
腹横筋は、体幹の安定性を支えるインナーマッスルで、姿勢の改善や内臓の位置に影響を与えることも。この腹横筋を鍛えることで、腰痛予防や反り腰の改善、運動パフォーマンスの向上などの効果がある。
この記事では、女性や初心者でも取り組みやすい腹横筋の筋トレメニューやストレッチ、効果的に鍛えるコツなどを紹介。
この記事の監修者

おぜき としあきさん
パーソナルトレーナー
腹横筋はボディメイクの「隠し味」のような筋肉!
腹横筋は腹部の最深部に位置する筋肉で、腹部全体をコルセットのように横から包み込む働きを担う
この筋肉は見た目では確認することができないが、「ドローイン」のようなお腹をへこませる腹式呼吸のようなトレーニングで筋肉の動きを意識できる。
腹横筋は体型の見た目に大きく影響を与える筋肉で、お腹の立体感やウエストの引き締め感を左右している。体型のメリハリに関わるため、ボディメイクの「隠し味」のような筋肉といえる。
インナーマッスル「腹横筋」を鍛えるメリット
腹横筋を鍛えることで得られるメリットは、姿勢改善から体幹の安定まで多岐にわたる。ここでは3つのメリットを紹介。
- 基礎体力の向上につながる「体幹の安定」
- 姿勢が改善されて腰痛や反り腰の予防に
- 内臓の位置を正常にしてぽっこりお腹を改善する

