
3人に1人が何らかの睡眠の悩みを抱えているといわれる中で、注目されているのは「深部体温」のコントロールだ。入眠時に体の内部の温度をうまく下げることが、深い眠り=良質な睡眠を導く鍵になる。
この「深部体温」と「睡眠」の関係性について、長く研究を続けてきた株式会社エアウィーヴと味の素株式会社。今回、両社が初めてのコラボレーション企画を実施するという。
集まったのは、株式会社エアウィーヴ(以下、エアウィーヴ)から人事総務本部長の冨田力矢さんと事業戦略本部マーケティング部PRグループの飯沼桜子さん。味の素株式会社(以下、味の素)からは、スポーツ&ヘルスニュートリション部 マーケティンググループの近澤絵里菜さん、D2C事業部 販売マーケティンググループの伊東岳彦さんのキーパーソン4名。
生活者としてのリアルな視点を交えながら、「深部体温」と睡眠の関係性、そして共創による新たな価値づくりについて、Wellulu編集長の堂上研が話を伺った。

冨田 力矢さん
株式会社エアウィーヴ 常務執行役員/人事総務本部長/社長室長

飯沼 桜子さん
株式会社エアウィーヴ 事業戦略本部マーケティング部 企画グループ兼PRグループ
2022年に株式会社エアウィーヴに入社。1年半の間、ホテルへの営業業務を経験後、広告宣伝担当の企画グループに配属、2025年3月よりPRグループを兼務する。

近澤 絵里菜さん
味の素株式会社 スポーツ&ヘルスニュートリション部 マーケティンググループ
2009年に味の素株式会社へ入社後、食品事業・通販事業での経験を積む。2020年より睡眠について学び始め、睡眠改善インストラクターを取得。2023年より睡眠サポートサプリ「グリナ®」のプロダクトマネージャーを担当。アミノ酸を最大限に活用した、現代人の睡眠の悩み解消を目指している。

伊東 岳彦さん
味の素株式会社 D2C事業部 販売マーケティンググループ
2022年、味の素株式会社に入社。事業開発グループや広域営業部生協宅配グループにて、異業種・地域・流通・生活者との共創を実践。現在は主に睡眠、認知、歩行機能領域の販売マーケティングを担い、ファンベースのアプローチを通じて、共創による社会課題の解決を推進している。
https://www.ajinomoto.co.jp/

堂上 研
株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長
1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。
睡眠の悩み、解消のカギは簡単なことから“習慣化”すること
堂上:本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、みなさんが日常で感じている「睡眠の悩み」についてお聞かせください。伊東さんはいかがですか?
伊東:じつは、私は昔から睡眠時間が短く、睡眠はずっと大きな悩みでした。最近は特に、朝早くに目が覚めてしまうようになってしまって。
堂上:なるほど。なかなか眠りにつけないんですか?
伊東:入眠は問題ないのですが、目が覚めてしまうんです。一度目が覚めてしまうと、もう一度眠ることも難しく、結局テレビをつけたり本を読んだりして時間をつぶしています。
近澤:そういったお悩みを持つ方は、若い方の中でも増えている印象がありますね。一般的にも多いケースかもしれません。
堂上:近澤さん自身は、睡眠に困ることはありませんか?
近澤:私はもともと寝ることが大好きで、どこでもすぐに眠れるタイプでした。ただ、子どもが生まれてからは生活リズムが乱れがちになって、自分のペースで眠れない時がありましたね。そういう日は、翌日がしんどくて……(苦笑)。
堂上:わかります! 子どもと一緒に寝ていると、自分の理想的な睡眠環境はなかなか確保できないですよね。
ところでエアウィーヴさんでは、社員のみなさんにも寝具を提供しているんですか?
冨田:はい。全社員がエアウィーヴ製品を使用できるようになっています。やはり、自分で寝心地を体感しないことには、新しい商品を開発したり、お客さまに提案したりできませんから。
堂上:やっぱりそうなんですね。飯沼さんもエアウィーヴの寝具を使って、快適に眠れているのでしょうか。
飯沼:そうですね。おかげさまで睡眠についての悩みはまったくなく、毎日ぐっすりと眠れています。
堂上:うらやましいです(笑)。しかし、先ほどの伊東さんや近澤さんのように、「睡眠の質」は生活習慣や家族環境によって変わってきますよね。改善の方法も、人によって違ってくると思います。
睡眠改善インストラクターでもある近澤さん、睡眠に悩みを抱える人にどんなアドバイスをされていますか?
