
腹直筋は、いわゆる「シックスパック」を形成する筋肉。「腹筋を割りたい」「引き締まったお腹を手に入れたい」と思う人にとっては、トレーニング必須の部位。
この記事では、腹直筋を鍛えるメリットや効果、部位別におすすめの筋トレメニューを紹介。また、注意点や食事管理の方法など、効率よく結果を出すためのアプローチも解説。
この記事の監修者

おぜき としあきさん
パーソナルトレーナー
腹直筋を鍛えるだけで腹筋は割れるの?
筋トレを始める前に、腹筋の割れる仕組みを理解しよう。
- 腹筋を割るためには「基礎代謝」を上げることが大切!
- おすすめトレーニングは「スクワット」って本当?
腹筋を割るためには「基礎代謝」を上げることが大切!
腹筋が割れて見えるようにするためには、体脂肪を減らして腹直筋の形を際立たせる必要がある。体脂肪は全体的にまんべんなく増え、減少する特徴があるため、腹筋運動だけで腹部の脂肪を局所的に落とすことは不可能。
体脂肪は身体のなかでも大きな筋肉群を鍛え、基礎代謝を向上させることで効率的に燃焼できる。とくに太ももは筋肉量が多い部位なので、鍛えることで身体全体の筋肉量を効果的に増やしやすい。
もちろん、腹筋がしっかり鍛えられていなければ、脂肪が落ちても筋肉の立体感はみられないため、腹筋運動は大切。
しかし、筋肉量が多いほど安静時のエネルギー消費量が増加するため、全身の筋力トレーニングも合わせて取り入れるようにしよう。

腹直筋のトレーニングだけで腹筋を割る効果は期待できません。ただし、道具を使用せず、場所を選ばずおこなえるため、日常生活に取り入れやすくトレーニング習慣をつけるファーストステップとして活用できます。
筋肉の動きを感じながらおこなう筋トレは、自身の身体と対話する時間ともいえます。これから運動習慣をつけたいという方は、寝ころびながら、気軽におこなえる腹直筋トレーニングを、自分の身体と向き合う時間として活用してみるとよいですね。
おすすめトレーニングは「スクワット」って本当?
大きな筋肉群である太ももを動かすトレーニングである「スクワット」は、腹筋を直接は鍛えないが脂肪燃焼効果が高まるため、間接的に腹筋を割ることにつながる。
とくに「スクワット」の中でも「カウントスクワット」がおすすめ。
「カウントスクワット」は通常のスクワットの動作を行いながら、意識的にカウントを入れて筋肉をストレッチしたり収縮させるため、筋肉へより負荷をかけられるトレーニング。
腹直筋とは?知っておきたい基礎知識
鍛える前に、腹直筋が「どこにある筋肉」で「どのような働き」があるのかおさえておこう。
- いわゆる「シックスパック」にあたる部位
- 上体の屈曲や姿勢の安定に関わる筋肉
いわゆる「シックスパック」にあたる部位
腹直筋は、腹部の正面に位置する縦長の筋肉で、一般的に「シックスパック」と呼ばれる6つに分かれた筋肉群。
「シックスパック」は、“腱画(けんかく)”と呼ばれる横方向の筋膜によって区切られており、鍛えて筋肥大させると凹凸が浮き出やすくなる。ただし、体脂肪率が高い状態では、どれだけ腹直筋を鍛えても腹筋が割れているようには見えない。
上体の屈曲や姿勢の安定に関わる筋肉
腹直筋は、上体を前方に曲げる動作や姿勢を安定させる働きを担う。体幹にあるほかの筋群と協調しながら腹直筋が適切に機能すると、腰痛予防や内臓の保護、正しい姿勢の維持につながる。
また、呼吸時の腹圧調整にも重要な役割を果たし、深い呼吸や咳、くしゃみなどの際に腹部を支える機能もある。
腹直筋の筋トレで得られる効果
腹直筋を鍛えることでさまざまな効果を得られる。ここでは腹直筋を鍛えることで得られる効果を紹介。
- 重要なのは「体幹が安定すること」
- 姿勢が改善され猫背や腰痛が予防できる
- スタイルがよくなり、シックスパックが作りやすくなる

重要なのは「体幹が安定すること」
腹直筋を鍛えると、体幹の安定性が高まる。体幹が安定することであらゆる運動効果が高まり、日常生活やスポーツ活動における動作の質が向上する。
また、体幹が安定することで、急な方向転換や予期せぬ衝撃にも対応しやすくなり、ケガのリスク軽減にもつながる。

