
前腕を鍛えることで、スポーツ時のパフォーマンス向上やたくましい腕づくりにつながる。この記事ではダンベルで前腕を鍛えるメリットをはじめとし、ダンベルを使用したトレーニングメニューや他の器具を用いたトレーニング、目的別の回数の目安などを紹介していく。
この記事の監修者
関根 綾さん
パーソナルジムDecision 代表トレーナー
前腕とは?ダンベルで鍛えられる部位

筋トレとしての優先度は低いが、スポーツパフォーマンスに影響する
ベンチプレスやデッドリフトなどでバーベルをホールドする際に、前腕の筋肉も一緒に鍛えられています。そのため、筋肉量アップや代謝改善としてトレーニングしている方からすれば、優先度の低い種目です。
ただ、ゴルフ・野球・柔道などのアスリートは、パフォーマンスに影響してくるためおすすめの種目になります。
前腕屈筋群(ぜんわんくっきんぐん)
主な役割 | 手首を内側に曲げたり・指を握り込む動作に関係。日常生活ではモノを握る・重いモノを持つ際に影響する。 |
位置 | 手のひら側に位置。 |
構成筋肉 | 円回内筋(えんかいないきん)・撓側手根屈筋(とうそくしゅこんくっきん)・長掌筋(ちょうしょうきん)・尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん)など |
前腕伸筋群(ぜんわんしんきんぐん)
主な役割 | 手首を外側に反らせたり、指を伸ばす動作に関係。日常生活ではボールを投げる・押し出す動作などに影響する。 |
位置 | 手の甲側に位置する。 |
構成筋肉 | 腕橈骨筋(わんとうこつきん)・長橈側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)・短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)・総指伸筋(そうししんきん)など |
前腕をダンベルで鍛える3つの効果
- 左右のバランスを調整できる
- 自宅で手軽にトレーニングできる
- 負荷を調整しやすい
左右のバランスを調整できる
ダンベルを使ったトレーニングでは片手ずつ負荷をかけることができるため、左右の筋力バランスを調整するのに適している。とくに、日常生活やスポーツでは利き手側が優位に働く場面が多く、利き手とは逆の筋力が不足しがちになる。左右の筋力差が大きくなると、手首の安定性が損なわれ、怪我のリスクが高まる可能性も。
筋力の左右差が気になる場合は、リストカールやリバースリストカールを片手ずつおこない、それぞれの筋力に応じた適切な負荷を与えよう。
自宅で手軽にトレーニングできる
ダンベルを使った前腕トレーニングは特別な設備を必要とせず、自宅でも簡単に取り組めるのが大きなメリット。ジムに通う時間がない場合でも、限られたスペースで効率的に鍛えることができるため、初心者から上級者まで継続しやすい。
また、軽めのダンベルを用いたトレーニングなら、リモートワークの合間やテレビを見ながらでも取り組めるため、運動習慣を身につけるのにも適している。ダンベルさえ用意すれば、時間や場所を問わずに前腕を鍛えられるため、忙しい人にもおすすめのトレーニング方法となる。
負荷を調整しやすい
ダンベルは重量を細かく調整できるため、トレーニングの強度を自分のレベルに合わせて設定しやすい。前腕の筋肉は比較的小さな筋群のため、過剰な重量を扱うと手首への負担が大きくなり、怪我につながる可能性がある。
初心者は軽めの重量から始め、動作をコントロールしながら筋肉の使い方を習得することが大切。いきなり重いダンベルを使うと手首が不安定になり、適切なフォームを維持するのが難しくなる。軽い重量で正しいフォームを身につけた後、徐々に重量を増やしていくことで、無理なく負荷を高めることができる。
【バーベルやケーブル】他器具と比較
器具名 | ポイント |
バーベル |
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ケーブルマシン |
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ハンドグリッパー |
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ダンベルで前腕を鍛える筋トレ5選
- ダンベルリストカール
- ダンベルリバースリストカール
- ラジアルフレクション
- プロネーション(スピネーション)
- ダンベルホールド(ダンベルピンチ)
ダンベルリストカール
- 手のひらが上を向くようにダンベルを持ち、ベンチなどに前腕を乗せて固定
- 手首を屈曲させて、ゆっくりダンベルを持ち上げる
- ゆっくりとダンベルを下ろし、元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル・イス |
鍛えられる部位 | 前腕屈筋群 |
負荷の調整 | 可能 |
ダンベルリバースリストカール
- 手の甲が上をむくようにダンベルを持ち、ベンチなどに前腕を乗せて固定
- 腕を固定したまま、手首を伸展させダンベルを上に上げる
- ゆっくりとダンベルを下ろし、元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル・イス |
鍛えられる部位 | 前腕伸筋群 |
負荷の調整 | 可能 |
ラジアルフレクション
- 親指側が前を向くようにダンベルの端を持つ
- ダンベルの先端が円を描くように前方にゆっくり引き上げる
- 床と平行になるくらいまで持ち上げたら、ゆっくりと元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル |
鍛えられる部位 | 前腕の外側 |
負荷の調整 | 可能 |
プロネーション(スピネーション)
- 手のひらが上を向いた状態でダンベルの端を持ち、ベンチなどで前腕を固定
- 手首を返すようにして、ダンベルを持ち上げる
- ダンベルが床と垂直になるまで持ち上げたら、ゆっくりと元の位置に戻す
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル・イス |
鍛えられる部位 | 円回内筋(えんかいないきん)・方形回内筋(ほうけいかいないきん) |
負荷の調整 | 可能 |
ダンベルホールド(ダンベルピンチ)
- ダンベルの端を持ち、ひじを伸ばした状態で保持する
- 握力がもつまでキープし続ける
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | ダンベル・イス |
鍛えられる部位 | 指の屈筋群・前腕屈筋群 |
負荷の調整 | 可能 |
前腕を効率的に鍛える3つのポイント
- 手首を固定してトレーニングする
- 反動を使わずにゆっくりおこなう
- 腕関連のトレーニングの最後におこなう
手首を固定してトレーニングする
手首の位置を固定しひじから先の動作に集中することで、前腕の筋肉に効率的な刺激を与えることが可能に。
前腕を固定する際は太ももの上などでも大丈夫だが、ベンチや台にのせた方が安定した動作につながる。固定することで、余計な反動や体の揺れを防止し、目的の筋肉への集中的な刺激を実現できる。
反動を使わずにゆっくりおこなう
反動を使用せずゆっくりとした動作で実施することで、前腕の筋肉に効果的な刺激を与えることが可能に。上げる・下げる動作の目安は3秒程度。
スピードをしっかりコントロールすることで、筋肉への負荷が増大し効果的な筋力アップにつながる。
腕関連のトレーニングの最後におこなう
前腕は上腕二頭筋や上腕三頭筋のトレーニングでも使用するため、最後に実施することで効率的な刺激が可能になる。先に前腕をトレーニングしてしまうと、疲労のため他のトレーニングに支障をきたすことも。
ベンチプレスやアームカールなど、握力を必要とする種目の後におこなうことで、前腕への総合的な刺激につながる。しっかりとトレーニングの順序設計をしよう。

