
大胸筋上部は鎖骨下のボリュームと輪郭を決め、胸全体の立体感と上向きのシルエットをつくる。この記事では、大胸筋上部が伸びない原因を整理しながら、筋力アップにおすすめの種目を紹介。
この記事の監修者

三矢 紘駆さん
日本体育大学助教 日体大ボディビル部監督
この記事の検証者

吉田 健二さん
Wellulu編集部
学生時代は運動部に所属。最近になってジム通いをスタート。実体験を踏まえて、初心者・ブランク明けでも再現しやすいメニューや、続けやすい負荷設定・時間配分に強い関心を持つ。今回の検証では「正しいフォームをどれだけ早く身につけられるか」「ひじや手首への負担を避けつつ効かせられるか」「自宅でも続けられるか」を基準に評価
「大胸筋上部の筋トレ」の検証ポイント
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【難易度】 トレーニングレベルに関わらず、正しいフォームを習得できるか?
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【継続性】 数ヶ月継続して実践できる種目なのか?
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【負荷】 初心者はどれくらいの回数・重量が適切か?
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大胸筋上部の役割
大胸筋上部は、胸の形を整えるだけでなく、日常生活やスポーツ動作にも大きく関わる重要な部位。上部をしっかり鍛えることで胸全体に厚みと立体感が出て、鎖骨周りのラインがシャープになる。
また、胸全体の筋肉量が増えることで基礎代謝の向上につながり、スポーツではボールを上に投げる・押し出す動作などが強化される。
主な役割 | 物を押す、胸の高さより高い位置にあるものを持ち上げるなど、肩関節の動きに大きく関与している |
位置 | 鎖骨の下に位置する。 |

監修者:三矢
大胸筋上部は見た目のバランスを整えるだけでなく、日常の動作をスムーズにし、肩まわりの安定性を高める役割も果たします。ボディメイクを目的とする人だけでなく、スポーツパフォーマンスの向上や肩の健康を意識する人にとっても、意識して鍛える価値の高い部位です。
大胸筋上部が大きくならない原因
大胸筋上部が思うように大きくならないのには、いくつか共通する理由がある。ここではよく見られる4つの原因を紹介。
- トレーニング種目の偏り
- 可動域とフォームの問題
- 間違った負荷設定
- 身体的要因と姿勢
トレーニング種目の偏り
胸のトレーニングといえばベンチプレスや腕立て伏せなど、フラットポジションの種目を中心におこなっている人が多い。上部に特化して発達させるには、インクラインベンチプレスやインクラインダンベルプレスといった、角度をつけた種目を取り入れる必要がある。

検証者:吉田
フラットベンチの方が重量を扱える点や上部種目は「効いているのか実感しづらい」ことがネック。そのせいか、トレーニング中盤や終盤の疲労が溜まった頃にインクライン種目を取り入れるようになっていました。

監修者:三矢
インクライン種目は最初は重量が落ちやすく、効いている感覚をつかみにくい人も一定数いるかもしれません。まずは軽めの重量から始め、動作中に「鎖骨の下あたりへ効かせる意識」を持つと感覚が出やすくなります。また、大胸筋上部を集中的に鍛えたい場合は、最初にインクライン種目を組み込むと取り組みやすくなります。
可動域とフォームの問題
正しいフォームで動作できていないと、狙った部位に刺激が入らない。
ひじを開きすぎたり、バーやダンベルを下ろす位置を間違っていると、上部への負荷が逃げてしまう。肩甲骨を寄せ、鎖骨の高さに向かって押し出す軌道を意識することで、上部に刺激が入りやすい。

検証者:吉田
最初の頃はダンベルを下げる位置が浅く、ただ上下に動かしているだけになっていました。ひじの角度や下ろす位置が曖昧で、結果として肩に負担が偏ってしまうことがありました。