体幹が安定すると腹直筋以外のトレーニングでもフォームを維持しやすくなり、より効率よくトレーニングできるようになります。また、けがの防止も非常に大きなメリットです。
日常生活で転倒した際なども、腹筋がある人は安定性があるため、ない人に比べて軽症で済むなどの効果が期待できます。
姿勢が改善され猫背や腰痛が予防できる
腹直筋が強化されると、背骨や骨盤を正しい位置に保持する力が高まり、美しい姿勢を維持しやすくなる。背筋の通った姿勢は見た目の印象UPにつながる。
また、姿勢が改善されることで、猫背や肩こりの改善、腰痛予防にも大きく貢献する。適度な筋力があることで、長時間の座位作業や立ち仕事による腰への負担が軽減される。
スタイルがよくなり、シックスパックが作りやすくなる
腹直筋トレーニングを継続的におこなうことで、腹部の筋肉が発達し引き締まったボディラインを手に入れられる。とくにシックスパックを形づくる腹直筋を鍛えるとお腹の凹凸が目立ちやすくなることも。
ただし、見た目の変化を実感するには、適切な食事管理と有酸素運動の組み合わせが重要。シックスパックは、体脂肪率を適切な範囲まで落とすことで見えやすくなる。
【腹直筋全体を鍛える】自宅筋トレメニュー
ここでは、腹直筋全体を鍛えるトレーニングを2つ紹介。自分のレベルに合わせて適切なトレーニングを選ぼう。
- 【★☆☆】プランク
- 【★★☆】アブローラー

とくに「プランク」は腹筋の奥の部分が鍛えられやすいため、効果を実感しにくい場合があります。表面的な筋肉を鍛えたい場合は、この後に紹介する「レッグレイズ」などがおすすめです。
【★☆☆】プランク
腹筋に力を入れ、姿勢を一定時間キープする筋トレメニュー。腹直筋をはじめ、腹斜筋、脊柱起立筋などのお腹周りの筋肉を効果的に鍛えられる。30秒キープできない場合は難易度を下げて調整してみよう。
<やり方>
- 床にうつ伏せになり、ひじを曲げて肩の下に置く
- つま先を立てて、かかとを後ろに伸ばす
- ひじとつま先で身体を支え、全体を一直線に上げる
- この姿勢を30秒~1分間キープする
【難易度低めのプランク①】片手上げプランク
【難易度低めのプランク②】片手片足上げプランク

プランクは腹筋に力を入れて保持するため、筋肉の立体感を作るのは難しいですが、お腹周りの上部、下部、奥のほうまで全体的に刺激を与えることができるので、インナーマッスルや基礎的な筋力をつけるのにおすすめです。
また、基本姿勢のものだけでなく、「ひざつきプランク」、「腕を伸ばしたままのプランク」など、さまざまなバリエーションにすることで、負荷も柔軟に調整できます。
【★★☆】アブローラー
両端のハンドルを握り、床で前後に転がして使用する筋トレアイテム。使用することで、普通の腹筋よりも負荷をかけられる。最初はひざをついたフォームから始め、慣れたら立った状態などより負荷のかかる体勢でおこなおう。
- ヨガマットなどを敷いた床にひざをつき、アブローラーのグリップを握る
- 息を吐きながら、アブローラーをゆっくりと前に転がす
- 限界まで転がしたら、息を吸いながらゆっくりと元の位置に戻す
【腹直筋上部を鍛える】自宅筋トレメニュー
ここでは、とくに腹直筋上部を鍛えるトレーニングを2つ紹介。自分のレベルに合わせて適切なトレーニングを選ぼう。
- 【★☆☆】クランチ
- 【★★☆】バランスボールクランチ
【★☆☆】クランチ
仰向けの状態で脚を上げ、上体を丸めて腹筋を刺激する筋トレメニュー。腰を床から離したり、反動を使わないように注意し、腹筋に力を入れて上体を持ち上げるように意識しよう。
- 床に仰向けになり、ひざを90度に曲げて足を床につく
- 両手を頭の後ろで組み息を吐きながら、肩甲骨が床から離れる程度まで上体を起こす

