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若者の5人に4人が運動不足?日常生活を運動に変える「ながら運動」のススメ【ミズノ】

世界で深刻化している「運動不足」。WHOの調査によれば、5人に4人の若者が運動不足の状態。日本においてもスポーツ庁の調査では、8割近くの人が運動不足を感じているという結果に。

運動不足は解消したいけど、運動の時間がなかなか取れないという人におすすめなのが「ながら運動」。仕事をしながら、家事をしながら、日常生活の中で無理なく運動を取り入れられる。

今回は、「ながら運動」を提唱しているミズノ株式会社より黒川さん、原さんに「ながら運動」が誕生した背景や効果、日常への取り入れ方について詳しくお話を伺った。

黒川 悦敬さん

ミズノ株式会社 アスレティック事業部

大学卒業後、フィットネスクラブでトレーナーとして経験を積んだのち、ミズノ株式会社に入社。学生の頃から前職までトレーナーとして高齢者の体力測定会や健康をテーマにした運動教室を開催。ミズノ株式会社へ入社後は健康イベントの企画担当として、企業の従業員や自治体の地域住民を対象とした健康イベントを開催し、これまで延べ200社以上のお客様の心と身体の健康をサポートしている。

原 満梨絵さん

ミズノ株式会社 運営本部

東京女子体育大学卒業。器械体操、やり投げ、クロスカントリースキーなどのスポーツ歴有り。第一種中学校高等学校保健体育教諭、健康運動指導士などの資格を保持しており、現在は体育館で勤務しながら、健康のための筋肉量の向上・維持を目的とした「貯筋体操」や、ポールを2本使って歩く「ノルディックウォーク」などの指導をはじめ、さまざまなプログラムの指導を担当。ミズノ株式会社が提唱する「ながら体操」の講師も務めている。

本記事のリリース情報
日常生活を運動に変える「ながら運動」がwelluluに掲載されました!

目次

若者の5人に4人が運動不足!?「ながら運動」の重要性

── 本日はどうぞよろしくお願いします。まず、ミズノ様が提唱している「ながら運動」は、どのような背景から生まれたのでしょうか?

黒川さん:近年、「健康経営」という考え方が注目されています。

その背景には、さまざまな要因がありますが、高齢化社会が進んだことによる高齢従業員の増加・労災対策の重要性が高まったことも挙げられます。

加えて、離職率の増加や、それにともなう企業の生産性低下といった課題も深刻化しており、健康に力を入れる企業が増えてきました。

とくに、経済産業省による「健康優良法人(優良な健康経営を実践する企業の「見える化」が目的)」という認定制度ができたことで、健康推進の取り組みに本格的に着手する企業が増加しています。

こうした社会の流れもあり、私たちが“働き世代が運動する機会を作ることの重要性”に着目したのがはじまりです。

働き世代の運動不足が深刻に

── 働き世代の方々は、どれくらい運動不足なのでしょうか?

黒川さん: 働き世代と言われる20歳~65歳で運動習慣を持つ人の割合は、男性で23.5%、女性で16.9%という結果がでており、厚生労働省としても男女ともに30%を目標にしているという現状があります。

また、2020年のWHOの調査では、成人の4人に1人、若者の5人に4人が十分な運動や身体活動をおこなえていないというデータもでています。

── 運動習慣のある人は、想像よりずっと少ないんですね。

黒川さん: 仕事が中心の生活では、どうしても運動に充てるまとまった時間を確保するのが難しいのが現実ですよね。

そこで私たちは、仕事や家事、趣味など「何かをしながら」できる運動に着目し、もっと気軽に運動を取り入れられる方法を提供しようと考えました。

それが「ながら運動」の発想につながっています。

── 「何かをしながら」であれば、わざわざ運動の時間を取る必要もなく、運動量を増やせるということですね。

黒川さん:はい、そのとおりです。

「ながら運動」は、仕事中や日常生活の中に取り入れられる簡単な動きであることがポイントです。

そして、特別な道具や広いスペースも必要ありません。あくまで「続けられること」を重視して、運動を日常の一部として自然に取り込んでいただくことが目標です。

たとえば、椅子に座ったままできるストレッチや、デスクでの簡単な体幹トレーニング、立っている間にかかとを上げ下げする運動、そしてオフィスシーンだけでなく、家事の合間やテレビを観ながらできるストレッチなども用意しています。

