に知ってもらいたいという想いがベースとなっています。島根のウェルネスを味わえるポイントとして、「①呼吸する」「②知る」「③触れる」「④潤す」「⑤味わう」「⑥愉しむ」という6つの視点を取りあげることで、それぞれの要素が重なり合って島根県の魅力を形成していることを伝えています。

渡部さん:本県に来訪される方々が、各地域でのウェルネス体験を通じ、癒され、また満足してお帰り頂くためには、「ゆったりと過ごせる時間」と「五感で島根の魅力を味わえる」ことが重要だと考えています。その観光コンテンツの一例として、隠岐諸島の1つである中ノ島“海士町”にある「Entô(エントウ)」の取り組みを紹介します。

大山隠岐国立公園、そして隠岐ユネスコ世界ジオパークに認定される手つかずの地球(ジオ)の風景と時間を堪能できる宿泊施設「Entô」は、「ジオパークの拠点施設であり、ジオパークに泊まれる宿」でもあり、また島で暮らす人と訪れる人が交わる場所でもあります。

──Entôの特にユニークなところは、どこでしょうか?

渡部さん:Entôのある隠岐諸島はジオパークとして地質学的にも文化的にも珍しい場所で、その島前カルデラの内湾を一望できるところにEntôがあります。そのため滞在しながら自然との接点を感じることができます。

渡部さん:他にもジオパークのスタッフが島のことを紹介しながら一緒に周るツアーや、隠岐神社がある中里地区をその地で暮らす方々と一緒にさんぽできるようなコンテンツもあります。

Entôでは景勝地を紹介するだけでなく、地域住民と積極的に関われるコンテンツや、その土地土地のストーリーを知ることができる体験を提供しています。

またEntôに限らず、隠岐では地域住民と交流を深める旅行商品の開発が進行中です。例えば、地域の農家や島民の家を訪れて一緒に食事を楽しむなどの体験は、観光資源としての新たな可能性を秘めています。

──訪れた人が一時的な消費で終わらない、人と人とのつながりを生むような取り組みが盛んですね。

渡部さん:観光に対する人々のニーズは日々変化しています。近年では、単に景勝地や有名地を訪れるだけでなく、訪れた地域と関わりを持つことで得られる体験の価値が注目されるようになってきています。島根県としても、このようなニーズを満たす場所になれるように、来訪者に深く長い満足感を与える方法やコンテンツ開発ができないか、地域とともに模索を続けています。

──旅先では豊かな自然や食だけでなく、そこに暮らす人々に触れ、新たな人間関係を築く。これこそ新しいウェルネスツーリズムの形かもしれませんね。

【しまね×旅育】子供の五感を刺激するウェルネスな体験

島根の自然豊かな恵みを家族で堪能しながら、五感を刺激する体験の情報を届けるWEBサイト「しまねKids Fun Trip」。親子で楽しみながら社会を知り、子どもの世界を広げる絶好のチャンスととらえる「旅育」の考え方を取り入れ、島根ならではの体験を発信しています。

──具体的にはどんな体験ができるのでしょうか?

小田川さん:例えば、隠岐ならではの海の幸を、自分で釣って食べて楽しむコースがあります。磯釣りは待つ間も、自然への関心が高まり、粘り強さも磨かれます。もちろん釣れることで大きな達成感となりますし、自分で釣った魚を調理し食すれば、食育にも繋がります。子供も主体となって体験することで、今までできなかったチャレンジから五感を刺激する新たな時間を過ごすことができるのです。

小田川さん:他にも、農家さんが教えるそばうち体験や、自分で収穫した野菜でピザを作る体験など、地域住民とも関わりながら多様な体験をすることができます。

──地域の方々も協力的ですね。他にも地域との繋がりを深めるコンテンツはありますでしょうか?