トレーニングプログラムを組む際は大きい筋肉から始めよう
前腕は上半身の中でも小さい筋肉で構成された筋肉群です。トレーニングプログラムを組む際は、前腕にアプローチできるトレーニングよりも、デッドリフトなどの全身運動・ベンチプレスなどの大きい筋肉を使う種目から始めた方が最適です。
上半身・下半身を鍛える日を分けているのであれば、胸筋や背筋から始めて、上腕筋→前腕筋へとシフトしていく工程がよいと思います。
ダンベルの重量・回数
- 初心者は1~3kg×15回を3セット
- 週に2~3回を目安におこなう
初心者は1~3kg×15回を3セット
前腕のダンベルトレーニングは、初心者は1〜3kgから開始することがおすすめ。15回を3セット実施できる重量を選択することで、効果的な筋力アップが可能になる。
最後のセットでは疲労を感じるが、フォームが崩れないように取り組むのがポイント。もしフォームが崩れる場合は重量を下げるようにしよう。
週に2~3回を目安におこなう
前腕のトレーニングは週に2〜3回の頻度でおこなうのがおすすめ。
前腕の筋肉は回復が比較的早い部位になるが、過度な負荷をかけすぎると疲労が蓄積し、握力の低下や手首の違和感につながる可能性も。日常的に使われることが多い部位のため、適切な頻度で継続することが、怪我を防ぎながら効果的に鍛えるポイント。
頻度の設定においては、全身のトレーニングスケジュールとのバランスを考慮することも大切。デッドリフトやローイング系の種目でも前腕を使うため、別の日に設定するのもおすすめ。
ダンベルがない場合の前腕筋トレ2選
- フィンガーカール
- グーパー運動
フィンガーカール
- 前腕をベンチなどに固定し、手を開いた状態で手の甲を地面に向ける
- 手首を屈曲させながら、指先からを手を閉じていく
- 握った状態で数秒間キープしたあと、元の状態に戻していく
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | イス |
鍛えられる部位 | 前腕屈筋群 |
負荷の調整 | 可能 |
グーパー運動
- 前腕をベンチなどに固定し、手を開いた状態で手の甲を地面に向ける
- 手を握る、開く動作を繰り返す※指を開く際はしっかりパーの状態になるように
ケガのリスク | 低い傾向 |
実施できる場所 | 自宅・ジム |
器具・設備 | イス |
鍛えられる部位 | 前腕屈筋群・前腕伸筋群 |
負荷の調整 | 可能 |
たくましい腕をつくるなら上腕も鍛える
太い腕をつくるのが目的なら、前腕よりも上腕を鍛えよう。上腕二頭筋や上腕三頭筋など、上腕筋の中でも大きい部位を中心にトレーニングするといい。
種目としては、上腕三頭筋のストレッチ種目である「トライセプスエクステンション」や「フレンチプレス」・上腕二頭筋の発達につながる「アームカール」がおすすめ。
前腕のダンベルトレーニングに関するQ&A
効果が出るまでにどのくらいかかる?
A.3か月を目安にしよう。腕の筋肥大が目的なら違うトレーニングを

前腕が傷みやすいのだが原因は何?
A.トレーニング時に傷みが出る場合は、必要以上に握力を使っている可能性が

筋肉痛があるときはトレーニングしない方がよい?
A.違和感があるときは休んでください

ダンベルがないときの代用品は何がある?
A.前腕の場合はチューブや水の入ったペットボトルなどで代用できる

年間約1000セッションを指導。経営者や芸能関係者の指導経験も多く、ダイエット・ボディメイク・健康維持など、さまざまな悩みに幅広く対応している。2021年より大原学園大宮校スポーツトレーナー科講師としても活動。
【保有資格/実績など】全米エクササイズ&フィットネス協会認定トレーナー(NESTAーPFT)/IMBF公認ファスティングカウンセラー/関東オープンメンズフォジーク選手権入賞