私たちは、どうすればウェルビーイングに生きることができるだろうか。その永遠のテーマに挑み、多様な人々の多様なウェルビーイングを実現する方法論を探求しているのが、日本電信電話株式会社(NTT)上席特別研究員である渡邊淳司さんだ。
渡邊さんの研究の特徴は、「ウェルビーイング」を人間の「触覚」や身体的な「つながり」から捉えている点にある。人は触れあう感覚を通じて新たなコミュニケーションを創り出し、共感や信頼関係を醸成することができるという。
今回は渡邊さんに、人々がウェルビーイングに生きるあり方とウェルビーイング社会の未来像について、Wellulu編集長の堂上研が話を伺った。
渡邊 淳司
日本電信電話株式会社(NTT) 上席特別研究員
堂上 研
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
流れに身をゆだねながら。仲間との関わりから価値を生み出す
堂上:実は私が「ウェルビーイング」という言葉を理解しようとした時に、最初に手に取った本が、渡邊さんとドミニク・チェンさんが監修・翻訳をされた『ウェルビーイングの設計論』(2017年、ビー・エヌ・エヌ)だったんです。
本日はお話を伺えるのを楽しみにしていました。よろしくお願いいたします!
渡邊:そうだったんですね。こちらこそよろしくお願いいたします。
堂上:渡邊さんは現在、「触覚がつなぐウェルビーイング」というテーマで研究をされていて、多数の著書を出版されています。まずは大学時代はどのような学生だったのか、どのような研究をされていたのか、教えていただけますか?
渡邊:私は大学3年から工学部に所属し、大学院ではバーチャルリアリティ(VR)や、知覚心理学の研究をしていました。その頃は、まだVR技術が市場に流通しておらず、本当に新しい体験ができる研究分野だったんです。例えばVRのゴーグルをして、それにつながったカメラを自分の後ろに置くとリアルタイムに自分自身の背中が見えたり、自分が操作するロボットアームで自分の背中に触れたり……。私は触れているのか、触れられているのか、どっちなんだろうと。
堂上:確かに、当時では新鮮な体験ですよね。
渡邊:また自分に大きな影響を与えた出会いが、大学院の博士課程の頃にありました。2001年に舞台の大道具のアルバイトをしたのですが、その時に先端技術と身体表現を結びつけたパフォーマンスグループと出会ったのです。そのパフォーマンスグループは、今でいうところの「プロジェクションマッピング」と、ダンスを融合させた先駆けでした。
「これはすごい!」と思い、自分がバーチャルリアリティの研究をしていることを伝えて、名刺を渡しました。グループのメンバーの方々といろいろな話をしているうちに、「今度、ヨーロッパでツアーをやるから、君も来るか?」と声をかけていただいたんです。私はダンサーの動きをセンサーで計測して、映像に変換する役割を担いました。今まで研究室にしかいなかった人間が、パフォーマンスグループのメンバーと3週間ほど一緒にヨーロッパをツアーしたのです。
堂上:ヨーロッパまで行かれたんですか! 普通は誘われても、なかなか行こうとは思えないですよね(笑)。
渡邊:多分、こんなこと一生ないだろうなと思って。流れに飛び込んで、身を“ゆだね”ました(笑)。
堂上:それは子どもの頃からですか? 自分から「これがやりたい!」と主張するタイプではなかったのでしょうか。
渡邊:まったく違いました。研究者というと、何かやりたいことがあって、それに熱中・没頭するようなイメージがありますが、むしろ自分は「何がしたいの?」と聞かれるのが大の苦手でした。流れるプールに浮かび背泳ぎしながら、少しずつ流れる方向を調節し、気持ちよいところを探すような生き方なんです。
堂上:おかしな方向に流されて、溝に落ちてしまうことはなかったんですか?
渡邊:これまで様々な流れのなかで、時にうまくいったり、時にとんでもない溝に落ちてきて、やっと流され方がわかってきた感じがします。直感的に「どの辺りに力を入れるとよいのか、どのタイミングで力を入れるとよいのか」を判断して、全体の流れの方向としても、自分個人としてもよい方向に流れていくような感覚ですね。
堂上:その流れに身をゆだねる生き方が、渡邊さんにとってのウェルビーイングにつながっているわけですね!
