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【遠藤健氏】ヒトに、美容業界に「ありがとう」のエネルギーを届ける。ENEOS発の新規事業

日本では古来より、「言葉には不思議な力が宿る」と信じられている。

私たちが生活の中で実感するのは、感謝の言葉に人の心をポジティブに変える力があるということ。「ありがとう」と口にすることで、感謝の気持ちはより強まり、ポジティブなエネルギーが育まれていく。

2023年10月よりエナフォワード株式会社がサービスを提供している「ビーネ®」は、美容師と顧客の間を「ありがとう」でつなぐアプリサービスだ。ENEOSの「新規事業開発プログラム」によってアイデアが生み出され、事業開発支援を行なうCo-Studio株式会社のほか、多数の外部チームの連携によって事業開発が進められたという。

今回は、エナフォワード株式会社の代表取締役を務める遠藤 健さんに、エナフォワードが目指す「ありがとう」が循環する社会の実現について、Wellulu編集長の堂上研が話を伺った。

 

遠藤 健さん

エナフォワード株式会社 代表取締役/ENEOS株式会社 中央技術研究所 技術戦略室 事業企画推進グループ 上席担当マネージャー

ENEOS株式会社に勤務し、オランダ駐在を経験。アジア・ヨーロッパ・中東・イスラエルなど広範なエリアで事業者向け素材の市場開拓営業に従事する。帰国後はバイオ関連の海外ビジネス立ち上げなど、様々な商材の海外展開業務を担当。学生時代から合わせて、これまで世界約40カ国を訪れ、多種多様な価値観・文化に触れてきた経験を活かして、2020年より国内外のスタートアップ連携に取り組む。2023年5月にエナフォワード株式会社を設立し、現職。

https://www.ena-forward.com/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

世界約40カ国を巡った経験を活かし、新規事業を立ち上げる

堂上:よろしくお願いいたします。 今日は、健さんと僕の「ケン」同士でいろいろとお話をさせてください!

遠藤:研さんとは、最初に出会ったときに「私もケンなんです!」と話しかけていただいて、とても印象に残っていたんです。今日はよろしくお願いいたします!

堂上:まずは、健さんのこれまでの経歴を聞かせてください。

遠藤:私はENEOS株式会社という石油関連の製品や素材を製造・販売する企業で働いています。オランダ駐在していた経験もあり、そのときは特殊な繊維を取り扱い、ヨーロッパや中東など様々な企業に飛び込み営業をかけていました。

もともとはバックパッカーとして各国を回っていたので、ENEOSでの経歴も含めて、これまで世界約40カ国を訪れているんです。

堂上:グローバルに活躍したいという気持ちは、昔から持っていたんですか?

遠藤:「ケン」という名前の由来に、「海外の方にも覚えてもらえるように」という思いが込められていたのもあり、海外に出たいという気持ちはありました。大学2年生のときにフィリピンやカンボジアなどを旅したことで、よりその思いが強くなったんです。

堂上:私の「ケン」も健さんと同じで、「海外でも通用するように」という思いで名づけられたんですよ!

堂上:海外やENEOSでの経験を経て、エナフォワード株式会社を立ち上げたのはどういった経緯からなのでしょうか。

遠藤:エナフォワードが提供している「ビーネ®」というサービスは、もともとENEOSの「新規事業開発プログラム」によって生み出された事業アイデアのひとつなんです。

美容師さんと顧客の最適マッチングアプリのアイデアからスタートし、事業開発支援を行っているCo-Studio株式会社や、コンサル企業・コミュニケーション支援企業など、多数の企業で編成されたチームと連携して、アジャイル検証とピボットを繰り返しながら事業開発を進め、2023年5月にエナフォワードを立ち上げました。

感謝の言葉が持つ「エネルギー」を循環させるサービス

堂上:「ビーネ®」とはどういったサービスなんですか?

遠藤:「ありがとう」という感謝の気持ちを基軸に、美容師さんとお客様との間に、人と人とのつながりを創り出し、美容業界のエンゲージメントを高めていくサービスです。

具体的に「ビーネ®」では、スタイリストからお客様に施術後の仕上がり動画・画像がプレゼントできる「ARIGATO 髪カルテ」を贈ることができます。さらに顧客に対しては、次回来店おすすめ日のリマインド、スタイリストのプロフィールのお知らせ、「ARIGATOスタンプ」の送信機能などがあります。感謝の気持ちを相互に伝えあうことで再来率を高め、美容師さんのモチベーションや自己肯定感を向上させ、また、手間のかかるカルテ作成やお客様へのリマインドフォロー業務などが簡単になり、働き方改革にもつながる。離職防止にも寄与する離職防止にも寄与するツールでもあるんです。

堂上:「ありがとう」を伝えることで、美容師さんも意欲が高まる。顧客との絆が深まることで、その店のリピーターになってくれるという良い循環が生まれていくわけですね。

遠藤:そうなんです。美容師さんは髪を整えることでお客様に元気を与えています。美容業界は、本当に大きなエネルギーを生み出していると思うんです。しかしそこには、長時間労働や高い離職率などの課題も残されていると思います。美容師さんたちがウェルビーイングになることで、生まれたエネルギーがお客様へ、さらにその先へと伝わって、日本全体に波及していくのではないでしょうか。

エナフォワードという社名は、美容業界と感謝の言葉が持つ「エネルギー」を「ペイフォワード(=善意や感謝を他人へと伝えていくこと)」していきたいという思いから、名づけているんです。

ARIGATOカードのイメージ

堂上:ENEOSとしても、いわゆる石油などの「エネルギー」だけではなく、社会に元気を与える「エネルギー」を作り出したいという思いがあるということですね。

「エネルギーをペイフォワードする」という考え方が生まれた背景には、各国を訪れて様々な文化と触れてきた健さんの経験が影響しているのでしょうか?