筋トレの種目は左右対称で上下に筋肉を動かす動作が多い傾向にあります。このような動きばかりおこなっていると、斜め方向の動きがしにくくなり、動作が不自然になったりバランス不足によるトレーニングの限界が出てきたりする場合があります。そのような悩みを抱えている「筋トレマニア」の人にも、腹横筋の筋トレがおすすめです。
また、日常の動作も上下動作が主体なので、腹横筋が弱くなりやすいです。トレーニングをしていない人でも腹横筋が弱くなった結果、動作が不自然になったり、内臓の位置がズレたりする可能性があります。
とくに胃下垂の人、反り腰の人、腰痛が気になる人は腹横筋を鍛えることで症状改善が期待できます。
基礎体力の向上につながる「体幹の安定」
腹横筋を鍛えて体幹の安定性が向上すると、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動から筋力トレーニングまで、あらゆる運動動作の質が改善される。
とくにスポーツにおいては、急な方向転換や予期せぬ衝撃への対応力がつくため、けがのリスクも軽減される。また、四肢の力をより効率的に伝達できるようになり、パワーやスピードの向上にもつながる。
姿勢が改善されて腰痛や反り腰の予防に
腹横筋が弱いと背骨や骨盤が不安定になるため、腰への負担が増加する原因に。腹横筋を適切に鍛えることで体幹全体の安定性が向上し、自然と背筋が伸びた美しい姿勢を保てるようになる。
とくにデスクワークなどで長時間座る機会が多い現代人にとって、腹横筋の強化は腰痛予防として効果的。
内臓の位置を正常にしてぽっこりお腹を改善する
腹横筋が弱いと内臓が前方に押し出され、下腹部が膨らんでしまうため、腹横筋を鍛えることで、ぽっこりお腹の改善にもつながる。腹部全体も引き締まり、ウエストラインがスッキリとした印象に。
また、内臓が正しい位置にあることで消化機能や呼吸機能も改善され、体調や身体のコンディションがよくなる可能性もある。
腹横筋のトレーニング前に効果UPのコツをチェック
トレーニングを行う前に、効果を高めるためにポイントをチェックしよう。
- 息を止めない程度にする
- 正しいフォームを確認する
- ウォーミングアップをしっかりおこなう
息を止めない程度にする
トレーニング中は自然な呼吸を心がけるのがポイント。呼吸法にこだわりすぎると「いつ吸っていつ吐くのか」混乱することもある。
一般的な筋トレでは無理に呼吸を調整する必要はないため、自然に吸いたいときに吸い、吐きたいときに吐こう。しかし、きつくなったときに息を止めがちなので、息を止めないように意識しよう。
正しいフォームを確認する
常にお腹を凹ませるイメージを持ち、腹圧をかけながら動作をおこなおう。また、呼吸と動作を連動させることで、より効果的な刺激が可能。
息を吐きながら腹部を引き込み、吸う際はゆっくりと元の位置に戻すように。腰が反りすぎないよう、骨盤の位置にも注意しよう。
ウォーミングアップをしっかりおこなう
いきなり本格的なトレーニングに入るより、軽いストレッチなどで身体を温めておこう。ストレッチは仰向けでお腹の筋肉を伸ばすストレッチや座っておこなう側屈ストレッチがおすすめ。
3つのポイントがチェックできたら、正しいやり方を参考にしながらトレーニングに取り組もう。
【隙間時間で簡単】座ってできる腹横筋トレーニング
ここでは、忙しい日常でも隙間時間を活用して、座ったままで腹横筋を鍛えることができる簡単なトレーニングを紹介。これらのトレーニングは椅子に座ったままできるため、通勤中や休憩時間に手軽に取り組める。
- 座ってドローイン
- 座ってツイスト
- 座ってレッグレイズ
座ってドローイン
「ドローイン」はお腹に意識を集中し、腹式呼吸をして深層の筋肉を刺激するトレーニング。
立ったり、座ったりしている状態でもおこなえるので、慣れてきたら信号や電車待ちの時間、デスクワーク中など、日常生活の中に取り入れてみよう。
- 身体の力を抜き、リラックスした状態になる
- 鼻からゆっくりと息を吸い込み、お腹を膨らませる
- 口からゆっくりと息を吐きながら、お腹をへこませる
- お腹をへこませた状態を10秒キープする
座ってツイスト
「ツイスト」は座って体幹をひねることで、腹横筋や背中の筋肉を効果的に刺激できるトレーニング。上半身全体を使ってひねることを意識しよう。
- 椅子に座り、脚を肩幅に開いてしっかりと地面につける
- 腰をまっすぐに保ちながら、腕を曲げて脇につける
- 上半身を右にひねり、戻してから左にひねる
座ってレッグレイズ
座っておこなう「レッグレイズ」は、とくに下部を鍛えるトレーニング。座ったまま脚を持ち上げることで、腹横筋を中心に鍛えられる。
- 椅子に座り、背筋を伸ばして両手は椅子の座面に軽く置く
- 片脚を床から少し浮かせ、ひざを伸ばしたままゆっくりと脚を上げる
- 脚を上げた状態で数秒間キープし、ゆっくりと元の位置に戻す
【自宅でできる】腹横筋筋トレメニュー
ここでは自宅でもおこなえる腹横筋の筋トレメニューを、レベル別に紹介。
- 【★☆☆】キャットカウ
- 【★★☆】プランク
- 【★★★】リバースクランチ
【★☆☆】キャットカウ
「キャットカウ」は背中や腹筋を効果的にストレッチしながら、腹横筋を鍛えるトレーニング。とくに体幹を意識しておこなうことで、腰痛予防にも役立つ。
- 手とひざを床につけて四つん這いの姿勢になる
- 息を吸いながら背中を反らせる
- 息を吐きながら背中を丸め、顎を胸に近づける
【★★☆】プランク
決められた姿勢を一定時間維持するプランクは、年齢や性別を問わず、幅広い人におすすめの体幹トレーニング。
ひざをついた姿勢でおこなうものや、片手を上げるものなどさまざまなバリエーションがあり、それぞれ強度が異なるため、自分に合わせて負荷を調整できる点も魅力。
- 床にうつ伏せになり、ひじを曲げて肩の下に置く
- つま先を立てて、かかとを後ろに伸ばす
- ひじとつま先で身体を支え、全体を一直線に上げる
- この姿勢を30秒~1分間キープする