監修者:三矢
フォームが安定しない場合は、動画などで確認しながら「鎖骨の高さに下ろす」イメージを繰り返すと改善しやすいです。ダンベルの場合は可動域を意識しやすいため、最初はフラットではなくインクラインの軽重量ダンベルプレスから習得するのもおすすめです。
間違った負荷設定
重量が重すぎるとフォームが崩れ、反動を使った動作になりやすい。逆に軽すぎると筋肉への刺激が不足し、成長が停滞する。大胸筋上部を狙うなら、8〜12回をギリギリこなせる重量が理想的。
正しい負荷設定を行うことで、筋肉が刺激に適応し、次第に厚みが増していく。

検証者:吉田
重い重量に挑戦したときは、どうしても反動で押してしまい、上部ではなく肩や腕が先に疲れてしまいました。逆に軽すぎると「効いている感じ」がなく、続けても効果に疑問を感じることがありました。

監修者:三矢
「効いている感覚が弱い=重量が合っていない」可能性があります。正しい重量設定を見つけるために、まずは10回前後でしっかり効く重さを選びましょう。
身体的要因と姿勢
猫背や巻き肩など、普段の姿勢が悪いと大胸筋上部が収縮しにくくなる。
肩が内に入った状態では可動域が狭まり、十分に胸を開けないため、トレーニング効果が半減する。背中や肩のストレッチ、姿勢改善のエクササイズを取り入れると、上部が使いやすくなり成長しやすい状態になる。

検証者:吉田
普段から姿勢が悪く、胸を張る動作が苦手でした。ストレッチや肩回りの動きを取り入れるようになってからは、胸を開く感覚が少しずつ身について、フォームも安定してきたように感じます。

監修者:三矢
胸郭や肩周りが硬い人は、トレーニング前に軽い重量でアップする方法もおすすめです。肩甲骨を下げる意識がつきやすくなり、結果的に上部に効かせられるようになります。
大胸筋上部を鍛えるメリット
大胸筋上部は鍛えることで見た目が変わるだけでなく、スポーツや日常生活の動き、さらには代謝や健康面にもよい影響をもたらす。ここではその代表的なメリットを紹介する。
- 【ボディメイク】胸に厚みがでる
- 【パフォーマンス】筋トレ・スポーツ能力の向上
- 【ダイエット】基礎代謝の向上
【ボディメイク】胸に厚みがでる
大胸筋上部が発達すると、鎖骨の下に厚みが出て胸が立体的に見える。Tシャツやジャケットを着たときに胸元が引き締まり、スタイルが良く見える効果がある。中部や下部だけを鍛えていると胸が垂れた印象になりやすいため、上部をしっかり鍛えることで全体のバランスが整い、均整の取れた胸板になる。

監修者:三矢
大胸筋上部を発達させると、胸板全体が立体的に仕上がります。インクライン種目で肩の負担を減らすためには、角度を30〜45度に調整し適切なフォームで取り組むことがポイントになります。
【パフォーマンス】筋トレ・スポーツ能力の向上
大胸筋上部は腕を前方や斜め上に押し出す動作に大きく関与する。
鍛えることでベンチプレスやダンベルプレスなどのプレス系種目の記録が伸びやすくなるほか、野球やバレーボールなどの投球・スパイク動作、格闘技やラグビーの押し込み動作でも力を発揮しやすくなる。

監修者:三矢
種目の記録アップやスポーツパフォーマンス向上に効果が出るまでには、中長期的なトレーニングが必要になってきます。インクライン種目だけでなく、全身のバランスを踏まえてトレーニングするようにしてください。
【ダイエット】基礎代謝の向上
胸は上半身の中でも面積が広く、大胸筋は大きな筋肉群のひとつ。
上部を含めてしっかり鍛えることで筋肉量が増え、基礎代謝が向上する。結果として脂肪が燃焼しやすい身体になり、同じ運動量でもエネルギー消費が高くなる。ダイエット中でも筋肉を残しながら体脂肪を減らしたい人にとって、大胸筋上部を鍛えることは効率的なアプローチといえる。

