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【e-dash株式会社×レジル株式会社】脱炭素の“可視化”と“削減”を一貫して実現する共創パートナーシップ

企業の脱炭素化が進む中で、再生可能エネルギー(非化石証書を活用した実質再生可能エネルギーを含む。以下、再エネ)100%導入だけでは不十分と認識されてきた昨今。CO₂排出データの可視化と再エネを組み合わせた包括的な支援が注目されている。

三井物産発のベンチャー企業 e-dash株式会社は、再エネ電力供給を展開するレジル株式会社とパートナーシップを結び、企業の脱炭素経営を支援する新たなモデルを打ち出している。両社は、データに基づいた定量的な提案と再エネ電力の導入支援を通じて、さまざまな企業の課題解決に取り組んでいる。

データの可視化という実践的なソリューションを提供するe-dash株式会社と、CO₂排出実質ゼロの電力供給を行うレジル株式会社の協業は、支援先企業の持続可能な成長を力強く後押しする。

今回は、e-dash株式会社 ソリューション&アドバイザリー部の森谷翔太氏とレジル株式会社 グリーンエネルギー事業本部 奥野浩平氏に、協業の背景や成果、そして今後の展望についてお話を伺った。

森谷 翔太さん

e-dash株式会社 ソリューション&アドバイザリー部

大学卒業後、士業向けに営業やマーケティング、業務効率化のコンサルティングに従事。前職ではSBTの認定を中心に、中小企業のESGへの取り組みを支援し、その後現職へ。e-dash株式会社ではソリューション&アドバイザリー部として脱炭素を加速するべく、可視化後の削減施策の提案や具体的なソリューション(省エネ施策、オフセットなど)を提供するパートナー企業との提携業務を行う。

奥野 浩平さん

レジル株式会社 グリーンエネルギー事業本部

HR業界での営業経験を積んだあと、FinTech企業にて金融イベントの企画・広告提案業務に従事。FinTech業界では企業のビジネス成長支援やカスタマーサクセスとして課題解決型の提案スキルを磨き、その後2024年2月にレジル株式会社に入社。現在はグリーンエネルギー事業本部でパートナー企業との協創を推進している。
目次

「まずは測ることから」ーー脱炭素化のハードルを下げるe-dash社のCO₂排出量可視化ツール

——最初に、貴社の事業概要と森谷さまのご担当について教えてください。

森谷:e-dash株式会社は三井物産からスピンアウトしたベンチャー企業で、企業のCO₂排出量を可視化するSaaSプラットフォーム「e-dash」を提供しています。2022年に設立し、排出量の見える化から削減提案まで、企業の脱炭素化を一気通貫で支援できる体制を整えています。

またCO₂排出量の可視化支援に加え、レジルさまの代理店として、実際の排出量を削減するためのサービス提供にも積極的に取り組んでいます。

私はソリューション&アドバイザリー部に所属し、ソリューションアドバイザーとして、可視化されたデータをもとに、企業ごとに最適な削減施策を提案しています。企業の状況に合わせて施策をブラッシュアップをしたり多角的なコンサルティングを行うことが主な役割です。レジル社との協業では、両社の橋渡し役を担い、連携を深めながらお客さまにより大きな価値を提供できるよう努めています。

——企業が脱炭素に取り組む際に直面している課題について、どのような傾向があるとお考えですか。

森谷:特に中小企業では、「何から始めればいいのかわからない」といった声を多く耳にします。脱炭素化には大きく分けて「知る」「測る」「減らす」の3つのフェーズに分けられます。

まずは、脱炭素の必要性や業界全体の動向を把握し、自社がどのような方向で取り組むべきかを理解する「知る」段階。次に、電力やガスの使用量、燃料消費量といったデータをもとに、自社のCO₂排出量を正確に「測る」ことが求められます。最後に、算出した排出量に基づいて、再エネの導入やエネルギー効率の改善といった具体的な削減施策を「減らす」段階で実行します。

