睡眠は無意識下でおこなわれるため、大きな問題を抱えていても自分で認識しづらい。睡眠習慣の問題を正しく認識できなければ、根本的解決も難しい。
睡眠の質を認識・改善するために、まず何から取り組めばいいのか。睡眠の質を可視化し、目覚めやすいタイミングで音が鳴るスマートアラームアプリ『熟睡アラーム』を開発する株式会社C2の堀江 英嗣さんにお話を伺った。
この記事の監修者

堀江 英嗣さん
株式会社C2 マネージャー
現代人は正しい睡眠の方法を知らない

── 現代人は、どんな睡眠課題に直面していると感じますか?
堀江さん:仕事や家事・育児、学業、娯楽など、そういった日常でやらなければならないことや楽しみたいことが優先され、時間を切り詰める上で睡眠が犠牲になっていると感じます。
結果的に、慢性的な睡眠不足に陥っている方が多いのではないかと。また、デジタル機器の普及によって、睡眠の量だけでなく質も低下している傾向もありますよね。
── 日中の忙しさで睡眠が犠牲になっている傾向があるんですね。
堀江さん:そういった現状があるにもかかわらず、睡眠の質を改善する正しい方法を知らない方が多いように感じています。たとえば、休日に寝溜めして平日の不足分を取り返したり、お酒を飲んで寝ればよく眠れると誤解していたり。
科学的に正しいとされる知識を知る機会も少ないので、生活に落とし込めないのも仕方ないとは思います。ただ、間違った方法で睡眠の量を取り戻そうとしても、質の改善はできないんですよね。
── 睡眠不足や質の低下は、健康面や日常生活にどんな影響を及ぼすのでしょうか?

堀江さん:肥満や糖尿病、高血圧など生活習慣病のリスクを高めると言われています。コロナ禍では、睡眠不足が免疫力の低下につながると、注目されていましたね。
日常生活では、日中のパフォーマンスに大きく影響します。眠い・だるいなどの不快な感覚を持ったり、小さなミスを繰り返したり、仕事の効率や集中力の低下にもつながってしまいます。
── 睡眠不足は、百害あって一利なしなんですね……。
堀江さん:そうですね。睡眠は個人の問題に捉えがちですが、社会全体で捉えれば睡眠不足の国民が多いことで、医療費の増加につながりますし、全体の仕事の効率が下がれば生産性の低下につながってしまいます。
── 睡眠を可視化するツールや睡眠に効果があるとされる健康食品、衣類が流行するなど、生活者の意識の変化は感じますか?
堀江さん:世代によりますね。弊社のアプリを使用してくださっているユーザーさんは、30代から40代、50代の自身の健康が気になりだした方が多い傾向です。ヤクルト1000やGABAなどの健康食品、リカバリーウェアなどの睡眠商材を入り口に、睡眠習慣の改善に興味を持ってくださる方が多いのかなと感じますね。
20代のユーザーさんもいます。社会人になりたてで新しい環境からストレスを感じている方などは、若くても睡眠改善への意識が高いのではと予測しています。
睡眠の可視化で得られる効果
── 株式会社C2がリリースしているアプリ『熟睡アラーム』では、睡眠の深さやいびきの有無も測定できるそうですね。可視化された情報から、生活者はどのような気づきを得られるのでしょうか?

堀江さん:ユーザーさんからは、データで見るとどれくらい眠れていないのか、なぜ眠れていないのかがわかったというお声をいただきます。
弊社のアプリでは、睡眠の質と紐付けて、睡眠前の行動をメモできるようになっています。枕を変えた、寝る数時間前にコーヒーやお酒を飲んだなど、寝具の変更や飲食習慣と紐付けて睡眠を振り返ることができるんです。
睡眠環境や生活習慣と睡眠の質との関連を比較して利用されている方も多いようです。
とくにいびきに関しては、自分で気付けていない方も多いんです。アプリを使用してはじめていびきをかいていることを自覚したという方や、大きさや呼吸の途切れなどに気づいて、医療機関を受診したという方もいます。
── 無意識にかいているいびきの異常に気付けるのはいいですね! ほかに、睡眠の可視化はどんな効果がありますか?
堀江さん:睡眠のリズムを見直して整えることができたり、睡眠に効果的だとされるグッズや食品が自分に合っているかを見直したりする方が多いようです。
最近では、ソーシャルジェットラグといって、平日と休日の睡眠リズムが異なるせいで、時差ボケのようになって、疲労感が溜まる状態が問題になっているんです。2時間以内に抑えるのが理想的と言われています。
睡眠を可視化すると、平日と休日でどれだけズレているのかを数値で認識できるので、改善しようと行動につなげている方が増えています。
寝具やサプリを試す際も、使用した前後での睡眠の質を数値で比較できるので効果がわかりやすく、習慣化しようと行動できたという方もいますね。自分の睡眠課題には、どんなアプローチが効果的なのかを正しく認識するのに、役立っているのかなと思います。
睡眠の質を上げるために、まずはここから!
── 睡眠の質を上げるために最初に取り組むべきこととは何でしょうか?

