日々の忙しさの中で、自分のための休息を後回しにしがちな現代。「短い時間で心と身体を整えたい」というニーズの高まりとともに、静かに広がっているセルフケアアイテムが注目を集めている。
それが、表面に無数の鋭いスパイク状の突起が皮膚と筋肉に心地よい圧力を加える
「Shakti Mat(シャクティマット)」だ。睡眠前のひとときや、短時間の気分転換として自宅で取り入れる人も増えているという。見た目のインパクトとは裏腹に、横たわると「痛い」と「気持ちいい」の狭間の独特な感覚が広がる。
使用者からはリラックスしやすいといった声が集まっている。その背景には、インドの伝統修行から着想を得たストーリーと、女性の雇用創出につながるサステナブルな仕組み、そして「自分らしく生きる」を後押しする哲学があった。
今回は、シャクティジャパン・Yucaさんと、Wellulu編集長・堂上研が、シャクティマットがもたらす「痛気持ちいい」感覚の正体、体験から広がるセルフケア文化、そして人生の質を高めるウェルビーイングのあり方について語り合った。

Yucaさん
株式会社シャクティジャパン チームファウンダー/Woman Empower Coach

堂上 研
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
小さな痛みが“深いリラックス”に変わる瞬間。シャクティ製品が導くセルフケアと睡眠の質

堂上:シャクティマット・ピローは、表面に無数のスパイクが配されたユニークなアイテムですよね。初めて見たときは痛そうで少し構えましたが、実際に寝転がってみると“痛さの先にある心地よさ”に驚きました。今では家族全員が愛用するようになり、家のリビングでは誰かしらがマットの上でくつろいでいます。気づけば順番待ちができるほどです(笑)。
Yuca:その「痛そう」という印象が一番のハードルなのですが、一度試していただくと「思ったより平気」「むしろ気持ちいい」という声が本当に多いんです。この“痛さの先の心地よさ”はヨガ哲学の教えにもあり、適度な負荷を乗り越えた先に、深いリラックス状態が訪れる、と言われているんです。

堂上:まさにその感覚ですね! 最初のチクッとした鋭い刺激が次第にじんわりと広がって、だんだん体の力が抜けていく不思議さがあります。僕の場合、寝る前に背中や首まわりを刺激すると、深い眠りに入りやすい気がしています。
Yuca:もともとシャクティマットは、スウェーデン出身のお坊さんがインドの「針の修行」から着想を得て開発したのがはじまりと聞いています。インドでは古くから「ベッド・オブ・ネイルズ(Bed of Nails)」と呼ばれる修行の文化があり、無数の釘が敷き詰められたベッドの上に横たわることで精神統一や集中力を高めるとされています。釘が均等に配置されていることで体重が分散し、実際には皮膚を傷つけずに「深いリラックス」を得られるという、伝統的なヨガや瞑想の知恵が背景にあるんです。

Yuca:シャクティマットは2023年から日本での展開が本格化し、幅広い年代の方々から「眠る前のルーティンとして続けている」などの声をいただいています。
堂上:Welluluのバーティカルコミュニティ「睡眠上手になる会」を立ち上げて生活改善を意識するようになってから、夜の過ごし方を少し変えるだけで心身のコンディションに良い影響を与えることに気づきました。シャクティマットは、そのちょっとした変化をつくるアイテムとして、とても面白い存在だと感じています。
Yuca:実際に「夜中に目が覚めやすかったけれど、シャクティマットで少し体をほぐしてから寝ると落ち着きやすい気がする」「朝の目覚めが軽く感じられる」という声が届いています。アスリートの方からは、短時間のコンディショニングの一環として活用されるケースもあるんですよ。
触れてわかる、続けて実感する。リアルとオンラインで広がるシャクティのコミュニティ
堂上:SNS広告などでシャクティマットアイテムを見かける方も多いと思います。オンラインでの展開が印象的ですが、実際に体験できるリアルな場も用意されているんですよね。
Yuca:そうなんです。もともとシャクティ本社はオンライン広告を中心に展開してきたのですが、日本では「まず触ってみたい」「寝転んでみたい」という声が非常に多いんです。そこで私は、ウェルネスイベントや大手企業様とのコラボレーションなど、人が集まる場所に積極的に足を運び、対面での体験会を大切にしています。

堂上:たしかに、あの“痛気持ちよさ”は体験してみないとわからない感覚ですよね。イベント会場でマットに寝転ぶ参加者の楽しそうな表情を見ると、「ちょっと試してみようかな」という気持ちになりますし、その様子がSNSでも自然に広がっているのを感じます。
Yuca:見た目だけだと「なぜトゲトゲに寝転ぶの?」と思われがちですが、実際に寝てみると「案外平気」「むしろ気持ちいい」と言っていただける。そのリアルな反応がSNSで可視化されることで、また新しい方が興味を持ってくれるんです。
堂上:広告があふれる時代だからこそ、リアルな体験が起点となり、人が人を呼ぶようにコミュニティが広がっていく。みんなで寝転がってワイワイしている光景がSNSに上がると、「何これ、楽しそう」と話題になるんですよね。

