ケーブルプレスダウンは、ケーブルマシンの滑車を使ってバーを押し下げることで、上腕三頭筋(二の腕)を集中的に鍛えるトレーニング。ベンチプレスなどの「押す力」の補助になるだけでなく、男性なら太くたくましい腕、女性なら振袖肉のない引き締まった腕を作るために欠かせない種目。
この記事の監修者

三矢 紘駆さん
日本体育大学助教 日体大ボディビル部監督
この記事の検証者

吉田 健二さん
Wellulu編集部
学生時代は運動部に所属。過去にトレーニングの継続を二度挫折したが、6ヵ月前から再びジム通いをスタート。現在は「続けられる筋トレ習慣」をテーマに、週2〜3回の全身トレーニングを中心に実践している。
ケーブルプレスダウンとフリーウェイト種目の違い

ダンベルやバーベルなどのフリーウエイト種目は、重力が真下にしかかからない。そのため、腕を伸ばしきったポジションでは骨で重さを支えてしまい、筋肉への負荷がフッと抜けて「休憩」できてしまう瞬間がある。
一方ケーブルマシンは、動作の全可動域において常にワイヤーが斜め上から引っ張り続けてくれる。腕を伸ばしきっても負荷が抜けず、筋肉が休まる暇がないため、短時間でも強烈な刺激(TUT:緊張持続時間)を与え続けられる。
- ダンベル:上げ切った時や下ろし切った時に、重力の影響で負荷が抜けやすい
- ケーブル:どの角度でも常にワイヤーが引っ張ってくれるため、動作中ずっと負荷がかかり続ける(TUT効果)

監修者:三矢
ケーブルマシンの最大のメリットは、「負荷の抜けにくさ」にあります。ただ一つデメリットを挙げるとすれば、マシンやケーブルの構造上、滑車の摩擦がある分、戻す時(ネガティブ動作)に少し重量が軽くなってしまうことです。筋肥大には「戻す時の負荷」も重要なので、ケーブルに負けてストンと戻さないように、少しゆっくり耐えながら戻すことを意識すると良いでしょう。
ケーブルプレスダウンはどこに効く?

ケーブルプレスダウンは上腕三頭筋にアプローチできる種目。上腕三頭筋は3つの筋肉(長頭・外側頭・内側頭)で構成されている。
- 長頭(ちょうとう)
- 外側頭(がいそくとう)
- 内側頭(ないそくとう)

監修者:三矢
上腕三頭筋の中で一番大きいのは「長頭」です。腕を太くしたいなら、この長頭をしっかり鍛えることが近道ですね。ケーブルプレスダウンでも、フォーム次第で「長頭・外側頭・内側頭」の鍛え分けが可能です。
例えば、長頭を狙うなら脇を締めて、ひじを体側の近くで伸ばす。逆に外側頭を狙うなら、少し脇を開いて内旋気味(手のひらが外を向くような形)で押すと入りやすくなります。自分の目的に合わせて「効く場所」を探してみましょう。
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長頭(ちょうとう)

| 主な役割 | ひじ・肩の伸展に影響する。上腕三頭筋の中で最も大きく、腕のボリューム感を出すのに重要。 |
| 位置 | 上腕の内側・裏側に位置する。肩甲骨から始まり、ひじの骨に付着する。 |
外側頭(がいそくとう)

| 主な役割 | 主にひじ関節の伸展に重要。外から見たときに腕の輪郭を際立たせる筋束。 |
| 位置 | 上腕三頭筋の外側に位置する。上腕骨(じょうわんこつ)から始まり、ひじの骨に付着する。 |
内側頭(ないそくとう)

| 主な役割 | ひじを伸ばす動作を補助し、安定させる役割がある。 |
| 位置 | 上腕三頭筋の深層部にある。長頭と外側頭の内側・下部に隠れるように位置する。 |
ロープかバーか?ケーブルプレスダウンのアタッチメント

ケーブルプレスダウンは、先端の器具(アタッチメント)を変えるだけで効果や使い勝手がガラリと変わる。目的に合わせて使い分けることが重要。
アタッチメント別比較表
| 種類 | 扱える重量 | 収縮感(絞り込み) | 手首への負担 | おすすめの人 |
|---|---|---|---|---|
| EZバー(曲がった棒) | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★☆☆☆☆ | ・高重量を扱いたいが手首が痛い人 ・ストレートバーだと手首に違和感がある人 |
| トライセプスロープ | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ・フィニッシュで強く収縮させたい人 ・筋肉の形(カット)を綺麗に出したい人 |

監修者:三矢
ストレートバーでおこなう方法もありますが、手首が真っ直ぐ固定されるため、どうしても手首(回内動作)がきつくなります。正直、ストレートバーは手首への負担が大きいので、よっぽど手首が柔らかくない限り、個人的にはあまりおすすめしていません。もし痛みが出る場合は無理をせず、EZバーに変えることをおすすめします。
EZバー:手首の負担を減らして安全に行いたい人向け

EZバー(リボルビングカールバー)はハの字に曲がったバー。人間工学的に自然な手首の角度で握れるため、ストレートバーだと手首が痛くなる人でも安全にトレーニングが可能。