堂上:これまでの渡邊さんの人生で、このような考え方に至る大きな転機になった出来事があるのでしょうか?
渡邊:ひとつの転機は、2014年に出版した『情報を生み出す触覚の知性』が、毎日出版文化賞(自然科学部門)を受賞したことですね。
堂上:他者からの評価や賞賛の声が、自身を変えるきっかけになることは多いと思います。
渡邊:2015年頃は、同年代の友人が様々な分野で結果を出していて、彼ら・彼女らは社会から高く評価されていました。それを横目で見て、自分も研究者として何か大きな成果を出さなければという焦りや、「何かを成し遂げたい」というぼんやりとした野望、「なぜ私のやっていることは評価されないのだろう?」と被害妄想のような思いも抱えていた気がします。
堂上:そんな時代もあったのですか!
渡邊:はい。ただ、自分の著書が賞をいただくと、その同年代の友人たちからも「おめでとう!」と言ってもらいました。その時に、なんだかスッと心が軽くなった気がしたんです。私は何と張り合っていたのだろうと。
今考えると当たり前ですが、そもそも彼ら・彼女らは張り合う相手ではなく、一緒に社会を変えていく仲間なんですよね。けれど当時は自分の中の満たされない何かが、それを受け入れさせなかったのです。その時のことがあってから、自分も社会のために何かできることがあるかもしれない、自分のできることをやっていこうと思えるようになりました。それからは、自分の周りや社会の流れを少しだけ広く深く見るようになり、一緒に泳いでいる人とのバランスも意識するようになりました。
流されながらも、つながりの中から価値を生み出すこと。最近は「研究を編集し、関わりの中に価値を生み出す」という言い方をしていますが、そのような研究者のあり方もあるのだなと思うようになりました。
ほかにも、今回は取材していただいていますが、自分が誰かを取材するようになったことも関係があるかもしれません。2015年からは、NTTの研究所で2カ月に一度出版される小冊子「ふるえ」の編集長をするようになりました。なんとなく共通性を感じている複数の人にインタビューをするのですが、複数の話題から文脈というか流れが生まれてきて、その号のテーマが決まってくるんです。私は、おそらく流れにゆだねてみたり、流れが生まれたりすることを楽しんでいるのだと思います。
心にゆとりを持ち、自らを共有財化することで「仲間」は増えていく
堂上:現在渡邊さんがウェルビーイングに関する研究をしていることも、うまく流されてきた結果なのでしょうか?
渡邊:堂上さんに手に取っていただいた『ウェルビーイングの設計論』は、ラファエル・A・カルヴォ氏と、ドリアン・ピーターズ氏が2014年に出版した『POSITIVE COMPUTING』を、ドミニク・チェンさんと私が共同で監修、NTTの研究者をはじめとする方々と一緒に翻訳して2017年に出版したものです。
『POSITIVE COMPUTING』が出版された当時、日本では「ウェルビーイング」と「工学」を併せて考える人はほとんどいませんでした。しかし、私が最初にその本を読んだ時に「今後は、これが大事な考え方になる」と直感的に確信したんです。
堂上:そこから、渡邊さんはウェルビーイングについて探求していくのですか?
渡邊:そうですね。『POSITIVE COMPUTING』との出会いが始まりでした。その後、ドミニク・チェンさんを含む研究者や実践家たちと、「日本的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」というテーマのプロジェクトを推進することになりました。それが『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』という著作として結実することになったのです。そこに参加していた方々は、現在も活動を一緒にしている方が多く、ウェルビーイング研究を進める“ファミリー”のような感覚もあります。
堂上:“ファミリー”ですか! ウェルビーイングについて探求する秘密組織みたいなイメージですね(笑)。その“ファミリー”と、新しい何かを生み出していく流れができあがったわけですね。渡邊さんが人とつながって生きていくなかで、意識していることはどんなことですか?
渡邊:特に最近意識していることは、自分を“公共財”だと考えることです。
堂上:利他的な行動を取るということでしょうか?
