睡眠中の「寝る向き」は、単なるクセではなく、呼吸・血流・体圧・関節への負担などに影響する大切な要素。とくに呼吸との関係は深く、寝姿勢によっては睡眠の質が左右されることもある。日本では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の予備軍が940万人以上いるといわれており、体型や年齢にかかわらず、寝姿勢は見直す価値のあるポイント。
この記事では、仰向け・横向き・うつ伏せそれぞれのメリット・デメリットだけでなく、監修者おすすめの寝る向き・睡眠の質を高めるコツも紹介。
この記事の監修者

角谷 リョウさん
睡眠コーチ / 超回復・睡眠研究所 所長
この記事の検証者

吉田 健二さん
Wellulu編集部
30代後半・男性。30歳を過ぎた頃から「寝ても疲れが抜けにくい」といった変化を実感し、睡眠の質に関心を持つ。無理なく続けられる改善方法を模索している。
【一覧表】血流・呼吸・安心感など、寝る向き・姿勢別の評価
人によって感じ方は異なるが、以下が一般的な指標。
|
睡眠姿勢 |
呼吸 |
血流 |
関節への負担 |
消化 |
安心感 |
|
仰向け寝 |
△ |
◎ |
◎ |
△ |
〇 |
|
横向き寝(右向き・左向き) |
◎ |
△ |
△ |
〇 |
◎ |
|
うつ伏せ寝 |
△ |
△ |
△ |
△ |
◎ |

監修者:角谷
「仰向け寝×横向き寝」のハイブリッドがおすすめ!
体圧分散・身体への負担を踏まえて、以前までは「仰向け寝が最も理想的」と言われてきました。しかし、呼吸の観点から見ると、仰向け寝は舌の付け根が喉の奥に落ち込み気道が狭くなるデメリットがあります。
呼吸は睡眠の質と直結しています。十分に酸素を取り込めない状態が、朝起きても疲労が抜けない・すっきりしないという原因につながります。そのため、近年では寝返りが重要視され、仰向け寝と横向き寝をうまく組み合わせる睡眠姿勢が理想的と言われています。
日本人の寝る向き・SAS予備軍の割合

日本人はどの寝姿勢を選んでいるのか、また睡眠時無呼吸症候群(SAS)の予備軍はどのくらいいるのか。まずは、調査データをもとにした「寝姿勢の割合」と「SAS予備軍の実態」を紹介。
- 寝姿勢の割合
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)予備軍の割合
寝る向き・姿勢の割合

参考文献:楽天インサイト株式会社
睡眠時の姿勢は「横向き寝(右側向き・左側向き)」が約5割、「仰向け寝」が約4割、うつ伏せは0.5~1割程度。右側・左側など向きに違いはあるが横向き寝を選んでいる人が最も多い。

監修者:角谷
うつ伏せ寝をしている人は睡眠姿勢を見直そう!
うつ伏せ寝は全体としては少数派ですが、一定数はいます。呼吸のしにくさや首・腰への負担を考えると、睡眠の質という観点では積極的に推奨できる姿勢ではありません。
不安感やストレスなど、そのときの心身の状態によって無意識にうつ伏せを選んでいる可能性もありますが、長期的には身体への負担が蓄積しやすくなります。無理のない形で、少しずつ睡眠姿勢を見直していくことが大切です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)予備軍の割合

参考文献:Benjafield AV, et al: Lancet Respir Med 2019; 7(8): 687-698.
睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)は、睡眠中に呼吸が何度も止まる、あるいは浅くなる状態を指す。自覚がないまま進行しているケースが多く、いびきや日中の強い眠気、起床時のだるさなどがサインとされる。
日本では、潜在的な予備軍を含めると940万人以上が該当するといわれており、とくに中高年男性に多い傾向がある。

監修者:角谷
自覚症状のないSAS予備軍は多い!
睡眠時無呼吸症候群は「太っている人だけの問題」と思われがちですが、実際はやせ型の人や女性にも見られ、決して一部の人に限られた疾患ではありません。自覚症状が乏しいまま進行しているケースもあるため、いびきを指摘されたことがある・朝のだるさが続くといった場合は、「簡易PSG検査(※)」などで呼吸状態を確認するのもおすすめです。
※簡易PSG検査:睡眠中の呼吸状態を測定できる検査。指先や鼻まわりにセンサーを装着し、無呼吸・低呼吸の回数などを記録できる。医療機関から貸し出される機器を用いて測定する方法が一般的。