運動習慣を「ながら運動」でつくる

── 無理ない強度の運動で、時間がない人だけでなく、運動が苦手な人にとっても取り組みやすそうですね。

黒川さん: 「ながら運動」を開発する際に一番こだわったのは、運動のハードルを下げることです。そのため、動きの強度はあえて低く設定しています。

「ながら運動」はまず運動習慣がない方が、最初の一歩を踏み出せることを目指しています。そういった方は、いわゆるハードに身体を動かす運動をしようと思うと、それだけで身構えてしまったり、継続が難しくなったりしますよね。

そのため、「ながら運動」は、とくに「運動に関心がない」「やる時間がない」と感じている方でも取り入れやすいように工夫しています。

── 強度を低くする以外には、どのような工夫をされたんですか?

黒川さん:誰もが親しみやすい内容にするために、まずイラストや説明にユーモアを加えることを意識しました。「ながら運動」をまとめた冊子などもあるのですが、イラストを見るだけで「何これ、ちょっと面白そう!」と思ってもらえるように工夫しています。

今この記事を読んでいる読者の方も「こんな動きなら自分にもできそう」と感じていただけるはずですよ。

「ながら運動」を体験!まずは準備運動から

続いては、編集部が実際に「ながら運動」を体験させてもらうことに。普段「ながら運動」の講師を務めている原さんに、体験教室をおこなってもらった。

個性豊かな「ながらぴーぽー」の紹介

原さんそれでは早速「ながら運動」を体験していただきましょう。

今日は私と一緒に、4名の「ながらピーポー」が運動を紹介してくれます。それぞれ得意分野があって、動きの種類に合わせたキャラクターたちなんです。

── 個性豊かな方々が揃っていらっしゃいますね。

原さんまず1人目が「ノンストップかける」くん。彼は「燃焼系」の運動を担当していて、身体の脂肪燃焼を助けるような、テンポのいい動きを教えてくれます。運動の中でも汗をかきたいときにぴったりです。

次は「サラっとかおる」さんです。彼女は「ストレッチ系」の運動を担当しています。ストレッチは、身体をほぐして温めるだけでなく、けがの予防や運動後の疲労軽減にも効果的で準備運動としても欠かせません。

── 3人目の人は筋肉がすばらしいですね。

原さん:はい、見た目通り「筋トレ系」の運動を担当している「マッスルまする」さんです(笑)。腕立て伏せやスクワットなど、しっかり筋肉を使う運動を教えてくれますので、まするさんが登場する場面は、ちょっと頑張りどころです。

そして最後は、「血行促進系」の運動を担当する「人生さとる」さんです。血流やリンパの流れをよくする動きが中心で、むくみ解消や冷え対策にも効果的なんですよ。

今日はこの4名とともに、いろんな運動をご紹介します。

アイスブレイクを兼ねた準備運動

原さん まずはアイスブレイクとして、手を使った簡単な運動からはじめましょう。

まずは手を横にして「ぶらぶらぶら~」と軽く振りましょう。リラックスできたら、次は手を前に出して、指を「グー、パー」と開いたり閉じたりします。指先までしっかり動かすと、血行促進効果が期待できますよ。

原さん では、今度は片手は「グー」、片手は「パー」の状態になるように、開いたり閉じたりしてみましょう。ちょっと慣れたら「パー」と「チョキ」を交互に…。

── 意外と頭を使いますね。

原さん:片手ずつ別々に動かすのは少し難しいですが、これは脳のトレーニングにもなります。

続いては、両手を肩の高さまで上げ、手を開いたり閉じたりしてみましょう。胸の前を開くストレッチ効果と、背中を寄せる筋トレ効果が期待でき、肩こりや猫背の改善に効きますよ。

── 肩や胸がすっきりする感じがしますね。

原さん最後は、リラックスしつつストレッチに移りましょう。首をゆっくり回して、肩や首がほぐしましょう。身体全体が楽になりますよ。

ながら運動①:出勤前・リラックスタイムの一工夫

原さん それでは、本題の「ながら運動」をいくつかご紹介しますね。「ながら運動」は100種類以上もあるのですが、今日はオフィスで働いている人が日常生活で取り入れやすいものをピックアップしました。

出勤・お出かけ前は片手で靴下をはく

原さんまず、朝起きてオフィスに行く前、必ず靴下をはきますよね。たとえば、このときに“片手で靴下を履く”だけでも、十分「ながら運動」になります。

慣れない動きをすると脳が活性化されますし、立ったまま履こうとすると片足立ちをするので、バランス感覚や体幹も鍛えられますよ。

靴下のシーンでなくても、日常で意識的に“片足でバランスを取るような動き”を取り入れるのがおすすめです。

── ゲーム感覚で挑戦できそうですね!