堀江さん:切り口はさまざまだと思います。たとえば、リズムを整えるという意味では、毎日同じ時間に起きて太陽の光を浴びてみる、寝る時の温度湿度を調節して寝つきや寝心地を確認してみる、寝る30分、1時間前からデジタル機器の使用をやめる、寝る前に軽いストレッチを取り入れてみるなど。
何からやればいいかわからないという方は、睡眠の可視化ツールを利用して睡眠の質と量を計測して、自分の睡眠を正しく認識することをスタートにしてもいいと思います。
快適な目覚めを提供するスマートアラームとは
── 株式会社C2の熟睡アラームアプリにあるスマートアラーム機能とは、どのように目覚めやすいタイミングを判断しているのでしょうか?

堀江さん:スマートフォンのセンサーで、身体の動きなどのデータから眠りが浅くなっているタイミングを検知して、アラームが鳴るようになっています。起床したい時間の何分前からアラームを鳴らすかも事前に設定し、その範囲内の眠りが浅くなっているタイミングで、アラームが鳴る仕様です。
以前集めたアンケートでは、寝起きの悪さに課題を感じていたユーザーさんの70%の方から、改善につながったという回答をいただきました。
── ほかに目覚めをよくするための機能でこだわっているポイントはありますか?
堀江さん:二度寝に関しては、スヌーズ機能を使ってある程度二度寝を許容する機能と、必ず起きられるように簡単なクイズに回答しないとアラームを止められないなどの目覚めアシスト機能を付けています。
アラームの音は、爽やかに目覚められるものを中心に100種類以上準備していて、好みのものを選んでいただく形になっています。音の鳴り方も、急に大きい音で鳴るのか、小さい音から徐々に大きくなるのかなど、好みに合わせて設定できるようになっており、自分の好みに合わせて選べるように選択の幅を広くしているのが特徴です。
睡眠の質を向上させるためには、起き方も重要!
── 気持ちよく起きるために、重要なことはなんでしょうか?

堀江さん:やはり起きるタイミングは重要だと思います。
人は、約90分おきにレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しているので、そのサイクルで起きる意識ができると、気持ちよく起きられると言われています。科学的にこういった事実があっても、普段の生活に落とし込むのが難しい場合や睡眠全体で見たときに適切でない場合もあると思います。
スマートアラームのようなデバイスやアプリを使用して、できる範囲で起きる時間を調整していくのがおすすめです。
── 睡眠の質を向上させるうえで、起き方が重要とは意外です。
堀江さん:重要度は人によって異なるとは思いますが、目覚めが眠りの最後であり、朝のスタートでもあり、寝起きがいいと1日をポジティブに始められるんですよね。寝起きがいいことで、よい循環を生むことができて、QOLの向上につながるのではないかと思います。
テクノロジーを活用して、睡眠の質を向上させるために
── 将来的に実現したい睡眠サポートの新しいサービスはありますか?
堀江さん:現在は、スマートフォンのセンサーや録音データなどで睡眠状態を計測していますが、AI解析などのほかの技術と組み合わせて、より制度の高い睡眠の計測を目指したいです。
また、睡眠計測だけに止まらず、日々の睡眠の状態に合わせて改善提案ができるコンシェルジュのようなサービスを提供したいと考えています。将来的には、企業や医療機関と連携を強化して、予防医療や健康経営に役立てられるサービスにしていきたいですね。
── 睡眠の見える化は、今後社会にどのような影響を与えると思いますか?

堀江さん:睡眠の可視化を通して、睡眠環境や生活習慣が睡眠にどのような影響を与えているかが理解できるので、セルフケア習慣を定着させることに役立つのではないかと思います。セルフケアの文化が根付くことで、社会全体で見たときには医療費の削減につながりますし、結果的に健康寿命の延伸にもつながっていくのではないかと。
また、睡眠データが蓄積がされることで、医療との連携もスムーズになり、一人ひとりに合わせた診断や治療が可能になる未来もあり得るんじゃないかと思っています。
── 新たな技術を取り入れた開発が、睡眠に関する正しい知識を広めていくことにつながりそうですね。
堀江さん:そうですね。10年ほど前にアプリをリリースしたときには、まだまだニッチなサービスでしたが、最近はゲーム感覚でできるアプリなども開発されて、睡眠について考える動きが世の中に広まりつつあることを感じています。
慢性的な睡眠不足は、重大な事故を起こしかねない健康問題です。健康診断で睡眠を計測して、結果に応じて保険料が安くなるなど、社会全体で睡眠を重要視する動きが出てくれば、一人ひとりの睡眠習慣改善に対する意識の向上につながるのではないかと思います。
睡眠を正しく見つめ直せる方が増えるように、サービスの向上を目指していきたいです。
── 睡眠データの可視化やテクノロジーの活用が、個人のセルフケアだけでなく社会全体の健康意識を変えていく可能性があるんですね。予防医療や健康経営への貢献も期待できそうで、とても興味深いです。本日は素晴らしい話をありがとうございました!
2012年に株式会社C2に入社後、様々なアプリケーションの企画・開発・運営に携わる。現在は主にマーケティングを担当しており、熟睡アラームのサービス改善、利用者拡大に取り組んでいる。
熟睡アラーム公式HP:https://jukusui.com/