検証者:吉田
BMI23・体脂肪率20%でも、SASの兆候が!
肥満指数として健康診断ではA判定だったため、これまで睡眠時無呼吸症候群は「自分には関係ない」と考えていました。しかし、30代後半に差し掛かり、今回あらためて睡眠アプリ(※)でいびきを記録してみたところ、お酒を飲んだ日・疲労が溜まっている日はいびきをかいている時間が長いことがわかりました。
日中に強い眠気が出るほどではないものの、「朝すっきりしない日がある理由はこれかもしれない」と感じるきっかけになりました。
※今回使用したアプリ:いびきラボ
寝る向き・姿勢は重要?身体に与える影響

寝る向きが身体に与える影響は大きい。睡眠中の姿勢は、呼吸、消化、血流、さらには筋肉の緊張や体の負担にまで関わってくる。特に、仰向けや横向き、うつ伏せの各姿勢は、それぞれ異なる影響を体に与える。
- 寝る向きと血流・体圧の関係
- 寝る向きと呼吸・胃腸の関係
- 寝る向きと関節・顔との関係
寝る向きと血流・体圧の関係

寝る向きは血流に直接的な影響を与える。仰向けで寝る場合は体圧が均等に分散されるため、血流改善が期待できる。うつ伏せ寝は心臓に圧力をかけ、血流を妨げる可能性があるため注意が必要。
寝る向きと呼吸・胃腸の関係

寝る向きが呼吸に与える影響も重要。仰向けで寝ると、重力が働いて舌が喉に落ち込みやすく、無呼吸の原因となることがある。横向きで寝ると気道が開きやすく、呼吸がスムーズになるため、いびきや無呼吸症候群の予防になる。
胃腸に関しては、横向きの姿勢が消化を助け、食べ物の移動を促進するため、胃腸の負担を軽減する効果が期待される。逆に仰向けやうつ伏せでは、消化不良や胸やけを引き起こす可能性がある。

監修者:角谷
胃腸・消化機能に関しては、研究データが薄い。
呼吸に関しては、寝る向きによる影響が明確に示されています。一方で、消化機能との関連については、まだ十分な研究データがそろっているとは言えない状況です。
寝る向きと関節・顔との関係

寝る向きは関節にも影響を与える。横向き寝は肩や腰に負担をかけることがあり、関節にストレスを感じやすく巻き肩などに影響することも。顔に関しては、清潔でない寝具を使っている場合、うつ伏せや横向きで寝ると、肌荒れにつながりやすくなる。
横向き寝のメリット・デメリット。左向きと右向きは関係ある?

横向き寝の姿勢は、個々の体調や睡眠環境によって効果が異なるため、メリットとデメリットをしっかりと理解しておくことが大切。

監修者:角谷
最大のメリットは呼吸の安定性!左向きか右向きかは関係ない!
横向き寝の最大のメリットは、仰向け寝と比較したときに呼吸が確保しやすい点にあります。「左側を下にするとよい」と言われることもありますが、呼吸という観点では右向きでも左向きでも大きな差はありません。
左右にこだわりすぎず、自分が自然に寝やすい向きを選ぶことが大切です。一方で横向き寝を数時間続けたリスクとして、左右の肩に圧がかかり巻き肩につながることもあります。
【メリット】呼吸改善・消化促進・安心感
横向き寝は呼吸改善に影響し、気道を開放しやすくなるため、いびきや無呼吸症候群の予防が期待できる。また、横向き寝は消化促進・身体を少し丸めて寝ることによる安心感が出やすいという示唆もある。
【デメリット】身体のこりやゆがみ・肌のトラブル
横向き寝には、身体にこりやゆがみを引き起こす可能性がある。特に肩や腰に圧力がかかりやすく、寝返りが打ちにくいことから、長時間同じ姿勢を続けると関節や筋肉に負担がかかる。また、顔が枕に直接触れるため、肌の摩擦による肌荒れを引き起こす原因となることも。
仰向け寝のメリット・デメリット