中尾さん:松江ニューアーバンホテル内にある「enun 縁雲(えんうん)」というコワーキングスペースがあります。このスペースは、”地域や世代を超えて人々が集まり、ご縁で『つながり』人脈や学びが『ひろがり』新しいアイデアやビジネスチャンスを生み出す『はじまり』の場所”として、定期的に様々なイベントやセミナー、ワークショップが開催されています。ホテル一体型の施設でもあり、観光やワーケーションで訪れた方の新しいご縁を結ぶ拠点にもなっています。

中尾さん:ユニークなのが、地元のことをよく知る”コミュニティーマネージャー”が複数名在席していて、リモートワーク等で県外からきた方も、気軽に地元との交流について相談できるため、県民と県外からの来訪者との繋がりが生まれやすいことです。

また、enun wellbeing dayとして働く方々が心身ともに健康にリフレッシュしながら集中力を高めるプログラムとしてワーク中のマインドフルネスタイムやヨガやリフレッシュメントなどの各種プログラムなども提供しています。

──そういった人と人との交わりこそが、島根でのウェルネスツーリズムの価値を高めるように思います。まさに「ご縁の国しまね」の「ご縁」にも通じますね。今後の展望についても教えていただけますか?

小田川さん:はい、今後はウェルネスやご縁、美肌といったテーマを軸に、県の魅力をより効果的に伝えるための情報発信に注力し、長期的なブランディングの観点から島根県の魅力を発信し続けることを目指していきます。また、県内事業者へのサポートも重要視しており、常にニーズを聞きながら、新しい施策を考えていく予定です。

豊かな自然、温泉、縁結びまで!島根県のウェルビーイングスポット

──最後に島根県内のおすすめスポットについて教えていただけますか?

渡部さん:まず隠岐諸島エリアでは西ノ島です。西ノ島では、季節ごとに異なる絶景を楽しむことができます。摩天崖はユネスコが認定する、美しい地質遺産を有する自然公園として隠岐ユネスコ世界ジオパークの中でも代表的な景勝地です。

冬には荒々しくも雄大で、また春につれ穏やかに映る景色は、雄大な自然をより威厳ある地として感じていただけます。雄大な景色に触れることで自身を意識することができ、改めて人と地球との繋がりを体感いただけるスポットだと思います。

小田川さん:島根県東部エリア・松江市にある玉造温泉もおすすめです。出雲大社からは車で約50分の距離、宍道湖に隣接する温泉街で、アクセスがよいのも理由です。奈良時代から続く、日本最古の美肌温泉の一つで、『出雲国風土記』では”神の湯”との記述もあります。

泉質調査【サティス製薬調べ】では、基礎水分量を165%もUPさせるという高級化粧水レベルの温泉と評価されたため、美肌の湯として好評です。足湯スポットもあるので、旅の疲れを癒すのにもおすすめです。玉造の名の通り、三種の神器である勾玉の生産が盛んだった地域で、「恋来井戸」「恋叶い橋」「おしろい地蔵」「玉作湯神社」といった縁結びや美肌のスポットもおすすめです。

中尾さん:島根県西部エリアでは、石見銀山のある大田市大森町です。人口は約400人ほどの小さな町ですが、今もなお歴史的な町並みが残っており、地元住民はこれを守りながら生活しています。

銀の採掘が盛んだったことから、石見銀山は世界遺産に登録されています。地元住民と来訪者の交流にも力を入れていて、例えば古民家を改修しコミュニティスペースと図書館が併設した施設”石見銀山まちを楽しくするライブラリー”も2023年4月にオープンしました。こちらでは地元の大学生が施設内のカフェを運営したり、子供たちがたのしく過ごせるような工夫があるなど、地域と交流ができるようになっています。

──本日、島根県のお話をお伺いして、さまざまな魅力が詰まった場所だと改めて感じました。中尾さん、小田川さん・渡部さん、本日はありがとうございました。

Wellulu編集後期:

島根県のウェルネスツーリズムに関して、その独自性と地域資源の活用においても非常に興味深いコンテンツが多いんだなと感じました。また、地元事業者と協力しながら、「ご縁」と「美肌」をテーマにした旅行コンテンツを企画しているからこそ、島根県ならではの魅力を存分に満喫できるんだと思います。「Entô」のような施設では、地域住民との積極的な関わりや、その土地のストーリーを知ることができる体験が提供され、「しまねKids Fun Trip」を通じて提供される親子で楽しめる「旅育」コンテンツも、新たな学びと発見の場を提供しています。島根県の豊かな自然と文化、そして地域住民との温かな交流が生み出すウェルネスの価値を感じて、実際に次の旅行プランとして、島根県のウェルネスツーリズムをぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

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