監修者:三矢
大胸筋は体の中でも大きな筋肉群です。上部だけでなく大胸筋全体・背筋も踏まえて鍛えることで基礎代謝アップは期待できます。胸に厚みを出しつつ背中や下半身も同時に鍛えることで、消費カロリーが増えやすくなります。
【自重】大胸筋上部を鍛える筋トレ3選
- デクラインプッシュアップ
- リバースグリッププッシュアップ
- ヒンズープッシュアップ
デクラインプッシュアップ
難易度 | ★★★☆☆ |
続けやすさ(※1) | ★★★★☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★★☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 足を台やイスに乗せて手を床につく
- 手は肩幅よりやや広めに置く
- 胸が床に近づくまでひじを曲げる
- 胸と腕を意識しながら押し上げる
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅 |
器具・設備 | 特になし |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部、三角筋前部、上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 不可 |
- 手の真上にひじを保ったまま胸を落とす
- 腰は一直線の状態をキープする
手の真上にひじを保ったまま胸を落とす
腰は一直線の状態をキープする

検証者:吉田
足を台に乗せると負荷が強くなる一方で、疲れてくると腰が落ちて逆に下部へ効きにくくなりました。腹圧を意識し続けることで、体幹も安定しやすくなりました。

監修者:三矢
腰が落ちやすい人は、まず台の高さを低めに設定するとフォームが安定しやすくなります。頭ではなく胸を床に向けるイメージを持つことで、大胸筋上部に的確に刺激を届けられます。
リバースグリッププッシュアップ
難易度 | ★★★★☆ |
続けやすさ(※1) | ★★★★☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★☆☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- 手のひらを逆向き(指先を足側に向ける)にして床に置く
- 手は肩幅程度に開き、足を後方に伸ばして腕立て伏せの体勢を取る
- 胸が床に近づくまでひじを曲げる
- 大胸筋を意識して押し上げる
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅 |
器具・設備 | 特になし |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 不可 |
- 指先は足に向ける
指先は足に向ける

検証者:吉田
手のひらを後ろに向けるだけで肩や手首への負担が大きく、数回でフォームが崩れてしまいました。特に慣れていないと指先に力が入らず、支えが不安定になりやすいです。

監修者:三矢
この種目は手首の柔軟性が不足していると安定が取りにくくなります。慣れないうちは無理をせず取り組むようにしましょう。また、上腕三頭筋にも強い刺激を得られます。
ヒンズープッシュアップ
難易度 | ★★★★☆ |
続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★☆☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- お尻を高く上げ、逆V字姿勢を作る
- ひじを曲げながら、上体を前方・下方へ滑り込ませる
- 胸を床近くまで下げる
- 胸を張りながら上体を反らすように押し上げる
- 再び逆V字姿勢に戻る
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅 |
器具・設備 | 特になし |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 不可 |
- 逆V字になるように腰を曲げる
- 頭から床に近づける
逆V字になるように腰を曲げる
頭から床に近づける

検証者:吉田
逆V字姿勢から前方へ滑り込む動作が難しく、体重を腕だけで支えてしまい肩に力が入りがちでした。呼吸も止まりやすく、全身を連動させる意識を持たないとスムーズにできませんでした。

監修者:三矢
滑り込む動作では腕だけに頼らず、股関節から体を前方へ移動させるイメージを持つことが大切です。動作を通して呼吸を止めず、吸いながら下ろし吐きながら押すリズムを意識することで、スムーズに大胸筋に効かせられます。
- お尻を高く上げ、逆V字姿勢を作る
- ひじを曲げながら、上体を前方・下方へ滑り込ませる
- 胸を床近くまで下げる
- 胸を張りながら上体を反らすように押し上げる
- 再び逆V字姿勢に戻る
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅 |
器具・設備 | 特になし |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 不可 |
- 逆V字になるように腰を曲げる
- 頭から床に近づける
逆V字になるように腰を曲げる
頭から床に近づける

検証者:吉田
逆V字姿勢から前方へ滑り込む動作が難しく、体重を腕だけで支えてしまい肩に力が入りがちでした。呼吸も止まりやすく、全身を連動させる意識を持たないとスムーズにできませんでした。