仰向け寝は、体圧を均等に分散し、筋肉の緊張を緩和するなど、短期的には快適な睡眠姿勢として多くのメリットがある。しかし、無呼吸といったデメリットも存在する。

監修者:角谷
最大のメリットは体圧分散!
仰向け寝のメリットは、体圧をもっとも均等に分散しやすい点にあります。背中全体でマットレスに接するため、首・肩・腰の一部に負担が集中しにくく、身体への負担が比較的小さい姿勢といえます。背骨もまっすぐ保ちやすく、筋肉の緊張が抜けやすいことから、短期的な快適さという意味では理にかなった姿勢です。
一方で、呼吸の観点では注意が必要です。仰向けでは舌の付け根が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなる場合があります。
【メリット】体圧分散・筋肉の緊張緩和・肌トラブルの軽減
仰向け寝の最大のメリットは、体圧を均等に分散できる点。特に体全体にバランスよく圧力がかかるため、筋肉の緊張が緩和され、リラックスした状態で眠ることができる。また、仰向け寝では顔が枕に直接触れにくいため、肌の摩擦が軽減され、肌荒れのリスクも予防できる。
【デメリット】無呼吸
仰向け寝には無呼吸を引き起こしやすいというデメリットがある。特に寝ている間に舌が喉に落ち込むことがあり、これが気道を狭めて無呼吸の原因になる。いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まるため、これらの症状を改善したい場合には仰向け寝を避けることがおすすめ。
また、仰向け寝は反り腰を助長するケースもある。これらのデメリットを避けるためには、寝具の調整や寝姿勢を工夫することが大切。
うつ伏せ寝のメリット・デメリット

うつ伏せ寝は、短期的には快適に感じることもあるが、長時間の睡眠姿勢としてはデメリットが多い。

監修者:角谷
メリットは少ない!ウエイトブランケットを使った寝姿勢改善がおすすめ
うつ伏せ寝は、身体の前面が布団に触れることで包まれるような感覚があり、短期的には安心感を得やすい姿勢です。実際に、メンタルが落ち込んでいる状態ではうつ伏せ寝の割合が増える傾向があるという報告もあります。
しかし、構造的には首を大きくひねった状態が続きやすく、首や肩への負担が非常に大きい姿勢です。
姿勢改善方法として、ウエイトブランケット(重みのあるブランケット)を使用することで、適度な圧刺激が加わり、副交感神経が優位になりやすくなるといわれています。うつ伏せで得ていた安心感を、身体への負担が少ない方法で代替できる可能性があります。
【メリット】リラックス
うつ伏せ寝はリラックスしやすく、精神的な緊張をほぐすことができる。さらに、腹部が温まり、内臓に温かい刺激を与えることで消化を促進し、胃腸に優しい状態を作り出すとも言われている。
【デメリット】身体の負担・肌トラブル・睡眠の質低下
うつ伏せ寝は、長時間続けると身体に負担をかけることが多い。特に首や腰に強い圧力がかかりやすく、筋肉や関節に痛みを引き起こすことがある。また、顔を枕に押し付けるため、肌トラブルを引き起こす可能性も。これらのデメリットは、長期間続けることで睡眠の質低下にも繋がり、健康面での問題を引き起こすことがある。
症状・悩み別に見る!おすすめの寝る向き・姿勢

症状ごとに寝る向きや姿勢を調整することも。便秘や胸焼け、いびき、消化不良などの悩みを軽減するために、それぞれに最適な寝る姿勢がある。以下の一覧表で、特定の症状に合わせた寝る姿勢を紹介。
■症状別の寝る姿勢一覧表
|
症状 |
寝る姿勢 |
おすすめな理由 |
|
睡眠の質向上 |
横向き寝×仰向け寝 |
呼吸と体圧分散のバランスを踏まえた寝方がおすすめ。 |
|
睡眠時無呼吸症候群 |
横向き寝 |
横向き寝が最も気道を確保しやすい。 |
|
便秘・消化不良・胸やけ |
左側を下にした横向き寝 |
便通促進・胃酸の逆流を防ぐには、左側を下にした横向き寝が最適(※)。 |
|
腰痛・コリ改善 |
仰向け寝 |
仰向け寝が筋肉や関節にかかる負担が軽減しやすい。 |
※:科学的なエビデンスは少ないが、解剖学的な構造や重力の影響を踏まえた理論的な説明はある。

監修者:角谷
睡眠の質を高めたい場合は、仰向けか横向きかを固定するのではなく、自然に寝返りを打てる環境を整えることが大切です。一方、腰痛やコリの改善を目指す場合は、寝具の影響も大きなポイントです。マットレスが薄すぎると身体が沈み込みすぎたり、横向き時に肩や腰へ負担が集中したりします。姿勢だけでなく、寝具の見直しもあわせておこなうことが重要です。
すぐできる!寝る向き・睡眠の質を整えるコツ

寝る向きそのものを変えるだけでなく、眠りに入りやすい環境や心身の状態を整えることも大切。ここでは、寝る向き・睡眠の質を高めるコツとして、今日から実践できるシンプルな2つの方法を紹介。
- ジャーナリングで心を落ち着かせる
- 睡眠スペースを広くする
ジャーナリングで心を落ち着かせる