渡邊:利他とはまた少し違うかもしれないですね。自分の視点だけでなく、関係者全体の視点から見た時に、自分はどんなことをしたら全体としても自分としてもうまくいくのか、その視点からの行動を第一の原理とする感じです。その場合、時には自分の利益が確保できないこともあります。でも、まずはそのことも含めて受け入れてみることにしています。もちろん自分にある程度“ゆとり”がないとできない部分もありますが、「その人を応援する、その人に使ってもらう」というスタンスを取ることにしていますね。
堂上:研究者として一定のポジションを確立したことが、行動変容につながったのでしょうか。
渡邊:慈善行為をしたいというわけではなく、いろいろなことに関わることが自分の充足や機会の拡大につながったり、誰かにとって「隣にいると嬉しい人」になったりすることで、自分に声をかけてくれる人が増えるという面もあります。さらに、そこには将来、自分を助けてくれる人がいるかもしれません。
堂上:「ペイフォワード=恩送り」の考え方にも似ていますね。「ありがとう」の気持ちが循環して、また自分に返ってくるような。
渡邊:そうですね。ただし、それはいつ返ってくるのかわからないですし、もしかしたら返ってこないかもしれません。相手に恩返しや感謝を計算することは、相手に何かを強制的にやらせることと一緒で、相手を制御しようとする気持ちがあるということになりますよね。私はただ、“公共財”として必要な人にうまく使っていただければよいなと思っています。
相手に何かを与えるというのは、そもそもすごく難しくて。一見どちらかが支援していると見えたとしても、異なる視点や異なる時間スパンで見たら、支援することによってその人が救われるためにしているのかもしれません。なので、何かを「提供する/提供される」という関係ではなく、関わるプロセスを一緒に楽しむ関係になれたらと思います。このような考え方は、視覚障害の方と一緒にスポーツを観戦するプロジェクトなどを、東京科学大学の伊藤亜紗さんらとご一緒できたことが大きいです。
人それぞれ、状況によってゆらぐウェルビーイングを可視化することの大切さ
堂上:2024年2月には、渡邊さんが監修を務めた『わたしたちのウェルビーイングカード』が出版されました。ウェルビーイングを可視化するというこのカードについて聞かせてください。
渡邊:『わたしたちのウェルビーイングカード』は、自分や周りの人たちの「よく生きるあり方」を実現する上で大切なことをカードで可視化して、それに気づいたり、対話を深めたりするためのツールです。スタンダード版は32種類のカード、日本語・英語対応のエントリー版は26種類のカードで構成されています。
それぞれのカードには、「達成」「信頼」「社会貢献」「平和」といったウェルビーイングをもたらす要因が1つ書かれていて、「I(わたし)」「WE(わたしたち)」「SOCIETY(みんな)」「UNIVERSE(あらゆるもの)」の4つのカテゴリに分けられています。自分のウェルビーイングに大切な要因のカードを選んで、その理由やエピソードを自身で振り返り、周囲と共有するというのが基本的な使い方です。
堂上:このカードを作ったきっかけは、どのようなことからだったんですか?
渡邊:何もないところで「あなたのウェルビーイングに大切なものは何ですか?」と問われても、なかなか答えられませんよね。しかしカードを眺め、その中からしっくりくる言葉を選び、そこから話を始めるというやり方なら、その障壁は低くなります。実際、この手法は小学4年生の授業でも行うことができました。
また、人によって異なるウェルビーイングの要因を共有するにも、何らかの可視化手段が必要になります。私はもともと「触覚」の研究をしていたのですが、触覚の感覚を分類したり共有する時にも、オノマトペの分布図を使って可視化するということを行っていました。そういう意味では、見えない価値観や感覚を、カードや分布図といった中間言語によって可視化することは、昔からやってきたことでもあるのです。
堂上:なるほど! では、いきなり無茶振りをしてしまいますが、渡邊さんの現在を示すカードを2枚選んでいただいていいですか?
渡邊:そうですね。「応援・推し」と「時間を超えたつながり」の2枚でしょうか。
堂上:なぜこの2枚を選ばれたのですか?
渡邊:ここでの「応援・推し」は、相手と一緒に何かをしながら、相手がいきいきとしていく感覚に近いです。実は、私は「プロレス」が大好きなんですが、その時に感じるウェルビーイングをイメージしています。
堂上:プロレスですか!