【★★☆】バランスボールクランチ
バランスボールの上でクランチをおこなう筋トレメニュー。あえて身体を不安定な状態にしておこなうことで、体幹の安定性も鍛えられる。
- バランスボールの上に腰掛け、背中をボールにしっかりとつけて座る
- 脚を肩幅に開いて、かかとを床につけて安定させる
- 両手を頭の後ろで組み息を吐きながら、上体を丸め、ひざに向かってあごを近づける
- おへそを覗き込むように腹筋を意識して収縮させる
- 最大限に収縮させたら、ゆっくりと元の姿勢に戻す
【腹直筋下部を鍛える】自宅筋トレメニュー
腹直筋下部は多くの人がとくに気になる部位。ここでは、脚を持ち上げる動作で下部を重点的に鍛えながら、同時に上部も刺激できる「リバースクランチ」と「レッグレイズ」を紹介。
- 【★☆☆】リバースクランチ
- 【★★☆】レッグレイズ

声を出す職業の人にもこの二つのトレーニングはおすすめです。筋肉痛になりやすいということは、それだけ多くの筋肉を効果的に使えている証拠でもあるので意識して取り組んでいきましょう。
【★☆☆】リバースクランチ
通常のクランチと異なり、上体を起こすのではなく足を上げて、腹筋を鍛える筋トレメニュー。腹筋の下部を集中的に鍛えられ、下腹部の引き締めに効果的。
- 仰向けに寝て、両手を身体の横につける
- 両足を床から離し、ひざを90度に曲げる
- 息を吸いながらお尻を床から離し、ひざを胸の方へ近づける
- 息を吐きながらゆっくりと元の姿勢に戻す
【★★☆】レッグレイズ
仰向けの状態で、脚を伸ばして上下に動かし、腹筋を刺激する筋トレメニュー。腹直筋をはじめ、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋、腸腰筋など、腹筋全体に効率よくアプローチできる。
- 床に仰向けになり、ひざを伸ばして足をそろえる
- 腕は身体の横につけ、手のひらを床に向ける
- 息を吐きながら、両足をゆっくりと床から離し、垂直になるまで上げる
- 上げた状態を数秒キープする
- 息を吸いながら、ゆっくりと足を床に戻す
腹直筋と一緒に鍛えたい部位
理想の腹筋を手に入れるためには腹直筋だけでなく、目標とする体型に合わせて他の部位も効果的に鍛えるのがおすすめ。ここでは、目指したい体型に合わせた形で、腹直筋と一緒に鍛えたい部位を紹介。
- くびれのある体型を目指したい人は腹斜筋
- 姿勢を改善したい人は菱形筋
- 腰痛を予防したい人はインナーマッスル

身体を動かす際には複数の筋肉が動いており、ある動作において中心的な役割を果たす筋肉を「主動作筋」、反対の動きをする筋肉を「拮抗筋」と呼びます。両方が強調してはたらくため、どちらかだけを鍛えてバランスが崩れると、骨格や姿勢などにも影響を与えてしまうこともあります。
腹直筋の拮抗筋となる背筋や脊柱起立筋もあわせて鍛えることで、腹直筋へのトレーニング効果が高まります。また、拮抗筋の背筋や脊柱起立筋を適度に疲労させた状態で腹直筋のトレーニングをおこなうと、腹直筋に負荷を集中させることができ、効率的に筋力強化できますよ。
くびれのある体型を目指したい人は腹斜筋
腹斜筋は腹部の側面に位置し、体幹の回旋や側屈をつかさどる筋肉。この筋肉を適度に鍛えることで、ウエストラインが引き締まり、くびれのある体型を目指せる。
しかし、過度に筋肥大すると逆にウエストが太くなる可能性もあるため、くびれを作りたい場合は重い負荷をかけずに回数を控えめにし、長めに運動することがおすすめ。
姿勢を改善したい人は菱形筋
菱形筋は肩甲骨と背骨をつなぐ筋肉で、姿勢維持に重要な役割を果たす。よい姿勢を維持するためには、腹直筋だけでなく背中側の筋肉も鍛えるのが重要。
背中上部の筋肉である広背筋は肩を下げる働きがあるが、肩甲骨を内側に引き寄せるためには肩甲骨間にある菱形筋の強化が必要。肩甲骨を引き寄せることで、胸が開いた姿勢を維持しやすくなる。
腰痛を予防したい人はインナーマッスル
腰痛予防のためには表面的な筋肉ではなく、体幹の前後のバランスを保つインナーマッスルの強化がおすすめ。
個人の状態に合わせたアプローチが必要なため、腰痛がある場合は専門家に相談するのがおすすめ。
腹筋を割りたい場合は食事にも気を付けよう!
タンパク質は筋肉の材料となる重要な栄養素。「体重1kgあたり1.6g程度」の摂取がおすすめされているが、実際にどのくらいの量なのか?
ここでは編集部が実際に1日の食事でどの程度タンパク質を摂取しているのか計測してみた。
- タンパク質の量は「体重1kgあたり1.6g程度」
- タンパク質を十分にとれる食事を編集部が検証してみた!
タンパク質の量は「体重1kgあたり1.6g程度」
腹筋が割れて見える状態にするには脂肪を落とす必要があるため、筋トレだけでなく、適切な食事管理も不可欠。体脂肪率を下げるためには、タンパク質を十分に摂取しながら、総摂取カロリーを適度に制限することが効果的。
1日のタンパク質摂取量は体重1kgあたり1.6g程度を目安に設定し、脂質と糖質のバランスにも配慮すること。また、野菜を積極的に摂取することで、ビタミンやミネラルを補給しながら満腹感も得られる。
下記は体重ごとのたんぱく質量の目安を表にまとめたもの。これを参考に自分の体重に適したたんぱく質を摂取しよう。
タンパク質を十分にとれる食事を編集部が検証してみた!
今回「体重1kgあたり1.6g程度」のたんぱく質がどれくらいの量になるのか検証するために、編集部の20代の女性の一日の食事をチェックしてみた。