不安や考えごとが多い状態では、交感神経が優位になり、寝つきが悪くなりやすい。そこで有効なのが「ジャーナリング」。方法はシンプルで、寝る前に5分程度、頭に浮かんでいることを紙に書き出すだけでよい。
内容は整理されていなくても問題なく、「今日あったこと」「気になっていること」「明日やること」などをそのまま書くことでリラックスにつながる。

監修者:角谷
感謝日記もおすすめ。
ジャーナリングは有効な方法ですが、大切なのは「気持ちが落ち着くかどうか」です。そのため、感謝日記のような形もおすすめです。前向きな内容に目を向けることで、安心感につながりやすくなります。また、ハーブティーを飲む、アロマをたく、紙の本を読むなど、自分がリラックスできる習慣を一つ取り入れるだけでも十分です。

検証者:吉田
ジャーナリングと感謝日記をやってみた!
ジャーナリングを試してみましたが、いざ自由に書こうとすると「何から書けばいいのか」と迷ってしまい、逆に思考が広がってしまう感覚がありました。そこで、「今日よかったことをシンプルに書く」という感謝日記に近い形に変えてみました。「コーヒーがおいしかった」「昼に少し笑えた」「今日も無事に終わった」など、本当に小さなことを書くことで、少し気持ちが落ち着きました。
以下を踏まえて取り組むと書き出しやすかったので、気になる人はやってみてください。
<感謝日記のルール>
・小さな出来事を書く
・深堀はしない
・読み返さない
睡眠スペースを広くする

仰向けと横向きを自然に行き来するためには、寝返りを妨げないスペースづくりが大切。睡眠スペースが狭いと、無意識のうちに動きを制限し、姿勢が固定されやすくなる。寝返りは血流や体圧を調整する大切な働きがあるため、物理的な余白を確保することが睡眠の質向上につながる。

監修者:角谷
一人で寝るときもシングルよりセミダブルベッドがおすすめ。
とくに女性の場合、夫婦でダブルベッド(約140cm幅)に寝ている・子どもと一緒に寝ている場合、寝返りの回数が減る傾向があるといわれています。無意識に「動けるスペースが少ない」と感じることで、身体が動きを抑えてしまう可能性があります。
一人で寝る場合でも、シングルよりセミダブルのほうが寝返りを打ちやすくなります。寝る向きを工夫する前に、まずは自由に動ける環境を整えることが大切です。

検証者:吉田
シングルベッド→敷布団2枚で検証してみた!
ベッドを買い替えるのはハードルが高いため、まずは敷布団を2枚並べて横幅を広げて寝てみました。布団に入った瞬間、両手を伸ばせる余裕があり、「こんなにスペースがあると楽なんだ」と実感しました。これまでシングルベッドでは、無意識に身体を小さくして寝ていたのかもしれません。
寝返りの回数を実際に計測したわけではありませんが、翌朝の目覚めはいつもよりすっきりしている感覚がありました。大きな家具を変えなくても、敷布団を2枚並べるだけで体感は変わります。まずはスペースに余白をつくることから試してみる価値はあると感じました。
▼枕・マットレスなど寝具の選び方について詳しく見る
睡眠の質を上げるおすすめグッズ9選!プレゼントや自分ケアまで幅広く紹介
そもそも「睡眠の質」とは? 「ぐっすり眠れた」「なんだか寝た気がしない」そんな感覚の違いには、睡眠の質が大きく関係している。 一般的に睡眠の質は、朝起きたときに.....
寝る向きに関するQ&A
気持ち悪い・吐き気があるときの寝る向きは?
A. 一番楽な姿勢がおすすめ。

監修者:角谷
吐き気や体調不良があるときは、無理に理論どおりの姿勢をとろうとする必要はありません。人には本能的に楽な姿勢を選ぶ働きがあります。実際、気持ち悪いときは自然と横向きになったり、少し身体を丸めたりすることが多いものです。無理に姿勢を維持するよりも、「自分がいちばん楽だと感じる姿勢」を優先するとよいでしょう。
寝る向きの方角は「北枕」がよいと言われる理由は?
A. 科学的なデータはない。

監修者:角谷
北向き・南向きなど方角によって睡眠の質が向上するという明確な実証データはありません。科学的な観点では、方角よりも寝具や室温、光環境、呼吸のしやすさなどのほうがはるかに影響が大きいと考えられます。方角に強いこだわりがないのであれば、安心して眠れる配置を優先することが現実的です。
法人160社16万人以上をサポート。認知行動療法に基づいた独自の睡眠改善メソッドは、従来の1/8の期間で2倍以上の効果を発揮。睡眠はストレス耐性、集中力、創造性を最大化する「人間の再起動装置」。『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)をはじめ、睡眠に関する著書は6冊。21時就寝、4時には仕事の生活を送っている。