【★★★】リバースクランチ
「リバースクランチ」はとくに腹筋の下部を鍛えられるトレーニング。ひざを曲げた状態で脚を上げることで、腹横筋を効率的に鍛えられる。
- 仰向けに寝て、ひざを90度に曲げて脚を床から浮かせる
- 両手を床につけて、腹筋を使ってひざを胸に引き寄せる
- 脚をゆっくりと元の位置に戻す
トレーニング前後にストレッチを取り入れよう!
腹横筋は鍛えるだけでなく、適切なストレッチを取り入れることで、筋肉の柔軟性を高め、ケガ予防やパフォーマンスの向上ができる。
ここでは、ストレッチを取り入れる効果と監修者おすすめのストレッチを紹介。
- 疲労回復を促進、効果を最大限に引き出せる!
- 仰向けでのストレッチ
- 側屈ストレッチ

ストレッチをして部位をしっかり伸ばすことで、腹横筋の位置を意識しやすくなると、トレーニングのときに腹横筋へのスイッチが入りやすくなります。腹横筋のストレッチは腹横筋の位置を身体レベルで記憶し、意識せずとも自然に腹横筋を使用できるようになるという点でも効果的です。
疲労回復を促進、効果を最大限に引き出せる!
ストレッチにはトレーニング前と後で役割が異なる。トレーニング前のストレッチは「神経伝達の準備」と「血液循環の促進」の二つの役割を担う。
ストレッチを取り入れることで「これから使いますよ」という信号を筋肉に送り、神経と筋肉のスイッチを入れ、スムーズな動きを促進する。
また、筋肉を伸ばすことで血液が循環し、筋肉が温まって動きやすい状態を作り出す。
トレーニング後のストレッチは「疲労回復」が主な役割。トレーニング後にストレッチをおこなうことで疲労物質が体内から流れ出しやすくなり、回復を早める効果が期待できる。
仰向けでのストレッチ
寝たままで腹横筋を伸ばせる手軽なストレッチ。ストレッチは継続することでより高い効果を得られるため、毎日の日課として取り入れよう。
- あおむけになり、両手をかるく広げる
- ひざを立て、左右に倒す

側屈ストレッチ
日常生活ではあまり伸ばすことのない、体側を伸ばすストレッチ。筋肉がしっかりと伸びているのを感じながらおこなうこと。
- ベンチや椅子に背筋を伸ばして腰かける
- 背中をまるめずに肩を真横に倒すようにする
腹横筋と一緒に鍛えたい部位
腹横筋を鍛える際には、腹横筋と密接に連携して動く筋肉など、ほかの部位もバランスよく鍛えることがおすすめ。
- 猫背になりがちな人は「前鋸筋(ぜんきょきん)」
- 腰痛を治したい人は「腸腰筋」
- 骨盤が弱くなっている人は「骨盤底筋」
- 肩こりを予防したい人は「菱形筋」
- 背中をきれいに見せたい人は「広背筋」
- 体幹を強化したい人は「脊柱起立筋」
猫背になりがちな人は「前鋸筋(ぜんきょきん)」
前鋸筋は、肋骨から肩甲骨の内側の縁に沿って伸びている、胸郭の側面にある筋肉。肩甲骨を胸郭に固定し、腕を上げたり、回したりする際に、肩甲骨をスムーズに動かす役割を担う。肋骨を引き上げることで、呼吸を助ける役割も果たす。
【おすすめの前鋸筋トレーニング】