近澤:一般的に「こうするといい」と言われていることはたくさんありますが、それをすべて毎日の生活の中にプラスして取り入れるのは、現実的に難しいと思います。睡眠のためだけに、”頑張り続ける”というのは、大変ですよね。
すべてを完璧にしようとせず、「日々の生活の中で、できる範囲のことをひとつだけ意識してみる」という姿勢が大切だと思います。例えば、夜の睡眠はその日の朝に始まると言われており、朝起きてカーテンを開けるとき、外の光を意識してみる、というのも立派な第一歩です。
堂上:ウェルビーイングな生活を送っている人は、そうした“小さな習慣”を自然と生活に取り入れていますよね。
それぞれの快眠ルーティンと、パワーナップの可能性
堂上:冨田さんは、「睡眠の質」を高めるために意識している習慣などはありますか?
冨田:私は「寝る前のルーティン」を大切にしています。例えば、寝ようと思ったときには部屋着からきちんとパジャマに着替えるようにしています。
パジャマに着替えたら「もう寝るモードだ」と自分のスイッチを切り替えて、ベッドに入ったらスマートフォンは触らない。「ベッドは寝る場所」という自己暗示をかけて、生活リズムを整えています。
堂上:それが脳に対して「これから眠る時間だ」と伝えるサインになるんですね。私も様々な専門家の方たちからお話を伺って、食事や入浴の時間をルーティン化するように意識しています。
飯沼さんは寝る前に行なっている習慣はありますか?
飯沼:じつはあまり「睡眠のために」と意識したことはありませんでしたが、自然と寝る前にストレッチをするようになりました。それと、朝起きたら最初に観葉植物に水をあげるというのがルーティンですね。これも生活リズムを整える一助になっているのかもしれません。
堂上:朝のルーティンとして、植物の世話をするのは気持ちも整いそうですね。自分の「心地よさ」を起点にした習慣が、自然と眠りの質にもつながっているのかもしれません。
近澤さんはいかがでしょう?
近澤:私は毎朝まず窓を開けて、日光を浴びながら部屋の空気を入れ替えます。その日の気温を肌で感じながら、子どもたちにどんな服を着せるか、傘が必要かなどを考えながら動き出すのが、朝の習慣になっています。
あとは、寝る前に「グリナ®」を飲んでいます。手前みそですが、安心感もあるのか、ぐっすり眠れます。
堂上:体と心の両方を目覚めさせるような、いい習慣ですね。生活のリズムが整うことは、睡眠の質だけでなく、その日一日をどう過ごすかにも関わってきますよね。
それに、「グリナ®」をご自身でも取り入れているというのが素敵です。開発に携わった商品を信頼して日々の生活に活かしているという姿勢に、味の素さんらしい“実感”のあるウェルビーイングの取り組みを感じました。
伊東さんは、睡眠に課題を感じているとおっしゃっていましたが、改善のために取り入れている習慣はありますか?
伊東:そうですね、睡眠に課題を感じているからこそ、色々と試してみているんです。最近は歩く量を意識的に増やすようにしていて、それが睡眠にも影響を与えていると感じています。
あとは、寝る前に「リカバリーウェア」に着替えて、スマートフォンで入眠用の音楽を流すのがルーティンです。スマホは枕の下に入れておいて、音だけ聞いてリラックスするようにしています。
堂上:みなさん、それぞれのライフスタイルの中で試行錯誤しながら、自分に合った方法を見つけているんですね。それだけ「睡眠の質」は、私たちのウェルビーイングに大きく関わっているということだと思います。質の高い睡眠は、単なる“休息”ではなく、心身の回復や日中の集中力、感情の安定にも影響する。だからこそ、「自分に合ったリズム」を見つけることが大切なんですね。
ところで、睡眠に関する話題としてもうひとつ注目したいのが、「パワーナップ(短時間仮眠)」です。最近では世界的な企業もパワーナップを積極的に導入していて、社員のスケジュールの中に組み込んでいるところもあるそうです。
エアウィーヴさんでは、パワーナップに関する取り組みはありますか?
