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【宮田教授×編集部】編集メンバーがウェルビーイングを感じる瞬間とは?〈中編〉

宮田教授×編集部

座談会前日まで、実は入院していたという博報堂UoCの本橋彩さん。座談会は、「健康×ウェルビーイング」という切り口で話を深めていきます。

専門家の立場からも、「睡眠」「食事」「運動」というベーシックな要素がウェルビーイングな生活にはとても重要と語る宮田教授。そのうえで、「人生100年時代」と叫ばれる昨今の未来観には一つの誤解があると語ります。

【宮田教授×編集部】新メディア Wellulu(ウェルル)のネーミング・ロゴ決定の裏側〈前編〉

ネーミングには、間口が広く幸せな響きを込めたかった 堂上:昨年から博報堂DYグループのメディアエンジン社で準備をしてきたウェルビーイングに関する新しいメディアが.....

【宮田教授×編集部】どれだけ自己決定できているか。意識づけとウェルビーイングの関係性〈後編〉

望まない孤立と、望んだ孤独は、ちがう 堂上:私たちが考えるウェルビーイングには「人とのつながりのなかで幸せになっていく」という考え方がベースにあります。 とすれ.....

病気になって日常の小さなことでも幸せを感じられるようになった

本橋 彩

宮田:昨日までご病気で入院されていたんですね。

本橋:そうなんです。とある病気にかかっていたのですが、入院生活でこれまで「当たり前にできていたことが当たり前じゃないんだ」ってことを強く実感しました。そのとき、「私はなぜ生きているのか」を立ち止まって考えたところ、私の答えは『100歳まで楽しく健やかに生きていきたい』でした。

私は仕事が好きなので、こうして仕事を通じていろいろな人たちに出会えたり、プロジェクトを通じて自己実現することが日々の充実につながっていると感じます。

でも、あくまで幸せに生きるための“手段”でしかないので、この目的と手段を間違えると本末転倒だなって思いますね。

昨日まで入院していたからというのもあるのでしょうが、今はほんのちょっとしたことでも幸せに感じます。極端な話、歩けることとかも。

こうした忙しい日々のなかでは忘れがちな些細な幸せを感じ取れている瞬間が、私なりにはウェルビーイングな状態かなと思います。

堂上:自分が体調を崩したからこそ、余計にそう感じるということだよね。

自分の健康状態に逃げずに向き合うことがウェルビーイングへの第一歩

熊崎 友紀子

堂上:続いて、熊崎さんはどうですか?熊崎さんがウェルビーイングを感じる瞬間は?

熊崎:このテーマで申し訳ないのですが、そもそも普段ウェルビーイングを意識したことがありませんでした。でも、彩さんがご病気になった話を昨年末に聞いて、それをきっかけに自分のウェルビーイングを強く意識するようになったんです。

自分も同じように病気になったとき、どんな風に受け入れればいいのかとか、そもそも病気にならないために今できることはなんだろうとか。

そんなことを考えるようになったためか、この前、人間ドッグを受けたとき、特定の病気に対してすべてのオプションを付けたりして。

堂上:一応、全部チェックしておかないとと思って?

熊崎:「自分にも病気があるかもしれない」と、ネガティブなことに対しても目を背けない姿勢を大事にしようと思ったんです。自分の健康状態に対して、まずはしっかり向き合うことが、私なりのウェルビーイングへの第一歩かなと思います。

堂上:健康に向き合うのは家族のため、それとも自分のため?

熊崎:うーん、どちらかというと自分のためですかね。でも、私には子どももいるので、自分の健康が家族の幸せにもつながっているという感覚はあります。

細川:僕も熊崎さんと同じで子どもや親、そして妻のことを考えると、健康年齢は若いほうがみんなを幸せにできる時間が長くなるなと考えてから、人間ドッグでも全部オプションをつけています。

堂上:へー、やっぱりみんなそのくらい気にしてるんですね。

細川:僕の場合、5年ほど前からコレステロールが高くなったという事情もあります。家系的に同じような傾向があるので注意しているんです。

自分が倒れると、「子どもたちはどうなるんだろう」とか「実家の世話は誰がするんだろう」とか問題が生じるので。自分のためと考えると、僕はあまり動けていなかったのかなと思います。

睡眠・食事・運動の質はウェルビーイングのために欠かせない

熊崎 友紀子/宮田 裕章

堂上:周りをウェルビーイングにするためには、まず自分自身がウェルビーイングでなければなりませんよね。

当然のようでいて、なかなか難しいことかと思いますが、宮田さんは自身がウェルビーイングであるために意識していることはありますか?

宮田:人間はいろいろなものの影響を受けながら日々生きていますから、ずっと同じ状態の人はいません。必ずアップダウンがあります。そして、ダウンのときになし崩し的にネガティブなことが重なって、悪いスパイラルに陥るケースが見られます。

だからこそ、ある程度のアップダウンはあると認めつつも一定で保つ工夫が必要。それでいくと、ベーシックですが「睡眠」「食事」「運動」を見直すのがやっぱり大切です。

堂上:その基本に立ち戻るということですね。

宮田:そうです。これまであらゆるデータを見てきて、結局は「睡眠」「食事」「運動」の質をキープすることがウェルビーイングな暮らしのために重要だということがわかってきています。

あと重要なのが、その行為自体に“喜びを感じるかどうか”ということ。例えば食事でいうと、栄養バランスももちろん大切ですが、おいしいと感じる食事がとれているかも重要なんです。

堂上:確かに、過去の私たちの調査で、「複数人でおいしい食事をとっている人」のほうがウェルビーイングを感じやすいそうなんです。

女性陣2名:へー、そうなんだ!