20代前半の女性Uさん
学生時代は運動部に所属。実家に住んでいるため、朝夜は栄養バランスの整った食事をとれることが多いが、昼ごはんは栄養バランスが偏りがち。
今回はタンパク質量を気にしながら、朝昼夜すべてUさんがご飯をセレクトした。
とくに気をつけたのは夜ごはん。タンパク質量も気にしつつ、きんぴらごぼうや野菜の味噌汁など、栄養バランスも重視して食事を選んだ。

今回体重を50gに設定したので80gのたんぱく質が必要でした。考えながらメニューを組んだのですが、それでも目標摂取量に達するのはギリギリのラインでした。
改めてゆで卵のたんぱく質量の多さを実感しました。今回は食べていませんが、サラダチキンもタンパク質量が多いので、この2つは手軽に摂取できていいなと感じました。

今回メニューに入っていた納豆は植物性タンパク質なので注意が必要です。日本人を含むモンゴロイド系の人種は植物性タンパク質の吸収効率が悪く、最大でも40%程度といわれています。
そのため、実際のタンパク質摂取計画を立てる際は、納豆や豆乳などの植物性タンパク質は計算に入れずに、動物性タンパク質(肉・魚・卵など)を中心に考えるのがおすすめです。
腹直筋に関するQ&A
女性が腹直筋を鍛えたらごつごつしたお腹になる?
A:ごつごつしたお腹にはならない。

女性は男性と比べて体脂肪率が高く維持される傾向があります。ボディビルなどのコンテストに出ている方の体脂肪率も、男性は4〜5%なのに対し、女性は10%程度です。
体脂肪が筋肉を覆うクッションのような役割を果たすので、腹直筋が発達しても、男性のように表面的にごつごつした印象にはなりにくいです。
また、女性は筋肉をつけるホルモンの分泌量が男性より少ないため、重りを使用したトレーニングをおこなっても、筋肉が太く分厚くなることは少ないです。腹直筋を鍛えることで、お腹周りが引き締まったり、筋肉の線が入ったりするようなマイルドな変化が期待できます。
腹直筋を鍛えたらウエストは細くなる?
A:細くは見えることはあるが、実際の数値が下がることはない。

腹筋が筋肉痛の時は休んだ方がいい?
A:休むのもいいが、痛くない部位の種目をやるのも手。

筋肉痛があるときは、無理は禁物です。運動習慣を維持したい場合は、痛みのない部位に限定してトレーニングをおこないましょう。たとえば、腹直筋の下部が筋肉痛で、上部に痛みがない場合、上部を重点的に鍛える種目をおこなうとよいです。
また、拮抗筋にあたる背筋や脊柱起立筋のトレーニングに切り替えることも効果的です。
通常の腹筋と足上げ腹筋は何が違う?
A:重点的に刺激できる筋肉の位置が異なる。

青山学院大学在学中の1988年から指導をスタート。指導歴30年で女優、役者、アイドル、女子アナ、ミスワールド日本代表モデル、プロサーファー、新体操選手などのスポーツ選手なども含め20000人超の指導を経験。2003年OZEKIパーソナルトレーナー養成スクール(現Shapesアカデミー)開設。2005年Shapes(現ShapesGirl)を東京渋谷に開設。メディア出演のほか、「腹凹は太もも運動でつくれる 1日3分週3日でOK!」(SBクリエイティブ)「5秒姿勢矯正ダイエット」(マガジンハウス)など多数の著書を執筆。