検証者:吉田
最初はストレートバーでやっていましたが、重量が上がると手首がキシキシ痛むように…。EZバーに変えたところ、手首のストレスが消えて、純粋に三頭筋だけに集中できるようになりました。

監修者:三矢
手首が硬い人や、腱鞘炎の不安がある人は迷わずEZバー(リボルビングカールバー)を選びましょう。斜めの角度がついているおかげで、手首を痛めずに強く押し込められます。高重量を扱いたいけれどストレートバーだと痛い、という方には一番バランスが良い選択肢です。
トライセプスロープ:手首を回して「収縮感」を最大化したい人向け

トライセプスロープは2本のロープを握るタイプ。動作の最後に手首を外側に開ける(回外させる)ため、上腕三頭筋をギュッと絞り込む「収縮感」を得やすい。

検証者:吉田
バーだと太ももに当たって止まってしまいますが、ロープだと体の横まで引き込めるので、可動域が広いなと感じました。

監修者:三矢
トライセプスロープの良さは「手首の自由度」です。フィニッシュで手首を外側に開く動きを入れることで、三頭筋を強く収縮させられます。手首の自由度が高い分、コントントロールが難しくなるという側面もありますが、筋肉の収縮感をしっかり感じたい時には最適ですね。
ケーブルプレスダウンのやり方・フォーム
▼EZバーでのケーブルプレスダウン
▼ロープでのケーブルプレスダウン
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★☆☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 滑車を顔の高さに設定し、ケーブルの近くに立つ
- ひじを「体側」でロックして支点をつくる
- 手首を固定したまま、ひじを伸ばしきる
| バリエーション | 約3種類 |
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | ジム |
| 器具・設備 | ケーブルマシン |
| 鍛えられる部位 | 上腕三頭筋 |
| 負荷の調整 | 可能 |
STEP1:滑車を顔の高さに設定し、ケーブルに近づく


検証者:吉田
イメージとして、負荷が真下に伸びる感覚でトレーニングすると上腕三頭筋の伸張と収縮を感じやすくなります。

監修者:三矢
滑車の高さは、目線の先ぐらいに設定するのが目安です。また、立ち位置も重要です。マシンから靴2足分くらい後ろに下がって、少しお辞儀をした姿勢を作ると、動作中ずっと負荷が抜けにくくなりますよ。
STEP2:ひじを「体側」でロックして支点をつくる


検証者:吉田
筋トレに基本になりますが、反動をつけないために、しっかりとひじを固定する意識をもってトレーニングした方が効率は高くなります。

監修者:三矢
ひじを固定して行うオーソドックスなフォームが基本です。動作中にひじが動くと負荷が逃げてしまうので、初心者のうちはひじをしっかり固定し、ひじから先だけを動かす意識で行いましょう。
STEP3:手首を固定したまま、ひじを伸ばしきる


検証者:吉田
収縮をしっかりかけられるかどうかが重要なポイント。途中までしかバーやロープを落とせない場合は重量を少し軽くした方がよさそうです。

監修者:三矢
ケーブルプレスダウンは「収縮種目」です。ひじを完全に伸ばしきらないと、せっかくのトレーニング効果が半減することも。特に内側頭は、ひじが完全に伸びた時(完全伸展)に最も強く働きます。重すぎてひじが伸びきらない重量設定は避け、しっかり押し切れる重さを選びましょう。
ケーブルプレスダウンが効かない原因と改善策

ケーブルプレスダウンで「腕じゃなくて肩が疲れる」「重さを上げると身体が浮く」といった悩みは、典型的なNGフォームが原因であることが多い。
- 上体が固定できていない
- 上腕三頭筋をしっかり収縮させる
- 動作が速すぎる
上体が固定できていない

バーを下ろすたびに猫背になって、体重を使って無理やり押してしまうケースがある。これでは三頭筋への負荷が逃げてしまう。
上体は背中を真っすぐで固定し、ひじの伸縮だけでバーを動かすのが正しいフォーム。

検証者:吉田
今まで「重い重量が挙がる=正義」だと思って、体重をかけてガシガシ押していました…。体重をかけずにひじだけで押してみたら、いつもの半分の重さでも二の腕が焼けつくように熱くなりました。

監修者:三矢
体重を乗せてガシャンガシャンと押している人をよく見かけます。上半身は固定して、あくまで「ひじの曲げ伸ばし」だけでバーを動かす意識を持ちましょう。
上腕三頭筋をしっかり収縮させる

ケーブルプレスダウンではひじをしっかり伸ばし切り、上腕三頭筋に収縮をかけることがポイント。また、動作中に肩が耳に近づき、すくんでしまうフォームもよく見られる。首を長く保ち、肩を下げた状態をキープしよう。

検証者:吉田
回数をかさねると可動域がどんどん狭くなります。そのため、しっかり収縮をかけられているか確認しながらていねいに動作した方がよさそうです。また、「肩をストンと落とす」意識をするだけで、三頭筋への入り方が全然違いました。