食事やTVを見るときは、背もたれにもたれない

原さん 次は「マッスルまするさん」のおすすめの動きです。椅子に座ったままで、姿勢を保つ筋肉である腹直筋脊柱起立筋を意識的に鍛えていきます。

── 椅子に座るだけで筋肉を鍛えられるんですか?

原さん はい、ポイントは「背もたれにもたれないこと」です。もたれずに座るだけで、姿勢を保つための筋肉がはたらきますよ。

正面を向いて椅子に腰掛けたら、足の裏を床にしっかりつけてください。両手は太ももの上に置きましょう。そして息を吸って胸を横に広げるように開きながら、骨盤を「ぐっ」と立てて、おへそを少し前に押し出すイメージで背筋を伸ばしましょう。

── 背筋が伸びて、自然と身体がしゃんとする感じがします。

原さん その感覚が大事です! 正しい姿勢を維持するだけでも筋肉を使いますので、効果的に「ながら運動」できていますよ。

ちょこっと+aの動作も加えて!

次は、そこから息を吐きながら背中を丸めてみましょう。お腹を軽く引っ込めて、おへそを後ろに押し出すようなイメージです。そして息を吸いながら胸を開いて姿勢を正す…という動作を繰り返します。

── これを繰り返すとどうなるんですか?

原さん 背骨や骨盤周りの筋肉をほぐしながら鍛える効果があります。とくに、日頃から姿勢が悪くなりがちな方や、デスクワークで腰が固まりやすい方におすすめです。

日常の中でも座ったタイミングで、この動きを少し取り入れるだけでも、姿勢改善や腰痛予防が期待できますよ。

◾️お腹をへこませながら呼吸する(腹横筋)

原さん: また、呼吸をしながらお腹を意識的にへこませることで、お腹のインナーマッスル(深層筋)を鍛える運動にもなります。

背筋を伸ばして、息をゆっくり吸いながらお腹をへこませ、へこませたまま、ゆっくり息を吐きます。この動きを繰り返し、5回ほど続けてみましょう。

── 息を吸いながらお腹をへこませるのって、意外と難しいですね!

原さん: そうなんです。でも、慣れると自然とできるようになります。お腹をへこませるとインナーマッスルが鍛えられ、姿勢もよくなります。さらに、脂肪燃焼を助ける効果も期待できますよ。

座りながらだけでなく、歩いているときにも取り入れることができます。歩きながらお腹に力を入れると、体幹が安定して、姿勢が美しくなりますよ。

── 何気なくやっている呼吸を少し意識するだけで、こんなに効果があるなんて驚きです!

夕方におすすめ!食後の一服、CMタイムはベンチでかかとあげ

原さん 今度は、さきほどの姿勢から「かかと上げ」をしてみましょう。

椅子に座ったままできる簡単な運動ですが、ふくらはぎを鍛えるのにとても効果的です。ふくらはぎの深部にある「ひらめ筋」を鍛えられます。

ふくらはぎは「体の第2の心臓」と呼ばれるほど大事な筋肉で、血液を足元から心臓へ押し上げるポンプの役割をしているので、日頃から動かす癖をつけるのがおすすめです。

── かかとの上げ下げなら、ちょっとした隙間時間にできますね。座りっぱなしのときにやるとよさそうです。

原さん 長時間座っていると血流が滞りやすくなりますし、夕方になると足がむくむという方も多いですよね。そんなとき、この「かかと上げ」を取り入れてみてください。

では、早速やってみましょう。椅子に座って、足の裏を床につけます。そして、かかとをゆっくり上げて、下ろします。これを繰り返してみましょう!