冨田:会社としてパワーナップを推奨する制度などはまだありませんが、じつは2017年に“仮眠専用の枕”を開発したことがあります。
クラウドファンディングでの限定商品でしたが、お昼寝以外にも移動中のクッションやパソコンのハンドレストとして使用できるなど用途が豊富で、大変多くの方にご支持いただいておりました。
堂上:そんなチャレンジをされていたとは知りませんでした! 短時間の仮眠で生産性が大きく上がるというのは、今後の“睡眠市場”にとっても可能性が大きいテーマですよね。働き方や価値観が変わる今、こうした「回復の仕組み」をどうデザインするかは、企業や社会全体にとっても重要な問いだと感じています。
近澤: 「パワーナップに適したサポートサプリメント」なんかも、今後開発できると面白いかもしれませんね。
睡眠を追及する2社が相乗効果を生む「快眠宿泊プラン」
堂上:ここまで、みなさんの睡眠に関する悩みや日々の工夫について伺ってきましたが、じつは今回、睡眠を研究するエアウィーヴさんと味の素さんがタッグを組んだ新しいコラボレーション企画が進行中だそうですね?
飯沼:はい。今回は、「横浜ベイホテル東急」さんにもご協力いただき、味の素さんの睡眠サポートサプリメント「グリナ®睡眠ケア&ストレスケア」と、エアウィーヴの寝具を一緒に体感していただける特別な宿泊プラン(※)をご用意しました。
期間は、10月17日(金)から12月18日(木)までの約2カ月間です。
堂上:「睡眠」をテーマに、サプリメントと寝具がタッグを組むって、すごく面白い取り組みですよね。両社の共創によって、どんな相乗効果が生まれるのかが非常に楽しみです。
近澤:今回の取り組みのポイントになるのが、「深部体温」です。私たちの睡眠の質は、体の深部の温度、つまり深部体温を入眠時に下げることで大きく改善されることがわかっています。
「グリナ®睡眠ケア&ストレスケア」(※)の主成分であるアミノ酸「グリシン」は、寝る前に摂取して血中濃度を上げることで脳の神経に作用し、眠りのスイッチを押すように働きかけます。そして、その作用によって深部体温の低下を促してくれるんです。※「グリナ®睡眠ケア&ストレスケア」は機能性表示食品です。
冨田:一方、エアウィーヴの寝具も同様に、優れた通気性と寝返りがしやすい適度な反発力によって、入眠時の深部体温をスムーズに下げてくれることが明らかになっています。
今回のコラボレーションは、この「深部体温の低下」という、私たち2社の睡眠研究が交差する部分を起点に実現したものなんです。
堂上:なるほど。味の素さんのサプリメントが「内側から」、エアウィーヴさんの寝具が「外側から」、どちらも深部体温をコントロールすることで、良質な睡眠を後押ししてくれるというわけですね。両社の知見が重なり合ったからこそ実現できたプランだと感じます。
飯沼:さらに、早稲田大学名誉教授であり、すなおクリニックの院長の内田直先生に監修いただいた、睡眠に関するTipsが書かれたオリジナル冊子もご用意しています。
堂上:翌日のすっきりとした目覚めまでを設計した、快眠プランの体験型プログラムになっているということですね。宿泊された方にはアンケートも実施されるんですか?
飯沼:はい。チェックインから就寝までの過ごし方や、目覚めの体感などについて簡単なアンケートにご協力いただく予定です。お客様が実際に「どう感じたか」を言語化し、可視化することも、このプランの重要な要素です。
堂上:今回の企画を基に、睡眠と食事や体験も組み合わせたウェルビーイングツーリズムのトータルパッケージなどへの発展も期待できるかもしれません。
伊東:実現すれば、非常に魅力的な体験価値の提供になると思います!