これらのプロセスを順を追って進めることで、実効性のある脱炭素の取り組みが可能になります。しかし実際には、最初の「知る」段階、つまり情報収集の時点でつまずいてしまうケースが少なくありません。さらに、脱炭素に関心があっても、人的リソースが限られているため、専任の担当者や部署を設けられず、具体的な行動に移しづらいという実情もあります。

一方、大企業では可視化や情報開示への取り組みは進んでいますが、Scope3(※1)まで対応しようとすると、より高度なデータ集約や専門的な知見が必要になります。これもまた大きなハードルの一つです。

——そのような企業に対して、どのような視点やアプローチで可視化支援を提供していますか。

森谷:当社では、可視化の入り口をハードルの低いものにすることを重視しています。たとえば、請求書をベースにして算定を行い、現状の数値を「見える化」します。その上で、課題を一緒に整理して段階的に改善策を提案していくのです。

また、数多くの金融機関との提携実績を活かしたアプローチも行っています。具体的には、金融機関が提供する「サステナビリティ・リンク・ローン」(※2)など、脱炭素に取り組む企業にとって金利優遇のメリットが得られる制度の活用を提案しています。

こうした金融商品は中小企業からの関心も高く、取り組みの後押しとなる有効な手段です。可視化データをもとに脱炭素の進捗を数値化できる当社の強みを生かし、金融機関との連携を通じて、脱炭素化と資金調達の両面を支援しています。

——貴社が「脱炭素の”測る”フェーズ」に特化する中で、再エネ電力の導入提案は、企業支援のどのような”次の一手”として位置づけていますか。

森谷:当社では、蓄積されたデータをもとに「再エネ電力へ切り替えると、これだけ排出量が削減できます」といった具体的な提案が可能です。

特にScope 2(※3)については、再エネ導入によって排出量を実質ゼロにできる場合が多いため、非常に有効な削減手段となります。さらに、多くの企業が関心を持つコスト面でのメリットも同時に提示できるので、環境と経済性の両面からお客さまにとって価値のある提案ができると考えています。

また、再エネ導入をまだ検討していない企業にも、「切り替えた場合に排出量やコストがどう変化するか」といったシミュレーションを提供することで、判断材料としてご活用いただいています。これも当社ならではの強みです。

“可視化”から“確実な削減”へ。レジル社との連携で実現するワンストップ支援

——貴社では、これまでもさまざまなパートナー企業と連携されていると伺いました。具体的に、どういった企業がパートナーとなっているのでしょうか。また、代理店として連携する際の動き方についても教えてください。

森谷:当社がパートナーとして連携しているのは、たとえば再エネの電力事業者、空調設備や照明器具で省エネを推進するメーカー、脱炭素を経営のミッションに掲げる金融機関などです。中でも、お客さまのCO₂削減を後押しできる技術やサービスを持つ企業とは、相互補完的な関係を築きやすいと感じています。

代理店としての連携においては、まず当社がCO₂排出量の「可視化」フェーズをリードします。ここで排出量の多い要素や改善余地を明確にし、その結果を踏まえて、最適なタイミングでパートナー企業のソリューションを提案するという流れです。

提案資料の作成などは当社が担うことが多く、パートナー企業にとっては最小限のご負担で導入提案に参加いただけます。初期の打ち合わせやお客さまとの信頼関係の構築、ファーストコンタクトまでは当社が主導し、そのうえで「具体的な施策の検討フェーズ」に入った段階でパートナー企業にご登場いただく、といったスキームが一般的です。

——今回、再エネ導入のパートナーとしてレジル社と協業することになった背景には、どのようなきっかけや魅力があったのでしょうか。

森谷:レジルさまから直接ご連絡をいただき、実際にお会いしてお話したことがきっかけです。当社も再エネ提案の強化を検討していたタイミングで、非常によいご縁だと感じました。

協業を決めた理由は複数ありますが、特に大きかったのは、脱炭素に対するビジョンと価値観が一致していたことです。当社の持つ可視化データと、レジルさまの電力調達・提案力を組み合わせれば、一貫した脱炭素ソリューションが提供できると確信しました。