腰痛を治したい人は「腸腰筋」
腸腰筋は、腰から脚のつけ根にある大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉の総称で、股関節を屈曲させる働きを持ち、姿勢維持に重要な役割を果たす。
腹横筋と協調してはたらくことで、骨盤の安定性を高め、腰痛予防などの効果が期待できる。
レッグレイズやニーレイズなど、下肢を持ち上げる運動で効果的に鍛えられる。ただし、過度な負荷をかけると腰への負担が大きくなるため、正しいフォームでおこなおう。
骨盤が弱くなっている人は「骨盤底筋」
骨盤底筋は骨盤内の臓器を支える筋肉群。腹横筋と連動して働くことで骨盤内の安定性を高めてくれ、適切な筋力があることで、内臓の下垂予防や尿漏れの予防にも効果的。
「ケーゲル体操」や「ヒップリフト」、ヨガなどで鍛えることが可能。日常生活の中でも意識的に骨盤底筋を締める習慣をつけることで、継続的な効果が期待できる。
肩こりを予防したい人は「菱形筋」
菱形筋は肩甲骨と背骨をつなぐ筋肉で、姿勢維持に重要な役割を果たす。腹横筋と協調してはたらくことで体幹の安定性を高め、猫背の改善にも効果的。適切な筋力を維持することで、肩こり予防や美しい姿勢の維持にもつながる。
ダンベルローイングやバンドプルアパートなど、背中を寄せるような運動で効果的に刺激できる。
背中をきれいに見せたい人は「広背筋」
広背筋は背中上部から腰にかけて広がる大きな筋肉で、上肢の動きや正しい姿勢の維持に関与する。腹横筋と連動することで、体幹全体の安定性を向上させる効果が期待でき、姿勢改善のみならず、背中の形も整った理想的な体型づくりにもつながる。
「懸垂」や「ラットプルダウン」など、背中を下に引くような運動で効果的に鍛えられる。
体幹を強化したい人は「脊柱起立筋」
脊柱起立筋は背骨に沿って縦長に走る筋群で、背骨の伸展や姿勢の維持に重要な働きを担っている。
腹横筋の拮抗筋としてはたらき、体幹の前後の安定性を高めてくれる。お腹と背中の筋力バランスを保つことで、腰痛予防や姿勢改善にも役立つ。「グッドモーニング」や「バックエクステンション」など、背中を反らす運動で効果的に刺激できる。
腹横筋に関するQ&A
腹横筋が弱いとどうなる?
A:身体の総合的な力が出にくくなり、日常生活でも疲れを感じやすくなる。

腹横筋は身体の奥にある、いわゆるインナーマッスルと呼ばれる筋肉で、ほかの筋肉との繋がりを担う重要な部位となっています。
腹横筋が弱いとほかの筋肉との繋がりも少なくなり、普段よりも少ない筋肉で動作を補わなければならず、身体全体の動きが滑らかでなくなります。結果として、一部の筋肉に負担がかかりやすくなり、疲れやすい状態となってしまいます。
筋肉痛の場合はトレーニングを休んでも大丈夫?
A:休んでも大丈夫。

腹筋だけでもおなかはへこむ?
A:腹筋運動だけで脂肪が減り、お腹が凹むことはない。

下腹痩せをするためのポイントは?
A. 全体的に脂肪を落とすことと、骨盤などの骨格の位置の調整。

部分的に脂肪を落とすことは難しいため、まずは全体的に脂肪を落とすアプローチが大切です。また、骨盤が後傾していると、脂肪が少なくても下腹部が前に出て見える傾向があります。骨盤が適切な位置にあり、前傾や後傾の動きがスムーズにできる状態が理想です。
骨盤は左右上下に動きますが、運動不足や、立ったまま、座ったままなど同じ姿勢をとり続けることで固まってしまいます。「アニマルウォーク」など左右非対称な動きを含むトレーニングを取り入れることで、骨盤の可動性を回復させることができます。
青山学院大学在学中の1988年から指導をスタート。指導歴30年で女優、役者、アイドル、女子アナ、ミスワールド日本代表モデル、プロサーファー、新体操選手などのスポーツ選手なども含め20000人超の指導を経験。2003年OZEKIパーソナルトレーナー養成スクール(現Shapesアカデミー)開設。2005年Shapes(現ShapesGirl)を東京渋谷に開設。メディア出演のほか、「腹凹は太もも運動でつくれる 1日3分週3日でOK!」(SBクリエイティブ)「5秒姿勢矯正ダイエット」(マガジンハウス)など多数の著書を執筆。