飯沼:じつはすでに、コラボレーション企画の第二弾も進行中なんです。味の素さんと共催で、睡眠コンサルタントの友野なおさんをお招きし、睡眠セミナーを開催予定です。
冨田:寝具も、味の素さんのサプリメントも、“使って初めて実感できる”という点で共通しています。だからこそ、今回のような体験型のコラボレーションは、私たちが伝えたい“睡眠の価値”を実感していただく良い機会になります。
今回の宿泊プランの名前は「ストレス軽減! ぐっすり快眠宿泊プラン」ですが、このネーミングも、「睡眠」にしっかりフォーカスした体験をしていただきたいという思いを込めてつけたものなんです。
堂上:睡眠に悩みを抱えている人はもちろん、普段あまり意識していなかった人にとっても、「あらためて自分の睡眠と向き合う」きっかけになるような、素晴らしい企画ですね! そうした気づきや学びを提供できる、非常にウェルビーイングな企画だと感じました。
睡眠の質を、すべての人へ。これからのチャレンジと共創の可能性
堂上:では最後に、みなさんがこれからチャレンジしたいことをお聞かせいただけますか?
伊東:私は「熱量エコシステム」をつくりたいと考えています。もともと味の素に入社した理由も、「ワクワクするような事業を開発したい」という思いがあったからなんです。
まずは、自分自身がワクワクできることが何より大切だと思っています。その気持ちに共感してくれる人たちを巻き込みながら、前向きなコミュニティを広げていけたらと考えています。
堂上:人の熱量が周囲を巻き込み、やがてイノベーションの渦になる。そんな流れが自然に生まれてくるようなコミュニティですね。とても素晴らしいビジョンだと思います。
近澤:今日、エアウィーヴさんのお話を伺って、あらためて自分の中にある気づきがありました。私は「睡眠」の事業に関わっているのに、「食」や「運動」と比べて、「睡眠の大切さをまだ自信を持って語れていなかった」と感じたんです。でも、睡眠こそがウェルビーイングの土台になる。私もこれからは迷いなく、「睡眠の価値」をもっと多くの方に伝えていきたいと思いました!
飯沼:私は今、学ぶこと=インプットの段階が多いのですが、これからはアウトプットにも力を入れていきたいと思っています。まずはエアウィーヴの社員として、家族や友人など、身近な人たちに“睡眠の考え方”を伝えることから始めてみたいですね。
堂上:いいですね。睡眠は、誰もが毎日行っていることなのに、意識的に向き合う機会は意外と少ないんですよね。だからこそ、もっと多くの人に睡眠の重要性を知ってもらいたいと思っています。「睡眠の価値」を伝えていくことは、生活者のウェルビーイングに直結する、ものすごく大事なアクションだと思います。
冨田さんは、どんなチャレンジを思い描かれていますか?
冨田:味の素さんは「グリナ®」というサプリメントを世に出し、睡眠サポートサプリメントの市場を切り拓いていったパイオニアでもありますよね。そのチャレンジ精神には本当に刺激を受けます。
私たちエアウィーヴも、これからさらに新しいサービスや価値を創っていきたいと思っていますし、味の素さんと一緒に取り組めることがあれば、ぜひチャレンジしてみたいです。
堂上さんがおっしゃったように、睡眠について意識を持っている方はまだ少ないと思います。しかし、「睡眠の質を高める」というのは、確実に人のウェルビーイングに貢献すると信じています。
睡眠に悩んでいる人だけではなく、悩んでいない人にも「睡眠の質はさらに良くなる可能性がある」と知っていただきたい。そして、寝具やサプリメントがそのサポートになることを浸透させていきたいと思っています。
堂上:すごく共感します。これからも、色々な人や企業を巻き込みながら、「睡眠」についてより知ってもらう活動を続けていきたいですね。
「良質な睡眠」によって、生活にいいリズムが生まれることで、人々のウェルビーイングに大きな影響を与えていくと私も信じています。そんな未来を、共につくっていきましょう。本日はありがとうございました!
<前編記事はこちら>
2010年10月、株式会社エアウィーヴに入社。営業、アスリートサポート、睡眠研究、海外新規事業推進、マーケティングなど、様々な業務を経験する。現在は人事総務本部長として、寝具を通じて世界中の「睡眠の質の向上」を推し進めている。
https://sleep.airweave.jp/