遠藤:オランダに駐在していたときの経験が大きいです。2013年に当時の皇太子夫妻がオランダの王位継承式典にご出席されたことがあります。

その際に、オランダ王室から日本皇室への心遣いを目撃し、さらに王室・皇室同士の特別な絆について知ったことで、日本で生まれた者として強く心を打たれました。オランダの方々に、そして社会に、感謝の気持ちをペイフォワードしていかなければならないと強く感じたんです。

堂上:オランダでの経験が、「ありがとう」を循環させていく今の事業につながっているということですね。

遠藤:そうだと思いますね。だから今日着ているオレンジの服も、色相的にエネルギーを表すものでもあるのですが、ルーツはオランダのナショナルカラーなんです!

微生物同士の共生が新たな進化を生む

堂上:健さんはエナフォワードを設立する前には、どのような事業を手掛けられていたんですか?

遠藤:あまり知られていないですが、ENEOSのグループ会社の一つではアスタキサンチンという天然色素をグローバルに販売もしているんです。日本に戻ってからは、そういったバイオテクノロジー関連の新規事業開発にも携わっていました。

また、事業ではありませんが、バイオテクノロジーの世界で出会った微生物に魅了され、その微生物の持つ力を色素とする企画を考え、クラウドファンディングで出資を募って実現したのが、繊維素材と微生物からの天然色素を組み合わせた「新しい布」の製造でした。

遠藤:これは、約25億年前に地球で初めて光合成によって酸素を作り出したといわれる微生物・シアノバクテリアで大麻布を染めあげたスカーフです。天然色素としてシアノバクテリアを使用するのは初めての試みでした。

微生物は水の中にも、土の中にも、無数に存在していて、お互いに共生しています。人と人も同じく、共生しながら、かけ合わさることでイノベーションが生まれていくと思うんです。渋谷のスクランブル交差点を見ていると、私には微生物同士がぶつかり合って、光を発して輝いているように見えるんですよね(笑)。

堂上:その気持ち、本当に共感します。私たち株式会社ECOTONEの社名は生態学の言葉から取っているのですが、「エコトーン」とは陸域や水域などの間にある移行帯を指す言葉なんです。

多様な生物が混ざり合うからこそ、新しい生態系が生まれる場所になるんですよね。

遠藤:おっしゃるとおりだと思います。私にもエナフォワードを始めるに当たって、もうひとり事業を支えてくれるパートナーがいるんです。

私はパッションタイプで、彼は物事をロジカルに組み立てられるタイプ。偶然で生まれたチームでしたが、異能の掛け算によって事業が前に進んでいるのを実感しています。

堂上:そうした縁もまた、健さんが持つエネルギーが引き寄せている気がします。

人が放つ光を浴びながら、学び取ることが自分のウェルビーイング

堂上:これまで世界を巡ってきた健さんが、次につなぎたい言葉は何でしょうか?

遠藤:私にはフランス人の師匠がいました。先日亡くなってしまったのですが、彼からは海外の文化や宗教やワイン、ビジネスの進め方など、多種多様なことを教わりました。その師匠から伝えられて、強く心に残っているのは「Ken、好奇心を持って世の中を見続けなさい」という言葉。

その言葉で、好奇心と探求心があれば、いつまでも学び続けられると気づくことが出来たんです。

堂上:素晴らしい言葉ですね。

遠藤:またトルコのイスタンブールに訪れたときにも、大きな気づきがありました。次の日のミーティングに備えて、日曜の夕方にジョギングをしていたのですが、そこには家族で楽しんでいる人やのんびりと釣りをしている人など、多様な人たちが目の前の毎日を生きて暮らしていると思ったんです。

当たり前なのですが、広い世界の中で、自分に出会える人の数は限られている。だからこそ、目の前にいる人に集中して、深く学んでいかなければならないと気づかされました。

堂上:人とのつながりは拡げていくだけではなくて、これまでに出会った人から学べることがたくさんあると気づかれたんですね。

堂上:健さんがこれから進めていきたい新規事業のアイデアはありますか?

遠藤:いろいろとやっていきたいことはあります。大きくはエネルギーという言葉のメタ化です。エネルギーという言葉が持つ領域はとても広く、まだまだ新規事業の広がりの可能性を感じています。具体的なアイデアとして、ひとつはまだジョークの範疇なのですが、「油のプロが作った、おじさんの脂を取るシャンプー」というのも面白いアイデアだと思っているんです。新しい組み合わせで、今までの常識をひっくり返し、人の動きを変えていく。

サービスステーションで、おじさんが「シャンプー、満タンで」と補充してもらう姿が話題になるかもしれません(笑)。まだまだアイデアベースですけれど、お父さん向けに買いたいなと社会人の娘さんが言っていたり、めちゃくちゃ脂を落とすシャンプーつくれますよというメーカーさんからのお声がけがあったり、そして、女性よりも男性のほうが一度購買行動が変わると長いお付き合いになる、ともいわれます。この世の中、そもそも正しい答えなど誰にもわかりませんので(笑)。

堂上:本当に面白いことを考えますね(笑)! そんな健さんは何をしているときに、一番ウェルビーイングを感じますか?

遠藤:研さんみたいに、今を生きて、未来に向かって何かを伝えようとしている人は、強い光を放っていると思うんです。そんな人と出会って、発する光を浴びているときが本当に楽しく、ウェルビーイングを感じる時間です!

堂上:私も健さんからたくさんのエネルギーを受け取りました! 本日はありがとうございました!

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