渡邊:プロレスの試合では、「相手の技を受ける」ということがあります。あえて避けずに受けることで相手の技がリング上で映える、つまり相手を輝かせようとする行動ともいえるんです。プロレスラーは試合のなかで、相手と戦いながら、相手と共創しているところがすごいなと。
堂上:他のスポーツ・競技とは大きく異なる部分ですね。
渡邊:プロレスの会場では、応援する観客も一体となって試合を盛り上げていきます。そのなかで、「この試合の場にいられてよかった」と多幸感を感じられる場が生まれます。それは、私にとって本当にウェルビーイングな時間なんです。
堂上:もうひとつの「時間を超えたつながり」は、なぜ選ばれたのですか?
渡邊:今日いろいろな話をしていて、私を形づくっているものが「時間を超えたつながり」なのかもしれないと思いました。たとえば、堂上さんが、私の昔の著書を読んでくださっていたことも「時間を超えたつながり」です。そもそも、今の自分の考え方があるのは、大学の頃からのいろいろな人々とのつながりの中で培われてきたのだと再認識しています。もちろん、選ぶカードは日によって変わるかもしれないです。
堂上:今日はこの2枚を選んでいただきましたが、明日はまた違うカードを選ぶかもしれないというのが面白いですね!
渡邊:『わたしたちのウェルビーイングカード』には白紙のカードが入っているのですが、私はこのカードがとても好きなんです。
堂上:何も書いていない「無」のカードではないんですか?
渡邊:機能的には、カードが無くなった時に書き込める予備のカードです。しかしそれだけでなく、ウェルビーイングとは、まさにこの白紙のカードからはじまると思っています。というのも、それぞれのウェルビーイングという意味では、誰もが何らかの要因の書かれたカードを持っているはずなのですが、そこに何が書いてあるのかは周囲の人からはわからない。だから、そのカードに何が書かれているかを想像したり、コミュニケーションを通して、それを知ろうとすることが大事なのだと思います。
堂上:なるほど。この白紙のカードがウェルビーイングの全てを物語っているんですね。
渡邊:私の妄想かもしれませんが(笑)。誰もがその白紙を持っていて、白紙の向こう側に「何かがある」と想定して、他者と関われたらよいのではないかということです。私はそのウェルビーイングに関する関わりの資質/能力を「ウェルビーイング・コンピテンシー」と呼んでいます。
「ゆ理論」がもたらすウェルビーイングな未来創造への手がかり
堂上:渡邊さんとドミニク・チェンさんの著書『ウェルビーイングのつくりかた』(2023年、ビー・エヌ・エヌ)で述べられている、ウェルビーイングをつくる3つの要素「ゆらぎ」「ゆだね」「ゆとり」についてお伺いしたいと思います。この「ゆ」から始まる3つの言葉が生まれた背景について教えてください。
渡邊:これは、私とドミニク・チェンさんが中心で作られた「ウェルビーイングをつくる3部作」の3冊目の内容ですね。3部作の1冊目は、さきほど述べた『POSITIVE COMPUTING』の翻訳本『ウェルビーイング設計論』です。「これから、ウェルビーイングという考え方が大切になっていく」という国内への概念の提示からスタートしました。2冊目の『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』では、様々な研究者や実践家とともに「わたしたち」という視点からウェルビーイングのあり方を考えました。そして3冊目では、具体的なウェルビーイングをつくる方法論について指針を記しています。
堂上:この本も読ませていただきましたが、「わたしたちのウェルビーイングを、どうやってつくるの?」という質問に対して、新しい視点からの手がかりを示してくれる1冊でした。
渡邊:3冊目ではウェルビーイング、つまり、“その人としての「よく生きるあり方」や「よい状態」”のつくり方に対して、ひとつの方向性を示さなければなりませんでした。そのなかで、つくる対象との関わり方の指針として表現したのが「ゆらぎ・ゆだね・ゆとり」の3つの「ゆ」です。