井口:それは栄養バランスよりも?

堂上:もちろん栄養バランスも大事なんですけど、ウェルビーイングの感じやすさでいうと「みんなでおいしいご飯を食べる」ことが大切。

これはおそらく、おいしい食事が媒介となって人との会話が生まれ、そこから人とのつながりを感じられるからだと思います。だから、おいしい食事を1人で食べるよりは、複数人で食べるほうがいいみたい。

井口:栄養バランスという話とつなげて考えると、「何がおいしい食事なのかカラダで感じながら食事を楽しむ」と結果的に自分に必要な栄養のバランスが取れるのかもね。

「人生100年時代」は誰しもに訪れるわけではない

宮田 裕章

堂上:「人生100年時代の到来」だと叫ばれて久しいですが、宮田さん的には「人生100年時代」をどう捉えているんですか?

宮田:確かにこれからの未来では、平均寿命は伸びる傾向にあるかと思います。でも、この「人生100年時代」の話、世間的な認識と実態に大きなズレがあるなと感じています。

これは私の研究室の研究で明らかになった話なのですが、60歳から100歳までの人の都道府県まるまる1つ分くらいのデータ量で超巨大コホート分析を行なった結果、まず「フレイル」と呼ばれる歩けない状態が続くと一気に死亡率が上がり、その多くが85歳ほどで亡くなってしまうことがわかりました。

では、歩けない状態の「フレイル」になるかならないかをわける大きな分岐点は何かと洞察していくと、100歳まで生きる人は“65歳ごろからずっとよい状態をキープしている傾向が強い”ことが判明したのです。

堂上:だいぶ若い段階からよい習慣を続けることが大切だということですね。

宮田:おっしゃる通りで、「人生100年時代」と聞くとそんなに意識的に努力しなくても、医療技術の進歩によってみんなの寿命が伸びると捉えられている印象を受けます。

しかし、その認識は誤りで、自分の健康について漫然と捉えているだけでは、どこかで健康から転げ落ちてしまうリスクが高い。早い段階からある程度、意識的にウェルビーイングな「睡眠」「食事」「運動」のよい習慣を続けていない人には、残念ながら「人生100年時代」は訪れないかもしれないのです。

1人の時間は必要?「孤立」と「孤独」の違い

細川 剛

堂上:ウェルビーイングな暮らしのためには、持続的な「睡眠」「食事」「運動」の質が重要であることはみんなも一度は聞いたことがあるかなと思います。

でも、我々と同じ20代~40代の人たちにとっては、高齢になったときの自分の健康状態はまだ遠い話題ですよね。

では、私たちのようなライフステージの変化が激しい20代~40代は、どういう瞬間にウェルビーイングを感じるのでしょうか? 細川さん、このあたりどのように思います?

細川:先ほどの健康の話とは別に、「自分にとってのウェルビーイングってなんだろう」と考えると、僕の場合は人とつながっている時間ももちろんそうだけど、その真逆の1人の時間。1人きりになれる時間があることでバランスが取れているなと感じます。

堂上:それは意識的に1人の時間を作ろうとしているの?

細川:そうですね。完全に1人というわけではないでしょうけど、他人にあわせすぎず縛られない、開放的な時間は重要かなって。身体的な側面というより、精神的な側面からそう感じますね。

宮田:「孤立」と「孤独」の違いですね。「孤立」は本人が望んでいないのに1人の状態を指し、これは誰にとってもツラいことですが、「孤独」は……

撮影場所:UNIVERSITY of CREATIVITY

 

後編へ続く

【宮田教授×編集部】どれだけ自己決定できているか。意識づけとウェルビーイングの関係性〈後編〉

望まない孤立と、望んだ孤独は、ちがう 堂上:私たちが考えるウェルビーイングには「人とのつながりのなかで幸せになっていく」という考え方がベースにあります。 とすれ.....

宮田 裕章さん

慶応義塾大学医学部教授。Wellulu アドバイザー

2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士
2025日本国際博覧会テーマ事業プロデューサー
Co-Innovation University 学長候補
専門はデータサイエンス、科学方法論、Value Co-Creation
データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う。
医学領域以外も含む様々な実践に取り組むと同時に、世界経済フォーラムなどの様々なステークホルダーと連携して、新しい社会ビジョンを描く。宮田が共創する社会ビジョンの 1 つは、いのちを響き合わせて多様な社会を創り、その世界を共に体験する中で一人ひとりが輝くという“共鳴する社会”である。

堂上 研さん

Wellulu 編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

井口 雄大さん

Wellulu クリエイティブディレクター、コピーライター

SDGs17ゴールズの日本語版開発をはじめ、クリエイティブ発のサステナビリティ関連業務や新規事業開発に数多く関わる。Welluluではコンセプト、ネーミング開発から参画。

細川 剛さん

Wellulu クリエイティブディレクター、 チーフアートディレクター

SDGsアイコン日本語版開発をはじめ、広告・VI・映像・パッケージ・空間など多岐にわたる分野でデザイン開発・ビジネス開発に従事。Welluluではコンセプト、ロゴ開発、アートディレクション等を担当。

本橋 彩さん

Wellulu 編集部

文化事業プロデューサーとして、大型美術展やコンサート等の企画制作を担当。2020年に開校したUNIVERSITY of CREATIVITYのプロデューサーとして、創造性に纏わるエデュテインメントコンテンツを手がけている。

熊崎 友紀子さん

Wellulu 編集部

14年目のコピーライター/CMプランナー。最近、「Well-being」という言葉をはじめて考えたウェルビーイング初心者。まずは、自分のウェルビーイングになる環境を整えたい。2児の母。

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