── ふくらはぎが「キュッ」と縮む感覚がありますね。動かしているとじんわり温かくなってきました。

原さん これは血流が促進されている証拠です。座っておこなうだけではなく、立ちながらでもできるので、キッチンで料理をしながらやってみたり、オフィスでコピー待ちの間にやってみたりするのもいいですね。

── 座りながらも、立ちながらもできるなら、もっと日常に取り入れやすそうですね。

ながら運動②:仕事時の些細な動作も“ながら”チャンス

(挨拶)深くお辞儀してすばやく戻る

原さん 次は、挨拶にちなんだ運動です。日常的な動きである「お辞儀」を使って、腹筋や背筋を鍛えられる運動をご紹介します。

こちらも立って挑戦できますが、まずは椅子に座ったまま始めてみましょう。

原さん 息を吸いながら胸を広げ、先ほど学んだよい姿勢をつくってください。ここから息を吐きながら、身体を前に倒して背中を丸めます。このとき、お腹や腰、そしてお尻周りが、じんわりと伸び、ストレッチされますよ。

そこから息を吸いながら、なるべくすばやく身体を起こします。この動きで腹筋と背筋、とくに脊柱起立筋が鍛えられます。

── ただのお辞儀が、こんなに身体を使う動きになるとは思いませんでした。

原さん 意識しておこなうだけで、感覚が違いますよね。ぜひ「おはようございます」「失礼します」などの挨拶をするときに取り入れてみてくださいね。

(名刺交換)太もも裏を伸ばす

原さん 続いて登場するのは「サラッとかおる」さんです。名刺交換をする動作を取り入れながら、太ももの裏(ハムストリングス)を伸ばすストレッチをやっていきます。これは姿勢改善やひざの負担軽減にも効果があります。

── 太ももを伸ばすことで、ひざの負担の軽減につながるんですか?

原さん そうなんです。太ももの裏には「ハムストリングス」という筋肉がありますが、ここが硬いとひざが曲がりやすくなり、歩行時に負担がかかります。そのせいで、歩行時にひざが伸びず、ずっと曲がったような状態で、べたべたとした歩きかたになっている方もいらっしゃるんです。

── 意識しないと、自然とひざが曲がったまま動いてしまうんですね。

原さん はい。とくにマンション住まいの方が多い現代では、家の中でも音を立てないように静かに歩くことが多く、かかとから地面につき、つま先でしっかり地面をける動きが減っているんです。その結果、太ももの裏の筋肉が使われず、運動不足になりやすい傾向があります。

小さい頃からそういう環境にいる子どもたちは、地面を蹴る動きに慣れていないので、しっかりとした走り方ができなかったり、速く走れなかったりすることもあります。

── 子どもたちの走り方にも影響が出ているとは驚きです。それが「速く走れない」原因になってしまうこともあるんですね。

原さん そうなんです。かかとから地面についたり、つま先で地面を蹴る動きができないと、腕を振っても進みにくい状態になります。この習慣は大人にも影響するので、ぜひ日常の中でハムストリングスを伸ばす運動を取り入れてみてください。

── では、実際にその運動を体験してみたいです!

原さん では、立ち上がって一緒にやってみましょう。ひざはしっかり伸ばし、お尻を後ろに突き出すようにして身体を少し前に倒していきます。名刺交換の動作をイメージして、「よろしくお願いします!」と言いながらやってみましょう。

── よろしくお願いします!…あ、太ももの裏がぐっと伸びているのがわかります。

原さん 意識をしてひざを伸ばすことで、普段使わない筋肉がしっかり伸ばされています。

先ほどご紹介した「ながら運動」も取り入れて、そのまますばやく身体を起こすと、腹筋や背筋も鍛えられるので、一石二鳥どころか、一石三鳥の効果がありますよ!

(Web会議)よく見たら空気イス?スクワット風の運動

原さん まするさんは、運動上級者の方なので「Web会議をしながらフルスクワット」をされたりもします。

さすがに、このまするさんの姿勢で仕事をするのは、すごく難しいので、ここでは運動初心者でも取り組めるスクワット風の運動をご紹介します。

原さん 椅子に座ったら、足を肩幅より少し広めに開きます。背筋を伸ばしたまま、軽く身体を前に倒してお尻を少し浮かせます。ここで5秒間キープして、ゆっくりもとの姿勢に戻りましょう。