1つ目の「ゆ」は「ゆらぎ」です。「ゆらぎ」とは、それぞれの人にとっての変化のタイミングや文脈が尊重され、変化できること自体に価値があると考えるものです。ウェルビーイングは人それぞれ固有のもので、よくなったり、わるくなったり、時間とともに変化するのが当然だと考えます。例えば「身体の機能」にしても、人生後半になると、いろいろなことが以前よりできなくなります。そうだとしても、その時点でのよく生きるあり方はあるのではないかということです。成長したり発見を通じたりして様々な変化が人には生じる。もちろん、向上し続けることだけではないし、変化それ自体を受け入れ、大事にできるようなサービスや製品が必要になるのではないかということです。
2つ目の「ゆ」は「ゆだね」です。「ゆだね」とは、自律と他律、どちらかが正しいというわけではなく、関係性の中でそのバランスを考え、自分にとって心地よいあり方を探るというものです。自律性を発揮して、何かを達成することで自己効力感を得ることはもちろん大事です。それとともに、信頼できる他者にゆだねるということも、自身の役割の明確化や心の平穏、また、ゆだねられた人の自律性に重要です。自分でやれることはやりながら、対象を信頼した上で任せてみる。そこの信頼構築やゆだねのプロセスをどううまく設計するかですね。
3つ目の「ゆ」は「ゆとり」です。「ゆとり」とは、目的を最優先にするのではなく、プロセス自体をひとつの価値として認めるというものです。サービスや製品を作る時、問題解決を急ぐあまり結果だけを重視し、プロセスがおざなりになることがあります。しかし、むしろプロセスを楽しめたり、丁寧にしたりすることが、結果的に副産物としてよいアウトカムができるのではないかということです。例えばコミュニティをつくるとしても、「みなさんつながりましょう」と呼びかけるのではなく、「おいしいカレーを食べるパーティをしましょう」としたほうが、いろいろな人が集まり食事をするなかで仲良くなっていくことがあると思います。
これらは行き過ぎるのもよくなくて、うまいバランスが取れていること、違和感がないことが大事だと思います。ふだん意識することが少ない、これら3つの要素からウェルビーイングを捉えるのが「ゆ理論」です。この「ゆ理論」は、ウェルビーイングのためのサービスや製品をデザインする上での手がかりになるのではないでしょうか。
堂上:「ゆらぎ」ながら、変化していく。流れに身を「ゆだね」て、自分の一番いいポジションを探していく。「ゆとり」を持って、目的よりも過程を優先する。新しい価値観を持つことで、わたしたちのウェルビーイングがつくられていくということですね。それはまさに、渡邊さんの生き方そのものだと思います。
渡邊:インタビューの前半は、この言葉のためのフリだったのですね(笑)。堂上さんすごいです……!
堂上:最後になりますが、私もカードを2枚選ばせていただきました。「共創」と「縁」のカードです。私は『Wellulu』を通して、これまで多くの方たちと縁を結ばせていただきました。今日は渡邊さんとお話ができて、私を形づくっているのがこの2つだと確信できたんです。
多様な人たちが、多様なタイミングでつながることで、新しいものが生まれ、価値を提供していく。共創する仲間がいることがウェルビーイングだと思い、直感的にこの2枚になりました。本日は素敵なご縁をいただき、ありがとうございました!
東京大学大学院でバーチャルリアリティや知覚心理学について研究し、修了後、2005年にJSTさきがけ研究員、2013年にNTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究員になる。専門領域は触覚情報学、ポジティブコンピューティング、ソーシャルウェルビーイング論など。人間情報科学の視点から、人間の触覚のメカニズム、コミュニケーション、情報伝送に関する研究を行う。
著書に『情報を生み出す触覚の知性』(2014年、化学同人、毎日出版文化賞受賞)、『情報環世界』(共著、2019年、NTT出版)、『見えないスポーツ図鑑』(共著、2020年、晶文社)、『ウェルビーイングの設計論』(監修・共同翻訳、2017年、ビー・エヌ・エヌ)、『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために』(共監修・編著、2020年、ビー・エヌ・エヌ)、『ウェルビーイングのつくりかた』(共著、2023年、ビー・エヌ・エヌ)、『〈わたし〉のウェルビーイングを支援するITサービスのつくりかた』(監修、2024年、NTT出版)などがある。