監修者:三矢
滑り込む動作では腕だけに頼らず、股関節から体を前方へ移動させるイメージを持つことが大切です。動作を通して呼吸を止めず、吸いながら下ろし吐きながら押すリズムを意識することで、スムーズに大胸筋に効かせられます。
【ダンベル】大胸筋上部を鍛える筋トレ2選
- インクラインダンベルプレス
- インクラインダンベルフライ
インクラインダンベルプレス
難易度 | ★★★☆☆ |
続けやすさ(※1) | ★★☆☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★★★☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ベンチを起こし、両手にダンベルを持つ
- 胸の横あたりでダンベルを構える
- ひじを曲げてダンベルをゆっくり下ろす
- 大胸筋上部を意識しながら真上に押し上げる
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | トレーニングベンチ、ダンベル |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 可能(ダンベルで調整) |
- ダンベルは肩甲骨の真上にセットする
- ベンチのイスを上げる
ダンベルは肩甲骨の真上にセットする
ベンチのイスを上げる

検証者:吉田
ベンチ角度をいろいろ変えて試しましたが、角度が高過ぎる(60~90度)と肩に効いてしまい、狙った上部に効かせにくくなりました。30~40度くらいの角度が最適です。

監修者:三矢
角度は30度を基本とし、肩に違和感が出やすい人は浅めに設定するとよいでしょう。ひじは胸のラインを意識して下ろし、下げすぎないことが重要です。胸を張って押し上げるイメージを持てば、大胸筋上部をしっかり狙えます。
インクラインダンベルフライ
難易度 | ★★★★☆ |
続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★☆☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ベンチを起こし、両手にダンベルを持つ
- ダンベルを手のひらを向かい合わせるように構える
- ひじを軽く曲げたまま、弧を描くように両腕を開く
- 大胸筋の伸びを感じたら、元の位置に戻す
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 高い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | トレーニングベンチ、ダンベル |
鍛えられる部位 | 大胸筋 |
負荷の調整 | 可能(ダンベルで調整可能) |
- ダンベルは肩甲骨の真上にセットする
- ベンチのイスを上げる
ダンベルは肩甲骨の真上にセットする
ベンチのイスを上げる

検証者:吉田
腕を広げるときにダンベルが下がりすぎて、肩に強いストレスがかかる感覚がありました。また、負荷を感じやすい分、動作を速くしてしまいがちで、ストレッチ感が弱まってしまうことも。

監修者:三矢
ダンベルフライはストレッチ局面に強く効く種目なので、重すぎる重量は避け、コントロールできる範囲で行うことが大切です。ひじを軽く曲げたまま弧を描き、胸の張りをキープしながらゆっくり動作することで、しっかり伸張刺激を与えられます。
【ケーブル・バーベル】大胸筋上部を鍛える筋トレ3選
- ローケーブルクロスオーバー
- インクラインベンチプレス
- オーバーヘッドプレス
ローケーブルクロスオーバー
難易度 | ★★★★★ |
続けやすさ(※1) | ★☆☆☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★★★☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ケーブルマシンのプーリーを低い位置にセットする
- ハンドルを握り、胸を張って前方に一歩踏み出す
- 両腕を斜め上に持ち上げる
- 大胸筋下部を意識しながらゆっくり元に戻す
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 高い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | ケーブルマシン |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 可能(プレートで調整可能) |
- 胸の高さまでしっかり上げる
- 腰はまっすぐの状態をキープする
胸の高さまでしっかり上げる
腰はまっすぐの状態をキープする

検証者:吉田
プーリーを低くすると上向きに引く意識が強くなりますが、回数が進むほど肩がすくみやすく、狙いが三角筋に流れやすいと感じました。左右の張力差があると軌道がブレて、フィニッシュで胸の中央に集める感覚を失いやすかったです。

