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腸腰筋をほぐすストレッチは不要?鍛えた方がいい理由・おすすめメニュー

腸腰筋とは、背骨から太もも上部にかけて存在する深層筋の1つで身体の中心を支える重要な筋肉。スポーツのパフォーマンスにも大きく影響を与える筋肉だが、「ストレッチの方法がわからない」「効果が実感できない」という声も多い。

この記事では、腸腰筋の効果的なストレッチ方法から、実施する際の注意点、おすすめのストレッチメニューまで詳しく解説。姿勢改善や腰痛解消を目指す人は、ぜひ参考にしてみよう。

この記事の監修者

中村 尚人さん

理学療法士/ヨガインストラクター

1999年から理学療法士として12年間医療介護分野の臨床を経験する中で、予防医学の重要性に気付き2011年に起業。予防運動療法を提唱して、主に骨関節疾患の予防活動ならびに研究を行っている。

国内で初めての予防運動に特化したトレーニングジムである予防運動ジムUPRIGHT、バランストレーニングに特化したバランスロッカーや、側弯症の保存療法である側弯トレーニングの他、ヨガの解剖学の第一人者として、全国で安全なヨガの実践法であるアーサナアナトミカルアプローチや、伝統的ヨガを現代の方に分かりやすくまとめたノンストレスヨガを広め、かつピラティスを予防医学として活用するためにファンクショナルローラーピラティスを考案し全国に啓蒙している。

目次

腸腰筋はどこにある?構成する2つの筋肉

腸腰筋は大腰筋・腸骨筋の2つの筋肉から構成される。腰部・腸骨から大腿骨(だいたいこつ)小転子までを結ぶ腸腰筋は、日常生活における姿勢維持や歩く際に大きな影響を与える。ここでは腸腰筋を構成する2つの筋肉の特徴と役割について解説していく。

  • 腰椎の前弯に影響を与える「大腰筋」
  • 腸骨と大腿骨を結ぶ「腸骨筋」
腸腰筋の一部として、「小腰筋」もありますが、現代人では退化して存在しない人も多く、機能的な重要性としても低いため、基本的に大腰筋と腸骨筋が構成要素となります。

腰椎の前弯に影響を与える「大腰筋」

大腰筋(だいようきん)は腸腰筋の中でも最大の筋肉として知られ、第12胸椎から第5腰椎までの範囲に位置する重要な筋肉。大腰筋は腰椎(ようつい)にくっついているため、人にしかない腰椎の前弯(※)に関与して、重力に負けない姿勢を維持できる。

長時間のデスクワークや運動不足により大腰筋が弱化すると、腰痛や姿勢の悪化を引き起こす可能性がある。デスクワーク中心の現代人にとって、大腰筋をケアすることは健康的な生活を送るための重要になる。

※腰椎の前弯:腰椎が軽く前にそるようにカーブすること。腰椎の前弯が強い場合、仰向けで寝た時に腰と床の間に隙間が空く

腸骨と大腿骨を結ぶ「腸骨筋」

腸骨筋(ちょうこつきん)は股関節の動きを司る重要な筋肉。腸骨筋は腰椎とくっついていないため、腰椎の状態に関係なく股関節を動かすことができる。大腰筋が上手に働かない状況でも腸骨筋が股関節を動かすことで機能を維持している。

腸骨筋の柔軟性が低下することは少ないが、稀に腹部の筋肉の弱化と内股などが組み合わさることで過剰な腰の前弯「反り腰」になることもある。日常生活における基本的な動作の質を高めるためにも、腸骨筋をケアすることは大切。

腸腰筋のストレッチは不要?筋トレをした方がいい理由

腸腰筋は姿勢の維持に重要な役割を果たすため、姿勢が相当悪い人や極端な反り腰の人、運動をしない人を除いて腸腰筋は柔軟な状態になっている。そのため、腸腰筋は「ストレッチして緩める」のではなく、「筋トレして強化」したほうが理にかなっている。

筋肉は表と裏の「相反」の関係で成立しているが、メインで動かす「主動作筋」とその反対の動きをする「拮抗筋」が存在する。腸腰筋を例にすると、腸腰筋に力が入り筋肉が硬くなっているとき、反対側の大殿筋(だいでんきん)は反射的に緩くなる構造になっている。

腸腰筋が硬い=大殿筋が緩んでいるという関係性だが、大殿筋が緩んでいる人は仰向けの状態でブリッジができないような人で、実際にはそのようなケースは稀。相反の観点からも、腸腰筋をストレッチする必要性はほとんどなく、筋力トレーニングをして鍛える方が重要。

腸腰筋を鍛える主なやり方

腸腰筋を鍛えることで姿勢改善や腰痛予防が期待できる。以下では腸腰筋を鍛える2つの方法を紹介。

  • 筋トレ目的で腸腰筋をストレッチする
  • 腸腰筋の反対側の大殿筋をストレッチする

筋トレ目的で腸腰筋をストレッチする

腸腰筋は、僧帽筋のように緩める筋肉ではなく、むしろ活性化させることが重要。そのため、緩める目的のストレッチではなく、適度な負荷をかけて筋力強化につながるストレッチをおこなおう。