Yuca:オンラインはもちろん強力な手段ですが、身体感覚に関わるセルフケアは「実際に触れること」がいちばんの説得力なんです。イベントに来てくださった方が翌日に家族の分を買いに来てくれたり、友人を連れてもう一度来てくれたり……。そうした“人から人へ”つながっていく広がり方を大事にしたいと思っています。

堂上:リアルとオンラインが補い合うことで、コミュニティの輪が自然に広がっていくわけですね。シャクティ製品はセルフケアの道具であると同時に、人と人がゆるやかにつながるきっかけにもなっている印象があります。
Yuca:本当にそうなんです。寝転ぶだけというシンプルな体験なのに、そこから誰かに伝えたくなる。その広がり方がすごく温かくて、私自身も気に入っています。
インドの伝統と女性エンパワーメントをつなぐ、シャクティ製品の循環

堂上:Yucaさんはヨガやインド哲学に詳しく、女性支援の活動にも取り組まれてきたと伺いました。シャクティ製品と女性エンパワーメントがどのようにつながっているのか、その背景を教えていただけますか。
Yuca:シャクティ製品が持つ大きな特徴のひとつが、インド国内で女性たちが一枚一枚、手作業で生産している点なんです。
インドでは教育や収入の面で女性が不利な環境に置かれることが多く、働く機会を持ちにくい地域もあります。シャクティ製品の工房では、女性が家庭の外で働き、収入を得ながらスキルを身につける場がつくられています。マットのスパイクを取り付ける作業も縫製作業もすべて手仕事で、丁寧に作り上げられているんですよ。
堂上:ただ商品をつくるだけではなく、背景にある社会課題へアプローチしている点が素晴らしいです。サプライチェーンの裏側で実際に女性の自立を支えているブランドは、やはり応援したいと思わせます。
Yuca:ありがとうございます。私自身、日本でシャクティマットを展開するうえでも、「どうしたらこの循環をさらに広げられるか」を大切にしています。日本での売上の一部をインドの女性たちの支援に回したり、必要に応じて現地の団体やプロジェクトに寄付をしたりと、社会的な還元の仕組みをつくっていきたいと考えています。
堂上:購入すること自体が、誰かの選択肢を広げる支援につながる仕組みなんですね。Yucaさんご自身の原体験も、こうした活動につながっていると伺いました。
Yuca:私が育った地域では、当時、男女で家族や仕事の役割がかなり固定的に見えることが多く、自分の可能性をもっと広げたいという思いが強くなりました。その気持ちが原動力となり、留学したり、海外で働いたり、ヨガを学んだりしながら、「女性が自分の選択肢を自由に持てる社会」を目指すようになりました。シャクティ製品を通じた活動は、その延長線上にあります。
堂上:プロダクトが単なる「物」ではなく、Yucaさんの人生経験や価値観を乗せて届けられているのが伝わります。だからこそ使う側も、ただのセルフケア以上の“ストーリー”を感じられるのでしょうね。
Yuca:トゲトゲのマットというとインパクトが強いですが(笑)、背景には伝統・哲学・女性支援という温かい物語があります。その背景を知って手に取ってくれる方が増えたら、とても嬉しいですね。

仕事も暮らしも“楽しむ”から変わり始める。Yucaさんが見つけたウェルビーイングの源
堂上:Yucaさんは、転職を重ね、アメリカでの8年間の生活を経て、ヨガインストラクターとしての活動もしながら、今はシャクティを広める立場にいらっしゃいますよね。多様な働き方を経験してきたからこそ、「仕事も暮らしも楽しむ」という姿勢を大切にされているのではないでしょうか。
Yuca:まさにその通りなんです。若い頃の私は、男性社会で勝つことが人生のテーマのようになっていて。「男性にできるなら、女性の私にもできるはず」と必要以上に気負っていた時期がありました。でも大抵のことはやってみれば達成できてしまうそのたびに「次は何を証明しよう?」と焦点が移っていく……そんな繰り返しでした。
そのなかでふと、「私は本当に人生を楽しめているのだろうか」「何のために働くんだろう」と、自分の軸そのものを問い直すようになったんです。その内省が、さまざまな挑戦へ踏み出すきっかけになりました。
堂上:“楽しむ力”がある人の周りには、人が自然と集まってきますよね。「Wellulu」の対談でも、経営者やリーダー本人が楽しそうに働いている組織は、例外なく組織や企業全体のエネルギーが健やかなんです。
Yuca:本当にそう思います。たとえば、経営者やリーダーが睡眠不足で慢性的に疲れていたり、心に余裕がない状態だと、それは必ず周囲に伝わりますよね。逆に、短い時間でも自分を整えて「今日こんなアイデアが浮かんだんだよ」と笑顔で話せるような状態でいられたら、組織の空気も軽くなると思うんです。自分をご機嫌にする工夫は、じつは働く環境にも大きく影響していくものだと感じています。