監修者:三矢
軌道を安定させ、ひじは軽く曲げた角度を固定しましょう。フィニッシュで手をわずかに重ねるか、親指同士を近づけて1秒静止。正しいフォームでていねいにトレーニングするようにしましょう。
インクラインベンチプレス
難易度 | ★★★☆☆ |
続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★★★★ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- インクラインベンチに仰向けになる
- バーベルを肩幅よりやや広めに握る
- 大胸筋上部を意識して胸の上部に向かってバーベルを下ろす
- 反動を使わず真上に押し上げる
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 高い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | バーベル |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋・上腕三頭筋 |
負荷の調整 | 可能(プレートで調整可能) |
- 前腕は床に対して垂直をキープする
前腕は床に対して垂直をキープする

検証者:吉田
ベンチの角度を上げることで上部に入る実感は出ましたが、重さを追うとひじが下がって肩の前側に張りが逃げやすかったです。肩甲骨の位置が甘いと、下ろしの最下点で胸にうまく乗らない感覚がありました。

監修者:三矢
ベンチの角度は30度程度を基本に、違和感があれば浅めからにしましょう。前腕は床と垂直を保ったままで、バーベルを押し上げるように注意してください。右腕はできているけど、左腕はできていないケースなど、左右差がでる人もいます。
オーバーヘッドプレス
難易度 | ★★★★★ |
続けやすさ(※1) | ★☆☆☆☆ |
トレーニング効率(※2) | ★★★☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ダンベルまたはバーベルを肩の高さで構える
- 足を肩幅に開き、背中をまっすぐに保つ
- ひじを伸ばして頭上に押し上げる
- ゆっくりと元の位置に戻す
バリエーション | 約1種類 |
ケガのリスク | 高い傾向 |
実施できる場所 | ジム |
器具・設備 | バーベル |
鍛えられる部位 | 大胸筋上部・三角筋 |
負荷の調整 | 可能(プレートで調整可能) |
- 腰は真っすぐの状態をキープする
腰は真っすぐの状態をキープする

検証者:吉田
重くなるほど腰が反り、胸を突き出して持ち上げてしまいました。肩の可動域が足りない日はバーの通り道が前に流れ、手首が痛みやすかったです。フォームを習得できていない状態だと、三角筋の疲労が先に来て胸上部を使っている感覚は得にくかったです。

監修者:三矢
主働は三角筋で胸上部は補助です。お腹を軽く引き込み、お尻を締めることで腰の反りを抑え、バーは体の近くをまっすぐ頭上へ持ち上げるようにしましょう。
大胸筋上部を鍛える筋トレメニュー例
腕立て伏せは手幅や足の高さを変えるだけで、大胸筋のどの部位に効かせるかを調整できる。器具がなくてもできるため、自宅トレーニングのバリエーションとして取り入れやすい。
ジムでは、ダンベルやトレーニングベンチなどの器具を用いたトレーニングをおこなうことで、より集中的に大胸筋上部を鍛えることができる。
自宅とジムをうまく使い分ければ、効率的に胸の厚みと立体感をつくり出せる。
- ジムで鍛える場合
- 自宅で鍛える場合
ジムで鍛える場合
ジムではインクライン系の種目を中心にすると上部を集中的に鍛えやすい。プレス系で重量を扱い、フライでストレッチを効かせ、最後にダンベルプレスで大胸筋全体のボリュームをつける流れがおすすめ。
インクライン種目の順番例
①インクラインベンチプレス | 高重量を扱いやすく、大胸筋上部をメインに、肩や腕にも刺激が入る。 |
②インクラインダンベルフライ | 大胸筋上部をストレッチさせながら収縮させることができ、形を整えるのに適している。 |
③ダンベルプレス | 上部だけでなく、大胸筋全体のバランスを整えるためにフラットベンチでのプレス種目を。 |