ストレッチには大きく2種類ある。1つは一般的に知られている柔軟性を高める「持続的なストレッチ」で、もう1つは筋力強化につなげる目的の「プライオメトリック的なストレッチ」。

オーバーストレッチにならない範囲でギリギリまで伸ばすことで、筋肉がつっぱっている状態を作ることができて、結果として筋トレと同じ効果を得ることができる。

柔軟を目的とするストレッチの場合、1分以上目安でゆるく痛みを感じない「侵害的な強度以下」でおこなうのが推奨されているが、筋トレ目的のストレッチの場合、10秒程度で短時間で負荷をかけるのも一種の方法。

腸腰筋の反対側の大殿筋をストレッチする

筋肉は、「相反神経抑制(そうはんしんけいよくせい)」という相反の関係で成り立っているため、腸腰筋に力が入っているときは裏側の大殿筋(だいでんきん)が緩んでいる状態になっている。

そのため、腸腰筋を鍛えたい場合は裏側の大殿筋をストレッチして緩めるのも選択肢の1つ。柔軟を目的としたストレッチの場合、1分以上を目安に突っ張りを感じない範囲(痛みを感じない程度)でおこなおう。

突っ張りを感じたほうが効いているイメージはあるが、その場合はストレッチではなく筋トレになってしまうため、無理して伸ばしすぎないようにする。

腸腰筋ストレッチで得られる効果

腸腰筋ストレッチは身体の中心部に働きかけ、様々な効果をもたらす。そのため、日常生活における動きの改善から健康維持まで、幅広い効果が期待できる。ここでは腸腰筋をストレッチすることで得られる2つの効果について解説していく。

  • 腰痛の改善
  • 姿勢の改善
下記で紹介する効果は腸腰筋の活性化(鍛える)目的でストレッチをした際の効果です。腸腰筋を緩めるのではなく、鍛えて活性化させた場合にどのようなメリットがあるかを紹介します。

腰痛の改善

極端な反り腰で腹筋が弱い人(新体操選手やバレエダンサーなどの体型)の場合は、柔軟性目的の腸腰筋のストレッチと腹筋トレーニングをすることで腰痛改善が期待できる。

しかし、一般的には逆で腸腰筋が十分に働いていないことが原因のケースが多い。腸腰筋は脊柱の前弯(ぜんわん)を作る重要な役割があるが、多くの人はこの機能が弱くなり丸くなって腰痛になる。そのため、一般的な腰痛持ちの人が腸腰筋をストレッチすることは、かえって症状を悪化させる可能性がある。

腸腰筋を強化する目的で、ある程度筋肉に刺激のあるストレッチをおこなうことが大切。

姿勢の改善

柔軟目的のストレッチでは姿勢の改善は難しいため、腸腰筋を適切に活性化させることが重要。日本人の典型的な悪い姿勢である「スウェイバック」(骨盤が後ろに引けた姿勢)は、腸腰筋が十分に働いていない状態。

この姿勢を改善するには、腸腰筋を意識的に働かせる必要がある。腸腰筋は普段意識することが難しい筋肉だが、下記を意識すると姿勢の改善に近づくので参考にしよう。

  • かかとに重心を意識的に移動
  • 脚の付け根を軽く引く感覚を持つ

ストレッチの意味は、筋肉を伸ばすことよりも、その部位への意識を高めることにある。意識が高まることで、日常生活での使い方が改善されて、結果として姿勢の改善につながる。

姿勢改善には、柔軟目的のストレッチではなく、腸腰筋の適切な活性化とそれを維持する意識づけが重要になります。

腸腰筋を鍛える簡単ストレッチ・ほぐすマッサージ6選

ここでは普段運動習慣がない人でもおこなえる、簡単ストレッチを体勢ごとに6つ紹介する。

  • 寝ながらひざを抱えるストレッチ
  • イスを使ったストレッチ
  • 壁を使っておこなうストレッチ
  • アンジャネヤーサナ
  • 戦士のポーズ(ウォーリア1)
  • 乗馬のポーズ

寝ながらひざを抱えるストレッチ(マイルドにほぐす)

<やり方>
  1. 床で仰向けになり、頭から足先をまっすぐにする
  2. 両手で片足を抱えて、息を吐きながら胸近くまで引き付ける
  3. 引き付けるときに、身体が浮かないように床にしっかりつけておく

イスを使ったストレッチ(活性化する)

<やり方>
  1. お尻の半分を椅子におく
  2. 脚をできる限り後ろに伸ばす
  3. イス側とは反対の手を大きく曲げる

壁を使って行うストレッチ(活性化する)

<やり方>
  1. 身体の姿勢を正して、ゆっくりと片足をあげ壁と足裏をあわせる
  2. 背筋を伸ばし、もう片方の足裏全体が床から離れないように注意する
  3. 壁につけている足のすねに両手をおき、おしりを前に入れ込む形で身体を前に倒す

アンジャネーヤーサナ(活性化する)