── あっ、太ももがプルプルしてきました!意外と効きますね。

原さん 身体の中で一番大きな筋肉である、太ももの筋肉を使っている証拠です。

椅子に座ったり、椅子から立ち上がる際にもこの動きを取り入れるのがおすすめです。ぜひお手洗いに行くときや、椅子に座る動作で思い出してみてください。

毎回3~5秒キープするだけでも十分効果があります。「1日に30回」などと決めてしまうと続けにくくなるので、日常の中で少しずつ意識するのがポイントです。

── 日常の立つ・座るの動作が運動に変えられるなら、無理なく実践できそうですね。

(ブレイクタイム01)こぶしで太ももをたたく

原さん 次は4人目、「人生さとる」さんの運動です。これはとっても簡単で、太ももを叩いたりさすったりして血行を促進するものです。足がだるいと感じたときやブレイクタイムにおすすめです。

原さん 片足ずつ、両手でトントン軽く叩きます。ひざに近いほうからお尻に向かって、外側、前側、内側をまんべんなく叩いていきましょう。

全体的に叩いたら、今度は、手のひらを使ってさすります。ひざから太もも全体を優しく撫でるようにイメージしてください。

叩くことで血流を促進し、さすることでリンパの流れをよくすることができます。とくに夕方、足がむくみやすい方や冷え性の方には効果的ですよ。

── デスクワーク中にも取り入れやすい運動ですね。

原さん 今度はこの動きに少し「脳トレ」の要素を交えてみましょう!

右手を「グー」、左手を「パー」にしてください。グーにした右手は太ももを「叩く」、パーにした左手は太ももを「さする」。これを同時にやってみてください。

次は、手を入れ替えます。右手を「パー」にしてさすり、左手を「グー」で叩いてみましょう。

── 叩きながらさする…! なかなか頭を使い、おもしろいですね!

原さん この運動は、血流を促進するだけでなく、慣れない動きをすることで、脳を活性化させる効果も期待できますよ。疲れが溜まったときや歩き疲れた日の夕方に取り入れると、むくみの防止にもなるのでおすすめです。

(ブレイクタイム02)肩をすぼめて戻してを繰り返す

原さん 次は肩周りのストレッチです。座りっぱなしやデスクワークで凝りやすい肩をほぐしていきます。

原さん まず、両肩をぐっと持ち上げます。そしたら肩を上げた状態で胸を開き、肩を後ろにストンと下ろすイメージです。

この動きを繰り返し、肩や首の筋肉を柔らかくしておくことで、血流が良くなり、疲れにくい身体になります。どこでも簡単にできるので、ぜひ休憩時間や仕事の合間にやってみてください。

(ブレイクタイム03)腕の内側のリンパを流す

原さん 最後は腕の内側のリンパを流すマッサージです。

右手を肩の高さまでまっすぐ上げ「きつねポーズ」を作ったら、左手で右腕の内側を手首から脇に向かって優しくマッサージします。

「モミモミモミモミ」と言いながら楽しくおこなうのがポイントです!

── この「きつねポーズ」にはどんな効果があるんですか?

原さん これは楽しくなる効果です(笑)。おもしろいポーズをしたな、と覚えやすいですよね。

このようにリンパを流すことで、血流がよくなり体全体が軽くなります。お風呂でやるとさらにリラックス効果が高まりますよ。

(ちょっと雑談)腰をひねって後ろの人に話しかける

── 「サラッとかおる」さんですね。これ、後ろを振り返るだけで運動になるんですか?

原さん そうなんです。この動きでは「腹斜筋」というお腹の横にある筋肉を使います。通常の腹筋運動では「腹直筋」というお腹の真ん中の筋肉を使いますが、ひねりの動きではこの腹斜筋が鍛えられるんです。

背筋を伸ばして椅子に座ったら、右足を組み、右に腰をひねるようにして後ろを振り返ります。

── 想像したよりも、お腹周りに効いている感じがしますね!