検証者:吉田
ジムでは「インクラインベンチプレス→インクラインダンベルフライ→ダンベルプレス」の順で行うと、最初の高重量で上部にスイッチが入り、フライでストレッチ感が強まり、最後のプレスで全体の張りが一気に増す流れが作れました。角度は30〜45度の間で微調整すると肩への違和感が減り、鎖骨下に狙いどおり効く感覚が出やすかったです。
自宅で鍛える場合
自宅では足の高さや手幅を変えることで負荷を調整できる。デクラインで上部を狙い、ワイドで胸全体を広く刺激し、最後に基本のプッシュアップで仕上げる流れがおすすめ。
プッシュアップ種目の順番例
①デクラインプッシュアップ | 足をイスや台に乗せて行う腕立て伏せ。体を傾けることで重心が上部にかかり、大胸筋上部への負荷が強まる。 |
②ワイドプッシュアップ | 手幅を肩幅より広めにとる腕立て伏せ。胸全体を狙う。 |
③プッシュアップ | 基本となる動作でも、胸の張り方や体の角度を意識すれば上部にも刺激を入れることが可能。追い込み種目として最後に入れる。 |

検証者:吉田
自宅の「デクライン→ワイド→ノーマル」は、台の高さで効きが大きく変わり、足を上げすぎると肩に入りやすいことを実感しました。ワイドとノーマルを続けるとフォームが雑になりがちなので、呼吸を整えてテンポを落とすと最後まで上部への張りを保てました。
大胸筋上部を効果的に鍛えるコツ
大胸筋上部をしっかり発達させるには、ただトレーニングするだけでなく、刺激が入りやすい環境を整えることが大切だ。ここでは上部狙いの効果を高めるためのポイントを紹介する。
- 角度を意識する
- トレーニングメニューの最初に入れる
- 適切な回数と頻度でおこなう
角度を意識する
大胸筋上部は、腕を斜め上方向に押し出す動作で強く使われる。ベンチを30〜45度に設定してダンベルプレスやダンベルフライをおこなう、腕立て伏せで足を高くするなど、動作の角度を工夫すると上部に負荷が集中する。
角度がつきすぎると肩への負担が増えるため、違和感のない範囲で調整することが大切。

検証者:吉田
ベンチ角度を15→30→45度と変えて試したところ、30〜45度で鎖骨下あたりの張りが強く出ました。45度だと上部にしっかり入る一方、肩の前側にストレスを感じやすかったです。重量よりも“胸で押す感覚”をつかみやすい角度を優先したほうがよさそうです。

監修者:三矢
ベンチの角度は重要で、目安は30〜45度です。開始前に肩甲骨を軽く寄せて下げ、胸を高く保ったまま、ひじを落とし・鎖骨の上に押し返す軌道を意識しましょう。
トレーニングメニューの最初に入れる
上部は大胸筋の中でも比較的弱くなりやすい部位。疲労がたまると狙い通りに動かしにくくなるため、トレーニングメニューの最初にインクライン系の種目を入れるとよい。
フレッシュな状態で行うことで、しっかりと上部に刺激を届けられる。

検証者:吉田
序盤にやるとしっかり大胸筋上部に効いている感覚はありました。しかし、トレーニング終盤に取り組むと、疲労が溜まっているせいか肩や上腕三頭筋に負荷が逃げやすくなりました。疲れてくると、胸で押す感覚よりも腕で持ち上げる意識になりやすかったです。

監修者:三矢
狙いたい部位は、身体が元気な状態でおこなうのがおすすめです。インクラインで上部を狙ったあとにフラット(中部)→デクライン(下部)と広げると、大胸筋がバランスよく仕上がりやすくなります。上部だけに偏らず、胸全体を意識して取り組むようにしましょう。
適切な回数と頻度でおこなう
8〜12回で限界がくる重量を選び、2〜3セット行うのが筋肥大に適している。
頻度は週2〜3回が目安で、同じ部位を毎日追い込むと回復が追いつかず逆効果になる。しっかり休養日を設けて超回復を促すことで、より厚みのある胸に成長しやすい。

検証者:吉田
8〜12回×3セットの目安だと、自分は片手13kgでした。初心者として軽めですが、テンポを落としてていねいに動かすと上部にしっかり効きました。無理に重くするとフォームが乱れて肩にきます。