<やり方>
  1. ひざ立ちの状態から片足を前に出し、片ひざ立ちの状態になる
  2. 両手を太ももの上において骨盤を下げる
  3. 後ろ側の足の甲も床につけた状態で、上に引っ張られるように両手を真上に伸ばして目線を斜め上にする

戦士のポーズ(ウォーリア1)

<やり方>
  1. 足を前後に開いて前足を踏み込む。後ろ足の裏は地面につける
  2. 骨盤を起こし下半身を安定させる
  3. 頭を少し上に向けて、腰を反らせる

乗馬のポーズ(活性化する)

<やり方>
  1. 足を前後に開いて前足を踏み込む。後ろ足はつま先立ちにして、戦士のポーズよりやや後ろ側に足を置く
  2. 骨盤を起こし下半身を安定させる
  3. 頭を少し上に向けて、腰を反らせる

腸腰筋ストレッチを補助するおすすめアイテム

道具を活用することで、腸腰筋により効果的にアプローチすることができる。ここでは、腸腰筋のストレッチに役立つアイテムと、その道具を使ったおすすめストレッチを紹介。

  • ストレッチポール
  • ヨガブロック

ストレッチポール

ストレッチポールを使って背骨に沿って寝転がることで、腸腰筋を効果的にリラックスさせることが可能。

ポールの上で背骨を左右にゆらすことで、腸腰筋の緊張を段階的に和らげることができる。背骨のアーチに合わせた形状により、安定した姿勢でストレッチをおこなえるのもメリット。ポールの固さを選ぶことで、自分に合った強度で快適にストレッチができる。

ヨガブロック

 

ヨガブロックは腸腰筋のストレッチ時の姿勢保持をサポートする。ブロックの高さを活用することで、柔軟性に応じた段階的なストレッチが実施できる。

身体が安定することで、リラックスした状態での深いストレッチをすることが可能になる。正しい姿勢でのストレッチがやりやすくなるので、ストレッチの効果を引き出しやすくなる。

腸腰筋をストレッチする際の注意点

安全で効果的なストレッチをおこなうために、以下のポイントを意識してストレッチに取り組もう。

  • オーバーストレッチにならない範囲まで伸ばす
  • 適度に反動をつかって筋肉を収縮させる
  • 左右バランスよくおこなう
腸腰筋を緩める必要はほとんどないため、本パートでも腸腰筋を活性化させる(鍛える)目的でのポイントを紹介します。

オーバーストレッチにならない範囲まで伸ばす

強い痛みを感じるまで伸ばすとオーバーストレッチになり筋肉を傷める可能性があるため、注意が必要。一方、突っ張りを全く感じないストレッチの場合、筋肉の活性化はできずに柔軟のためのストレッチになる。

心地よい張りを感じる程度の強度でストレッチを継続することで、腸腰筋を活性化させて鍛えることができる。筋肉に刺激を感じるポイントを把握しながら強度を安定させるのがポイント。

適度に反動をつかって筋肉を収縮させる

腸腰筋のストレッチには反動を伴う動的なストレッチ(プライオメトリック)がおすすめ。適度な反動を活用することで、筋肉が収縮と弛緩を繰り返して活性化しやすくなる。

しかし、反動が強すぎると筋肉の防御反応を引き起こして、最悪のケースとして断裂などのケガにつながることも。少しでも痛みを感じた場合は、反動は使わずに気持いと感じる範囲で伸ばすように心がけよう。

左右バランスよくおこなう

腸腰筋を左右バランスよくストレッチすることで、身体の歪みを最小限に抑えることができる。日常生活での偏りにより、左右の筋肉に差が生じやすいため、左右同じ回数でトレーニングすることを心がけよう。両側を均等にトレーニングすることで、姿勢の改善や腰痛の予防にも効果を発揮する。

腸腰筋ストレッチに関するQ&A

どれくらいの期間で効果を実感できる?

A:生活習慣を改善しないと効果は実感できない

身体は習慣や環境に適応する特性があります。ストレッチを継続するとその状態が「習慣」になるため、1~2週間程度で変化を実感することも可能です。そのためには、1日1分からでもいいのでストレッチを習慣にして、徐々に10分・20分と増やしていくことが重要です。

一方、習慣が変わらない場合は効果を全く感じられないケースもあります。ストレッチをやめてしまった場合、身体はストレッチをしていない状態を「普通の状態」と認識してしまうため、元の状態に戻ってしまう習性があります。

腸腰筋のストレッチはどれくらいの時間が適切?

A:活性化目的の場合、10秒程度の短時間ストレッチが効果的

柔軟性を目的とする場合、軽い強度(刺激を感じない強度)で1~2分実施するのがおすすめですが、活性化を目的とする場合は強めの強度(やや刺激を感じる強度)で10秒ほどおこなうのがおすすめです。

筋肉痛の状態でトレーニングをすると筋肉を断裂する恐れがあるため、自身の身体の状態に合わせて頻度を設定するといいでしょう。習慣にすると効果も表れやすいため、痛みが発生しない範囲であれば隙間時間に都度ストレッチをするといいです。

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