中でも印象的だったのは、「どうすれば顧客に納得感のある提案ができるか」について、深い議論ができた点です。レジルさまはその仕組みがしっかりしており、当社の可視化データと組み合わせることで、非常に強力な提案ができると感じました。

また、レジルさまは電力に関する豊富なデータを保有しており、見積もりのスピードや精度が高い点も魅力です。電力価格の変動リスクへの対応力もあり、安心して連携できるパートナーだと実感しています。

奥野:当社としては、脱炭素を社会全体に広げるためにパートナーセールスチームを新設したタイミングでした。そこで必要になったのが、排出量の可視化に強みを持つ企業との連携です。e-dashさまは理想的なパートナーで、初回の打ち合わせでも大きな相乗効果が期待できると感じていました。

また、再エネ導入を検討している企業の中には、「知らない電力会社は不安」「電気の質が変わるのでは」といった懸念を抱くケースもあります。しかし、e-dashさまがすでにお客さまと強固な信頼関係を築いているおかげで、安心して当社にお任せいただくことができています。

——レジル社の再エネ電力を提案する代理店活動を展開する上で、貴社ならではの強みはどのような点にあると考えていますか。

森谷:当社の強みは、まず企業のCO₂排出量を精緻に可視化するところから始め、そこから最適な再エネ導入プランをご提案できる点にあります。再エネ導入によって排出量がゼロになることによるブランド価値の向上や、電力コスト削減といった、企業にとって現実的なメリットを明確に示せることは大きな強みです。

また、システムの導入だけで終わらず、導入後のフォローアップにも力を入れています。進捗確認や、削減に向けた方向性のすり合わせなど意思確認の場を定期的に設けています。これらを一連の仕組みとして整備していることで、排出量の可視化から実際の削減施策へのスムーズな移行を支援できるのが、当社ならではの特徴です。

——レジル社との協業を通じて、どのようなメリットや手応えを感じていますか。

森谷:レジルさまとの協業は、非常に理想的な形だと感じています。当社は「CO₂排出量の見える化」と「コンサルティング」に特化し、レジルさまは「再エネの供給」に専念されており、それぞれの強みを最大限に発揮できる関係が築けています。

具体的には、提案段階までは当社が主導し、脱炭素に関心の高いお客さまとの商談に絞って、レジルさまにご参加いただいています。たとえば、「再エネでどれだけ削減できるのか」「コスト面で実現可能なのか」といった実務的な相談が生じた段階で、レジルさまの専門的な知見や見積もり対応が非常に頼りになっています。

お互いが自社の得意分野に集中できるスキームを構築できていることで、お客さまにとっても質の高い、現実的な提案が可能となり、結果として大きな信頼感の獲得にも結びついていると実感しています。

脱炭素が話題にならないほど当たり前になる社会へ。“共創”によるビジネス進化と社会貢献

——両社が協業した事例として、セントラル警備保障(以下、CSP)さまとの取り組み(※4)があるとお伺いしました。具体的にCSPさまには両社でどのようなサポートを提供したのですか。

森谷:CSPさまは、Scope3(※1)まで含めた排出量の可視化に取り組むなど、脱炭素への意識が非常に高い企業です。2022年から全国20拠点で「e-dash」を導入し、現在は子会社を含むグループ全体でご利用いただいております。Scope 1・2のGHG排出量を2020年度比で「2030年度までに50%削減」「2045年度までに実質ゼロ」という目標の達成に向けて、操作性やサポート体制、社員の脱炭素意識の醸成などの観点で、評価をして頂いておりましたが、そうした日々のやり取りの中で再エネ導入にも関心を持っていただきました。

まずは、東京都内のある拠点を対象に、CO₂排出量とコストメリットを試算し、導入効果を確認した上で、レジルさまの再エネ電力への切り替えをしていただきました。その結果、Scope2(※3)の排出量がゼロとなり、大きな削減効果を実現しました。CSPさまにもその成果を高く評価していただき、今後は他拠点やグループ会社への展開もご検討いただいている状況です。