監修者:三矢
筋肥大なら“8〜12回で限界”を再現できる負荷で2〜3セット、週2回が目安です。正しいフォームとスピード管理を意識して取り組むことで、刺激が十分に入ります。
大胸筋上部を鍛えるときの注意点
大胸筋上部は角度のある種目が多いため、フォームや負荷設定を誤ると肩や肘を痛めやすい。安全かつ効果的に鍛えるためには、次のポイントを意識する必要がある。
- 反動をつけない
- 肩関節への負担を減らす
- 負荷の偏りを避ける
反動をつけない
重量が重すぎると、体を反らしたり勢いをつけて持ち上げる癖が出やすい。反動を使うと狙った部位に負荷が乗らず、肩や腰にストレスがかかる原因になる。動作は常にコントロールし、下ろすときは2〜3秒かけてゆっくり行うと、筋肉への刺激が最大化される。

検証者:吉田
後半の疲労時や設定重量を上げすぎた日ほど、つい体を反らして勢いで上げてしまいました。結果として胸より肩と腰に張りが出やすく、狙いがブレました。

監修者:三矢
反動は肩・腰のトラブル要因になります。セット中は“下ろし2〜3秒・1秒止める・上げ1〜2秒”の目安で一定テンポを守り、毎レップ同じ軌道を反復しましょう。
肩関節への負担を減らす
インクライン種目は肩の前側に負荷がかかりやすい。
ひじを開きすぎたり、ベンチ角度を立てすぎると肩のケガにつながるリスクが高まる。ベンチ角度は30〜45度に設定し、前腕は地面と垂直な状態で押し出すと手首や肩関節への負担を減らせる。

検証者:吉田
ひじを開きすぎたフォームでやると肩の前が突っ張る感じが強く、翌日に違和感が残りました。ベンチ角度を立てすぎたときも同じでした。

監修者:三矢
肩を守るには、ベンチ30〜45度・前腕は床に垂直・ひじの真上に手首が来るラインを意識しましょう。開始前に肩甲骨を寄せて下げ、肩がすくまない状態を作ってからセットするとフォームが安定しやすくなります。
負荷の偏りを避ける
胸の上部だけを集中的に鍛え続けると、肩や背中とのバランスが崩れ、姿勢不良の原因になる。中部や下部、背中や三角筋後部も合わせて鍛えることで、胸郭全体のバランスが整い、ケガの予防にもつながる。週ごとにメニューをローテーションし、全体のバランスを意識して計画を立てるとよい。

検証者:吉田
インクライン種目ばかり続けると、肩前の張りを強く感じました。フラット種目やデクライン種目、背中種目も取り入れたほうが身体のバランスは整いやすかったです。

監修者:三矢
上部に集中してトレーニングするのもよいですが、中長期的には中部・下部とセットで計画することが安全かつ効率的です。
大胸筋上部に関するQ&A
大胸筋上部・中部・下部で鍛えやすい部位と鍛えにくい部位は?
A:中部が一番鍛えやすい。

監修者:三矢
一般的に一番鍛えやすいは大胸筋中部です。ベンチプレスや腕立て伏せなどの基本種目でも上部・下部にも負荷は入りますが、中部に刺激が集中しやすくなります。下部はディップスやデクライン種目(デクラインダンベルプレスなど)で比較的刺激を入れやすいのが特徴です。
大胸筋上部の外側と内側で分けて鍛えられる?
A:大胸筋上部、かつ外側と内側で分けるのは難しい。

監修者:三矢
大胸筋は1枚の大きな筋肉であり、外側と内側を完全に分けて鍛えることは難しいです。ただ、動作の軌道やグリップ幅を変えることで、刺激がやや内側・外側に偏ることはあります。
2024年日本体育大学大学院体育科学研究科博士課程修了。博士(体育科学)。日本体育大学体育研究所助教であり、同学のボディビル部にて監督およびボディビルクラブ代表を務める。2024年におこなわれた第38回東京クラス別ボディビル選手権大会では、ミスター75kg以下級にて優勝。
【資格】
NSCA-CSCS