原さん そうですよね! 腹斜筋が鍛えられると、ウエスト周りが引き締まりやすくなりますし、体幹がしっかりして姿勢もよくなります。この動きをオフィスや家でこまめに取り入れるだけで効果が期待できますよ。お腹の横がしっかり伸びるので、ストレッチ効果もあります。

座りっぱなしで腰が重いときや疲れたときにやるのがおすすめです。

(受付)ふくらはぎをのばしながら受付する

原さん これは「ふくらはぎを伸ばしながら受付をする」というシチュエーションをイメージしたストレッチです。名刺交換では太ももの裏を伸ばしましたが、今回はふくらはぎを意識してみましょう。椅子や机を支えにしておこなうのがおすすめです。

前の足に少し体重を乗せ、お尻を後ろに突き出すようなイメージで、太ももの裏も一緒に伸ばしてみましょう。さらにここで「トントントン」と軽く弾むように動かすと、ふくらはぎの筋肉が刺激されて血流がよくなります。

座りっぱなしや立ちっぱなしで足がだるくなったときに最適です。

(PC作業中)つくえの下で足を組む

原さん 続いては、机の下でこっそりできる、お尻の筋肉である「大臀筋」を伸ばす動きです。お尻と腰は繋がっていますので、腰が重いときや疲れたときにとくに効果的ですよ。リモートワーク中やデスクワークの合間にもぴったりです。

原さん まず、椅子に座ったまま、右足を左足のひざに乗せましょう。そしたら右手で右ひざを軽く押しながら、お尻の外側を伸ばします。背筋もしっかり伸ばし、お尻の筋肉や腰の付け根がじんわりと伸びていく感覚を味わってください。

── 右のお尻がしっかり伸びています!気持ちいいですね。

原さん 今度は左足を右ひざに乗せてみてください。左右差を感じませんか?

── そうですね、右より左の方が少し硬い感じがします。

原さん 身体の使い方や癖によって、左右差が出てくることが多いんです。普段よく足を組む方の筋肉が硬くなっていたり、バッグを片側で持つ癖なども影響します。この左右差を感じながらストレッチをすることで、身体のバランスが整いやすくなりますよ。

(上司への報連相)超高速でうなずく

原さん 次は、“超高速でうなずく”です。首をこんなに動かすと相手がびっくりしてしまうと思いますが、適度に首を回したり動かしたりすることは、リフレッシュに効果的です。

原さんゆっくり下を向いて、首の後ろを伸ばします。頭の重みを利用して、じんわりとストレッチしましょう。

次に、ゆっくり上を向いて首の前側を伸ばします。余裕があれば、指先で軽く押さえるとさらに気持ちよく伸びますよ。

── 簡単な動きですが、首や肩がじんわりほぐれていく感じがします。

原さん首や肩の筋肉はデスクワークで凝りやすいので、少しでも動かして血流をよくしてあげるのが大事です。リンパの流れもよくなるので、むくみ防止にも効果的ですよ。

前後だけでなく、首を左右に倒して、首筋を伸ばしましょう。首を倒したとき、反対側の肩を軽く押さえるとさらに効果的です。

(雑務)ホッチキスしながらひざの曲げ伸ばし

原さん 次は、座ったままでもできる「ひざの曲げ伸ばし」です。「マッスルまする」さんはホッチキスをしながら取り組んでいますね。太ももの前側、大腿四頭筋を鍛える運動で、デスクワーク中に気軽に取り入れられますよ。

椅子に深く座り、片足を軽く伸ばします。つま先を外側に向けて、ひざを曲げたり伸ばしたりしましょう。

── 家でテレビをみたりしながら取り組めそうですね。

原さん慣れてきたら、足をまっすぐ伸ばした状態から、ひざを胸の方に引き寄せてみましょう。そして引き寄せた足を前に蹴り出す動作を繰り返してみてください。足の付け根(腸腰筋)と太もも(大腿四頭筋)のトレーニングです。

これで腹筋と腸腰筋を刺激することができます。普段座りっぱなしだと使いにくい筋肉なので、この運動で鍛えると姿勢改善や腰痛予防にもつながりますよ!

「ながら運動マスター」の仲間入り!

── 取り組んで「楽しい!」と思える運動ばかりで、日頃からやってみようという気持ちになりました。

原さん今日紹介したのはほんの一部ですが、これだけでも「ながら運動」の基本を十分に体験していただけたと思います。ポイントは、とにかく気軽にはじめられることなんです。

まずは小さな一歩からで大丈夫です。何かひとつだけでも「ながら」で運動を取り入れてみてください。慣れてきたら、仕事しながらでも通勤しながらでも、どんどん生活に取り入れられるようになりますよ。

── 生活そのものを「ジム化」する感覚ですね。なんだか楽しくなってきました!