奥野:e-dashさまはCSPさまとすでに強い信頼関係を築かれていたため、当社の提案にも初めから高い関心を持っていただけました。e-dashさまは他の企業とも密接な関係をお持ちなので、非常にスムーズな導入提案ができていると感じています。

——両社の協業によって、どのような相乗効果が生まれていますか。

森谷:レジルさまとの協業によって、想定以上の効果がいくつもありました。特に、メディアへの露出が増えたことは大きく、営業やマーケティング活動においても、お互いのブランド価値を高め合う関係が築けています。その結果、業界内での認知度も向上し、新たなお問い合わせも増えてきました。

また、当社では電力以外の削減施策についてもパートナーと連携しながら提案しており、お客さまには複数の選択肢をフラットに比較検討していただけます。こうした「商社的な機能」も当社のブランドの一部として評価されていると感じています。

奥野:e-dashさまとの連携により、「可視化」という脱炭素の出発点を担っていただけるようになったことで、私たちはより多くの企業にアプローチできるようになりました。さらに、業種や規模を問わず幅広い企業に対して提案できる体制が整い、まさに二人三脚での取り組みが実現できていると実感しています。

——今後、両社とのパートナーシップを発展させることで、どのような社会を目指していきたいとお考えですか。

森谷:当社のミッションは「脱炭素を加速する」ことです。今後は、再エネ電力への切り替えをさらに推進するとともに、「可視化」と「削減」を融合した総合的な脱炭素ソリューションの提供を強化していきたいと考えています。

また、脱炭素という社会課題に対する個人の意識を変容していくことを目指していきます。そのためにもメディア運営やメディア露出を通してブランド力を高め、地球環境に真摯に向き合う企業として広く認知される存在になりたいと思っています。

奥野:私たちは「脱炭素を、難問にしない」というミッションを掲げ、心理的にも経済的にも、無意識のうちに脱炭素が進む社会の実現を目指しています。単なる電力会社ではなく、エネルギーの力で未来を変えていく存在になりたいと考えています。

最終的には、法人のお客さまの取り組みが社員へ、社員からその家族へと広がり、ひいては地球全体に脱炭素の意識が自然と浸透していくような状態を目指しています。脱炭素が話題にならないほど、当たり前になる社会をつくることがゴールです。

今後もe-dashさまとの連携をさらに深め、両社で力を合わせて持続可能な社会の実現に貢献していきたいと思います。

レジル株式会社:
集合住宅への「マンション防災サービス」の導入などを通じて脱炭素とレジリエンスの両立を目指す「分散型エネルギー事業」、再生可能エネルギーの調達・供給を通じてカーボンニュートラルの実現を支援する「グリーンエネルギー事業」、デジタル技術を活用して経営効率化と環境への投資余力を創出する「エネルギーDX事業」の3つの事業を展開。「グリーンエネルギー事業」では、非化石証書付きの電力を提供することで、CO2排出実質ゼロを実現している。

e-dash株式会社:
三井物産発ベンチャー企業として誕生し、企業や自治体が電気・ガスなどのエネルギーの請求書をアップロードするだけでCO₂排出量を自動で算出するサービスプラットフォーム「e-dash」をはじめ、開示や排出量削減のコンサルティングも提供。「脱炭素を加速する」をミッションとして掲げてスタートし、カーボンクレジットのマーケットプレイス「e-dash Carbon Offset」や、サプライチェーンのESGデータ収集・分析・アクション実行を支援するサービス「e-dash Survey」などを展開している。

※1 Scope3

知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは

※2 サステナビリティ・リンク・ローン

サステナビリティ・リンク・ローンとは | サステナビリティ・リンク・ローン概要 

※3 Scope2

知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは

※4 CSPさまとの取り組み

GHG排出量の可視化にとどまらず排出削減のアクションに貢献する 

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