堂上:ウェルビーイングを形成する要素のひとつは、人との関わりの質ですよね。シャクティ製品がインドの女性たちとのつながりを生んでいるように、僕らが運営している「睡眠上手になる会」も、目的は「仲間同士で自然につながり合う」ことにあります。商品やイベントはそのためのきっかけのひとつです。
Yuca:私も同じ考えで、シャクティ製品をきっかけに「女性コミュニティ」を育てたいと考えています。たとえば「パートナー制度」といって、シャクティを応援してくれる方が売上の一部をインドの支援活動に寄付したり、ウミガメの保護活動を支援できる仕組みを小さく始めています。誰かが自分らしく活動することで、その周りにも良い循環が生まれていく。そういうコミュニティをもっと開いていきたいんです。
堂上:まさに「共創」ですね。プロジェクトに多様な人が関わり、それぞれの価値観や強みを持ち寄るからこそ、新しい楽しさや達成感が生まれる。これはウェルビーイングな社会づくりの核でもあり、これからのビジネスのあり方としてもとても大事な視点だと感じます。
寝る前の5分が変わる。シャクティでつくる「自分を整える時間」

堂上:最後に、Yucaさんがこれから目指したい未来について伺いたいです。シャクティというプロダクトを起点に、どのような社会の姿を思い描いているのでしょうか。
Yuca:私が目指したいのは、自分が「楽しい!」「心地いい」と思う選択をしながら、その行動が自然と周囲への貢献にもつながる社会です。
特に日本では、女性がセルフケアに時間を使いづらかったり、働き方で悩みを抱えたりと、まだ制約を感じる場面が多いのが実情です。だからこそ、“我慢し続ける”のではなく、「どうすれば日常がもっと楽しくなるか」という視点を持てる人が増えたら、暮らしも働き方も少しずつ変わっていくはず。シャクティは、その最初のきっかけになれると感じています。
堂上:小さな習慣やひとつのアイテムが、生活の質や考え方を大きく変えてくれることってあると思います。僕自身、シャクティマットとの出会いは偶然でしたが、寝る前の「整える時間」がつくりやすくなり、家族で「順番待ち」を楽しむ光景が日常に加わりました。そうしたポジティブな変化が、周りにも自然と広がっていくイメージを持っています。
Yuca:今後は、ニュージーランドやアメリカなど海外の拠点とも連携しながら、健康づくり・教育・コミュニティ形成といった幅広いプロジェクトに挑戦していきたいです。これまで長く海外を行き来してきた経験があるので、日本と海外を結ぶ架け橋のような役割も果たしていきたい気持ちもあります。その先に、「体や心のケアが、もっと当たり前に尊重される社会」が広がれば、とても嬉しいです。
堂上:Wellulu編集部としても、ウェルビーイングを軸に、仲間と共創しながら新しい取り組みをつくっていきたいと考えています。シャクティ製品が生み出している、人と人の関係性、女性たちの挑戦を支える循環、そして国や文化を越えて広がるコミュニティのあり方に、とても共感しています。
誰かの挑戦を応援する仕組みがさらに根づいていくよう、僕らも一緒に伴走できれば嬉しいです。今日はとても楽しく、貴重なお話ができました。ありがとうございました!
堂上編集長後記:
我が家は、「睡眠上手になる会」を創ってから、シャクティに出逢い、シャクティにはまっている。家の中で、「シャクティクラブ」という名前で、家族みんながシャクティの順番待ちをしているのだ。シャクティマットと枕を2セット並べて、寝る前に30分ほど横になるだけで、本当に睡眠の深さが変わるのだ。さらには、僕の五十肩が、いつの間にか治っていた。これは、整体やマッサージに行く時間がない人には本当に最適なものとなると感じるもので、僕のまわりでシャクティにはまっている人がたくさん出てきた。
シャクティが、ニュージーランドともつながっていることが分かったことで、より僕の中では親近感がわいた。(今回のインタビューで、原宿にあるクッキータイムの創業者が発起人と分かったのである)僕は、高校のときにニュージーランドに留学していて、よくこのチョコチップ入りクッキーを学校で購入していたのだ。
大自然の中で、シャクティの上で寝たら、それはそれで気持ちがいいんだろうなあ。今度、春になってキャンプに行くときに持っていこう、とも思う。シャクティも睡眠上手になるひとつのアイテムだが、何よりも寝る前のルーティーンが大切なのである。いつご飯を食べて、いつお風呂に入るか、お酒の量はどのくらいにするか、睡眠を基軸にライフモデルを設計すると、人生が変わるというのを実感している今日である。
この日は、中学生が「企業訪問」ということで、僕の仕事を見学・実体験に来てくれた。彼女たちは、シャクティマットにおそるおそる寝ていたが、とても楽しそうで、親に勧める、と言ってくれた。まだ中学生にはいらないか? 僕の息子ははまっているのだが……
素敵な出逢いに感謝です。どうもありがとうございました。

鹿児島県出身10代で渡米し、アメリカでの留学と起業経験を経て、外資系企業に勤務。その後、日本を拠点にエンパワーコーチ/ヨガインストラクターとして活動。2023年より、シャクティの日本展開に携わり、イベント登壇・体験会の開催など、国内での普及活動を行っている。
https://shaktimat.co.jp/