監修者:三矢
綺麗にやるなら、肩はすくめずに、しっかり下げて行いたいです。肩がすくむと長頭が緩んでしまい、力が入りにくくなります。スタートポジションにつく前に、一度大きく息を吐いて肩を落とし、首を長くするセットアップを意識してください。
動作が速すぎる

ケーブルを戻す動作(ネガティブ)で重りに負けて「ガシャン!」と戻してしまうと、トレーニング効果が半減するだけでなく、肘を痛める原因に。
下ろす時は「1秒」、戻す時は「3秒」かけるリズムを意識し、ケーブルに引っ張られる力に抵抗することが必要。

検証者:吉田
ゆっくり戻すだけで、同じ重量なのにキツさが倍増しました…。特に戻す時の「あと少しで伸び切る」というポイントで力が抜けそうになりますが、そこで我慢すると二の腕がプルプルして効いているのが分かります。

監修者:三矢
ケーブルの特性上、戻す時の摩擦で負荷が少し軽くなります。だからこそ、戻す動作(ネガティブ)は、勢いに任せずゆっくりコントロールして耐えることが重要です。ここを雑にやると、せっかくの負荷が逃げてしまいますよ。
【目的別】ケーブルプレスダウンの重量と回数の目安

重量と回数は、性別や目的に応じて適切な設定が必要。
一般的に、「ギリギリその回数で限界が来る重さ」を選ぶのが基本だが、まずは以下の平均値を参考にスタートしてみるとよい。
| 目的 | 男性(目安) | 女性(目安) | 回数 | セット数 |
|---|---|---|---|---|
| 筋肥大(腕を太く) | 20kg〜30kg | 10kg〜15kg | 10〜15回 | 3セット |
| 引き締め(シェイプ) | 10kg〜15kg | 5kg〜10kg | 15〜20回 | 3セット |
| 筋力アップ | 35kg〜 | 15kg〜 | 6〜8回 | 3〜5セット |
※上記はあくまで目安。マシンのメーカー(滑車の比率)によって実際の重さは大きく異なるため、「回数」を基準に重量を調整する。

監修者:三矢
重量は「最低でも10回はできる重さ」を目安にしましょう。重すぎてひじが伸ばせない、可動域が狭くなるというのは一番もったいないパターンです。15回〜20回できる重さでも十分に効果はあるので、まずはしっかりコントロールできる重量から始めてください。
効果を高める!ケーブルプレスダウンのバリエーション
ワンハンド・プレスダウン
| 難易度 | ★★★★★ |
| 続けやすさ(※1) | ★★☆☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★★☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 滑車を顔の高さに設定し、ケーブルから離れて立つ
- ひじを「体側」でロックして支点をつくる
- 手首を固定したまま、ひじを伸ばしきる

検証者:吉田
ワンハンドで少し後ろの方まで引いてみたら、今まで感じたことのないくらい二の腕の裏側(長頭)がつりそうになりました。両手でやるより断然こっちの方が「効いてる感」がすごかったです!

監修者:三矢
片手で行う最大のメリットは、可動域の広さです。両手では引けない「体の後ろ」までグッと引き込めるので、長頭の収縮をより強く出すことができます。ただし、片手で行うと体が回旋しやすくなる(体がねじれてしまう)ので、上半身をしっかり固定して、正面を向いたまま行うように注意してください。
ケーブルプレスダウンに関するQ&A
Q. 肘が痛くなる原因と対処法は?
A: 腱への負担が主な原因

監修者:三矢
ケーブルプレスダウン中に肘が痛くなる場合、多くは「三頭筋の腱」に負担がかかっている可能性があります。肘を開く角度を変えたり、立ち位置を調整して痛くないポジションを探してみてください。それでも痛い場合は、関節が摩耗している場合もあるので、無理せず休むのが一番です。
Q. 順手(オーバー)と逆手(リバース)、どっちが二の腕に効く?
A: 目的による使い分けが正解

監修者:三矢
どちらも二の腕(上腕三頭筋)に効きますが、ターゲットが微妙に異なります。順手は高重量を扱えるため、腕全体のボリュームアップに向いています。逆手(リバース)は脇が締まるため、「外側頭(外のライン)」や「内側頭」に局所的に効かせやすく、引き締めやカット出しに向いています。
Q. 毎日やってもいい?(頻度について)
A: 効率を重視するなら「週2回」がベスト

監修者:三矢
筋肉痛がなければ毎日行っても問題ありませんが、効率を考えるなら「中2〜3日(週2回程度)」がベストです。上腕三頭筋はベンチプレスなどの他の種目でも使われるため、疲労が溜まりやすい部位です。しっかり休ませることで、次回より重い重量を扱えるようになり、結果的に成長が早まります。
















2024年日本体育大学大学院体育科学研究科博士課程修了。博士(体育科学)。日本体育大学体育研究所助教であり、同学のボディビル部にて監督およびボディビルクラブ代表を務める。2024年におこなわれた第38回東京クラス別ボディビル選手権大会では、ミスター75kg以下級にて優勝。
【資格】
NSCA-CSCS