原さん そうなんです!「ながら運動マスター」になるためには、特別な道具もいりませんし、場所も選びません。「今日からながら運動をしてみよう」と意識するだけで、あなたの周りがすべてトレーニングの場になります。

── 私もこれから、どこでも「ながら運動」を実践してみます。ありがとうございました!

「ながら運動」を取り入れて無理なく運動不足を解消!

“身体を動かそう”という意識が何より大切

── 実際に体験してみると、どの動きも簡単で取り入れやすい印象でした。この「ながら運動」を取り入れることで、どのような効果が期待できるのでしょうか?

黒川さん 一番大きな効果は、「運動しよう」という意識、つまりマインドセットを変えることです。

── “意識を変えること”が運動をはじめる第一歩なのですね。

黒川さんはい、まさにそこが一番重要です。

運動が生活に根付いている方には当たり前のことでも、運動習慣がない方にとっては、そもそも運動を始めるというハードルが非常に高いんですよね。「ながら運動」を通して、まずはその意識を少しずつ変えていければと思っています。

運動強度も低いですし、「ながら運動」をやったからといって、すぐに運動能力が向上したり、足が速くなったりするわけではありません。ですが、仕事中や家事中のちょっとした合間に身体を動かす習慣をつけることで、体調不良の予防や不調の改善といった効果は十分に期待できます。

たとえば、腰痛や肩こりの予防など、デスクワークが多い方が抱えやすい身体の悩みを軽減する助けにもなりますよ。

── 日常のちょっとした不調の緩和につながるのは嬉しいですね。

黒川さん とくに「ながら運動」はデスクワークやオフィスでの実践を想定していますので、肩回りや腰回りを中心に身体をほぐす動きを取り入れています。

身体の不調を緩和しつつ、「少し身体を動かすって意外と簡単だな」と感じてもらうことを目指しています。そして、この体験を通じて少しでも「運動を続けてみたい」という気持ちが生まれれば、それが次のステップへのきっかけになります。

子育て世代、シニア世代、働く女性向けのプログラムも

── 先ほど体験させていただいた内容は、オフィスを想定したプログラムという印象でしたが、ほかの世代や異なるシーンに向けたプログラムもあるのでしょうか?

黒川さん はい。「ながら運動」は、働く世代を中心に展開していますが、それ以外にも多様なニーズに応えるプログラムを用意しています。

まず、企業向けには、先ほど紹介させていただいたような「通常編」のプログラムが代表的です。朝起きてから仕事を終えて帰宅するまでのシーンを抜粋して、ストーリー仕立てで構成しています。オフィスワーカーが1日の中で無理なく取り入れられる動きを取り入れました。

ほかには、高齢従業員やシニア世代を対象にした「つまずき対策編」というプログラムがあります。これは、つまずきや転倒が増えやすい年齢層に向けて、バランス感覚や脚力を鍛える動きを取り入れた内容です。

また、子育て世代に向けた、家事や育児の合間にできる簡単なストレッチや運動を提案する「子育て奮闘編」もあります。

さらに、定年後のシニア世代向けには「人生先輩編」というプログラムがあり、心身の健康維持を目的とした内容で、とくに日常生活で取り入れやすい動きを重視しています。

── 「つまずき対策編」や「子育て奮闘編」、そして「人生先輩編」、どれもネーミングがユニークで親しみやすいですね。

黒川さん ありがとうございます。運動が苦手な方でも興味を持っていただけるような、ネーミングにもこだわりました。

それぞれのプログラムは、対象となる世代やライフスタイルに寄り添った内容になっているので、幅広い方に楽しんでいただけると思います。

── これだけたくさんのコースがあれば、オフィスワーカー以外でも自分に合ったものを見つけられそうですね。

黒川さん そうですね。「ながら運動」のコースは非常に柔軟で、様々なニーズに対応できるようにしています。

女性向けには、女性特有の悩みに特化した「働く女子編」も用意しています。冷えやむくみ、さらにはお腹周りが気になる方に向けて、簡単にできるストレッチや軽い筋トレを提案していますよ。オフィスでも実践しやすく、日常生活に取り入れやすい内容です。

また、企業様のニーズに合わせてカスタマイズすることも可能です。たとえば、ある企業様から「うちの従業員は肩こりや腰痛を抱えている人が多い」といった相談をいただいた場合、その企業の状況に応じて「肩こり・腰痛編」のように、内容を組み立てることができます。

「ながら運動」の動きは100種以上あるので、その中から目的に合わせて最適なものを選んでプログラムを作成します。講習会形式で提供することも可能です。

親しみやすいオリジナルキャラクター

── 「ながら運動」を体験した際、かわいらしいキャラクターがとても印象的でした。

黒川さん はい、ありがとうございます。

「ながら運動」のオリジナルキャラクターは、親近感を持ってもらえるよう、「どこにでもいそうな人」をデフォルメして作成しています。

たとえば、「マッスルまする」さんは一児のパパで、筋トレが趣味の従業員。忙しい日常の中でも健康に気を使っている、典型的な現代のお父さん像です。

また、「サラッとかおる」さんは元ラクロス部出身で、以前は運動をしていましたが、今は仕事や生活で忙しく、なかなか運動できていない女性をイメージしています。

ノンストップかける」くんは、休日にいろんな趣味を楽しんでいるアクティブな若者です。

それぞれの背景や性格があり、働く世代やさまざまなライフステージの方々が共感しやすいよう工夫されています。

── すごい! キャラクターの設定がしっかりしていると、より身近に感じられますね。「人生先輩編」や「子育て奮闘編」にもキャラクターが登場するのでしょうか?

黒川さん はい、それぞれのプログラムにもキャラクターが登場します。「人生先輩編」では、シニア世代の「まだまだいさむ」さんと「まだまだいくよ」さんというおじいちゃん・おばあちゃんキャラクターが登場し、運動が苦手な方にも親しみやすいイラストや動きを提案しています。

「子育て奮闘編」では、忙しいママやパパがメインキャラクターとなり、育児の合間にできる運動を紹介していますよ。

── キャラクターみたさに、ほかのプログラムもどんどん気になってきました(笑)。

「ながら運動」を機に、運動参加率の向上を目指して

── 今後、「ながら運動」をさらに普及させるための目標や取り組みについて教えていただけますか?

黒川さん 今後はさらに多くの地域や団体、企業とコラボレーションを進めていきたいと考えています。地域ごとに運動への課題やニーズは異なるため、それぞれの特徴に合った「ながら運動」を提案していくことで、運動参加者を増やしたいですね。

── 「ながら運動」がきっかけで、さらに運動やスポーツを楽しむ人が増えると素敵ですね。

黒川さん そうですね。私たちミズノは、体育館などの施設運営もおこなっていますし、運動に必要なウェアやシューズなども提供しています。

「ながら運動」で気軽に運動を始めてもらい、そこから本格的なスポーツや運動にステップアップしていただければ、より多くの方の健康づくりをお手伝いできると考えています。

まずは日常生活のなかで始める「ながら運動」をきっかけに、運動参加率を少しでも上げることが、私たちの一番の目標です。

── 私も今日から「ながら運動」をはじめたいと思います!

黒川さん ありがとうございます。

「ながら運動」を始める際に一番大切なのは、とにかく何か一つから日常に取り入れてみることです。何でもいいので、まずは一つだけでも始めてみてください。たとえば、テレビを観ながら足踏みをする、歯を磨きながらかかとを上げるなど、気軽に取り組めるものから試してみるのがおすすめです。

運動と聞くと、どうしても「時間を作らなければいけない」「準備が大変」というイメージを持つ方もいますが、「ながら運動」のいいところは、普段の生活にそのまま取り入れられる点です。

また、「ながら運動」は種類も豊富で、100種類以上の動きをまとめた冊子も用意しています。

人によって取り入れやすい動きは異なるので、自分に合った、無理なく続けられるものを見つけてもらえればと思います。

── 貴重なお時間をありがとうございました!

Wellulu編集後記:
自分が運動不足だと自覚していても、運動の時間が取れないなどの理由で運動習慣が身につけられない人は多くいらっしゃると思います。今回ご紹介いただいた「ながら運動」では、道具も必要なく、わざわざ時間を取らなくても実践できるものが多く、楽しく運動習慣をつけられそうだと感じました。

キャラクターもおもしろくて、ぜひほかのキャラクターの運動も見てみたいと思いました。今日から毎日1つは「ながら運動」を取り入れていきたいです。

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